第1陣が帰ってきたようです
誤字報告してくださる方、いつもありがとうございます。
これ誰が報告してくれてるか分からないのが問題なんですよね。お礼の言いようが難しい。
あの後、実験もひと段落したので、村の畑を耕して回っていた。
ついでに肥料も撒いて、風水と鍬で丹念に混ぜ合わせるおまけ付きだ。
幸い今度はちぃズが出てくることも無く、極々普通に作業が進んだ。
そして、夕方になり、一通り耕し終えた頃、村の入口に青年たちの姿が見えた。
それを見たお爺さんは嬉しそうだ。
「ふむ、どうやら祭りに行っていた子供たちが帰ってきたようだな」
「そうみたいですね。無事に宝物は見つかったんでしょうか?」
「このタイミングで帰ってきたなら、宝物を見つけたか、そもそも見つける気が無かったかのどちらかだよ」
そうして眺めていると、お爺さんの姿を見つけて、数人がこっちへと向かってきた。
「ただいま祖父ちゃん」
「ああ、お帰り。宝物は見つかったのか?」
「あー宝物って程じゃないんだけど、お土産ならあるよ」
そう言ってお爺さんの孫?は木箱を差し出した。
開けてみれば1本の瓶が出てきた。
「これは、酒か」
「うん。南の麦農園で作った新作のお酒だって。
なんでも島の外から来た人と協力して作ったお酒でかなりきついから気を付けてってさ」
「ほほぉ。それは期待大だわい」
へぇ、麦で出来たお酒か。
かなりきついって事はビールじゃないんだろう。
焼酎かウィスキーってところかな。
「よし、今夜は久しぶりに飲み明かすぞ。付き合え!」
「あ、うん。付き合うのは良いんだけど、そっちの人は?」
「ん?おぉすまんすまん。忘れておった」
おっと、家族の再会に水を差さないように離れて見ていたのに気づかれた。
お爺さんはお酒が大好きらしく、酒瓶を大事そうに抱えながら俺を紹介してくれた。
「彼は島の外から来たらしくてな。
お前達が出ている間に村の畑を耕してくれていたんだよ」
「そうだったのか。
どうも。祖父が無理言ったみたいで申し訳ないです」
「いえいえ。俺も色々勉強させてもらいましたから」
ぺこぺことお互いに挨拶を交わす。
お爺さんの話っぷりからするともっとダメ息子なのかと思ってたけど、意外と好青年だ。
「さて、わしらはこれから忙しいからな。
お前さんも適当なところで引き揚げてくれて構わんぞ」
「はぁ」
「それと、今日は良いものを見せてもらったからな。
お礼に納屋にあるものだったら何でも好きに持って行ってくれ。
ではなっ」
「ちょっ、祖父ちゃん。まだ夕方だよ!?」
ふたりは慌ただしく家に帰って行った。
まぁ祭りの様子とか話すことはいっぱいあるだろうし、邪魔しない方が良いだろう。
でも納屋にあるものって言ってたけど、何かあったっけ?
そう思いながら納屋の中に入ると、前回同様農具各種と竹竿などが置いてある。
あ、折角だからまだ揃ってない農具で余ってそうなのを貰っていくか。
一通り見て回った結果、持っていくものが決まった。
1つは斧。うちの畑で使う機会は当分無いとは思うけど、もしかしたら今後巨大サンゴが出来る、なんてこともあったら面白いなと思ったので、1本貰っていくことにした。
ちなみに斧は3本あった。
『はじまりの長斧』『キンの斧』『ギンギンの斧』
……後ろ2つはネタかな。
『キンの斧』は木を切る際に良い音がするらしい。
『ギンギンの斧』はバーサク効果で疲れ知らずになるのだとか。
仕事が終わるまで効果が切れないらしいけど、それって呪いのアイテムじゃないか?
勿論俺が選んだのは『はじまりの長斧』だ。
はじまりシリーズの【不壊】特性が付いている、柄の部分が2メートルある斧だ。
刃の重さと遠心力が乗れば生産職の俺でも結構な破壊力が出せそうである。
斧の次に選んだのは『竹竿』。
これは普通にうちの畑でも使う機会がありそうなので、持てるだけアイテムボックスに収納した。
というか、幾つ回収しても竿の山が無くならないな。理屈は分からないが流石ゲーム世界。
最後の1つは『花の種』。
残念だけど何の花かは蒔いてからのお楽しみらしい。
「あなたの庭に彩りを」
と説明文に書いてあるけど、畑に蒔くと何が出来るのか今から楽しみだ。
納屋を出る頃にはすっかり日が暮れてしまった。
村では帰ってきた青年たちを迎えてちょっとした野外パーティーを開催しているみたいだ。
すこし離れたこっちまで篝火の明りと陽気な笑い声が届いてくる。
さて、じゃあ俺も海底に帰るか。
明日は皆で島の中央に行く予定だしな。
遠足前日じゃないけど持っていくものとかをチェックしておこう。
後書き日記(続き)
農家のおじさんから無事麦の種を一袋頂きました。
「それどうするんだ?」
って聞かれたので
「農家の友達へのプレゼントです」
って答えました。そしたら、
「折角なら春祭りの神社で渡すと良いよ」
と言ってもらいました。
何があるかまでは教えてくれませんでしたけど、こう言うってことは何かあるんでしょうね。
さて、これでここに来た目的の一つは達成しました。
戻る前にさっき作ったスイトンがまだ残っているので食べてから帰りましょう。
……誰かいますね。
大学生くらいのお姉さんです。
右手に私の作ったスイトンが入ったドンブリ、左手にコップを持っています。
声を掛けたらお酒臭い息が返ってきました。
左手のコップはウィスキーだったみたいです。しかもストレート。
以前お父さんが水割りを飲んでいたのを一口貰ったことがありますけど、それでもかなりきつかったのを覚えています。
それをストレートって、凄いです。
女の人、ウィッカさん曰く、まだまだ粗削りの味で納得はしていないとのこと。
どうやら自分で作られたようです。
そしてウィッカさんは美味しそうにスイトンを食べてます。
あの、私の分も残してくださいね。
一緒にスイトンを食べながらお話したところ、ウィッカさんはお酒のアテを求めていたようです。
スイトンと、特に中に入ってたツミレが気に入ったそうなのですが、すみません。
そのツミレは私の友達が作ったものなんです。
そう伝えたらその友達を紹介してほしいと言われたので一緒に元の村に戻ることになりました。