土を視るもの
暮伊豆から(前作の)レビュー頂きました♪
ありがとうございます!!
お礼になるか分からないけど暮伊豆の作品を紹介させて頂きます。
『異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件』https://ncode.syosetu.com/n5466es/
タイトルだけ見ると、ダークサイドの主人公が異世界で俺TUEEEして無双するカスっぷりを披露するかと思いきや、まともな主人公が時々カスが現れる世界で一生懸命頑張る話、だと思ってます(まだ100話くらいしか読んでないですが)
図書館で調べ物をした結果、俺はとんでもない見落としをしていたことに気が付いた。
なので読んでいた本をレンタルしつつ、急いで家に帰る。
といっても時刻は11時。
ちょっと早いけど昼食を食べてからログインするか。
そしてログインした俺はまずは芋を植えた畑の様子をチェックする。
って、朝植えたばかりなんだからまだ芽も出てないよな。
後は……メールが届いてる?
レイナさんからだ。
どうやら羊毛が手に入ったからそれで俺の服を作ろうと思ったらしいんだけど、材料とレベル不足で小物を作るのが精いっぱいだったらしい。
それで何かリクエストはありますか?とのことだった。
ん~でも、ウールの小物を身に付ける男子?なんか違う気がするな。
どっちかと言うと女の子とかペットとかに似合いそう。ってそうか。
『リボンとか作れるかな?出来れば3本以上』
『……リボン、カイリさんが? えと、はい。大丈夫です。趣味は人それぞれですから!!』
俺の送ったメールにすごい躊躇いがちな返信が返ってきた。
ってこれ、俺がリボンを付けるって思われてないか?!
『ちなみにリボンを付けるのは俺の従魔だからな』
『あ、ああ! すみません勘違いしてました。てっきり……。
なら頑張って可愛いのに仕上げますね!!』
危ない危ない。もうちょっとでレイナさんの中で俺がリボンを付けてキャッキャウフフしている変態になる所だった。
さて、レイナさんの方はこれで良いとして。
俺は自分の畑から一掴み土を確保するとイベントフィールドへと飛んだ。
そして元々畑として使われていた場所の土と、昨日貸し与えられた土地の土をそれぞれ確保して並べてみる。
まずは俺の畑の土だけど、
【竜裂海海底の畑の土:レア度3、品質3。生産者:カイリ。
竜裂海溝の海底の岩盤を掘り起こし畑として使えるようにした土。
ミネラルを多く含んでいるが、有機物はほとんどない。
また長時間海水に浸かっていた為、通常の作物は育たない】
竜裂海溝? あぁ。世間一般にはそう呼ばれてるのか。
地名はどうでもいいか。問題はその次の一文だ。
有機物がほとんどないってことは、畑としての土の寿命が短いことを示している。
早めに有機肥料を混ぜ合わせて土の活性化を図らないとな。
続いてこの村の畑の土は、
【ベジタ村のよく耕された畑の土:レア度1、品質3(-1)。
ベジタ村で良く耕された畑の土。
長年作物を育てている為に若干痩せてきている】
品質にマイナス補正が付いてる。
説明文に痩せてるってあるから、そのせいだなきっと。
更に耕す前の土は、
【ベジタ村の土:レア度1、品質1。
ベジタ村付近の土。それ以上の何かではない】
だんだん説明文もシンプルになってるな。
でも流石ゲームというか、普通だったら専門の機材とか薬品とか使わないと分からないような内容まで分かりそうだ。
土づくりをするならこれらの説明が大いに役に立つはず。
例えば土を耕せば「ただの土」から「畑の土」になって品質が1上がる。
更に育て続けることで「よく耕された」となって更に品質が上がるんだろう。
だからこの村の畑も十分な肥料を与えれば品質3を維持できるんじゃないかと思う。
昨日は調べもせずに適当にやってたからな。
やっぱりただ適当に肥料になりそうなものを混ぜるだけよりも、具体的に何が品質向上につながるのかを理解してやるのでは雲泥の差だろう。
また小まめに土の状態を調べれば何がプラスに働くのかを見極めることも出来そうだ。
< スキル:地質学 を習得しました >
と、そんなことをしていたらスキルが手に入った。
別に学者になる気は無いんだけど、何が変わるんだろう。
耕す前の土を改めて確認してみると、
【ベジタ村の土:レア度1、品質1(3/5)、健康度30。
ベジタ村付近の土。それ以上の何かではない】
アイテム名に続く記載が変わってるな。
品質の後ろの分数は、経験値みたいなものかな?これを貯めれば品質が上がる的な。
健康度は土の痩せ具合を示しているんじゃないかと予想しておく。
まぁ大きく外れてはいないだろう。
じゃあこれらの値を目安に色々工夫してみますか。
そうして色々試しながら耕す事1時間。
もうだいぶお馴染みになってきたお爺さんの声が聞こえてきた。
「おぉ、今日も元気にやっているな」
「お爺さん。こんにちは」
「調子はどうかね?」
「はい。まだ範囲は狭いですけど何とか畑として使えるようになってきました」
「ふむ、どれどれ」
そう言って俺が耕していた場所の土をペタペタと触ったり、揉んでみたりするお爺さん。
難しそうな顔をしたりうなり声をあげたりと忙しい。
10分ほどそうして土の様子を見たお爺さんは俺に。
「まだまだ荒い部分はあるが、悪くない。これならちゃんと作物が育つだろう。
それに土は一朝一夕で出来るものでは無いからな。本来なら5年10年かけて育てあげるものだ」
良かった。どうやらお爺さんのお眼鏡にかなったようだ。
「ところでお前さん。祭りには行かないのか?」
「明日からリース達と行ってくる予定です」
「はっは、そうか。間違っても他所のお宝に目移りして、手元の宝を手放すでないぞ」
「はい。というか、やっぱりお宝っていうのはそういうものなんですね」
人との縁がそうなんだろう。
愛はお金で買えても友情は買えない、なんて言うしな。
島のお祭りも普段なかなか行き来の無い他の村の青年との交流が目的なんだろう。
更に宝物を持って帰ってくるっていうのはお嫁さんを連れて帰ってきたってことなんだろうな。
あと俺で言うと新しい作物や畑の知識も価値のある宝って事になる。
「さて、なら少し早いが畑の礼を渡しておこうな。
これもわしらでは使えんが、お前さんなら使えるだろう」
そう言って渡されたのは、巻物?
広げてみれば大きな文字で【スキル:風水】とあった。
< スキル:風水(入門)を習得しました >
その通知と共に巻物は消えていった。
こういうのを見てると改めてゲームなんだなって思う。
でもこれで土や水を操れるようになれば畑作りが捗りそうだな!
後書き日記(続き)
さて、家に帰った私は早速ログイン。
酵母を作るにあたってまずは瓶を煮沸……瓶?
行商人さぁ~~ん。
ふぅ。ありました。良かったです。
そんなこんなで何とか果物を酵母用にセッティングしました。
完成には数日掛かるでしょう。出来上がるのが今から楽しみです。
その間に私は行商人のお兄さんと一緒に隣村に小麦の買い付けに向かいます。
隣村までの道中、お兄さんから島の事を色々聞きました。
私たちが居た村は島の東側にあったようです。
この島は東西南北で特産品が違うそうで、東の村は畑の作物、西は酪農、北は果物、南は木綿や麻などの糸になるものが多いそうです。
そして島の中央には神を祀ったダンジョンがあるそうです。
この春祭りはそのダンジョンを囲うように作られた商店街に各村から青年が集まり、宝物を見つけた人が順次ダンジョンに挑んでいくそうです。
……あれ?てっきり、そのダンジョンに宝物があるのかと思っていたのですが、違うんですね。
ただまぁ、これまでのイベントポイントの入り方から考えれば宝物の正体は自然と分かってます。なにせ、
「フレンドが増えた時(ポイント:大)」
「チームを組んだ時(ポイント:中)」
「新しいアイテム・スキルを見つけた時(ポイント:小)」
つまり出会いこそが宝物ということなのでしょう。
あとは生産系職業への支援も兼ねたイベントなのかもしれませんね。
だからレイナさんは南の村の方が良かったのかもしれません。
でもそうなると私たちと出会うことも無かったと思うと、レイナさんには悪いけど良かったなと思ってしまいました。




