これからの活動
お待たせ致しました。
ただ、予定外に忙しすぎてほとんどストックを作れませんでした。
なので、いつも通り自転車操業です。
6月も中旬になり、世の中は梅雨に突入している。
俺の住んでいる地域でも晴れ2曇り2雨3くらいの割合で空が常に不安定だ。
お陰で洗濯をするタイミングが難しい。
室内で干しても良いんだけどやっぱり湿度がな。
去年、除湿も出来る空気清浄機を買ってなかったら家にキノコが生えていただろう。
ただまぁ、外がどんなに悪天候でもVR空間には関係ないし、学校内も変わらない。
むしろ梅雨前よりも涼しくて助かるくらいだ。
そして放課後の今、学校の図書室にて読書をしていた。
この時間の利用者はほとんど居ないのでありがたい。
「『異世界転移のすゝめ』……?」
「ん?」
向かいの席から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
顔を上げれば案の定、霧谷さんだ。
「先輩、異世界転移したいんですか?」
「んな訳あるか」
「で、ですよねー」
何か、見てはならないものを見てしまった!的な顔をする霧谷さん。
彼女の中で俺は中二病を再発させてしまった可哀そうな人になってそうだな。
これはちゃんと誤解を解いておかないとな。
「ゲームだよ、ゲーム」
「ゲームで異世界転移ですか?」
「最近のVRゲームってある意味、異世界で活動するようなものだろ?
だから何か役に立つネタがあるんじゃないかなって思ってな」
「ふぅん。それで何かありましたか?」
「今のところ微妙だな」
今のところ出てきた項目が
『ポンプの構造』
『マヨネーズ最強説』
『ジャガイモで食料革命』
『オセロ、石鹸、化粧水で経済革命』
『黒色火薬の作り方』
『空を制するものは世界を制する』
残念だけどアルフロではどれも役に立ちそうもない。
ちなみにシリーズ物で『異世界転生のすゝめ』って本もあった。
そちらでは如何に小さい時から魔力を高めるかが色々と書かれていた。
「こういう本を読めば何かのきっかけになるかと思ったんだけどな」
「というと、何か行き詰っているんですか?」
心配そうな霧谷さん。
実際には心配するような事は何も無いので、俺は頭を掻きながら気楽な感じで返した。
「行き詰ってる訳じゃないんだけどな。
今やってるゲームで一緒に活動してる仲間がいるんだけど、みんなは今、新しいテーマに向けて頑張ってるんだ。
そんな中、俺だけのんびりいつも通りの活動って言うのも味気ないかなって思ってるんだ」
「ふむふむ」
俺の話を聞いてむぅと考え込む霧谷さん。
ふと顔を上げて俺の目を覗き込んで、小首をかしげた。
「先輩は、別に今やってる事が嫌になった訳じゃないんですよね?」
「ああ、そうだな」
「そのやってることは好きで始めた事ですか?」
「まぁ半分ネタみたいな所もあったけど、結構気に入ってるな」
「うーん、それなら別に無理して新しい事を始めなくても良いんじゃないですか?」
「ん?」
どういうことだ?
「私は新しい事を始める事だけが格好いい訳じゃないと思うんです。
前は気付かなかったことも、経験を積んだ今なら気付けることってありますし、
当時は出来なくても今なら出来るって事も多いですしね」
「ほぉ」
「私、今は料理を頑張ってるんですけど、小さい頃は全然ダメだったんです。
でも最近は私の料理を美味しいって言ってくれる人が居ますし、すごく楽しいです。
まぁ今でもちょこちょこ失敗して謎の物体Xを作っちゃうこともあるんですけど、それを見た友達がまた面白そうに笑ってくれて『こうなったらXYZ揃えよう』なんて言い出して、釣られて私も笑ってしまいました。
他にも一人だったら挫折しそうなところも皆と一緒なら楽しいですし……」
「じー……」
へぇ。
霧谷さんって大人しめな子なのかと思ってたけど、結構面白い子だな。
好きな事には夢中になれるみたいだし、それを語ってる今もすごく楽しそうだ。
「……だから、って。あっ」
「(にこにこ)」
「すみません。私ったら突然語り出しちゃって」
「いやいや。聞いてて凄いなって思ったよ」
「そう、ですか?」
「ああ。確かに俺も好きで始めた事だからな。
霧谷さんの話を聞いてたら無理に新しい事を探すより、もっと今やってる事を高めながら楽しもうって思えたよ」
「ほっ」
「さて、そうと決まれば早速帰ってやりますか」
「はいっ」
そうして本を元の棚に戻した俺は霧谷さんと一緒に昇降口へと向かった。
「そう言えば、霧谷さんは何の本を読んでたんだ?」
「えっと『家庭で出来るお菓子作り』です」
「へぇ。お菓子作りか。良いな。まずは何から作るとか決めてるのか?」
「まずはパウンドケーキに挑戦しようと思ってます。
シンプルなものなら失敗はしにくいみたいですし、慣れてきたら木の実とか入れても美味しそうですから」
「いいね。じゃあ出来たら一切れ食べさせてくれ」
「えっ。あー」
ん?あれ、なにかまずかったかな。
俺に食べさせたくない?
というより、まだうまく行く自信がないってところかな。
流石にここまで話してて俺の事が嫌いで食べさせたくないってことは無いよな。
「別に失敗作とか、味見役とかで良いぞ。
最初からプロのパティシエが作ったような味は期待してないし」
「いえ、それが、最初は失敗しても良いようにゲームの中で作ろうかなって思ってまして」
「あ、なるほど。
じゃあまぁ急がないから、いつかリアルで作った時に頼むわ」
「分かりました。じゃあ作ったら一番に先輩の所に持っていきますね」
「ああ楽しみにしてるな!」
そうして俺達はそれぞれの家に帰って行った。
後書き日記 リース
21xx年6月7日
6月に入り一気に気温が上がってきた今日この頃。
梅雨前線が太平洋に出来ていますので、来週くらいから梅雨でしょうか。
梅雨入り前の高温と梅雨入り後の多湿、どっちが良いかと言われたら……両方嫌ですね。
それはともかく。
最近の私は家庭料理から肉料理、そしてお菓子作りへとシフトしています。
その為に今は拠点にレンガでオーブンを作っています。
作り方はネットや他のプレイヤーから仕入れてます。
レンガ造りのオーブンって聞いた瞬間、もしかしてレンガ造りから始めるの?って心配になりましたが、そこは既にレンガを大量に作っているプレイヤーが居ましたので、その方から買っています。
ちなみに、その人がなんでレンガを大量に作ってたかというと、教会を建てている最中なのだとか。
ただ、敬虔なクリスチャンなんですか?って聞いたら全然そんなことは無くて、神父服をこよなく愛するコスプレイヤーの方でした。
コスプレの為に教会を建てるっていう発想が凄いです。
そう言ったら、逆に料理の為にオーブンを作るのも十分凄いと返されました。
まぁ、物の価値はひとそれぞれって事ですね。
でもやっぱりレンガを積み上げる作業は楽ではありません。
なのでお手伝いを頼んでます。
さあ、バラ、ランプ。美味しいお菓子の為です。今日も頑張りましょう。




