品種改良
総合評価が5000を超えてました。
思わず「おぉぉ」と変な声が出るという。
皆様、いつもありがとうございます。
そう言えばうちの畑で採れる野菜たちも『海』と付いているし、この島で採れた野菜は『海』が付いてないだけでほぼ同じものだった。
じゃあ、この芋もどうにかすれば「海芋」みたいな名前になって海中で育てる方法があるかもしれない。
あ、それよりまず。
「おまえこれからどうする?
美味い芋が出来たら改めて呼ぼうと思うんだけど」
「ミィィ……ミ!」
【隧道ミミズと仮従魔契約を結びました】
仮、ね。
多分美味しい芋を提供出来たら改めて従魔になってくれるって事なんだろう。
ミミズは頭を横に振って「用意が出来たら呼んでね」とジェスチャーした後、さっき開けた穴から地中へと帰って行った。
そうしてミミズの姿が見えなくなってからお爺さんから声を掛けられた。
「お前さん、魔物と話が出来るのかね?」
「話って程じゃないです。従魔術っていうスキルのお陰で簡単な意思の疎通が出来るくらいです」
「いやいや、それでも大したもんだ。
わしらもあの巨大ミミズには手を焼いていてな。
あいつらが来ると折角植えた種を根こそぎ食われてしまうんだよ」
「それは困りものですね」
「若い頃はお前さんがさっきやったように、頭を出した所を斧でスパっとやったもんだ」
はっはっはと豪快に笑うお爺さん。
こう見えて意外と武闘派なようだ。
「農家でも斧は使えるんですか?どっちかというと斧は樵のイメージですが」
「斧も槌も使うさ。わしらの相手は土だけではないからな。
畑を広げようと思ったらそこにある木を切り倒して根を掘り起こし、岩を砕いて退かさないといけない。
最近の若い者は既に畑が出来てるから、そんな苦労は知らないかもしれないがね」
言われてみればそうだった。
本来の開墾ってただ土を耕せば良いだけじゃないよな。
そういう意味では完全に土木作業員だ。
いつかそっちにも手を出してみよう。
それより、畑を荒らされるのを何とかしないとな。
ミミズもあの1匹だけとは思えないし。
「今のミミズ、芋が好物だったみたいですよ。
離れたところに芋畑を作れば他の畑の被害を減らせるかもしれないですね」
「それは以前試したことがある。最初は効果がありそうだったんだが結局はダメだったよ」
「もっと高品質の芋が作れたら良好な関係が築けそうなんですけど、どうにかならないでしょうか?」
俺がそう聞くとお爺さんは腕を組んで唸り出してしまった。
「うぅむ。一応手が無い訳ではないが、わしらには厳しい……いや、島の外から来たお前さん達なら可能性は高いか」
「どうすればいいんですか?」
「品種改良だよ。やり方自体は難しくはない。
基となる植物の種に対して、他の素材を混ぜて植えたり、スキルを使いながら育てれば良いだけだ」
「それならお爺さんたちでも出来るんじゃないですか?」
「いや。わしらの持っているスキルは既に試し済みだ」
「まぁですよね」
もう何十年も農業をやってるんだ。試せるものは全部試してきたんだろう。
アインシュタインじゃないけど同じスキルを使って違う結果になることはない、か。
でだ。俺の持っててお爺さん達が持ってないスキルで使えそうなのって言ったらあれだよな?
でもその場合、陸上だと育たないかもしれない。
「お爺さん。俺の持ってるスキルで試してみたいのがあるんだけど、上手く行ったとしても俺の畑じゃないと育たないと思うんだ。
だからそっちで試させてもらっても良いかな?」
「ああ、もちろん良いとも。もし成功したら教えてくれ」
「はい、分かりました」
これでうまく行ったら海芋とかになるんだろうか。
案外ここの運営って安直な名前付けそうだからな。
まぁそこは出来てから考えよう。
あと俺に出来そうなことと言えば、アイテム?
例えば貝殻が肥料になるって去年理科の授業で習った気がする。
他にも海藻や魚のアラなんかも使えるかも。
ただこれは品種改良というより、土壌改善になるのか?
上手くいくかは分からなかったけど、お爺さんに相談したら、
「なら1区画分お前さんに貸すから自由にやってみなされ」
と、サッカーコートの半分くらいの土地を貸し出された。
えっと……畑、じゃないよねここ。ただの荒れ地じゃん。
もしかしてさっきの開墾の話はここへの布石だったとか?
「ほっほ。授業料みたいなもんだ。
それに自分の畑は1から作った方が楽しかろう。
おぉ、もちろん他の畑も耕すのを忘れんようにな!」
そう言ってお爺さんは楽しそうに去って行ってしまった。
去り際に「鍛えがいがありそうじゃわい」とか聞こえたけど、あれ?修行モードに入ったの?
指定された場所を改めて見渡すと、見える範囲でも切り株が多数あり、直径1メートルを超える岩もたくさんある。
これ普通に考えたら1か月くらい掛かるんじゃないかな?
……よし、すぐに全部をやるのは諦めよう。
今はまず土壌改善が出来るかどうかと、それによって作物の品質が上がるかどうかを確認出来たら十分だからな。
なので出来るだけ障害物の少ない所を選んでそこだけを集中して耕そう。
残りはまた後日だ。
俺はいつも通りアイテムボックスからはじまりの鍬を取り出して深めに掘り返していく。
ただ岩が無い場所を選んだとは言え、やっぱり土の中に石がゴロゴロしているな。
柔らかいと思った次のタイミングで硬い衝撃が伝わってくるので油断できない。
でもま、これくらいなら海底の岩盤の方が硬かったからな。
来ると思っていれば何とかなる。
そうして何とか耕し終えた後は肥料作りだ。
貝殻は極力細かく砕いて海藻も切ったりすり潰したりして土に混ざりやすくしておく。
本当は天日干しにするとか、発酵させたりとかした方が良いのかもしれないけど、よく分からないから最初は適当で良いだろう。
失敗しても怒られはしないだろうしな。
出来たものを確認すれば『海の藻くず』と出てきた。
……よ、よし。『ごみ』と出てこなかったから大丈夫だろう。きっと。
出来たそれをさっき掘り返した土に撒いて混ぜていく。
流石に肥料の効果がすぐに出るとは思えないから種を植えるのは明日だな。
残った時間で先に依頼されてた畑を耕していこう。
後書き日記(続き)
夕方になって行商人のお兄さんが村に来ました。
年の頃は30前半と言ったところでしょうか。
快活な雰囲気も相まっておじさんというよりもお兄さんがしっくりくる感じです。
さて、この行商人のお兄さん、ズーさんと言うそうですが、今夜は村に一泊して明日の昼前には次の村に向かうそうです。
私も隣村に小麦を買いに行きたかったので一緒に行っても良いかと尋ねたところ快く受けてもらえました。
また売り物を見せてもらうと、果物がありました!!
聞けば島の北側が果物の産地のようです。
他にも肉、卵などの食料品から糸や布など。
余談ですが肉などが腐らないのは状態保存の魔法を使っているからなのだとか。
ズーさんが広げた風呂敷の周りには私以外にも多くの村人が集まってきています。
もちろん、レイナさんもクルミちゃんと一緒に来ています。
レイナさんのお目当ては丈夫な糸と布のようです。
カイリさんに格好いい服を作るんだって息巻いてましたからね。布を見る目も真剣です。
うーん、でもレア度も品質も最高は2ですか。
市販品でレア度が1じゃないのは評価できますが、やはり高品質のものとなると専門家に頼むか自作するかになるんでしょう。
もしくは魔物素材。でも魔物で糸を出す定番の魔物って言ったら蜘蛛とか芋虫とかですよね。
リアルのサイズなら良いんですけど巨大版はちょっと近付きたくありません。
そうです、こういう時こそ男の子の出番です。
頑張れ従兄。あなたの犠牲は忘れません。
……と思ったら羊毛が送られてきました。どうやら向こうには羊が居る様子。
糸や布に加工は出来ないけど素材として手に入ったから送ってきたそうです。
私だって加工は出来ませんがレイナさんなら出来るかもしれないですね!