カウクイーンの悲劇
という訳で、今週は明日から投稿がおやすみになりそうです。
後1話投稿出来ればキリが良くなるのに……行けるか(ちらっ
インガルスさん達を見送った俺達は、テキパキと片づけを済ませた。
なにせどう考えてもフラグとしか思えない言葉をインガルスさんが残していったからな。
これは絶対に何かあるだろう。
と、その前に。
「ここどうしよう。竹竿とかも撤去した方が良いかな」
「別に良いんじゃない?また後で休憩に使えそうだし」
「そうですね。あっても他の方のご迷惑になることは無いと思います。
もちろん、私たちが居ない間に魔物に破壊される可能性は十分にありますけど」
「まぁ、その時はその時だな」
という訳で、俺達は魔物の大襲撃が来る前にその場を後にすることに決めた。
のは良いんだけど、あれ?
なんか、牛が全然居ないんだけど。
増減ならともかく、見渡す限り魔物が居ない。
当然それを狩る人も居ないけど、こっちは『大草原』の人達が軒並みボスアタックに行ったせいなのだろうと思う。
「これって、間違いなくあれだよな?」
「そうね。あれよね」
「嵐の前の静けさ。というよりボスフィールドみたいです」
「やっぱそう思うよな」
いつの間にか何かフラグでも立てたのか?
その疑問に答えるように地面にズンッ、ズンッと何かが歩く振動が伝わってきた。
「カイリ君。あれ!!」
「ん?」
リースが指差す先を見れば、1頭の牛がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。
「えっと、あれって、牛、だよな?」
「見た目は牛ね」
「着ぐるみという可能性はありそうですけど」
「でもそれだと中の人は身長3メートル近くになるぞ」
「でも2足歩行の牛っていうのもねぇ」
そうなのだ。
ぱっと見の見た目はホルスタインっぽい乳牛だ。
でもそれが2足歩行で両手には巨大なハルバードを持っていた。
あと強いて言えば、全身が暗い。黒いんじゃなくて暗い感じで、もしかして呪いの牛なのか?
「魔物が呪われてるとかあるのか?」
「さぁ、聞いたことが無いわね」
「……あっ。そう言えば先日、街中のクエストで『呪いの館』っていうのがありました。
クリア方法までは載ってませんでしたが、クリアしたらその館が拠点として使えるようになったそうです」
「ふぅん……ん!?」
「どうかしたの?カイリ君」
「いや、同じようなのだったら、あの牛の呪いを解けば従魔になってくれるかなって」
「あー、可能性は無くは無いわね。呪いさえ解ければだけど」
「解呪の魔法とか聖属性の魔法とかなら出来そうですけど」
「俺達にそんなのある訳ないけどな」
ちなみに、なんでこんなにのんびり会話しているかと言えば、どう見ても最初から俺達がロックオンされているからだ。
ここで背中を見せようものなら、あのハルバードが投げられるか、はたまた4足の突撃モードに移行するのか。
どっちにしろ逃げられはしないと思う。
「よし。そうと決まれば、ちょっと行ってくるよ」
「って、一人で行く気!?」
「従魔術使うのは俺だし、こういうのってきちんと俺の実力を見せつけないといけないだろ」
「無謀過ぎる気がします」
「何か手はあるの?」
「いや、特にない。
それでも時間稼ぎくらいは出来るだろう。
だから2人はその間に逃げてくれると助かる」
そう言って、散歩に出かけるような気軽さで俺は牛に向かっていった。
リース達は、逃げないか。俺これで即死したらアホだな。
さて、近づいてみるとやっぱり呪われてるっぽいエフェクトだな。
あと何か呼び方が欲しいな。
よし乳牛のボスっぽいし『カウクイーン』と呼ぼう。
そんなバカなことを考えている間に、俺とカウクイーンの距離は5メートルまで近づいていた。
俺がアイテムボックスから『はじまりの長斧』を取り出して構えると、カウクイーンも足を止めてハルバードを構える。
「……」
「……」
「行くぞ『開墾撃』!」
「モォォォォ!!」
一瞬の沈黙の後、お互いに真正面から全力で斧を振り下ろした。
ズガンッ!!
「ぐっ」
「グモッ」
ぶつかり合う斧と斧。
パワーは……よし互角だ。
ご飯食べたばかりで狩りの時以上にバフが効いてるし、突撃の時と違って1撃にスピードが乗って無いからな。
ゴリゴリと鍔迫り合いが続く。
カウクイーンからしたら小さな人間ごときに止められるなんてありえないんだろう。
「舐めるなよ。こちとら毎日大地と戦ってる農家だ。
パワーとスタミナだけならトップクラスなんだよ」
「グモォォ!!」
「どりゃあぁあ」
2撃3撃と斧どうしを叩きつけ合う。
「ぐっ」
武器は壊れないしパワーも負けてない。
でもそれを支える俺自身の耐久力が足りないせいで、斧を持つ手が段々痺れてきた。
これじゃあ、あと数回も打ち合えないな。
仕方ないので一度距離を取る。
「さてどうするか」
同じように正面から行ってもな。
よしんばハルバードを掻い潜って攻撃を当てられたとしても、ダメージは大して与えられないだろう。
それに俺の目的は倒す事じゃなくて、この呪いっぽいのを解除することだ。
何か手はないだろうか。
そう思って急いでアイテムボックスを探ると、丁度いいものがあった。
「っ!」
「!!??」
持ち替えた武器を見たリース達から悲鳴のような声が届いた。
いや、別にヤケになった訳でも気が狂った訳でもないからな。
「よし、行くぞ。喰らえ!!」
「モォォォ!!」
再び振るわれるハルバードを掻い潜り、俺の1撃がカウクイーンの口へと突き入れられた。
咄嗟に歯で噛んで受け止めるカウクイーンだったが。
バリッ、ムシャムシャゴックン。
「グモォォォォォォ!!」
噛んだ勢いのままバリバリと食べてしまったカウクイーンは、余りの辛さに仰け反った。
「どうだ、俺の大根スラッシュの威力は!!」
「グモ、グモ」
そう、俺が持ち替えた武器っていうのは今朝採れたての海大根だ。
しかもサラダとかに出てくる甘い大根ではなく、辛味大根って呼ばれるような味の大根だ。
カウクイーンは俺の問いに答えられないくらい涙目になってる。
【海大根(辛):レア度3、品質5。生産者:カイリ。
海中で育てられた辛味大根。
通常の辛味大根よりもかなり辛い為、直接食べるのはお勧めしない。
1日に1本食べると致死量を超える為、要注意。
薬味として使う事で食材などの毒素を浄化することができる。
また一部の地域では修行僧が身を清める為に毎朝一つまみ食べる習慣がある】
説明文も相当酷い。致死量って。
でも毒素を浄化とか書いてあるしな。うまく行けば呪いも解けるかもしれない。
それに。
「やっぱ焼肉にはおろしだろっ!!さっき出し忘れたけど」
「グゴォォォ」
「ほら、まだまだあるぞ。たんと食え」
「モォォォ……」
っと、泡吹いて倒れちゃった。やり過ぎたか?
一応死んではいないっぽいし、無事に呪いっぽいのも消えたけど、大丈夫か?
後書き掲示板
No.224 通りがかりの妖精
(ちらっ)……よし!何とか振り切ったぜ
No.225 通りがかりの獣人
おーおつかれ。
その様子だとフィールドボスにでも会ったのか?
No.226 通りがかりの妖精
あぁ。急に周囲から魔物が居なくなったからまさかと思ったけど。
あれヤバすぎだろっ
No.227 通りがかりの獣人
出現条件が分からないんだよなぁ。
ランダムエンカウントなのかな。
No.228 通りがかりの魔族
エリアボスみたいに特定の場所に居ないから、心の準備がな。
No.229 通りがかりの妖精
心だけじゃなく装備の準備も出来てないってw
まじエリアボス並みに強いんだから
No.230 通りがかりの人間
その分レアドロップがあったりするんかな?
No.231 通りがかりの妖精
さぁな。なにせ討伐報告がまだない。
No.232 通りがかりの魔族
上手くボスアタックを仕掛けようと準備してたクランが引き当てればワンチャンありだろうけどな
No.233 通りがかりの獣人
あ、ボスアタックと言えば人間、魔族に続いて獣人もとうとう『大草原』がやってくれたらしいな
No.234 通りがかりの獣人
そうそう。強力な支援を貰えたお陰だって言ってたな。
No.235 通りがかりの魔族
強力な支援……ヒーラーとか盾役とかか?
No.236 通りがかりの獣人
いや、食糧支援らしい
No.237 通りがかりの人間
>>236
その言い方だと、難民支援みたいに聞こえるぞ?
No.238 通りがかりの獣人
すまん。食事バフな。
No.239 通りがかりの妖精
でも携帯出来る食事でそこまで劇的に変化したっけ?
No.240 通りがかりの獣人
どうやら現地で作って食べたらしい
バトルエリアで酔狂な事だよな
No.241 通りがかりの獣人
>>240
おいおい、知らないのか?
先日、獣人族第2の島の中央付近に安全地帯が出来たんだぞ
しかもBBQ台付きで戦闘職が料理しても各種回復にそれなりのバフも付く
No.242 通りがかりの人間
ナナナナンダッテ?
No.243 通りがかりの魔族
げっ。獣人族の方にはそんなのあるのか
羨ましすぎるだろっ
No.244 通りがかりの妖精
ちょっと見てきた、んだけど。正直目を疑うな。
なんで草原の中に突然大根畑が広がってるんだよw
No.245 通りがかりの獣人
なんでもその大根が魔除け的な効果を発揮してるとか
No.246 通りがかりの人間
嘘草
No.247 通りがかりの獣人
いやでも、まじなんだって。
俺も昨日魔力切れでピンチの時にそこに逃げ込んだら、牛たちが回れ右して帰って行ったもん
No.248 通りがかりの獣人
でも牛以外には効果ないみたいだぞ。
時々来るコンドルは普通に壁の岩に降り立ってた
No.249 通りがかりの魔族
……なぁ。多分そこってどこかのクランの拠点だよな。
みんな荒らしたり、奪おうとかいう気は無いのか?
No.250 通りがかりの獣人
ないな。
No.251 通りがかりの獣人
ああ、ないな。
そんなことして、今後二度と創られなくなったら悲劇だし。
No.252 通りがかりの獣人
あ、そう言えば先日奪おうとした馬鹿が居たんだ。
俺慌てて止めようとしたんだけど、その前に突然現れた処刑牛にぶち殺されてたw
No.253 通りがかりの魔族
は?
No.254 通りがかりの妖精
え?
No.255 通りがかりの人間
処刑牛って確か、フィールドボス、だよな?……え?




