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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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酔っ払いお姉さん

朝、俺が待ち合わせ場所に着くと、そこにはもう皆が待っていた。


「おはよう。ごめん、遅くなった」

「おはようございます。まだ待ち合わせ時間は過ぎてないから大丈夫ですよ」

「そうそう。私達が早く来過ぎただけだから」

「ふわぁ~~。わたしはさっき起きたばかりよぉ」

「ん?」


あくび混りに3つめの返事が聞こえてきた。

よく見なくてもリースとレイナさんの他にもう一人女性が居るな。


2人に比べて背が高く、頭からは角、背中には蝙蝠の羽が出ているので、一目で魔族なんだと分かる。

顔は整っているし、服装はゆったりとしたローブを着ているので体形までは分からないが多分グラビアに載れるくらいの美人なお姉さんだ。

っと、あんまりジロジロ見るのは失礼だな。


「えっと、初めまして。俺はカイリって言います。職業は農家です」

「ウィッカ。錬金術師よぉ。

って、リースちゃん。漁師じゃないじゃない」

「え、いえ私は一言もカイリさんが漁師とは言ってないですよ」

「でもでも、あのツミレを作った人に会わせてくれるって言ったじゃない」

「それは、はい。カイリさんで間違いありません」

「農家だけど?え、もしかして畑に魚が生えてくるとか?

いくらゲームでもそれはちょぉっと無しだと思うわよ」


んん?話の流れからして、リースがツミレでウィッカさんを釣ってきたってところか?

でもどこぞの漫画じゃないんだから畑から魚の切り身とかは収穫出来ないぞ。


「まぁ畑で出来た訳じゃないですけど、魚ならありますよ。

あと昨夜にはホタテっぽい貝も獲れましたよ」

「マ ジ で す か!!」


ギラッと目を光らせるウィッカさん。

いったいどんだけ魚介に飢えていたんだろう。


「ではお近づきの印に」

「あら、催促したようで悪いわねぇ。じゃあお返しに」


そう言ってアイテムをトレードする。

俺からはヤドリンが育ててくれた岩ホタテ5つを、ウィッカさんからはウィスキーがトレードされた。

ウィスキー?


「あ、もしかして南の村で麦のお酒を作ったってウィッカさんですか?」

「あらぁ、耳が早いわねぇ。

そぉなのよ~。やっと麦が見つかって錬金術でお酒に変えたっていうのに碌なつまみがないでしょ?

そこにリースちゃんが美味しそうなものを出してくれたもんだから、思わず飛びついちゃったわ」


あはっと笑うウィッカさんに悪びれた様子はない。

これは好きな事にはトコトンのめり込むタイプだな。

ギャンブルとかやらせたら借金の山を築きそうだ。


「っと、挨拶はこれくらいにして出発しましょうか」

「そうね。歩きながらでも話は出来るしね」


そうして予定外に1人増えた俺達4人は島の中央へと向かった。

のは良いんだけど。


「それで?カイリ君はどっちの子が狙いなのかな~?」


早速とばかりに俺に質問を投げかけるウィッカさん。

ふたりも興味津々な目で見てるし。


「先日会ったばかりですし、どっちとか無いです。

というか脇腹突かないでください。地味に弱いんですから」

「えぇ~、つまんないぞ~。大・丈・夫!私しか聞いてないから、こっそり教えてみ?」

「思いっきり、そっちのふたりも聞いてるじゃないですか」

「ちっ。ばれたか。

でもでも、思春期の男の子なんだし、ため込むのも良くないと思うのよ。

あ、もしかしてリアルに彼女が居て操を立ててるとか!」

「残念ながらそっちも居ません!」


うーん、完全におもちゃにされてるなぁ。

これが年上の女性のパワーってやつか。

それとも酔っ払いってこんな感じか?ウィッカさん素面だけど。


「って、ほら。魔物が出たみたいですよ?」

「残念。続きはまた後でね」


俺達の進行方向の先に見えたのは蟻型の魔物が3体。

向こうもこちらに気づいたようで、横1列になってこっちに向かってきた。

まだ若干距離があるし、足は速くないみたいなので、多少余裕があるな。


「ウィッカさん、戦闘は?」

「初体験よ♪」

「それは良かった。俺も魔物相手は初めてなんです」

「初めてどうしね」

「って、二人とも呑気に会話してないで、来るよ!」


武器を取り出しつつものんびり会話をしていたらリースから怒られた。

ごめんごめんと謝りながらリースを見れば両手に出刃包丁を構えてる。

なにそれ。何気に強そうなんだけど。

レイナさんは、見た目通り戦い慣れてないようでちょっとおどおどしてる。


「まぁ男の子だからな。囮役は任せてくれ。

この様子だと攻撃のメインはリースにお願いするか。

レイナさんとウィッカさんは出来そうな事があったら自由にやってみてください。

序盤に出てくる魔物なのでそんなに強くは無いと思いますし」

「分かったわ」

「は、はい」

「は~い」


3者3様の返事を聞きながら俺は皆よりも前に出る。

さて、決闘と魚を除けば初戦闘だ。

まず使うのは『はじまりの鍬』だ。

魔物の頭目掛けて【開墾】!!


ザクッ!!

「!??」


俺の振り下ろした鍬は見事魔物の顔スレスレを通り地面に深々と突き刺さる。

バサッっと土が舞い魔物たちがたたらを踏むものの当然無傷だ。

それを見てウィッカさんからヤジが飛んでくる。


「やーい、へたっぴ~。当たってないぞ~」

「良いんですよ、どうせ攻撃力は無いんですから」


奴らを驚かせてヘイト稼いで足を止められれば十分だ。

魔物は一瞬警戒して鍬をジッと見たものの、簡単には抜け無いと判断したのか1匹が鍬の上に登って俺に襲い掛かろうとした。

ところが残念。これくらいなら余裕で抜けるんだ。


「よっ。と」ゴンッ

「!!」


まるで動画の巻き戻しのように高速で持ち上がった鍬によって魔物の顎がかち上げられる。

堪らずひっくり返る1匹。

それを見た残りの2匹が俺に左右から襲い掛かろうとするので更に吹き飛ばそうと鍬を構えた。けど。


「うーん、蟻って食べられるのかしら」

ブスッ


右に居た魔物の頭と胴体の隙間に包丁が突き刺さる。

そのままリースはスパっと切り飛ばしてしまった。

リース、対人戦にはからっきしって言ったけど、それは魔物相手だったら余裕っていう意味だったのか。

続いて左の魔物に対してナイフが飛んでは地面に落ちた。


コロンコロンっ

「?」


いや、ナイフじゃないな。糸の結びつけられた針だ。

それを見て飛び退こうとした魔物だったけど、不意に糸がふわり動いて魔物の手足に巻き付いていく。

風魔法?ではないな。なんだろう。

とにかく巻き付いた糸が一瞬だけど魔物を拘束した。

そこに更に何かが投擲される。


ヒュッ、パリンッ。ボッ!!


魔物にぶつかると同時に割れた試験管(・・・)が爆発。魔物の頭を黒焦げにしていた。


「へぇ。意外とよく爆発するのね~」


試験管を投げた本人はそんな呑気な感想を言ってる。

ってか、みんな強いな!!

最後まで残ってる魔物が、俺が最初にひっくり返した1匹っていう有様。

そいつもようやく起き出して来たので、斧に持ち替えて動き出す前に頭をたたき割った。

ふぅ。まぁ初戦闘としてはまずまずってところか。



後書き日記


21xx年5月2日


今日からみんなでイベントの春祭り会場に行きます。

急遽参加したウィッカさんも無事に受け入れられました。

ただ一瞬カイリさんの視線がウィッカさんの全身に注がれた気がします。

ウィッカさんは年上のお姉さんですし、やっぱり男の人ってこういうのが好きなんでしょうか。

私だって、あと何年かすれば……


ごほんっ。

とにかく出発です。

穏やかな陽気ですしちょっとしたハイキングですね。

と思っていたら魔物です。

カイリさんが壁役を担当してくれるそうなのですが、防具とか付けてなくて大丈夫でしょうか。

多分私の方が防御力は高いと思うんですけど。

ま、カイリさんが攻撃される前に倒してしまえば良いですよね。


……あっ!

いつもの調子で急所への一撃で倒してしまいました。

カイリさんと目が合うとちょっと驚いた顔をしてます。

幸いその後もカイリさんは変わらず接してくれてます。

意外だったのはレイナさんも糸を巧みに使って敵を封じ込めてます。

あれは、糸操術?なんてありましたっけ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] 農具の武器転用は歴史あるあるだからね 大鎌とか、一回刃を外して槍みたいに付け替えて持ってったりとか、あったとか何とかかんとか
[一言] つよーい
[一言] 蟻は食材・・なら蟻、いや、虫料理が存在するということか。・・・あ、話は変わりますけど幽霊も昇天しかけたプリン置いておきますね。
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