運営からの通達
評価者数が1000人に達しました。
皆様いつも本当にありがとうございます。
(*^▽^*)
その後、疲れていたし時間も時間だったので、残りの復旧作業は明日からということで俺達プレイヤーはログアウトした。
そして翌日。
ログインする俺の元に運営からの3通の通知が来ていた。
タイトルは1つは『前哨イベントに参加された皆様へ』となっていて、もう1つは『イベント結果報告』そして最後に『竜宮王国 カイリ様へ』となっていた。
個人宛とかキナ臭いものを感じる。
もしかして後半魔物を扇動したのがバレて何か罰を受けるのか?
それともそもそも俺のせいで魔物の襲来を誘発したっぽいからそれを怒られるのか。
悪い予感しかしないのでまずは最初の一般的な通知を確認することにした。
【運営からのお知らせです。
昨日行われました前哨イベントにおきまして、こちらで考慮出来ていなかった要因により海中の魔物の99%以上が1海域に集中する結果となりました。
防衛に参加された皆様には多大な被害とご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び致します。
今回の補填といたしまして、直接的な被害につきましては、被害相当額の金銭と物資の提供の他、貢献度に合わせたレアアイテムの提供をさせていただきます。
またイベント時間帯にログインしていた方にはメインイベントで有効なアイテムをお配り致します。
】
99%以上って。ほぼ全部じゃないか。
そりゃああの大軍になっても仕方ないな。
地上の魔物に付いては特に言及されていないところを見ると、黒龍の登場は想定通りってことか?
リースの話ではブレスを1発放って帰っていったというし、そのブレスで死んだ人もほとんどいなかったということなので、メインイベントに向けての予告みたいなものだったんだろう。
それで施設を破壊されたこっちとしては堪ったものじゃないけど。
まあいいか。次のイベント結果報告も確認してみよう。
それによるとプレイヤー側の被害はグレイル島周辺に限定すると7割を超えていたらしい。
逆にそれ以外では1割にも満たないというのだから如何にグレイル島周辺が激戦だったかが分かる。
更に今回のイベントの主旨である防衛成功率についても掲載されていた。
成功率は……96%
地上で幾つかの地域に魔物が襲来した他は、海中で言えば竜宮王国を除けばほぼ被害ゼロ。
どうやら王国を南に抜けた魔物たちは俺の指示に従ってプレイヤーの艦隊を襲った後はそのまま戻ってきたらしい。
……さて。
問題の個人宛ての通知だ。
【カイリ様へ
いつもアルティメットサイバーフロンティアをお楽しみ頂きありがとうございます。
この度個人宛てに連絡を差し上げたのは今回(10月10日に)行われたイベントについてです。
今回のイベントに対しましてカイリ様の与えた影響は非常に大きく、このまま見過ごす事は出来ません。
】
げっ。やっぱりやり過ぎたか。
確かに、イベント前に食糧支援という名の扇動を行ったのは俺だし、イベント後半は俺の指示で魔物たちが動いていた。
また、ボシスの言葉を聞かずに自由に南を目指そうとした魔物も居たそうだけど、他の海域は結界がまだ維持されているために断念したんだとか。
それも海の神様たちがうちで食事をしたお陰で力を蓄えた結果、結界の維持に成功したからだという。
これじゃあ今回の襲撃は自作自演だと言われても仕方ないな。
【運営と致しましては、今後このようなことが無いように適切な制限を設けるべきという意見もございました。
しかし、これまでのカイリ様の行動に不正行為は見受けられず、全てこの世界を前進させる行動であったと判断致しました。
その為、どのような内容であれ制限を増やすべきではないという結論に達しました。
かと言って何もしないという訳にも行きません。
協議を繰り返した結果、カイリ様には『運営側からの全制約の解除』を行う事が決定致しました。
これは先ほどお伝えした事の真逆とも言えるものであり、よりカイリ様の行動がこの世界に大きな影響を与える可能性が生まれます。
それによる如何なる結果も我々運営側が責任を取りますので、カイリ様には引き続き自由に活動を行って頂きたいと思います。
それがこの世界をより良き方向へと導くものと運営一同期待しております。
】
えっと……
つまりは好きにしろって丸投げされたのか?
そんなことを言われたって俺は今まで通りにするだけだけど。
まあなんにせよ処罰を受けずに済んで良かったと喜んでおくか。
そうして俺は通知を閉じると、竜宮王国へと向かった。
「みんなおはよう」
「……くぃ」
「きょっ」
「ぴっ」
「「おはようございます。主様!」」
俺が挨拶すると、全員がビシッと背筋を伸ばして挨拶を返してくる。
その自然なしぐさは軍隊のように命令されたからではなく敬意からくるものだ。
お陰で挨拶しただけなのに元気になってくる。
「さて、復興状況を報告してくれるかな」
「はい。畑に関しましては生産中の作物は食べられましたが畑そのものに被害はほとんどありませんでした。なので既に生産を再開しており3日後には量質共に襲撃以前と変わらぬ収穫が期待できます。
都市部については現在再建中です。1週間もあれば元に戻るでしょう。
ただ王城については1月近く時間が掛かる見込みです。街の再建を後回しにすればもう少し早められますが如何いたしましょう?」
「城は最後でいいよ。それより皆の住処を優先してくれ」
「はい。主様ならそう仰ってくださると思っておりました」
報告してくれたユッケは嬉しそうに頷いていた。
さて復興著しい竜宮王国だけど全部が元通りに戻るかと言ったらそうでもない。
襲撃前後で一目でわかる変化と言えば魔物の存在だ。
これまで竜宮王国にはヤドリン達を除けば魔物はほとんど居なかった。
しかし今は復興作業に参加した魔物たちが魚人族の人と仲良くなったのか、そのまま居座っている。
一部の魔物は魚人族を背中に乗せて泳いでいたりする。
サメっぽい魔物に乗っているのはシャークライダーって呼ぶんだっけ。
彼らは次の襲撃の時こそ役に立って見せるとイカリヤの指導の下、特訓を行っている。
そして見た目では分かりにくいけど、もう一つ襲撃前から変わっているものがある。
それは畑だ。
ユッケは気が付いてなかったみたいだけど、俺には分かる。
『……』
畑からは様々な感情が伝わってくる。
それは怒り。
それは悲しみ。
それは憤り。
それは決意。
「ああ、そうだな。次こそは必ず」
俺は硬い意志を秘めた畑に静かに頷くのだった。
後書き会議室
10月11日 02:33
「君からの報告書は読ませてもらった。
つまり君はこのカイリというプレイヤーが全ての元凶だというのだね?」
本部長の男性から重苦しい声が会議室の中に響いた。
それを受けた監査役員は眉間に皺をよせながら頷いた。
「はい。彼の活動は最初から我々の想定外のものばかりで、これまではこちらも譲歩し、また彼とその仲間たちがイベントを盛り上げる役に立つのであればと考え、多少のスタンドプレーも目を瞑れるようにと7月末に行われたイベントではNPC側にまわる提案もしました。
しかし彼らはその後、これに味を占めたのかその手を世界中に広げ一部の分野を独占。
それによりNPCのみならず魔物たちまでコントロールしています。
このままではNPC国家の乗っ取りも考えられます。
更には4大国家で起きるはずだった各種災害イベントも彼のクランメンバーが間を取り持つことで未然に防がれてしまい、他のユーザから新マップにイベントが少ないというクレームも上がってきています。
今回のイベントに関しても、本来であれば1周年記念に、来年に向けての予告という意味合いも兼ねて行われる予定でした。
当初の計画である北の魔物の襲来および4大国家の半壊。来期はそこからの復興と北の地への逆進撃をしていくというストーリーを考えていたのに全てがダメになる可能性があります。
挙句の果てにイベント後半、彼は魔物をコントロールして他のプレイヤーを襲撃しています。
幸い今回はプレイヤーも彼の存在を知らないお陰でそういうイベントだったんだと思っているようですが、このままでは彼が魔物を率いて全プレイヤーと全面戦争を始めてゲームを崩壊させる可能性すらあると考えています。
私としましては早急に彼に厳しい制限を掛ける事を提案致します」
若干早口になりながら説明を行った監査役員の話を聞いていた本部長はふと視線を横に向けた。
監査役員の向かい側のそこはいずれも空席になっていた。
「この場には君しかいないが、開発と運営のメンバーはどうしたのかね?」
この会議は本来、開発と運営の主要メンバーも交えて今回のイベントの想定外の事態についての原因の確認と対策の他、被害を受けたイベント参加者たちへの補填を決める為の場だ。
それなのに実際に居るのは本部長とその補佐の他は広い会議室には監査役員しかいない。
「彼らはダメです。彼らは今回の事を何もわかっていない。
最初こそ非常事態だと慌てていたようですが、イベントが終わる頃にはまるで大成功だったというように盛り上がってましたよ。
そんな彼らが居ては話にならないので、この会議から締め出しました」
「そうか。つまり彼らはそのカイリという人物の行動について肯定的なんだな?」
「残念ながらそのようですね」
「そうか……」
はあぁ、と深く息を吐く本部長。
そして内線電話の受話器を取ると主要メンバー全員に今すぐ会議室に来るように伝えた。
5分とかからずに集まったメンバーを見回した後、再び本部長は口を開いた。
「アルティメットサイバーフロンティアはわが社を挙げての一大プロジェクトだ。
いまやVRの発展はゲームの域を超え、1つの世界を創造するに近しい。
プレイヤーは決められたルールに従って、決められたシナリオの通りに、決められた結果を生み出す為の行動をする。そんな時代はきっと終わったんだろう。
確かに我々は数多くの布石を配置し、イベントを提供し、よりプレイヤーが楽しめるにはどうすればいいかを考え手を打っている。
それはあの世界を活性化させるためであり、決して我々の思い通りになるようにコントロールする為ではない。
そうでなければいつかこう言われるだろう。
『あそこは運営の機嫌を損ねたら消されるぞ』
とな。
そうなればプレイヤーの自由は失われ運営の顔色をうかがって怯えて活動することになる。
そうして潰れたゲームや会社が幾つもあるのは皆も知っての通りだ。
前置きが長くなったが、以上の事から私はこのカイリという人物を含めプレイヤー達に規約や法を犯した場合を除き制限を掛けることに賛成は出来ない。
もし彼が世界を滅ぼそうとするのであれば、我々が行うのは精々それに対抗しうる存在を送り出すことだろう。
それを踏まえて改めて対策を検討してほしい。
私からは以上だ」
「「はい、ありがとうございます!」」
そうして開発メンバーは深夜にも関わらず、意気揚々と会議室を飛び出していった。
残った監査役員に本部長はこういった。
「社として厳しい意見を言う者も必要だ。
新種かと思ったら癌だった、などという事もあるかもしれない。
楽観的な意見もあって良いが誰かが嫌われ役になって警鐘を鳴らす必要もある。
どちらかだけではいけないよ。
だから君の活躍にはこれからも期待している。
今後も意見があればいつでも挙げて欲しい」
「はっ。では早速彼らのガムシロップのような案にハバネロを投入してきます」
そう言って監査役員も颯爽と会議室を後にした。




