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逃走と助っ人

道を塞ぐ男たちをサッと観察すると、全員が獣人のプレイヤーで、かつ頭の上に【盗賊】と出ていた。

つまり新機能の実装で追加されたPKをメインとしたプレイヤー達って事か。

俺は周囲の様子を窺いながら1歩前に出た。


「あの、ここってフリーエリアじゃないんですか?」


そう聞いてみるとギャハハハッと笑い出す盗賊たち。


「おま、初心者丸出し過ぎだろ。

周り見てみろよ。この島はこの林エリアからバトルエリアなんだよ」

「あれ?」


そう言えば草原だったはずがいつの間にか林の中になっていた。

会話に夢中になり過ぎてバトルエリアに入った通知とか見落としてたか。


「それで、どうするんだ?10万Gを払うならここは見逃してやるぞ」

「10万か、ちょっと相談させてくれ」

「おう、3分だけ待ってやるよ」


そう言いながら少し下がる盗賊たち。

意外と紳士なんだな。盗賊のくせに。

ならこっちも相談と行くか。


「どうしようか。これ絶対戦っても勝てないよな」

(戦うのと逃げるのとどっちがいい?)


後ろの盗賊たちにも聞こえる声量で話しつつ、チャットを送る。


「そうね。10万G払うしかないかな」

(正面から戦って勝てる?林の中に隠れてる人とかも居そうよね)


「でも私、手持ちが10万G無いです」

(ここは、って事は見逃した後また同じような待ち伏せをしてる可能性ありますよね)


「なら今日の所は諦めて帰るか」

(これは対策を練って出直すべきだな。問題は無事に帰してくれるか、だけど。

 よし、合図したらわき目も振らずに逃げてくれ。フリーエリアまで行ければ助かるし)


「そうね」

(分かったわ)


「残念ですけど」

(後ろに待ち伏せって可能性もありますから気を付けていきましょう)


「おーい、もう良いか?」


痺れを切らせたのか盗賊たちが声を掛けてきた。

おいおい、まだ2分も経ってないぞ。まぁいいけど。


「ああ待たせたな」

「それで、どうするんだ?」

「待たせておいて悪いんだけど、手持ちが足りなかったから出直すわ」

「そうか……だけど、はいそうですかと帰す必要はないよな」


そう言って剣を抜く盗賊たち。

まぁそうなるよな。

でも突然襲い掛かってこないところを見るとこっちを侮ってるのか。

俺達も武器を構える。


「仕方ない。やるぞみん「ちょぉっと待ったあぁ~~」!?」


突然後ろから声が掛かる。

それを聞いた男たちの視線が一瞬俺達から離れた。


(いまだ、走れ)


バッと後ろに振り返りながら駆け出す俺達。

その行く先に居たのは港で声を掛けてきた4人組だ。


「おいおい、ちょっと待てよ」

「気にしないで」

「「はいっ!」」


4人組が止まる様に言ってきたけど、無視だ。

このタイミングで声を掛けてきたってのは怪しすぎるし、どっちに転んでも厄介ごとしか待ってない気がする。


「ちょ、ま、どわっ」

「きゃっ」


ちっ。

故意か偶然か避けようとしたレイナと男がぶつかってしまった。

リースだけは何とか向こう側に抜けられたけど俺とレイナはダメだな。


「カイリ君!!」

「いい。そのまま行け」

「う、うん」

(そのまま迂回して奴らの背後に潜んでくれ)

(分かったわ!)


走り去るリースを見送りながらレイナに駆け寄り助け起こす。


「大丈夫?」

「はい。でもすみません。足引っ張っちゃいました」

「気にしないで」

(こうなったら反撃するしかないかもしれないから覚悟して)

(分かりました。みすみすやられたりはしません)


やっぱりレイナはここぞというときに芯の強さが出るな。

ただのユリの花のお嬢様だったら、こうはいかないだろう。

後の問題はこの4人組が敵か味方か、だな。


「いやぁ済まない。襲われるなんて初めての体験だったからちょっと動転してたんだ」

「いやいや。気持ちは分かるから気にしなくていい。それより逃げられなくなっちまったな」


そう言って剣を構える4人組。

それを見て慌てた様子を見せる盗賊たち。


「けっ。最近盗賊プレイをする奴が増えたって聞いてたが早速出会えるとはな。

お前たちみたいな性根の腐った奴らは俺達が退治してやるぜ」

「う、うるせぇ。いい子ぶりやがって。お前たちも纏めてぶっ殺してやるよ!」


その言葉を合図に始まる盗賊たちと4人組の戦い。

俺達は加勢するでもなく、巻き込まれないように少しだけ下がっておいた。


戦いは一方的だった。

1期組と2期組の差くらい4人組の方が強く、人数的に少なかったのにスキルを使って盗賊たちを吹き飛ばしていく。

そして3分と掛からず決着。


「くそっ。覚えてやがれ!」

「ちっ。待ちやがれ!」


捨て台詞と共に逃げ出す盗賊たち。

4人組も深追いはしないようだ。

盗賊たちが視界から消えてからこちらを振り返った。


「怪我はないか?」

「はい、大丈夫です」

「それは良かった。もしかしたらあいつらが仲間を連れて戻ってくるかもしれない。

だから今度こそ一緒に行こうじゃないか」

「そう、ですね。よろしくお願いします」


流石にこれで断る訳にはいかないか。

仕方ないな。


「ところで、逃げて行った1人もまだ近くに居るなら呼んであげても良いんじゃないか?」

「それなんですが、逃げる途中で魔物に襲われて死に戻ったみたいです」

「そうなのかい。それはまた災難だったね」

「ほんとに」


実際には逃げた盗賊たちの後をこっそりつけて行ってもらってるけど。

警戒のし過ぎかな。実はこの4人は本当に良い人かもしれない。

でもさっきの戦いぶりを見るとな。うーん。


後書き日記 レイナ編


21xx年6月1日


今日から6月になりました。

5月はとても充実していたのですが、気が付けばあっという間でした。

振り返ればゲームばかりしていた気がします。

先日の中間考査は何とか成績を落とさずに済みましたが、気を付けなければいけませんね。


まぁそれはともかく。

今日も元気にアルフロにログインした私。

最近すっかりお馴染みになったクランメンバーとの会話がひそかな楽しみです。

なにせ普段、他校の人と話す機会なんて無いですし、ウィッカさんに居たっては大学生とのこと。

こういう普通なら接点がない人と気軽に話せるのがゲームの良いところですよね。

それに皆さん、私が作った服を着て喜んでくれるんです。

作る工程も楽しいですけど、実際に着てもらえる姿が見られるのはとても嬉しいです。


そして今日は偶然が重なってわたしとカイリさんとリースさんの3人で冒険に出ることになりました。

目標は獣人族の本島から2つ先の島に生息しているという牛です。

そこに向かうには3つルートがあるのですが、うち2つはちょっと遠回り。

残り1つは近道ですがバトルエリアを抜ける必要があるので、ちょっと危険ですけど、早々襲われることなんてないですよね?


と、気楽に考えていた私は馬鹿ですね。

盗賊による関所。そう言えばネットでもそういう話が挙がってました。

5対3。しかも向こうは対人戦に慣れた戦闘職。

真面にやりあったら勝ち目は無いので逃げることにしたのに、後ろに居た人にぶつかってしまいました。

そのせいでわたしだけじゃなく、カイリさんまで逃げ損ねてしまいました。


幸い後ろに居た人たちが私たちの代わりに盗賊と戦ってくれていますが、なんでしょう。

まるで出来の悪い劇を見ているかのようです。

動きがところどころぎこちないですし。

ほら今、外れたはずのスキルで盗賊が吹き飛んだというか、自分から後ろに飛びました。

演じるならもっと練習してきてください。

ほらまたっ!!


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― 新着の感想 ―
[一言] 指名手配されてるのにカイリ君って名前で呼ぶからすぐにバレそうだよね〜
[一言] グダクダやんけ
[良い点] 更新乙い [一言] まぁ、ユーザ間のアイテムのやり取りに、運営が関与しないのはあるのかなぁと思わなくもないところですね。 課金アイテム等の要素がある場合、PKからのデスペナ等でのインベント…
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