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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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143/162

ディーネさんの事情

気を取り直してグレイル島の花畑に場所を移した俺達。


「お茶とホットケーキをどうぞ」

「わぁ、ありがとう。いただきま~す」


問題の少女は出てきたホットケーキにドバドバとはちみつを掛けると美味しそうに食べ始めた。

それ見てるこっちまで口の中が甘くなりそうなんだけど大丈夫なのか?

まぁ本人は至って幸せそうだからいいけど。


「えっと、ディーネさんだっけ。

君はどうして封印なんてされてたんだ?」

「話をすると長くなるんだけどね。

かいつまんで話すと当時の私は世界をまたに掛けるトップアイドルだったの。

その実力と人気が評価されて神様になったんだから凄いでしょ」

「歌の神様?」

「正確には芸術全般ね。

芸術と感情と秋を司る深海の歌姫。それが私よ。

まぁ世間一般にはアイドルとしての面が前面に出てたから『音』と『乙』を掛け合わせて『乙姫様』なんて呼ばれたこともあるけどね」


ディーネさんは特定の場所に留まることはなかったから何処かの国に奉られたりはしなかったそうだ。けどその代わり世界中にファンというか信者がいたらしい。

海中は勿論のこと、地上でも何処にいってもディーネさんのファッションや歌を真似たり曲を演奏している人に出会えたそうだ。

それだけ聞くと称賛こそされ、封印には繋がらない気がするんだけど。


「もしかして余りにも人気が出過ぎて他の神様から嫉妬されたとか?」

「あはは~。だったらまだ良かったんだけどね。

あれは神様デビューして20年位経った頃かしら。

熱烈を通り越して狂信的なファングループが出来ちゃったの。

ストーカー行為は何処に行っても起こるようになったし、毎日私の私物が盗まれたり命を狙われたり。

笑っちゃうよね。

私の血を飲めば不老不死になって永遠に私と一緒に居られるとか本気で信じてたらしいわ」


もう毎日狂信者たちに狙われてたのよと言うディーネさんは笑いながら手は休まずにホットケーキを口に運んでいる。

いやこれ思い出話だから笑ってられるけど、実際に今自分の身に降りかかるのを想像したらゾッとするな。


「で、遂に嫌になって私はアイドルを辞めて海底に引きこもる事にしたの。元々私って深海生まれのセイレーンだしね。

そしたらあいつら今度は船に乗って近くまで来るわけよ。

もういくら温厚な私でも流石にぶちギレてね。近付く船を片っ端から歌で魅了して沈めてやったの。

そんなことを50年くらい? 続けてたら他の神たちに怒られたんだ。

けど、その頃にはもう納まりが付かなくなってたから、行けるとこまで行っちゃえってやってたら、当時の神様総出で封印されちゃったの」


同情の余地はあるし、最初に注意された時点で止めてれば封印される程ではなかっただろう。

他の神様もそれが分かっていたから殺すのではなく封印という形で反省を促したとも考えられる。

あれ、でも待てよ。


「確か感情を司る神様でもあるって言ってたよな」

「えぇ」

「じゃあその狂信者を生み出した原因もディーネさんの歌がその人たちの感情を侵食しすぎただけじゃないのか?」

「あはは~。バレちゃったか。

いやぁ、ちょっと試しに全力で魅了してみたらどうなるかなって思ったんだけど、修復不可能なまでに他の感情が壊れちゃってね。

気が付いた時には手遅れで元には戻らなくなったのよ」

「おいおい」


自業自得じゃないか。同情して損した。


「でもまたあの移動式コンサートホール?でファンを増やしてたら同じことになるんじゃないのか?」

「大丈夫よ。さすがに2回は経験したくないからちゃんと制御するし。

何より今は私自身が夢中になるものがあるからコンサートばっかりしてられないしね」

「夢中になるもの?」

「もちろんダーリンの事に決まってるじゃない」

ピシッ


あれ、そのネタまだ続いてたの?

リースの方にも再び黒い炎が燻り始めてるからって。あ、これもしかして。


「ディーネさん。ひとまずリースに洗脳的な何かをしたのなら解いて欲しいんだけど」

「え、ああ。きっと私のすぐ近くでずっと歌を聞いてたからちょっと情緒不安定になってるのね。

大丈夫、明日くらいにはいつもの状態に戻るわよ」

「それなら良かった。もし実は洗脳してました、なんて話だったらディーネさんには再び封印されてもらおうかと考えちゃったよ」

「あはは~。ダーリンは真顔で怖い事を考えるのね」


冷や汗をかきながらホットケーキをパクパクと食べ続けるディーネさん。

まあ俺としては身内に危害を加えないのであれば多少の事は目を瞑るつもりだ。

強いて言えば俺の目の届かないところでやってくれと言うくらいか。

逆に言えば大切な人を傷つけるなら容赦しないけど。

と、遂に最後の1枚がディーネさんの胃袋へと収まった。


「ふぅ。ごちそうさま。

さてこんなに素敵なご馳走を頂いて魔力も全盛期とはいかないまでも回復したし、本来の用事を果たしましょうか」

「本来の用事?なんだ俺に会いに来たって言ってたけどその用事のついでだったのか」

「まさか。ダーリンに会うのが一番よ。用事っていうのもダーリンに宛ててだし。

ダーリンは早くてもあと数十年は続くと思っていた封印を解いてくれたのだもの。

ただお礼を言うだけで帰るなんて私の沽券にかかわるわ。

だからダーリンの望みを教えて。

私に出来る事だったら文字通りなんだってしてあげるわよ♪」


ウィンクしながら告げるディーネさんはきっとそういう人を誑かすような事を言わないと生きていけない人種なんだろうな。

しかしして欲しいことねぇ。

俺は小さくため息をつきつつディーネさんにしてもらいたいことを考える。

と言っても特にないんだよな。

基本自給自足で欲しいものは自分たちで何とかしてるし、強いて言えば来月以降にある北の魔物の襲来に備えることだけど、どう見てもディーネさんに戦力を求めるのは違う気がする。

歌で魅了して船を沈めていたって話だけど、北から来るのは船じゃないし魅了が効くとも限らない。

実は歌以外にも凄い力を持っている可能性もあるけど、戦力を期待するならシャガラ様とか他の神様の方が良い気がする。

ここはやっぱりディーネさんにしかお願いできない事の方が良いだろう。

そう考えた時に1つだけお願いしたいことが見つかった。


「ディーネさんの歌声を届けてあげたい相手が居るんだけど頼んでも良いかな?」

「あら、そんなことで良いの?もちろんお安い御用よ」

「良かった。じゃあ付いてきてください。あ、リースは気分が収まるまで料理とかしてて」

「え、ええ。そうするわね」


まだぼぉっとしてるリースをランプ達に預けると、俺はディーネさんを伴ってグレイル島を後にした。


後書き会談


流神シャガラ

「さて、今日集まってもらったのは他でもない、例の件だ」


水神ミクマリ

「例の件とはどちらを指しているのですか?いま大きな案件と言えば2つあるかと思いますが」


魚神ハタイ

「北の結界については集まらんでも、大体情報は共有しとるからもう一つの方やな」


流神シャガラ

「うむ。先日から妙な魔力を海底で検知していた件だ。原因が特定出来た。当初の予想通りだ」


水神ミクマリ

「ではやはり、何かの封印が解けたという事なのね。一体何の封印だったの?」


流神シャガラ

「数百年前に封印された魔神だ。【海底に誘う者】【永眠の歌姫】他にも幾つか二つ名がある。

話くらいは先代の神から聞いたことがあるだろう?」


魚神ハタイ

「また随分と危険な神の封印が解けたもんやな。

しかし、そない危険な神が復活したならもっと大騒動になっててもおかしくないもんやけどな」


水神ミクマリ

「いえ、ここ数か月の原因不明の海難事故。あれをやったのがその魔神だというのであれば納得いきます。

今のところ被害者のほとんどが独身男性と異界の人たちなお陰で大きく騒がれていないだけで、被害者は数百人は居るでしょう。

ただそれでも聞いていたかの魔神の逸話からすれば極々小規模ですが復活したてで魔力などが回復出来てないだけかもしれません」


魚神ハタイ

「なるほど。魚人族の方はそう言った被害は無かったから気にしとらんかったわ。

むしろわてはカイリの奴が放流してる農作物の精霊の対応でてんてこ舞いや」


水神ミクマリ

「あら?どこも食料事情が良くなったと聞いていたけど、迷惑しているの?」


魚神ハタイ

「魚人族としては噂通りや。まぁオマケで魔物たちの食料事情まで良くなった分、ちょぉっと魔物も強力になってしもうたが、腹が満たされてる分、暴れる奴も少なくなったからトントンやな。

ただ問題はその先や。

誰も彼もが自分たちを助けてくれた恩人に感謝を伝えたいが、どこの誰かがさっぱりわからん。どうか取り次いでくれってわての所に殺到しとるんよ。

今はカイリのところもそんな大勢で押し寄せられても困ると思って、わての所で止めとるがな」


流神シャガラ

「ふむ。それは嬉しい悲鳴というものだな。

さて話を戻すが、その魔神の行方も掴めた。

何故か今はそのカイリのところで逗留しておるようなのだ」


水神ミクマリ

「あら。まさかカイリさんを篭絡して操っているのでしょうか。

もしそうなら他の神々にも連絡をして早急に対処しなければいけませんね」


流神シャガラ

「いや、そうではないようだ。

どちらかというと逆に魔神の方がカイリの傘下に入った状態だ。

今のところ、特に悪さをする様子もないし、例の海難事故も無くなっている。

強いて言えば魔神所有の島に頻繁に人が出入りしているようだが、娯楽の提供以上の何かではないらしい」


魚神ハタイ

「あっはっは。魔神ともあろう者がただの人間に従っとるのか。

まさかカイリの所の食べ物に魅了されてたりしてな。

まぁそんなことあらへんやろうけど」


水神ミクマリ

「……ありえるわね」


魚神ハタイ

「は?」


水神ミクマリ

「彼の所に行くと毎回ハチミツを使ったデザートや最高級の食材を使った料理が出てくるのよ。

絶滅したと言われていた秘薬の材料を使ったハーブティーもあったりして、行くたびに自分の神格が微増するの。

だから私も暇を見つけては遊びに行っているわ」


流神シャガラ

「言われてみればお主の魔力が以前よりも更に澄み切っているな。

そうか……我も最近鱗の調子が良くなかったのだ。

様子見がてら近々伺ってみる事にしよう」


魚神ハタイ

「ちょっ。そういう事ならわても行くで!!」




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― 新着の感想 ―
[一言] 類は友を…(re)
[一言] 何か、すごい悪名轟いた神様だったんだな
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