まずは自分で作ってみる
ゲームタイトルの略称が『アサフロ』と『アルフロ』で混在していましたが、『アルフロ』で統一します。
「朝風呂?」とつっこみがあった訳じゃないですが。
昼休み。
俺は弁当箱を前に鼻歌を口ずさんでいた。
そこへ菓子パンを持って陽介がやってきた。
「おっ、なんかご機嫌だな」
「分かるか?」
「いや分からん方がおかしいだろ。鼻歌まで歌って。
っておま、まさか彼女が出来たのか!!」
「ん?」
「あれ、違うのか? だってその弁当、彼女が作ってくれたんだろ?」
そう言って俺の弁当箱を指さす。
まぁ確かに、これまでパンか学食のどっちかだったのに急に弁当箱を広げてたら、勘違いされるのも当たり前だな。
だけど残念。
「これは俺が作ってきたんだ」
「……は?なんで急に」
「いや、俺今、畑耕してるだろ?
それなのに野菜の事とか今まで意識したことなかったしさ。
こうして料理したりすれば多少なりとも食材の知識とか付くかなって思って」
「そんな理由で自炊始める奴、俺初めて聞いたわ」
だろうな。
俺自身、まさか自分が料理するなんて思いもよらなかったからな。
「それで、何作ったんだ?」
「えっと、肉野菜炒め?」
「なんでそこで疑問形なんだよ」
「いやだってなぁ」
ぱかっと弁当箱の蓋を開くと、弁当箱の半分をご飯、残りがおかずになっている。
おかずの色は意外とカラフルだ。
赤、緑、黄色(茶色)。
「えっと、ニンジンとピーマンと、あとは……」
「シイタケとほうれん草と玉ねぎと小松菜、あと豚肉が入ってる」
「すげぇな」
「まぁ、正直色々頑張った」
どの食材も火が通りやすく一口サイズに切り分けられている。
以前母さんから教えられた料理のコツは、出来もしないアレンジをするな、だ。
だから味付けはシンプルに塩コショウ+締めに醤油をひとかけ。
問題があるとすれば分量を間違えてフライパンいっぱいに出来てしまったことくらいだ。
今日の夕飯もこれの残り+味噌汁でほぼ確定だ。
そしてそんなおかずを見て陽介も納得したようだ。
「確かに料理名が何かって言われたら『肉野菜炒め』としか表現のしようがないな」
「だよな。ただ、こう見えて普通に旨いんだぞ」
「そうなのか?なら一口くれよ」
「おう、いいぜ。 感想よろしくな」
陽介が差し出したサンドイッチの上に野菜炒めを載せてやる。
それを口に含みじっくりと咀嚼する陽介。
「じー……」
「……うん」
「どうだ?」
「悪くないな。うん。
意外とっていうと失礼だけど、普通に旨い。
シンプルに野菜の旨味って感じだな」
「ほっ」
よかった。
なんだかんだで他人に食わせるのは初めてだったからな。
良い評価がもらえて安心した。
「で?」
「ん?」
「畑は順調なのか?」
「おうよ。聞かれるかと思って、写真も撮ってきた」
スマホを操作してVR機器から転送した画像を表示する。
それを見た陽介は何とも言えない顔をしていた。
「これは……なんだ?」
「なんだろうな。俺にもよく分からん」
「おいっ」
いや仕方ないだろ。
これでも一応ククッたりして調べたんだぞ?
でも似た植物は見つかったけど、ドンピシャなのは無かったんだ。
「ただ強いて言えば、にんじんっぽい野菜とか、ほうれん草っぽい野菜だな」
「……海の中だよな?」
「ああ。こっちのはなんとキノコだ」
「普通の海草っぽいのはないのか?」
「一応そういうのもあるけどな。ほら、こっちのはテングサっぽい何かだ」
「ワカメとか昆布とかじゃないのか。なんでそこなんだよ」
「さぁな」
もしかしたら「てんてんてんっ♪」って口ずさんでた歌の影響かもしれないけど、本当のところは謎だ。
一番重要なのは、順調に沢山の植物が育ってきているところだ。
「早いのはもうすぐ収穫できるから、収穫出来たらそっちに送るな」
「おう、ありがとな。
とは言っても俺は料理しないから、誰か料理好きな奴に渡しても良いか?」
「ああ。食材もその方が嬉しいだろうしな」
俺の畑で出来た作物がどんな料理になるのか今から楽しみだな。
後書き日記(続き)
……大丈夫ではありませんでした。
程なくして狼5匹に遭遇。
お前はじっとしてろと言われたので、大人しく様子見をすることにしたのですが、あの、なぜ魔導士のあなたまで私の前に?
私を庇う、というよりもいいところを見せようとしたのでしょうね。
苦戦しつつもなんとか3匹目を倒したところで遂に魔導士の足に狼が噛み付き、その悲鳴を聞いて後ろを振り返った戦士の肩口にももう1匹の狼が襲い掛かりました。
その後何とか狼の撃退には成功したものの2人は重傷を負ってしまいました。
急いで治療に向かった私に戦士が一言。
「さっさと助けに来いよ。これだから生産職はクズなんだ」
その言葉につい反論してしまいました。じっとしていろと言ったのは貴方でしょうと。
戦士はさらに逆上して、聞くに堪えない罵詈雑言を並べたてました。
終いには「お前一人じゃここから生きて帰ることも出来ないんだから俺達に従ってれば良いんだ!」と言われたので、もう良いかなと思った私は「ならパーティーは解散しましょう」と言ってあっさりパーティーを離脱。
そのまま「ではお元気で」とその場を去りました。
後ろから何か騒いでましたが無視です。あれだけ元気なら自力で帰れるでしょうしね。