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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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うふふふふっ

ようやく帰って来た主人公。

今回はリハビリを兼ねたネタ回です。

Side カイリ


気が付けばもうすぐ10月。

9月の大型アップデートから1か月近くが経ったことになる。

ダンデの話によれば、攻略組の8割近くが進化を完了させているらしい。

当然ダンデ達も進化を終えている。

進化後の姿を見せて貰ったら筋肉ムキムキになりつつ髪の毛が燃えていた。

残りの2割は?と聞いてみれば特殊進化を狙っているそうだ。

ただ未だに特殊進化したという報告は聞こえてこないので、もしかしたら11月以降に追加のアップデートか情報公開があるんじゃないかと言っていた。

いや、サクラさん達が既にその進化を達成してるんだけど。

先日聞いた話では自在に飛べるようになるまでもうちょっと掛かりそうだと言っていた。

他のうちのメンバーだけど、ウィッカさんは法国で環境大使に進化したそうだ。今は法国で農地改革と公害問題への対応を行っている。

レイナは愛国で聖縫士に進化出来たと喜んでいた。見た目だけで言えば今までよりもちょっと格好よくなって各種パワーアップしたそうだ。


『変なヒーローにされなくて良かったです』


と胸を撫でおろしていたけど何の事だろう。

そしてリースは、その、なんだ。進化出来なかったらしい。

あ、いや。この言い方だとリースがダメな子みたいだ。

本当は、そんなことはない……はずだ。うん。

まぁそれは冗談として。

リースは愛国で何があったのか神敵に認定されていた。

まったく俺にはもう少し常識的な行動を取ってとか言ってるのに人のこと言えないと思う。

そのリースだけど、現在は海中を進む島に乗って北、つまり俺達の島に向かっている。

おおよその初期位置と航行速度からもうすぐ着くはずだ。

なので俺は島の南端から海に潜った所で待っていた。

周りには何が起きるのかと王国にいる皆も集まってきていた。


「~~♪」


と、来たか。

水中だというのにポップな音楽が流れてきた。

それを追うように巨大な影が現れ、そして海面へと浮上していく。


「って、こっちに来んのかい」

「きょきょっ」

「……くぃ」


思わず突っ込みを入れてしまった。

しかしそのすぐ後に、島の底から2人の女の子が飛び出してきた。

ひとりはリースみたいだけど、もうひとりは誰だ?

疑問に思う俺をよそに、その見知らぬ女の子は俺に向けて猛スピードで突撃してきた。


「ダーリン、会いたかったわ!!」

「へ? ぐふっ」


スピードを一切緩めることなく俺のボディにタックルもとい抱き付いて来た。

これイカリヤで慣れて無かったら危険だったな。

まあそれはともかく、近くで見てもやっぱり知らない子なんだけど。

見た目はまあかなり可愛いと思う。


「えっと、誰?」

「えぇ~~ヒドイ。あの日のことを忘れたの?

あんなに激しくアタックしてきてくれたのに」


謎の少女は俺に抱き付いたまま上目遣いで目をうるうるさせている。

健全な男子ならなかなかに嬉しいシチュエーションじゃなかろうか。

ただ残念ながら今の俺に喜んでいる余裕はない。

何故ならば。


「カイリく~ん」

「は、はい!」


少し遅れてやって来たリースがこめかみをピクピクさせて立っていた。

背後にどす黒いオーラが見えるんですけど、新手のスキルですか?


「うふふふふっ」

「あ、あの。リースさん?」

「説明、してくれるんでしょう?」

「いや、俺にもさっぱり分からないんだけど。

思い返してみても、全然身に覚えがないんだ」

「えぇ~、ダーリンそんなこと言わないで!

『君の為ならどんな分厚い壁だってぶち壊してみせる』って私を暗い闇の底から助けてくれたのはダーリンなのよ。

私を愛してるから危険を省みずにあんなことしてくれたんでしょう?」


油を注ぎまくる謎の少女。

うーん、ダメだ。何度考えてもそんな場面は記憶に無い。

こういう時はみんなにヘルプをって、いつの間にかばっちり離れてるし。


「ちょっ、リース落ち着こう。話せばわかる」

シャキーン、シャキーン


ヤバい。返事がないままにリースが包丁を抜いてしまっている。しかも目が虚ろだ。

ここで選択を間違えればデッドエンド間違いなしだ。

心なしこの謎の少女も顔を青ざめているから、かなりマジだ。


「え、えっと。助けたって言ってたけどいつ頃だろう?

それと一度離れてもらっても良いかな」

「そ、そうね。私はまだ死にたくないし」


そう言ってススッと離れる少女。いや私はって、俺も死にたくないぞ。


「で、なんだっけ。

……あぁそうそう。あれはもう2ヶ月半前になるわね。

突如彗星のように現れたダーリン。

並み居る魔物を薙ぎ払い、私を封じていた岩山を粉砕すると何も言わずに立ち去っていったの。

格好良かったわぁ」


2ヶ月半前っていうと夏休み前か。

あの頃に岩山を粉砕?

……ああ!


「あの時か」

「思い出してくれたの?」


あれは確かイベント島に移動するためにイカリヤと一緒に移動してた時だ。

スピードを出しすぎたイカリヤが操縦を誤って海底の岩山に衝突してた。

その時はイカリヤに目立った怪我も無かったからそのままイベント島に乗り込んだんだよな。


「って。思い出してみても結局俺は君と会ってなかったぞ。

一方的に君が俺を見てただけじゃないか?」

「そう言われれば、そうかもしれないわね」


よし。これで俺の無実は証明された。

リースも納得……シャキーン……してくれてない!?


「ダーリン、ああなった女の子に理屈で訴えても無駄よ」

「いや、そんな冷静に言われてもな」

「カイリくん?」


ふらぁっと半眼のまま近づいてくるリース。

もうちょっとで必殺の間合いに入るな。

こうなったら俺もなりふり構っていられない。

理屈でダメなら感情に訴えるか実力行使だ。


「えいっ」

「え、わぷっ」


近付いてきたリースを抱き寄せて、ギュッと抱きしめる。

恋人設定が無かったらセクハラでBANされそうな行為だけど、今なら問題なしだ。

ただ、やってみて思ったけど、リアルと違って女性特有の柔らかさも無ければ匂いも何もないから残念極まりない。

例えるならサンドバックを抱きしめてる感じか?

まあそれでもリースには効果があったらしく、バタバタと藻掻いたかと思ったら手に持っていた包丁を仕舞って抱き返してきた。


「ひゅーひゅー、お熱いねぇ」

「きょきょっ」

「ぴぴっ」


そんな俺達を周りのみんなが囃し立てる。

それに耐えられなくなったのか、リースが慌てて俺を引きはがした。


「はふぅ~~」


顔を真っ赤にして息を荒げてる姿も可愛いと思ってしまうのは贔屓目が過ぎるかな。

とにかく無事に生き延びたのは良いんだけど。


「結局何だったんだ?これ」

「えっと、ドッキリ?」

「そうそう。浮気がバレてリースがキレたらダーリンはどんな反応するのかなって思って。

結果は御覧の有様で、逆にリースがドッキリさせられてたね~。あははっ」


さっきとは打って変わって適度な距離感を取って笑う謎の少女。

まあ何かあるとは思ったんだ。

いくらリースでもあんな簡単に暴走はしないだろうからな。


後書き日記 リース編


9月26日


ディーネと出会った次の日。

海中を進み続けるコンサート会場は北へ北へと進んでいく。

周囲がだいぶ明るくなってきたから水深100メートルくらいかな?

そして心配していたログイン後またライブに付き合わされるのかと思ったらそうでもなかった。


『適度にのどを休めるのも大事な歌手のお仕事よ。ぶっちゃけ歌うのって疲れるしね』


ディーネは笑ってそう言ってたけど、私は歌手じゃないからね?

さて、時間があることだし今のうちに確認しておこうかな。

私はディーネの肩を掴んで質問を投げかけた。


「ねぇディーネ。ダーリンに会いに行くって言って北に向かってる訳だけど、そのダーリンって誰の事?」

「ちょ、リース? 顔が怖いわよ」

「気のせいじゃない?それより北にあるのってグレイル島よね。

そこに居る男性って言ったらカイリくんくらいしか思い浮かばないんだけど」

「なんだ、分かってるんじゃない」


やっぱりカイリくんの事か。って、いったいどういうこと?

ダーリンってつまり恋人や夫に向かって言う呼び方でしょ?

逆を言えばディーネはカイリくんの恋人や妻に当たるの?

今までカイリくんからそんな話は聞いたことは無い。

もちろんゲーム内の話ではあるけど心のモヤモヤは晴れない。


「カイリくんどういう関係か吐いてもらいましょうか」

「痛い痛い。リース、爪食い込んじゃってるから!

ちゃんと説明するからまずは手を離して」


おっといけない。力を入れ過ぎたみたいね。

そうしてディーネの話を聞いてみれば何という事は無い。ただの片思いだった。

いや、ただのと言ったらディーネに悪いわね。

でも少なくともカイリくんの方はディーネの事を知らないはずだという。

とそこでディーネが悪だくみを思いついたような顔をした。


「人の本音ってピンチの時こそあからさまに表に出るものなのよ。

ダーリンは例えば修羅場になったらどう行動するのかしらね。

何とか言い逃れをする?それとも笑ってごまかす?暴力で解決しようとする人ではないと信じたいけど。

リースもちょっと気にならない?

ダーリンほどいい男なら色んな女性からモテるだろうし、一時の気の迷いとかもあるかもしれないよね」

「いやカイリくんに限ってそんなことは無いわ」

「本当に?可愛い子に抱き着かれたらコロッといっちゃうかもしれないわよ?」

「だ、大丈夫よ。きっと」

「ふふん、ならちょっと試してみよっか」


そう言うディーネに言いくるめられて一芝居打つことになってしまった。


え、私が出てくるのが早過ぎた?

仕方ないじゃない。カイリくんに他の女の子が抱き着いたんだもの。

居ても立っても居られなかったのよ。



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― 新着の感想 ―
[一言] ヤンデレの素質あり
[一言] 芝居じゃないだろもうそれ
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