春祭り
初戦闘を終えた俺達は、その後も何度か魔物を撃退しつつ順調に移動を続け、夕方ごろ遂に春祭りの会場へとたどり着いていた。
「これは凄いな」
「去年家族と行った温泉街に似た雰囲気ね」
「出店はお祭りっぽいです」
「パンフレット配ってたからもらって来たわよ~」
「ありがとうございます」
ウィッカさんが貰って来たパンフレットを皆で覗き込む。
それによると、会場は湖を囲むように出来ていて、その湖の中央にある島に神社とダンジョンがあるらしい。
『宝物を見つけられたら是非お越しください』
ってデカデカと書いてある。
その湖を囲むように自然公園とかイベント広場、商店街や宿泊施設などが立ち並んでいる。
イベント広場では1日に数回、何かしらのゲームを開催しているようだ。
「みんな行きたいところはある?」
「私はお茶屋巡りがしたいな」
「わたしは占いに行ってみたいです」
「こういうところなら土産物屋に珍しい物とかありそうねぇ」
うーむ、みんなバラバラと。
1つ1つ皆で周っても良いんだけど日が暮れるし自由行動でも良い気がする。
別に修学旅行でもないし、いざとなったらパーティーメンバーの位置は分かるし。
ピピッ
ん?メールか。ダンデからだ。
向こうも丁度イベント会場に来てるみたいだな。
「よし、じゃあ今日は一旦解散して明日の朝に合流って感じでどうだろう?
折角なら中央の神社にはみんなで行きたいしな」
「分かったわ」
「はい、じゃあまた明日」
「お土産期待してるわね~」
みんなパンフレットを片手にお目当ての店を探しに行った。
さて、じゃあ俺はダンデに会いに行くか。
あいつは今、運動広場に居るみたいだな。
ここからだとぐるっと反対側と。
運動広場に着くとそこにはテニスコートのような区分けがされたフィールドが幾つも並んでいた。
その中では2人の人がバトルを繰り広げている。
またその周りには観客も大勢居て思い思いに歓声をあげたりヤジを飛ばしたりしている。
あの様子だとフィールドの外側には攻撃は出ないようになってるんだな。
お、あっちの戦いが終わった。
片方がコテンパンにやられたように見えたけど、終了と同時に元気にフィールドの外に出てきて、仲間と思われる人たちに迎え入れられている。
どうやら戦いが終わったら体力とか全回復する親切設計なんだな。
「さて、ダンデはどこだ?」
そう言えば外見とか聞いてなかったな。
まぁ多分あいつらしい恰好をしているんだとは思うけど。
と思ってたらひと際賑やかなフィールドがあるな。
見れば戦闘職のふたりが激しい火花を散らしている所だった。
1人は金髪のツンツン頭。スーパーの野菜の人みたいだ。
バスターソードを構えて楽しそうな笑みを浮かべている。
もう1人は黒髪のショートヘア。
こちらは左右にそれぞれ長さの違う剣を持っている。
「思ったよりやるじゃないか」
「そっちこそ」
ふふふっ、と笑い合う2人。
っていうか、金髪の方はあれダンデか。
じりじりと間合いをはかりながらお互いの隙を探している。
「ふっ」
「!!」
一瞬、前に飛び出したように見せかけたダンデが大きく後ろに下がった。
更に剣を大上段に振りかぶると同時に何かのスキルだろう、剣が光り出した。
「させるかっ」
「どりゃああっ!!」
飛び掛かる双剣士を叩き潰すようにダンデの剣が振り下ろされた。
一瞬、見事双剣士がかわし切ったように見えた。
しかし次の瞬間、剣が纏っていた光が大爆発。
双剣士は堪らず壁に打ち付けられてダウン。
ダンデの勝利となった。
「よっし」
「すげぇ!!」
「これで9連勝か」
「流石、『太陽の騎士団』の団長だな!」
「ガランさんもナイスファイトだったよ」
「最後のフェイントに引っかからなかったら勝ててたかもな」
ガッツポーズをするダンデに観客たちが称賛の声を浴びせる。
同時に対戦相手も評価される辺り、かなりの接戦だったんだろう。
「さて、じゃあ10戦目は誰が……ん?」
「よぉ」
周囲を見渡したダンデと目が合った。
するとにかっと笑いながら人垣をかき分けて俺のところまできた。
「カイリ、ようやく会えたな!!」
「なにその生き別れの兄弟にあったようなセリフは」
「似たようなもんだろう。俺としては5ヶ月近く待ってたんだからさ」
まぁ言いたいことは分かる。
ゲーム内でもメールのやり取りはしてたけど、こういうイベントでもないとなかなか会えないだろうからな。
ただ恥ずかしいから肩を叩くな。寄りかかるな!
まったく。
「それで、ダンデは勝ち抜き大会でもしてるのか?」
「もともとそんなつもりは無かったんだけどな。何度かやってるうちに気が付いたらそうなってた」
何だかんだでお祭り好きだからな。
いつもながらに天性のカリスマと合わせて注目をかき集めてたってところか。
「どうする?折角だから手合わせしてみようかとも思ったけど、折角の10戦目なら遠慮しようか?」
「いや、良いだろ。むしろカイリなら皆の度肝を抜く変な事をしてくれるだろ」
「なんで変な事するのが当たり前になってんだよ」
「日ごろの行いだな」
「おっかしいなぁ」
頭をポリポリ掻きながらスタンバイする。
ギャラリーたちも心得たものですぐにフィールドの外に出てくれた。
さてダンデ相手にどこまでやれるかな。
後書き日記(続き)
イベント会場に到着しました。
が、なんでしょうね。
随分視線が集まっている気がします。
気のせいというには、何人かの男性があからさまです。
カイリさんもそれに気が付いたのでしょうか。
この場では一度解散して明日再集合することになりました。
そして現れるナンパ君たち。
すみません。
全部拒絶って訳じゃないんですけど、その下心見え見えなのをどうにかしてください。
いえ、別にどっちが先に声かけたとか無いですから。
勝手に喧嘩始めないでほしいです。周りの人に迷惑ですよ。
ため息をつきつつその場をそっと離れました。
気を取り直して。
お茶屋さんを巡りつつ、食材探しです。
どっちがメインという訳ではないので、目に付いた方から。
と早速お茶屋さん発見です。
中に入ってお茶とお団子を頂きました。
はぁ、良いですね~。こういう時日本人で良かったって思ったりします。
ちなみに、出てきたお団子ですが、店内限りの限定販売でした。
製法などは秘密だそうです。
でも出てくるという事は、作れるだけの材料があるということ。
頑張って探しましょう。
全ては美味しいものを食べる為です。
次のお店ではお汁粉も出てきました。
残念ながらお餅は入っていませんでしたが、それでも小豆はあるのですね。
それにこの甘さ。砂糖なども手に入れたいです。




