表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/162

世界は動き始める

遅くなりました。

m(_ _)m


ディーネさんの歌を聞いた畑はそのまま動き出し、まるでゴーレムのようにヒトガタになった。

なんてことはなく。程なくして元の静かな畑に戻った。

ただ以前と違うと言えば。


(じーー)


何となく畑から視線を感じるのは気のせいだろうか。

畑のステータスを確認してみればレア度と品質の所に+5の文字が付いてて、状態は歓喜に変わっている。

……完全に心が芽生えているようだ。今もちぃズが畑に向かって楽しげに鳴いているので、精霊は会話が出来るのかもしれない。


「ふぅ。無事にダーリンの役に立てたみたいね」

「うん、期待以上の成果だ。どうもありがとう」

「ふふっ、どういたしまして」


うーんと伸びをして一仕事終えたって感じのディーネさん。

その肩にぽんっと手を置いて俺はディーネさんに告げた。


「じゃあ次に行こうか」

「つ、次?」

「うん。畑はここだけじゃないから」

「えぇ?ちなみに幾つあるの?」

「ちょっと待って。えっと、死糸花の花畑にホッケ族の畑にヤドリンの岩礁と、地上にも1、2……、あ、この前サクラさん達に頼まれて雲の上にも畑作ったっけ」


それ以外にもバロンソさんの紹介で幾つかの村にも畑を作ってるし、他にもダンデから武国の砂漠の緑地化計画を頼まれてるから、まだ増える予定だ。

まあ幸い最初だけ俺が耕せば後は現地の人達で維持することが出来るからそこまで大変じゃない。

そうじゃなかったらこんな大量でしかも飛び地になっている畑を管理することなんて出来なかっただろう。


「さ、(みんな)が待ってるよ」

「ちょ、引っ張らないで~」


そうしてディーネさんを連れ回すこと10日。

ようやく一通り回ることが出来た。

なぜそんなに時間が掛かったかといえば、行く先々で大勢の人達に囲まれてしまったからだ。

大半の人は「お陰で飢える事がなくなった」「これで安心して年を越せる」と感謝を伝えてきたが、中には不満や愚痴を言いに来る人も居た。

やれ自分の所の畑は不作だ。簡単に豊作にするにはどうすればいいのか。

やれ品種改良がうまく行かない。レシピ本は無いのかとか。

そういった人達に俺が伝えることは1つだけ。


「俺は【はじまりの鍬(これ)】で耕してきただけです。良かったらお貸ししましょうか」


そうすると決まって「そんなゴミで耕せるか」とか「俺達を騙す気だろ」とか「技術を独占する気だな」とか反論が来る。

それを聞いたディーネさんがぶちギレてしまったから更に大変だった。


「あらあら、困ったわねぇ。

質問すれば何でも教えてもらえるのは幼い子供だけよ。

あなた達は大人に見えるけど中身は赤ん坊並なのかしら」


そう言われた人の多くは苦々しい顔で引き下がったけど、中には血の気が多い奴もいて襲い掛かって来ることもあった。

とは言っても所詮は戦闘経験のほとんど無い農民。俺とディーネさんの敵ではない。

というかディーネさんの呪歌というのかな?甘くささやくだけで金縛りになったり泡を吹いて倒れたりと凄かった。

そして返り討ちにしてなお文句を言われる場合は最後にこう言っておいた。


「それ以上俺の気分を害するなら、俺が耕した畑を元の荒地に戻して2度と来ないけど良いよな」


これを言えば大抵は周りの連中が顔を真っ青にして総出で文句を言ってる奴らを排除してくれる。

ただそれでも1回だけ収まらなかった事があった。

多分そこに居たほとんどの人がただの脅しで本当はそんなこと出来っこないと考えたんだろう。

その結果。風の噂ではそこの村では、たった2日で一切の作物が育たなくなって呪われた村と呼ばれているらしい。

って、それだと呪ったのが俺になるじゃないか。

何もしてないのに酷い話だ。風評被害も甚だしい。

俺はただ畑とそこに住んでいた精霊達にお別れを告げてきただけだと言うのに。


それはともかく、ディーネさんの協力とみんなの各国での活躍もあって竜宮王国の保有資産が倍増してしまった。

最初は余ってるお金を有効活用して消費しようってしてたのに困ったものだ。

あ、そうそう。

そのディーネさんだけど何か用事が出来たとかで何処かに行ってしまった。


『ダーリン、お土産楽しみにしててね』


と言ってたから、しばらくしたら戻ってくるだろう。

ちなみにディーネさんのコンサート島もいつの間にかグレイル島沖から姿を消していた。

まあこっちに関しては毎日のように掲示板を賑やかしているから大体何処に居るかはわかる。

どうやらグレイル島と4大国家の間を周遊しているようだ。

今はディーネさん本人の代わりに影武者が歌ってたり、歌に合わせてダンサーが躍ってたり、アイドルの卵が出てたりするらしい。

その話を聞いた多くのプレイヤーが4大国家を拠点に北へ船を漕ぎ出しているみたいだ。

実際、グレイル島にも何隻かプレイヤーの船がたどり着いている。

今のところ悪さをする人も居ないので簡易的に作った港は誰でも自由に出入り出来るようにしてあるけど移住許可までは出してない状態だ。

あとその人たちの中に愛国経由で来たのかリースを知っている人も居て、リースの事を『地獄の~』と呼ぼうとしたところでリースに蹴り飛ばされていた。

それを見た周りの仲間達は「流石、料理長。格好いい」と口を揃えて言っていたのでリースはなかなかに有名人みたいだ。

そんなこんなで色々あった1週間だったけど、最後は運営からのアナウンスで締め括られた。


【皆様にご報告ならびにイベント開催のお知らせを致します。

この度、4大国家以北のプレイヤー人口の増加に伴い、予定していた一部のイベントを前倒しで開催することが決定しました。

メインイベントは10月24日20時~23時の開催となります。

またその前哨イベントを10月10日20時~23時に開催致します。


イベントの種別は防衛。世界規模で北から侵攻してくる魔物からの防衛並びに撃退が本イベントの目的となります。

なお、前哨イベントを含め防衛に失敗すると、最悪4大国家を含む多くの国家が壊滅的な打撃を受け滅亡します。

そうなりますと皆様の今後の活動についても大幅に制限が掛かりますので、積極的に参加されることをお勧めいたします。

(前哨イベントでは4大国家だけは半壊以上にはなりません)

また高難易度イベントでもありますので進化を済ませた状態での参加もお勧めいたします。

イベント領域は4大国家からグレイル島までの全域で、より北側での防衛に成功することで被害を抑えることが可能です。


詳細につきましては公式サイトをご確認ください。】


どうやら遂に北の結界が限界に達したらしい。

後書きのねぐら


はぁ、退屈だ。

面倒な仕事を放り出して来たってのに、こっちの奴らときたら根暗で引きこもりばかりで遊びに出掛ける奴なんて全然いねぇし。

外の魔物なら俺様が何とでもしてやるって言っても聞かないし。

まぁ、俺様の洗脳(ことば)が通じるのは上級未満の魔物に限られるんだが。

それでもヤバい奴に襲われたら下級の魔物をけしかけて逃げればなんとかなるってのに。

そもそも俺様が遠路はるばる遊びに来たんだぞ?

こう旨いもので持て成すのが普通だろうが。

ほんっと、こっちの奴は気が利かないし飯は不味いんだから参っちまうぜ。


モシャモシャ


ん?

ちょ、お前なに食べてるんだ?

なに、海ニンジン?そんなの何処から手に入れてきたんだ。

南から泳いできた?いやいや。ニンジンが泳ぐ訳ないだろ。流れてきたなら分かるが。

それに生のニンジンなんてエグくてハイソな俺様の口には合わないんだよな。

は?甘くて美味しい?それにニンジン以外も色々泳いできてる?

いやだから泳ぐって。ああもうそれはいいや。

とにかく俺様にも何か持ってこい。あ、ニンジン以外でな。


……って、なんじゃこりゃあ!!

旨すぎだっ!!

俺様が向こうに居た頃にはこんなの無かったぞ。

くそ、こうしちゃいられない。

南の海にすぐに戻る、ってダメだぁ。

なんか知らないけど最近あいつらが張り切ってるみたいで境界の結界が強化されてるんだった。

戻るときは下僕の魔物達を引き連れて盛大にと思ってたけど、そうも言ってられない。

こうなったら俺様だけでもあの道を通って……は?あそこだけ結界が弱い?しかも野菜達もそこから泳いでくる?

ばか野郎。それを先に言え!

よぉし、なら動ける奴全員に声をかけろ。

準備ができ次第、乗り込むぞ!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] カイリのせい?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ