ランキング発表
タイトル回収して満足してたらストックが切れましたw
6月1日。
学校に着いた俺を迎えたのは、珍しく元気のない陽介だった。
「おはよ。元気ないな。どうかしたのか?」
「ん、ああ。体調は悪くないんだけどな」
「もしかして『アルフロ』関連か?」
「そうなんだよ」
はぁ~~とため息をつく陽介。
これは重症だな。
「俺で良かったら聞くけど?」
「ああ。昨日ランキングが発表されたのは海里も知ってるよな?」
「らしいな。まだ内容見てないけど」
「見ろ。それですべてが分かるから」
「お、おぉ」
ランキングと陽介の様子から大体想像はついたけど、妙な迫力に押されてスマホを取り出して公式サイトを開いた。
『第3回ランキング発表!!』
これだな。
えっと、なになに?
種族別、クラン別それぞれのランキングが発表されてるのか。
今回が第3回。その前は2月と3月に行われている。4月は2期組やGWと被ったから発表されなかったらしい。
そして気になる結果だが、種族別で言うと現在トップは『人間』か。
評価は複数の項目に分かれてるけど、どれも平均して高い。
逆に他の種族は1、2項目だけ突出してるな。
協調性が高いと言えば聞こえは良いけど、無個性と言ったらそれまでだな。
続いてクラン別ランキング。
『全総合1位:太陽の騎士団
攻略総合1位:太陽の騎士団』
「って、なんだ。てっきり陽介のクランのランキングが低いかと思ったら、ちゃんと総合1位じゃん」
「総合はな。俺達としては攻略系の全部門トップを狙ってたんだよ」
「それはまた凄いな。でも、その様子だと何かがトップになれなかったって事か」
えっと……これか。
『攻略深度ランキング:
1位:ホーリーグレイル
2位:大海賊王
3位:太陽の騎士団
……』
『占有率ランキング:
1位:ホーリーグレイル
2位:太陽の騎士団
3位:コロンビア旅団
……』
「……ホーリーグレイル、ね」
「そう、それ。そんなクラン初めて聞いたぞ。
他の『大海賊王』とかは前から有名な攻略クランだから負けたのはまだ分かるけどさ。
まさかそんなぽっと出のクランに負けるとかあり得ないだろ」
「ま、まあまあ。超えるべき相手が多く居て良かったって考えれば良いんじゃないか?」
「ん~まぁそうだけどさ」
「それにほら。クランになったのが最近なだけで、元々隠れトッププレイヤーが合流したって可能性もある訳だし」
「うーん」
まだ納得はし切れてない様子の陽介。
それを横目に他のランキングも確認していくと、まだホーリーグレイルの名前が見つかった。
『
生産総合ランキング:67位
食品売上ランキング:13位
農地面積ランキング:2位
』
ランキング高いのもあるけど総合はそれほどでもないな。
まぁ生産部門は数が多いから仕方ないと言えばそれまでか。
「よし、決めた!」
俺がランキングを見ている間に陽介の中で結論が出たらしい。
暗かった顔もすっきりとしている。
「6月中にこの『ホーリーグレイル』に勝つ!!
特にトップ攻略クランとしては攻略深度で負けっぱなしで居る訳にはいかないからな」
「お、おぉ。頑張れ」
気合を入れた陽介に俺は何とかエールを送るのだった。
「ただいま~」
「あ、お帰りなさい」
アルフロにログインして地上の拠点に顔を出すと、レイナさんしかいなかった。
「レイナさんだけ?他の皆は?」
「今日はまだ来てないですね。あ、そう言ってる間にログインしてきたみたいですよ」
クランリストを見ればグレー表示だった皆の名前が続々とログイン中の緑表示に変わっていった。
そして転送門から拠点へと戻ってきた。
「ただいま~」
「おかえり」
「ねぇねぇ、ランキング見た?」
拠点に来るなり賑やかなリース。
初めて会った頃と比べても明るくなったというか遠慮が無くなったというか。
多分こっちが彼女の本来の姿なんだろうな。
っと、それは良いとして。
「ランキングか。ちらっとは見てきたぞ」
「私も生産系はチェックしました。
すみません。私の得意分野の服飾系は50位以内にも入ってませんでした。
多分これのせいで生産系全体のランキングを下げてしまってますよね」
「いやいや服飾は評価が売り上げと防御力だったから仕方ないよ。それにこっちは個人、他は多人数なんだから」
「そうそう。レイナさんは一般販売とかほとんどしてなかったし仕方ないよ」
「可愛さランキングとか、ファッションショーとかあれば良い線行ったと思うわよ」
「私たちのクラン、鉱業系建設系は皆無ですから総合ランキングが低いのはそっちのせいですよ」
シュンとするレイナさんをみんなで励ます。
実際問題、俺達の装備はサクラさん達の金属鎧以外ほとんどがレイナさんのお手製だ。
それはクランメンバーのだから仕方なく着ているって訳じゃなく、防御力以外の面が優れているからだ。
「俺は魔力量がそんなに多くないから『魔力自然回復量アップ(小)』が付いてるのが有難いし」
「私も『隠密アップ(小)』のお陰で採集が楽になったわ」
「インナーでこれだけスキルが付くって言うだけで凄いですよ」
「そうそう」
「はい、皆さんありがとうございます」
「「ほっ」」
ようやく笑顔になったレイナさんに安堵する俺達。
この隙に話を一度変えておくかな。
「みんな集まったし話は食べながらにしようか」
「そうね」
「今日は何かしらね~」
「よっ、待ってました」
「最近はリースさんの料理が一番の楽しみですからね」
「それは言い過ぎじゃない?
はい、どうぞ」
リースがアイテムボックスから料理の入った大鍋を取り出して広場の真ん中に置く。
同時に俺達も自分用のどんぶりを取り出しつつ鍋を囲むように座った。
「今日の料理は何?」
「海芋のポタージュよ。熱いから気を付けてね」
蓋を開けスープがどんぶりに注がれると、途端に辺りにジャガイモ特有の甘い匂いが広がる。
そうして全員に料理が行き渡ったところでみんなで食べ始める。
ここをクランの拠点にしてから、ほぼ毎日見る光景だ。
屋外で大自然の中だし、気分はキャンプだな。
こうして美味しいごはんをみんなで食べる。なかなかに贅沢だよな。
後書き日記
21xx年5月31日
GW明けの大型アップデートから最初の月末。
今日はランキング発表があります。
とは言っても個人ランキングは発表されず、種族単位、クラン単位のみだそうです。
私のクランは現在6人。
1クランの最大人数が50人なので、大手クランの1/8しか居ません。
なので今回ランキングに乗ることも無いだろうと思っています。
でももしかしたらと思うのが人の心情っていうものなんでしょう。
発表される時間が近づくにつれ、緊張してきました。
……時間です!
無事に公式サイトにランキングが発表されました。
部門別に分かれているのでまず見るのは生産系食品部門。
えっと……あっ!
ありました。売上ランキングで50位以内に入ってました。
これは私の料理の他に、ウィッカさんのお酒も含まれているのでしょう。
それでもたった2人でしかも2期組の私達がランクインしたのは快挙ですね!!
ただこのランキング、評価される部分が限定されてますね。
例えば料理は売上もですが、味の評価があっても良いと思います。
もちろん美味しい事が売り上げに貢献しているとは認めますが、料理人としては味の方が気になるところ。
あ、であればいつか料理の大会とかコンテストを開くのも楽しそうですね。
当然私一人ではそんな大掛かりな事は出来ないので、フラフさんを始め、それぞれのクランの人達を巻き込めば出来そうな気がします。
今はみんな新コンテンツに殺到してしまっていますから、それがある程度落ち着いてからですね。
それまでにもっと料理の腕をあげておきましょう。




