女王様と謁見
遅くなりました。
前話の後書きの反響が物凄い。
嬉しい反面、今日の後書きに普通の日記を書くと熱量の差が心配なので掲示板でお茶を濁しておきます。
俺は部屋の中央まで進み出た後、立ったままおもむろに口を開いた。
別に配下って訳じゃないし、謁見の礼儀作法とか知らないしな。
「お初にお目にかかります。
俺はカイリ。こっちはコウくんです」
すると左右から罵声が飛んできた。
「ぶ、無礼者!!」
「女王陛下の御前だぞ。伏して挨拶せよ!」
「地上人ごときが、この場に居られるだけでも有難いと思え」
「これ以上狼藉を働くなら3枚におろしてくれようぞ」
「皆のもの、黙りなさい」
「「!!」」
女王様の一言で水を打ったように静まり返る室内。
どうやらかなりのカリスマを持っているようだな。
「段上から失礼するぞ、客人。
わらわはホッケ族の女王、アライだ。
皆が騒がしくして済まないな。
どうも最近、水の噂でここよりも更に外海では魚人族と地上人が争っていると聞いたのでな。
とうとうここにも襲撃の手が回ったのかと、皆気が立っておるのだ」
「そうでしたか」
一瞬、外海ってどこを指すんだって思ったけど、多分世界地図で言う中央側を内海、各種族の本島の方を外海って呼んでいるんだろう。
細かい境界は確認しないといけないけど、大きく間違っては居ないはずだ。
争っているっていうのも、もうそろそろ第3の島にプレイヤー達が辿り着くころだから、そこまで行くと魚人たちとの遭遇イベントが発生するって事だな。
「先にお伝えしておくと、俺以外の地上人がここまで来るのは当分先になると思いますよ。
俺はかなり特殊な方法でここまで来てますし、他の地上人で海中を自由に動ける人を知りませんから」
「そうか。それは朗報だな。
それで、お主たちがここに来た目的はなんだ?
よもや本当に挨拶だけという事はあるまい」
「良好な関係を築けるのであれば挨拶だけでも十分かなって思ってます」
元々は多少なりとも文句を言ってやろうかとも思ってたけどユッケと女王様は真面そうだからな。
なら多少のことは飲み込んで良好な関係を築いた方が得だと判断した。
でも俺の言葉を聞いて、騎士たちと女王様の横に居た人たちは一様に訝しむ表情を浮かべている。
どうやら本気とは思われなかったようだ。
対照に女王様とユッケは楽しそうに笑っていた。
「ふふっ。ユッケが案内してきたと言うから変わっているとは思っていたが、まさか本当にそれだけの為に城に乗り込んでくるとは」
「ああっ!お母さま酷い。私だってしっかり考えて連れてきたのに。
彼らが力づくでここまで来たらお城壊れちゃうでしょ?」
「そうだな。良い判断だったとほめておこう」
「やった」
謁見の間には不釣り合いなユッケの喜ぶ声が上がる。
まぁこれまでの話からしてユッケは王女様って事だろうし、咎める人もいないのか。
「それで……」
「お待ちください、女王陛下!!」
「む?」
慌てて謁見の間に入ってきたのは、ヒラキーだった。
というか、謁見の間に乱入してきていいのか?
「控えよ、ヒラキー!」
一番奥側の騎士から怒声が届く。
やっぱり駄目だったみたいだな。
「ですが、その者は北の怪物を従えし者です。
地上人の姿をしていますが、その者も怪物に違いありません!」
慌てて膝を突きつつも、俺を睨みつけるヒラキー。
これは面倒な事になったかな。
「ふむ。ヒラキーよ、彼らが尋常ではないのは既に分かっておる」
「でしたら……」
「その上でわらわは彼らを客人として迎えると決めた」
「なっ」
「なに、今までの行動を見れば彼らの人となりは多少は分かるというもの。
金や地位では動かぬ類の者だ。こういった者には礼を重んじるに限る。
そうであろう?」
「まあそうですね」
「うむうむ。ヒラキーよ。遠征大義であった。今日のところは下がって休め」
「は、ははー」
ヒラキーは平伏しつつ出て行った。
それを見送った女王様がすまなそうに俺を見た。
「あの様子だとヒラキーがそなたらに迷惑を掛けたか?」
「ええ、少しですが」
「そうか。あやつも愛国心が先走っての事、許してやってほしい」
「そうですね。お陰でここに来ることが出来ましたし」
「うぅむ、後をつけられたか。それはそれで。まぁ今はよい。
そうだな。詫びというよりも友好の印に何かを渡せたらと思うのだが、欲しいものはあるか?」
「欲しいもの、ですか」
別に欲しいものって特には無いんだけど……あ。
「俺は農家なのですが、野菜をこちらで卸させて頂く、というのは如何でしょう」
「ほぅ、野菜とな。地上人の食べ物が魚人族にあえば良いが。ものによっては毒に変わるものもあるのでな。
例えばどのようなものを売るつもりだ?」
「今あるので言うと、こんなところですね」
そう言いつつアイテムボックスを操作して海ニンジンとかを一通り並べていく。
ガタッ!!
なんだ?急に女王様が立ち上がったかと思うとわなわなと震え出したけど。
って、よく見たら隣のユッケも目を見開いている。
その視線の先にあるのは……スギナか?
「えっと、スギナはダメでしたか?」
「……」
あれ、返事がない。
じゃあ代わりにユッケはどうだ?
「か、カイリさん。そのスギナ?を一つ頂いてもよろしいでしょうか?」
「ん?あぁどうぞ」
突然敬語になったユッケにスギナを1つ渡すと、微かに震える手でユッケは受け取り、そしてギュッと目を瞑りながらスギナに齧り付いた。
ムシャムシャと噛み締めた後、ごくりと飲み込んだ。
「……」
「どうだ?」
「…………(ぱぁ)」
言葉は無くてもその表情で良く分かる。
口に出来ない程美味しかったって事なんだろう。
「良かったら女王様も食べてみますか?」
「よ、よいのか?」
「もちろん。まだまだ沢山ありますから」
「うむ、では一つ頂こう。毒見はユッケがしたようなものだからな。問題ないな」
どこかいい訳っぽい事を口ずさみながら、スギナを食べる女王様。
「…………(ぱぁ)」
かなり美味しいようだ。
それを見た周りの騎士たちからもつばを飲み込む音が聞こえてくる。
どうやらホッケ族にとってスギナは超が付くほどの大好物だったみたいだ。
コウくんにとってのシイタケみたいなものか。
「か、カイリよ。このスギナをあるだけ売っては貰えないだろうか。もちろん相応の対価は払う」
「良いですけど、女王様たちだけで食べるならまだしも、街の人たちにまで提供しようと思うと生産量より消費量の方が多くなりそうですね。
いっそのこと、この街の近くにスギナ畑を作ってはどうですか?」
「畑?いやいや、畑とは地上に作るものの事であろう?」
「いえいえ、海底にも作れますよ」
「なんだと!?」
「むしろ普段の野菜や海草はどうしてたんですか?」
「無論、街の近くに自生しているものを摘んでくるに決まっておる」
おぉぅ、そうなのか。
それなら確かに俺が育てたスギナに目の色変えるのもわかる。
「もし土地を貰えるなら畑を耕しても良いですよ?
そうしたら定期的にスギナが収穫出来るようになりますし」
「本当か!!!」
「え、えぇ。ただし管理は皆さんにお願いしたいですが」
「もちろんだとも。
タタアキ。直ぐに土地の選定を行え!」
「はっ」
女王様の隣に居た1人が慌てて飛び出していく。
あの様子なら直ぐに土地を見繕ってきそうだな。
後書き掲示板
No.881 通りすがりの妖精
それにしても島ごとに環境ががらっと変わるのはあれみたいだな
No.882 通りすがりの獣人
あれ?
No.883 通りすがりの妖精
ほら、子供のころ流行ってた宇宙海賊もののアニメ
No.884 通りすがりの人間
子供のころというか、じいちゃん世代だなw
No.885 通りすがりの妖精
ぐふっ
No.886 通りすがりの獣人
885がジェネレーションギャップのボディブローを食らった模様
No.887 通りすがりの妖精
ま、まぁそれはいいとしてだ。
皆の第3の島ってどんなところだ?
こっちは碌な魔物が居なくて拍子抜けなんだけど。
No.888 通りすがりの獣人
流したw
こっちも同じようなもんだな
No.889 通りすがりの人間
どことなく最初のころのイベントの島に似てね?
No.890 通りすがりの魔族
あ、それ俺も思った
ということは?
No.891 通りすがりの妖精
ここに砦を作るの?
No.892 通りすがりの魔族
かなぁ。
でもイベントの島と違って他の種族と奪い合う訳じゃないだろ?
No.893 通りすがりの人間
世界地図を照らし合わせたら、まだそれなりに距離があるからなぁ
No.894 通りすがりの獣人
って、なんかアナウンス北
No.895 通りすがりの魔族
【占有エリアの解禁】だってよ
どうやら第3の島の先は小島が点在してるようだな。
で、それを種族どうしで奪い合えってことか。
No.896 通りすがりの妖精
これ誰かが第3の島の次に到達したのがフラグで出てきたっぽいな。
No.897 通りすがりの獣人
占有している島の数によって毎月報酬が入るのか。
No.898 通りすがりの人間
ちゃんと占領に関するルールがあるみたい。
No.899 通りすがりの魔族
いや、無いとカオスだろっ
No.900 通りすがりの獣人
島の占領はクラン単位で行う、か。
No.901 通りすがりの人間
そう言えば占領前ってどうなってるんだろうな。
無人?それとも魔物が居る感じかな。
No.902 通りすがりの妖精
後者っぽい。
今急いで乗り込んでみたっけ、陸ガメの魔物に食われた。
なんで亀がジェット噴射で飛んでくるんだよw
No.903 通りすがりの魔族
それは本当に亀だったのか?
No.904 通りすがりの獣人
こっちはリザードマンっぽい魚人に占拠されてる島が3つあった。
というか、ここって魚人の住処だったりしないか?
No.905 通りすがりの魔族
あり得るな。
第3の島あたりから急に魚人たちの攻撃が増えてきたし。
No.906 通りすがりの妖精
な、なぁ。
今俺の船の下を巨大な影が通り過ぎて行ったんだけどw
No.907 通りすがりの人間
くじらか?
捕鯨はうるさいやつらが居るから気を付けろよ
No.908 通りすがりの妖精
いや、多分魔物。
影の大きさだけで50メートル以上あった
No.909 通りすがりの魔族
海中のボスってか。
クラーケンかリバイアサンかな。
No.910 通りすがりの妖精
どっちでも良いけど、俺の帆船じゃあ一撃で吹き飛ぶな。




