農地改革のための第1歩
さて、やりたいことが沢山ある場合、まずはその「沢山」がどれくらいなのか書き出してみるのが良いだろう。
そんな訳でザザッと書き出したらこんな感じになった。
・農地拡大
・畑面積の拡大
・果樹の追加
・家畜の飼育
・肥料問題
・農地管理者の増加
・耕す人
・収穫する人
・養殖する人
・羊飼い的な人(家畜が羊とは限らないので)
・防衛施設の拡充
・防衛陣地
・塀や柵……水中だから網とか
・罠
・警備隊
・福利厚生
・俺が居ない間も皆が退屈しない仕組み
・衣食住
・病院というかヒーラー的存在
まだまだ他にもある気がするけど、パッと出てきたのはこんなところか。
やっぱり多いな。
これ全部をすぐにって訳にも行かないので、優先順位を付けていこう。
「農地拡大」……やりたいことという意味では1番だ。
まだ植えてない種もあるし、もっとゲームならではの植物なんかも育ててみたい。
でもなぁ。
緊急性という意味では後回しだ。残念。
やっぱ基盤をしっかり作らないと、例えば病気1つ、災害1つ、害獣1体で全部がダメになってしまうかもしれない。
流石にそうなったら、また1からやり直そうと思えるかって言われたら厳しいだろう。
例えば今更ヤドリン達が全員居なくなったらとか想像するだけで恐ろしい。
なのでこれは後回しだ。
そういう意味では「農地管理者の増加」も優先順位は低いかな。
農地も無いのに管理者だけ増えても意味が無いし。
こうして考えていくと最優先は安全性の確保だな。
ここを脅かす危険と言ったら、ヤドリン達が対処できない程強い魔物?
でも多分上を見ればキリが無い話だよな。
だからそういう危険なやつらが近づきたくなくなる仕組みが必要か。
うーん、やっぱり網。それも有刺鉄線みたいに触りたくないものが欲しいな。
そんなものがどこにあるんだって話だけど、こういう時はうちの知恵袋に聞くのが良いか。
「という訳でコウくん。そういうのに心当たりはないかな?」
「ぴぃ……」
俺の無理難題にグルグルと泳ぎながら考えるコウくん。
流石のコウくんでも無理かなと思い始めた頃、コウくんの頭がピカッと光った。
「ぴぃ。ぴっ」
どうやら心当たりが見つかったらしい。
でも相当危険が伴うからお勧めはしない、か。
逆に言えばコウくんですら危険だって言うくらいの方が効果が期待できるだろう。
最悪俺は死に戻れば良いんだし、試してみる価値はあると思う。
コウくんに案内をお願いすると、渋々了承してくれた。
ただ何度も「無理だと思ったら帰りましょう」って念を押されたけど。
そうして俺はコウくんと共に竜宮農場を出発した。
泳ぐこと1時間。
遂に海溝も終わりを告げ、右を向いても左を向いても海だけが無限に広がっていた。
後ろを振り返れば、巨大な壁があり、そこに一筋の亀裂が出来ている。
さっきまでそこに居たかと思うと、改めて海の広さを思い知るな。
ここからが冒険の始まりだ、と一瞬ワクワクした俺だったけど、すぐにその考えが甘かったことを痛感させられた。
「ぐおぉぉぉ~~!!! むむむむりじゃない、むりじゃない」
海流がまるで台風か竜巻かって勢いで俺達を襲う。
何とか海底の岩にへばりついてるけど、手を離せばあっという間に遥か彼方まで流されてしまいそうだ。
「ぴぃ……」
コウくんも岩陰に隠れながら俺を心配そうに見ている。
ただ俺と違ってまだまだ余裕がありそうだ。
って、そうか。
コウくん達は元々海溝の外から来たんだから、この海流も慣れたものか。
あれ? 他に増えてた魚たちもこの激流の中を泳いで来たのか?
……違うみたい。
どうやら海溝の反対側は穏やからしい。
つまりここは高難易度エリアってことか。
「くっ。良いだろう。『水に挑むもの』なんてご大層な称号を貰ったんだ。
海流くらい打ち勝ってみせ、る?」
ゴォォォォーー!!
……コウくん、今巨大な何かが通り過ぎたんだけど、なに?クジラ?
俺くらいなら一飲みにされそうだったけど。
あれがここの普通サイズ、なんだ。そっかそっか。
戦うのは絶対無理だな。
頑張って狙われないようにこっそり進もう。
そこからは海底にへばりつく様に移動して、何かが近づいて来たら岩陰に隠れてやり過ごすのを繰り返した。
それにしても世界は広いな。
イカリヤが子供に見えるくらい大きなイカが泳いでたり、全長1メートルの小魚(?)が群体となって泳いでたり、もう魚でも何でもない魔物に見つかったと思ったら通りすがりのサメに食われてたり。
人間がいかにちっぽけな存在かが良く分かる。
この間、コウくんは頭の灯りをいつもとは違う暗紫色にしていた。
それのお陰で見つかりにくくなっているようだ。
そうじゃなかったら、最初の10分で見つかって食べられてたことだろう。
そうして何時間経っただろうか。
俺達は何とか目的地へとたどり着いた。
後書き日記(続き)
生産施設を使うのは後にして新スキルの確認を先にしましょう。
森へとやってきた私は早速右手に持っている包丁に『温熱魔法』を使ってみます。
……うーん、遅い。
スキルレベルがまだ1なので当然と言えば当然なのですが、これでは咄嗟に使う事が出来ませんね。
こうして予め熱しておく必要があると気付かなければ魔物に襲われた時に慌ててました。
さて十分に温まったので獲物を探してみましょうか。
お、角ウサギ発見。
早速スパっと首筋を切り裂きました。
すごいです。いつもよりあっさりと刃が通りました。
あと切断面がちょっと焦げてますね。
これは良いのか悪いのか、ちょっと悩みます。
再生能力を持った相手に対しては有効かもしれないですが、食材に火が通ってしまうのはちょっと考えものです。
では次の実験です。
別の包丁に持ち替えて再度『温熱魔法』を使います。
先ほどとは逆に今度は冷やしてみます。
やっぱり時間が掛かりますね。あと魔力効率も良くない気がします。
ま、それは今後の課題として、もう一度角ウサギを狙ってみましょう。
よし。
今度も気持ちいいくらいに鮮やかに切れました。
切り口は凍り付くまでには至っていないですね。
これから血抜きもしないといけないので、凍らない方が有難いです。
そして鮮度を保つという意味で冷やすのは有効でしょう。
これなら野草の採集にも使えそうです。




