ヤドリンの拠点
一通り地面を均した結果、それなりに広い空間が確保できた。
とは言ってもここに何を作るかはまだ決めて無い。
普通に畑でも良いけどもっと違う物の方が良いかなって考えている。
ミズモの所もそうだけど、あまり飛び地に畑を作り過ぎると管理が大変になってくるからな。
作るならきちんと管理者を用意してからだ。
「ヤドリンは何か作りたいものってあるか?」
「………………っ、くぃ」
じっと考えて周囲を見回したヤドリンだったけど、創りたいものが見つかったらしい。
「よし、じゃあやるか」
「くぃ」
「ん?」
気合十分に腕を振り上げたら、ヤドリンに裾を引かれた。
何かと思ってみればヤドリンがフルフルと首を横に振ってる。
「えっと、もしかして手伝わない方が良かったり?」
「くぃ」
どうやらそうらしい。
何を創るのかは分からないけど、ヤドリン自身の手で創り上げたいようだ。
なら俺は応援に徹するか。
「じゃあ、ここはヤドリンに任せたぞ」
「くぃ!」
力強く頷くヤドリン。
そうと決まれば俺がここに居ても邪魔だな。
リースにも早めに帰るって伝えてたし、一度戻って残りの時間は畑を耕すかな。
まぁその前にリースの作ってくれたお菓子でティータイムと洒落こもう。
と、思ってたんだけど。
「えっと……リースさん?」
「あははー」
「この黒い棒はなんでしょう?」
「その、ちょっと失敗しちゃった☆」
可愛くウィンクして誤魔化そうとするリースだったけど、目をそらすことも難しい物体があった。
【愛の試練Typeケーキ:レア度8、品質???。生産者:リース。
製造工程が一切謎な黒い塊。材料からしてケーキと思われるがその面影は一切ない。
その硬度はダイヤに次ぐと言われ、鈍器としては効果的。なお、そう言って褒めた後は黒から赤に変わる可能性が高いので要注意。
生産者の愛が籠っているかはともかく、これを生産者の為に食べられるあなたは正に愛を貫く益荒男である。
食べた後の歯と胃袋と命の保証はない】
レア度8って何気に初めて見たんだけど。
先日の謎の物体xを超えるしな。
「たべる?」
上目遣いに俺を見るリース。
普段そんなことしないからギャップがグッと来そうなものだけど、視線を下げれば死亡フラグ。
「いや、俺まだ死にたくないし。人の歯じゃ噛み砕けないだろう」
「そ、そうよね。なら魔物なら食べれるかな。ランプ、バラ。食べてみ……あら?」
リースが振り返ると、最近リースのお手伝いをしてくれてるカウクイーンの眷属達が一目散に走り去っていくところだった。
そして俺もリースの視線が切れたのを見計らって急いでログアウトを行う。
「もう、冗談だったのに。ってカイリ君もなの!?」
ログアウトが完了する間際。
ぷくっとふくれるリースの姿があった。
次にログインした人が犠牲にならなければ良いけど。
そして翌日。
ログインした俺を迎えたのは真っ赤に染まった黒いあれ、ではなく。
なんと黒く染まった転送門だった。
【黒檀の転送門】
まさかとは思うけど、昨日のあれを強化素材にしたみたいだ。
耐久度がかなりアップしていて、万が一襲撃を受けても簡単には壊れたり奪われたりしなくなってる。
あとアラート機能ってついてるけど、なんだ?
名前からして何か問題が起きた時に知らせてくれるっぽいけど。
まぁその時になれば分かるか。
「さて、じゃあ今日の行き先はっと」
転送先を表示すれば竜宮農場を始め、先日のラムラリア島の各所、各国の本島、獣人族の港に続き。
【……
闘牛草原のBBQ場
岩ヤドカリの岩礁】
見覚えのないものが2つ。
このBBQ場って多分、この前のカウクイーンと出会った場所に作った拠点の事だよな。
あれ以来、時々カウクイーンが様子を見に行ってくれてるらしいけど、今のところ荒らされたとかいう話は聞かない。
盗賊の住処になったりしないかなって心配もしたけど、大草原クランの人があのあたりを縄張りにしてそうだし、治安が良くなってるのかもな。
そして【岩ヤドカリの岩礁】は昨日のあそこだよな。
昨日はヤドリンが残って作業してたみたいだし、今朝農場の方に行ってみてもまだ帰ってきてないみたいだった。
なので夜通し作業をしていたんだろうな。
頑張り屋のヤドリンの事だから、もうだいぶ出来上がってきてるんじゃないだろうか。
ピッ、ピッ、ピッ。
なんだ?
急に【岩ヤドカリの岩礁】の部分が点滅しだしたぞ。
これがさっきのアラート機能ってやつなのか。
だとすると、向こうで何か問題が起きている可能性が高いな。
そう思い、急ぎ岩礁へと飛んだ俺の目に映ったのは、ヤドリンが組み上げたと思われる腰くらいの高さの円形の岩の壁と、それに槍を投げつける大量の魔物。
そして魔物を追い払おうと孤軍奮闘するヤドリンだった。
後書き日記 リース編 続き
……さて。
これどうしましょう。
そしてどうしてくれましょうね。ふふふっ。
はいそこ。正座です。
まずはどうしてこんなことをしたのかお聞きしましょう。
ふむふむ、赤い炎を見ていたらテンションが上がった?
火って確か動物の根源的恐怖を呼び起こすので赤い布とかとは訳が違うはずなんですけど、ゲームだからですか?
でもそれは困りましたね。
料理と火は切り離せないですから、今後も同じようなことがあるならランプ達は料理人には向かないと言わざるを得ません。
え、そこをなんとか?料理が好き?
うーん、そうですねぇ。何とかしてあげたいところですが困りました。
こういう時はカイリ君に相談してみましょう。
ついでにこの黒いものでお茶を濁しつつ。
って。
逃げられました。
ほんの冗談だったのに。
他に頼れそうな人……こういう時に限ってウィッカさん達も居ないですし。
従兄は……若干相談しにくい気もします。また自分で考えろって言われそうですし。
あとは、あっ。先輩が居ました。
先輩ならこういうのズバッと解決してくれそうです。
早速一度ログアウトしてメールを送信っと。
まぁ流石にすぐに返信は返って、来ました。
しかも私の
「赤い火を見ると気分が悪くなる友達が居るんだけど、どうしたらいいでしょう」
っていう質問に、
「赤い火がダメなら青い火なら良いんじゃないか」
とまさに目から鱗です。
そうですよね。赤がダメなだけなんですから色を変えれば良いんです。
火の色を変えるのはつまり炎色反応ですから、そういう材料を混ぜで薪を燃やせば良いって事です。
問題はそんな材料をどこに手に入れるか、ですが。
ふぅ、仕方ないですね。
ちょっと探しに行きましょうか。




