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おのぼりさん

転送門を抜けた俺達を迎えたのは、ファンタジーにありがちな城塞都市だった。

ただ、ラムラリアの村とは人口が段違いだ。

道行く人を眺めると、獣人のプレイヤーが6割、現地の人達が4割ってところだな。


「首都はやっぱり活気があるなぁ」

「そうですね。でもこれでも大分落ち着いたんですよ?」

「そうなのか?」

「はい。私がスタートしたときはもっとプレイヤーが多くいました。

今は、次の島に渡る人が増えた影響でここを含め本島に残っている人は全体の半分程度らしいです」


なるほど、そういうものか。

それでも俺には物凄く人が多く見える。

休日の商店街って感じだからな。


「これ街を周ろうと思ったら1日じゃ足りないな」

「私も最初のチュートリアルで案内された場所以外は服飾系のお店しか知らないです」

「それなら今度みんなで散策するのも良いかもな」


俺がそう言うと、ふたりが振り返って俺をじっと見た。


「みんなで、ですか?」

「ん?ダメだったか?」

「いえ。カイリさんらしいなって思っただけです。ね、リースさん」

「そうね。カイリ君らしいといえばらしいし、良いんじゃない?」

「ですね。ちょっともやっとしますが、下心が無いって事でしょうから」

「??」


よく分からない内にふたりの中で納得されてしまった。

何だったんだろう。

まぁいっか。


「ところで、チュートリアルなんてあったのか?」

「普通あるんじゃないですか?」

「いや、俺普通のスタートじゃなかったから」

「あ・・・そうでしたね。ということは冒険者登録とかも?」

「してないぞ」


やっぱこういうゲームだと冒険者ギルドとかあるんだな。

ということはやっぱりお約束も健在なんだろうか。


「冒険者登録はしておいた方が良いのか?」

「はい。身分証代わりになりますし、魔物を討伐したら報酬も貰えますし取っておいて損はないですね」

「他にも各種クエストを請けるにもギルド経由でって事がおおいかな」

「なるほど。じゃあ先に冒険者ギルドに寄っても良いか?」

「ええ、もちろん」

「行きましょう。こっちですよ」


レイナさんの案内で街の大通りを歩いていく。

道の両サイドには商店が並び、武器や防具、各種雑貨などが売られている。

時々呼び込みの掛け声も聞こえてきて実ににぎやかだ。


「いやぁ、凄いな」

「ふふっ。カイリ君完全におのぼりさんになってるよ」

「ほんとですね。よそ見して迷子にならないでくださいね」

「ああ」


生返事を返しつつ、店頭のショーケースを覗き込む。

その中でも特に俺の目を引いたのは『はじまりの武器屋』だった。

そこは名前の通り扱っている武器がすべて『はじまりの~~』と付くものだ。

俺が持っているのは、鍬、鎌、銛、長斧だけだ。

前にみんなからもっと真面な攻撃力のある武器を持てばいいのにって言われたことがあるけど、俺的には『不懐』が付いているだけでかなり重宝してる。

出来ればハンマーとかツルハシとかも欲しいよなぁ。


「……くん」

「ん?」

「カイリ君!」

「おっと」


声の方を振り向けば先に進んでいたリース達があきれ顔で俺を見ていた。


「言ってるそばからはぐれないでほしいんだけど」

「いやぁ、ごめんごめん。ちょっと気になるお店があったからさ」

「それ、迷子の常套句だよ」

「間違いないですね。

それで、『はじまりの武器屋』ですか。

カイリさんらしいというか。……寄っていきます?」

「いや、また今度来るよ。今は先に冒険者ギルドに行こう」


店の奥で頬杖を付いていたお爺さんに目礼をして、みんなの後を追った。

そしてついにやってきました、冒険者ギルド。

ウェスタン風のスイングドアを開けて中に入れば併設されてる酒場で管を巻いていた奴らが一斉にこちらを見る……なんてことは無く、そのままカウンターへと行くことが出来た。

ちょっと拍子抜けだけどそんなもんか。


「すみません、冒険者登録をしたいのですが」

「いらっしゃいませ。新規登録ですね。少々お待ちください」

ガタッ


ん?なんだ?

今一瞬、視線が集まった気がするけど。

まぁいっか。気にせず登録を進めよう。


「お待たせしました。こちらが冒険者証になります」

「あれ、サインとかは?」

「カイリ様は既に戸籍バンクに登録されていましたので、不要です」


戸籍バンク……ログイン情報ってことか。

なら偽名で登録とかは出来ないんだな。


「冒険者の説明は必要ですか?」

「いえ、友人を待たせてますので」

「分かりました。では詳細については後程ご自身で資料を確認してください。

最低限、他人に迷惑を掛けたり犯罪行為を行わなければ問題ありませんので」

「分かりました。ところで、これから2つ先の島に行って牛を探しに行こうと思っているんですが、何か情報はありますか?」


俺がそう聞くと受付のお姉さんの目が点になった。

あれ?また何か変なことを言ったのか?


「あの、何か見当外れなこと言いました?」

「あ、いえ。確かに2つ先の島にマーダーブルとマーダーカウが居るという情報は手に入っています。

が、登録したてのカイリ様では勝てる相手ではないと思いますよ」


そりゃそうか。

2つ先って言ったら最前線とまで行かなくても攻略組が向かうような場所だろうからな。

でもま、倒すのが主目的じゃないし大丈夫だろう。


「それなら今日の所は様子見程度に抑えておきます」

「無理はなさらないでくださいね」

「ちなみにその牛って従魔に出来るでしょうか?」

「じゅ、従魔、ですか。申し訳ございません。聞いたことはありませんが不可能ではないかと。

ただ獰猛な魔物ほど従魔にはなりにくく力を示す必要がありますので。はい」


なるほど、ボスは強くないといけないって事だな。

それは確かに戦闘職じゃないと厳しいか。でもま、ダメで元々、やってみるか。





後書き日記(続き)


さて、久しぶりに3人で出掛ける事にした私達。

移動する前にちらっとレイナさんと個人チャットで会話。

ですよね。

折角ですから真っすぐ島に渡るのではなく、首都にも行きましょう。

そうして3人で転送門を抜けるとそこは獣人族の首都。

ちなみに先日みんなで各国の首都には行けるようにしましたが、その時は転移門の登録だけで帰ってきましたから、カイリ君にとっては初めての首都観光って事になるんでしょう。


予想通りあっちこっちに目が行くのは完全におのぼりさんで、レイナさんと一緒に笑ってしまいました。

そんなカイリ君が一番に目を付けたのは『はじまりの武器屋』さん。

カイリ君ってなぜかしらはじまりシリーズを愛用してるんですよね。

お金ならマーケットに野菜や魚を卸してるから結構あるはずなのに。

前に聞いたら「『不壊』以上に凄い効果は無いと思う」って言ってました。

まぁ確かに。

一般に知られている装備の中にはスキルが付いてるものもありますが『不壊』が付いた装備はまだありません。

将来的に『ユニーク装備』とか『伝説の~~』くらいになって初めて付くんじゃないでしょうか。


……あれ?

そう考えるとはじまりシリーズって凄い?

うーんでも、攻撃力は最低値で他の効果も付いてないですからね。

今のままじゃ使えません。

でもま、カイリ君がまた来たそうにしているので、後日時間があるときに改めて来ることにしましょう。


そうして次に向かった先は冒険者ギルド。

通常ならゲーム開始したその日に登録は済ませてしまうので、2期組でも1か月以上経った今になって登録に来たという事でちょっと注目を集めてます。

あ、でもカイリ君はレイナさんの作った服を着てるから新人には見えないかな?

どうなんでしょう。

ただ冒険者ギルドにありがちな絡まれイベントは発生しませんでした。

まぁ当然ですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 絡まれイベントなんて毎回あったらたいへんだもんね
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