これは……風水なのか?
なんちゃって風水なので深くは突っ込まないように。
ご都合主義万歳の主人公です。
あと今回は某ロボット型パソコンのお話から名前を参考にさせていただきました。
折角手に入った風水のスキル。
これって魔法とはどう違うんだろう。
【スキル:風水(入門)
自然界のあらゆるものに働きかけるスキル。
影響範囲および効力はスキルレベル、消費魔力量、使用者のイメージに依存する。
入門編の場合、使えるのは錬成、操作、活性に限られる。
】
ふむ、いまいち説明文を読んでも分からないけど、つまり自然を操作できるって事なんだろう。
まずは使ってみて確かめるのが早いか。
そう思い集めてきた土に風水のスキルを使用する。
……あれ?
何も起きないぞ?
使う対象は土で問題ないはず。
なら使い方か?説明文にもイメージに依存する、なんて書いてあるしな。
じゃあ、コネて丸いボールになれってイメージすれば……
ズズッ……
おぉ、土が動いた。
そしてそのままゆっくりと纏まり出してイメージ通りにボールの形に固まった。
(面白いなぁ)
多分今のが操作に当たるんだろう。
他に錬成と活性が出来るそうだけど、多分言葉からして錬成で生み出して操作で動かして、活性で強化したり成長を促したり出来ると思われる。
これを畑に応用すれば、土づくりも栽培もかなり捗るんじゃないだろうか。
早速昨日耕した場所で試してみよう。
元々がただの土で、昨日は貝殻や海藻を適当に混ぜてただけだから、肥料としての効果が出ていなかったはずだ。
なので、改めて肥料になりそうなものを投入していく。
混ぜるのはいつも通り鍬でやった方が早いか。
しっかり混ぜ合わせた後に風水の活性を行う。
イメージが大事なんだよな。
なら目を閉じて頭の中でしっかりとイメージを膨らましていく。
最初は肥料が土に溶けて吸収されていく感じだな。
更にそれで土が元気になって歌いだしたり踊り出したり……いや、そこまで行くとゴーレムだ。
せめて土スライムとか畑スライムとか?従魔術と併用すれば行ける気もするな。
でもそうすると鍬で耕すのが可哀そうになりそうだからなぁ。
でも「土と共に生きる」なんてちょっと格好いい響きだし、土と会話しながら農業出来たら楽しそうだよなぁ。
そんな風にイメージが脱線しすぎたのがいけなかったんだろう。
後ろから慌てたような声でお爺さんに呼び止められた。
「これお前さん、何をしておる!!」
「え?あぁ、さっき頂いたスキルで畑の活性化が出来ないかと試していたところです」
「活性化……それがその一言で出来るものとは思えんがな。
まさかこの年になって観ることが出来るとは」
「それ?」
言われて畑に向き直ると、そこには直径10センチほどの土だんごが大量に出来上がっていた。
しかも困ったことに目と口が付いているように見えるんだけど。
「「「ち?」」」
「声まで発して。え、じゃあただの土だんごじゃなくて意思を持った存在って事か?」
「「「ちぃ!」」」
俺の質問に元気に返事をする土だんご達。
いや確かにイメージの中でだんご大家族の歌よろしく土だんごが仲良く笑いあってたけどさ。
「ひとまず何か呼び名が欲しいよな。
土だんご達だから、土ブラザーズ……土ーズ……よし『ちぃズ』でどうだ?
1つ1つを呼ぶときには『ちぃ』って呼んで、みんなを呼ぶときには『ちぃズ』って呼ぶ感じで」
「「「ち♪」」」
オッケーみたいだな。
みんな嬉しそうに鳴き声をあげたり飛び跳ねたり、ってそんなに高く飛んで着地は……だめだったか。
着地に失敗したちぃが崩れてただの土になってしまった。
「「ちぃ♪」」
でもちぃズにとっては面白かったらしい。
他の子たちも真似して飛び上がっては土に戻っていく。
そうして気が付いた時には元の静かな畑に戻っていた。
畑を触ってみても普通の土の感触しかなく、声が聞こえてくることもなかった。
「……お爺さん。今のは夢だったんでしょうか?」
「だとしたら実に愉快な夢ですな。
むかしから土を愛し、土からも愛されるとああして挨拶してくれるそうだ。
わしも小さい頃に似たような現象を1度見たことがある。その時はわしも夢だと思ったものさ。
しかしほれ。夢じゃなかった証拠が顔を出しておりますよ」
「へ?あ、ほんとだ。芽が出てきてる」
ついさっきまでただの土だったのに、見ているそばから何かの芽が出てきている。
「これは何の芽でしょう?」
「ふむ、芋の芽で間違いないだろう。
自分でそうなるようにしていたのではないのかな?」
「あ……言われてみれば今朝、設定してそのままでした」
なるほど、それでか。
さっき土を耕した時なのか、はたまたちぃズが自動で使用したのかは分からないけど。
あと試しに畑の土を取って調べてみる。
【土精『ちぃズ』の畑の土:レア度3、品質3(7/100)、健康度90。生産者:カイリ。
土の精霊が宿った畑の土。健康度が高く天気が良いと歌いだすことがある。
精霊の格が低いため特別な効果は無いが、高品質の作物が育つ。
また生産者以外には効果はない。
】
ちぃズ、土の精霊だったのか。
格が低いっていうのは恐らく俺のスキルレベルが低いせいだろうな。
なら今後もスキルを使いまくって、ちぃズを成長させてみるか。
ただ畑じゅうが歌い出したら周りの人から騒音で怒られないだろうか。
ま、うちの畑なら周りに誰も居ないし大丈夫か。
というかちぃズは海中でも大丈夫かな?
後書き日記(続き)
やってきました南の村。
と言っても、最初が島の真東の村とすればここは東南東の村ってことになります。
まぁそんな細かいことは今の私には気にもしません。
なぜならば、目の前に麦畑が広がっているからです!!
今春なんですけど、流石ゲームの世界と言いますか、季節無視しまくりです。
まぁ年に2回しか収穫できないとなると、農家プレイヤーがやっていけないですからね。
あ、そうだ。カイリさんに小麦の種を買って行ってプレゼントしたら喜んでくれるでしょうか。
カイリさんなら高品質の小麦の生産も出来そうですよね。
と、そんな皮算用は置いておいて、まずは食用の小麦を売ってもらえるか交渉しましょう。
……良かった。無事に自分で食べる分は売ってもらえました。
でも卸すほどの量は売れないと言われたので、ここで買った小麦で料理を作って販売するのも無理そうです。
となるとやっぱり私たちで育てて増やすしか無いですね。
なので小麦の種を……え、ダメ?
信用のおける人にしか種は分けられない?
そこを何とか。
と思ったらクエストが出てきました。
<小麦農家のおじさんを満足させろ>
だそうです。
実に抽象的なお題が出てきました。
私は農家ではありません、料理人です。
ならば料理対決です!!
私の作った料理を食べて頂き満足出来たら種を譲ってもらえるように交渉しました。
といっても今ある材料で小麦料理……
うどんが良いかなと思いましたが麺つゆがありません。
パンを作るにも酵母はまだ出来ていません。
お好み焼きとかもソースが欲しいところです。
他にこのおじさんを満足させられる料理……
ふと、カイリさんからもらったツミレが目に入りました。
全部使ったと思ってましたけど、少しだけ残ってたんですね。
これならこれで出汁が取れるから……そうだ、あれにしましょう!!
無事におじさんには満足していただけました。
作ったのはスイトン。
これなら出汁と塩味だけでも十分に満足できます。
よかった。これでカイリさんにお土産が出来ましたね。




