陸の上の遺跡
名前が違うと思った方。誤字じゃないのでご安心ください。
さて、改めて周囲を見回すと島を2分するように作られた亀裂の周囲はむき出しの土が見えるが、少し離れれば背の高い草が生い茂り更に離れると熱帯雨林を思わせる森が広がっている。
後は草に埋もれてしまっている遺跡。
上物はほとんど残っていないけど、石で出来た土台や基礎部分は残っているようだ。
規模から考えれば村があったんだろう。
ふむ、村か。
「……もしかして」
俺は一つの可能性に気づいてダンデに連絡を取った。
『ん?あーそうだな。大体カイリの想像通りだと思うぞ。
こっちのを写真で送るから参考にすると良いよ』
送られてきた写真を見れば、街はずれの広場の真ん中に円形の石の踊り場があり、中央に1メートル程度の柱。
俺は遺跡の中を歩きながら写真と同じような場所がないか探して行った。
基礎の大きさから考えて、ここが村長宅。
そこから円状に主要な建物が並んでるから、あるとしたら村長宅の正面、円の外側が怪しいな。
「これ、かな」
ほとんど草に埋もれてしまっているけど、形状は写真のものと似ている気がする。
なのでまずは草むしりをして石の台がくっきりと見えるようにする。
やっぱり形はそれっぽいな。
ただ中央にあった柱が半ばから折れてしまっている。
これじゃダメかもしれないなと思いつつ柱に触れてみるとシステムメッセージが出てきた。
<この転送門は破損しています。アイテムを使い修復を行いますか?
修復値:0/10000>
よし!
村があるなら転移門もあるかもしれないって思ったけど当たりだったみたいだ。
ただ見た目通り壊れてるらしいけど。
農家にこれの修理は荷が重すぎると思うんだけど、どうすればいいんだろう。
メッセージを見る限りアイテムを使えば勝手に修理してくれるのか?
えっと、使えるアイテムは……結構なんでも使えるな。
特に農産物も選べるのがありがたい。
試しに使い道の決まってない『海スギナ』を全部台座の上に置いてみた。
するとキラキラとエフェクトが出た後『海スギナ』が消えていった。
<転送門の修理を行いました。修復値:2664/10000>
あ、意外と修復値が溜まりやすい。
数値的に考えて、レア度x品質xアイテム数(x特効値?)かな。
多分石材とかだともっと効果的な気もするけど、持ち合わせが無いし無理だな。
農産物で行けるなら、もう何回かやれば修復できるだろう。
これは早めにリース達にも伝えておかないとな。
『リース、今話せる?』
『あ、うん。大丈夫よ』
『例のクランの件だけど、転移門が見つかったから近いうちに合流できるかもしれない』
『本当!?良かった~』
『ただ見つかった転移門が壊れてて直さないといけないから来週くらいまで待ってほしい』
『分かったわ。あ、でも転移門って1度行った事のある場所じゃないと飛べないんだけど大丈夫?』
『あ、言われてみればそうか。なら先日のイベント島で合流するとかどうだろう』
『それが良さそうね。じゃあ修理のめどが立ったら教えてね』
『ああ、ありがとう』
その後、レイナさんにウィッカさん、サクラさん達にも同様に連絡をとっておいた。
これで来週くらいにはみんなとも合流できるだろう。
無理して手持ちの残りのアイテムも使えば、すぐに直せないこともないけど、無理はダメだな。
とすると、今出来るのは島の探索とつる植物の採集&断崖への植え付けだな。
ただ気になるのはこの島に動物も魔物も居ない事だ。
多くの小島が存在するこの世界なら大型の動物が居ない島があっても不思議じゃない。
でも魔物は居る気がするんだよな。
あいつらがどういう理屈で存在しているかは別として、そこはゲーム的にどこからともなく沸いてきそうなものだ。
ひとまず慎重に森の傍まで移動してみる。
森の奥を窺うも、静かな森が広がっているのみだ。
「心配のし過ぎか?」
いや。今日のところは安全最優先で行こう。
俺は森の中まで入らず、森の入口でつる植物の採集を進めることにした。
俺の場合つるじゃなくて植物そのものが欲しいので土を掘って根ごと回収しては崖の所に持って行って植えなおす。
「でも俺の一存で勝手に移動させるのはこの植物に申し訳ないか。
せめてちゃんと耕した地面に植えてあげような」
流石に崖ギリギリを耕すのは怖いので2メートル離れた場所を崖と並行に耕し、肥料を撒いていく。
その上で植えれば、すぐに枯れてしまったりはしないと期待したい。
後はつるを崖に沿うように垂らしておけばいい感じに岩壁に張り付いて落石を防いでくれるだろう。
「勝手にごめんな。でも崖が崩れないようにつるを這わしてくれると嬉しいんだけど頼めるかな」
もちろん返事なんてないけど、色々と声を掛けながら植えていく。
そうして森と崖を20往復もすれば農場の真上分くらいは移植できた。
「これで当分の間は大丈夫……って対岸があったな!」
これでまだ半分か。
仕方ない。あっちはまた明日だな。
後書き日記
21xx年5月17日
最近、ひとつ困ったことがあります。
それはカイリさんからどんどん食材が送られてくることです。
もちろん独占する気はないので多すぎる分には他の人にも売る様に伝えているのですが、それでも私の使う量より送られてくる方が断然多いです。
幸い作った料理はレイナさんやウィッカさん、サクラさん達に喜んでもらってますし、一部は売りに出したりもしていますので無駄になるという事は無いのですが。
そうして一般に販売すると今度は私の料理が飛ぶように売れていきます。
私としてはまだ味は60点くらいですし、お店出している人の方が美味しいのですが。
昨日試しにアンケートを情報提供サイトに乗せてみたところ結構な反響がありました。
その中で幾つかピックアップすると、
・特別美味しい訳じゃないけど、ほっとする。
・素材の旨味が生きてる。
・家庭の味
・製作者は主婦ですね
・うちの嫁に教えてほしい
・むしろ嫁に来てくれ
……後半のは何でしょうね。
そりゃ参考にしたレシピ本は『お母さんの愛情料理50選』ですが、わたしまだ学生なんですけど。
他にも「バフ効果が他より高い&長持ちする」というのもありました。
気になって他に売り出されている料理を確認してみたところ私の料理は効果が2割増しでした。
確かに、それなら売れるのも納得です。
でもそれってほとんどカイリ君の提供してくれた素材のお陰のような気がします。
それはそれでちょっと悔しいですね。
せめて他からも集めた素材を使って評価されてみたいです。
そうすると牛乳を始めとした酪農系食材と魔物の肉、あとはハーブ類ですね。
うーん……あっ。
シチューとか良いかもしれません。
パンに浸けて食べるのも美味しいでしょうし。
ちょっとチャレンジしてみましょう。




