愛と正義と……
愛国編はかなり迷走しそうな予感がしてます。というか若干ネタに走るかも。
あと後書きは本編で入れられなかった余談です。
Side リース
私とレイナはウェディングドレスを作りたい&着たいという望みのもと、愛国を目指していた。
そして中央島から船に乗るのは恋人設定がされている人とその友人は特に何もしなくても良くて、なんともあっさりと愛国の港まで辿り着けた。
「なんかやけにあっさりと来れちゃったね」
「ですね。それだけ恋人設定機能を使っている人が少ないのでしょうか」
リンゴーン♪
「あ、今のって教会の鐘かな」
「そうですよ、きっと」
レイナと顔を見合わせてそんな話をしながら船を降りて街中へと入った。
歩きながら改めて確認をと思ってステータスの恋人欄をこっそり眺めてみる。
顔がにやけるのは頑張って隠さないと。
しかし、まさにそれがフラグだったのか、私達の前にキラキラと輝く何かが現れた。
「うっ、なに!?」
「ま、眩しいです」
「はっはっは。ようこそ愛国へ。美しいお嬢さんたち!」
キラキラした何かから声が聞こえてくる。
どうやら人だったみたい。
何度か目を瞬かせると、ようやく目が慣れてきた。
そこに居たのは銀髪碧眼で高身長で金の刺繍が付いた白のスーツを着こなした、所謂王子様ルックの男性だった。
な、何というか、少女漫画から飛び出してきた感じの人ね。
そして何より恐ろしいのはさっきのキラキラの原因は日差しを浴びた銀髪とそれ以上に輝く白い歯だということだ。
(あの歯は何で出来てるのかしら。暗がりでも光ったらちょっと怖いかも)
残念ながら私は少女漫画は読むけれど王子様に憧れてはいない。
なので決めポーズしながらウィンクされても気持ち悪いだけだ。
……こういうのもセクハラっていうのかな?
「きゃーーっ。白銀の騎士様だわぁ」
「シルバ様~~」
「ほんと今日もステキねぇ」
「きゃーーっ」
周囲から上がる黄色い声。
あ、あんなのにもファンがいるのね。
「はっはっは。子猫ちゃん達は今日も可愛いね。
だけど少しだけ待っていてくれたまえ。
今は彼女らをエスコートしないといけないからね」
「いえ、お断りしま……」
「おっと、遠慮は不要だよ」
サッと手を差し出して話を遮ってくる。
く、ウザいわ。新手のナンパなのかしら。
「さぁ、お嬢さん達、お手をどうぞ」
「いえ、ですから……」
「そこまでだ!」
突如空から降ってくる制止の声。
今度はなに?
見上げれば屋根の上に人影。
「純情可憐な乙女を貴様に渡すわけにはいかん!」
「くっ、何奴!!」
「我こそは漆黒王子レイド様だ!
とうっ。シュタッ。
たとえ愛の女神が見逃しても我の目から逃げられると思うな」
自分の事を様付けで呼ぶ人にまともな人は居ない。
跳んだり着地するときの効果音まで自分の口で言ってるくらい筋金入りだし。
「きゃーっ、今日はダークプリンスまでいらっしゃるわ!」
「レイド様~、こっちを向いて~♥️」
「はっはっは」
うーん、こっちにも同じようにファンが付いてるのね。
というか、さっきのやり取り絶対初めてじゃないわよね!
何なのかしらいったい。
「さぁ、お嬢さん達。夢の時間へとご招待しましょう」
「だから間に合って……」
「待ちたまえ! 彼女らには先に僕が声を掛けたんだ。
後から出てきて掻っ攫うなど、僕の目の黒いうちは許しはしないぞ」
「ふっ。ならば決闘だな」
「望むところだ!!」
再び私の言葉を遮ったかと思えば、今度は私達そっちのけで2人で決闘を始めるらしい。
あの、私達帰っても良いかな?
それともこの2人を纏めて倒せば解決なのかしら。
「はぁ」
「……ねぇちょっと」
「?」
ため息をついていたら横から肩を叩かれた。
見れば見知らぬ女の人が立っている。
「決闘が始まると終わるまでこっちは無視されるの。
今のうちにあっちに行きましょう」
「あ、はい」
「ありがとうございます」
決闘の前口上を唱えている2人を横目に私達はその女性に続いてその場を後にする。
そして一息入れるために近場のカフェへと移動した。
「到着早々災難だったわね」
「助けていただきありがとうございます」
「良いのよ。あれはいつもの事だしね」
「……いつもあんな事してるんですか。はぁ」
どうやらさっきのあれはここの風物詩のようだ。
というか、女性プレイヤーが来るたびにやってるのだとしたら傍迷惑極まりないと思うんだけど。
あ、男性プレイヤーが来たらあれの女性バージョンが発生するのかもしれないわね。
「ま、全員に対してって訳じゃないのよ?
基本、恋人が居るにも関わらず恋人同士で来ない時にしか現れないの」
「あ、なるほど」
ある意味試されたのかな。
でもたとえ彼氏がいなくてもあれに付いていく人って相当レアだと思うんだけど違うのかな。
それに愛国っていうくらいだから国全体がラブラブオーラ全開なのかと思えば街並みはいたって普通だ。
特にピンク一色という事も無ければ所構わずカップル達がイチャイチャしているって事もない。
「あの、この国ってどういう国なんですか?思ってたのと随分違うんですけど」
「ふふっ。もっとエッチな場所だと思った?」
「あ、いえ。流石にそこまでは」
ラブホテルとか風俗街だらけだったら運営にクレームを入れるところだ。
「冗談よ。愛国と言っても愛だけじゃないの」
「というと?」
「愛の女神様が司っているのは愛と正義と医療と嫉妬なの」
「嫉妬、ですか」
「ええ。愛に嫉妬はつきものでしょう?
まぁ、神様にもポジティブな面とネガティブな面があるって事でしょうね。
だから愛一色とはいかないの。
それに、愛ではお腹は膨れないのよ」
「うわぁ」
リンゴーン♪
今も華やかに教会の鐘が鳴っているのに随分ぶっちゃけたわね。
いやまぁ確かに『愛さえあれば他には何もいらない!』なんていう人も居るけど、金の切れ目が愛の終わりとも言う。
離婚に至る原因の上位は寂しさと貧しさが8割を占めるなんて調査報告もあるほどだ。
円満な家庭を築きたければ、文字通り円(=お金)が満ち足りてる必要がある。
だから愛国とは言っても愛に現を抜かしている場合じゃないってことか。
何とも夢の無い話ではあるけど、それが現実ってことなのね。
後書き日記 サクラ編
9月25日
こんにちは、サクラです。
無事に鳥の神様を見つけて進化出来た私とツバキちゃんですが、現在は飛べるようになる為の特訓中です。
特訓の内容はマジでスパルタです。
始めた当初の特訓内容は「両手両足を縛って翼だけに意識を集中して動かせるようになれ」でした。
一応言っておきますが普通の縛り方ですよ?
これが出来るようになるまで2日掛かりました。
私達の周りでフブキとミゾレが応援してくれなければ最初で挫折してたかもしれません。
あ、フブキとミゾレというのは雛たちの名前です。
私と一緒に居る子がフブキ、ツバキちゃんと一緒に居る子がミゾレですよ。
もう雛と呼ぶには大きくなって鳩くらいのサイズになってますけど。
続いてそれが出来るようになったら魔物の居る場所に運ばれました。そう、縛られたままで。
翼が動かせるようになったとは言え、まだ飛べる訳じゃありません。
なのでバタバタと翼を動かして体の位置をずらしたり、微妙にジャンプしたりで逃げ回ります。
当然最初は全然逃げれなくて一方的に攻撃されたんですけどね。
ちなみにこの頃にはフブキ達は多少飛べるようになっていたので木の上から応援してくれてました。
それで無事に木の上までジャンプ出来るようになったところで次のステップ。
ようやくここで縛りプレイも終了です。
で、何をするかというと……雲の上から突き落とされました。
「頑張って飛ばないと死ぬからな」のお墨付きです。嬉しくありません。
私達は全力で翼を羽ばたかせて何とか地上に軟着陸ならぬ軟墜落。
最初はHPの6割が削れました。
そして今は何とか無事に着地出来るようになったところです。
これを続けて落下することなく飛べるようになったら次は鳥神様の眷属達とのアクロバット飛行と空中戦が待っているそうです。
さて、こんな感じで順調にレベルアップしている私達ですが、特訓の内容以外で一つ、大きな苦難が待っていました。
それは「ご飯が美味しくない」という事です。
毎食出される食事は麦がゆ(味付けはほとんどなし)とちょっぴりの野草。以上。
……え、どこの戦時中ですか?と聞きたくなってしまいました。
なぜそんな食事なのかと聞いてみたら雲の上では食料の生産が出来ないからだそうです。
大人の鳥たちは地上まで飛んでいって食事をするようですが、地上で狩った獲物はその場で食べてしまうので雲の上までは持ってきません。
「美味しいごはんが食べたければ早く飛べるようになることだ」
と言われましたが同時に安全に食料を生産出来るようになれば良いんだがな、と呟いてました。
食料生産と言えばカイリさんですよね?
あ、でも流石に雲の上で農業は無理でしょうか。うーんでもカイリさんなら行けそうな気もします。
雲の上を一部拠点化させてもらってカイリさんを招待し試してもらいました。
はぁ。流石に雲が土に変わったりはしないですよね。
まぁ最初からダメ元だったから大丈夫ですよ。
え、違う?ちゃんと畑になった?3日もすれば何かが収穫できるはず?
何が収穫できるかは1度も収穫したことが無いから分からないと。
そして3日後に出来たのは真っ白いイチゴ。
食べてみたら普通に甘くて美味しかったです。
雲の上なら季節とか関係なく年中育てられそうですね。
そしてそれを何より喜んだのは鳥神様たち。
その日ばかりは他の空の2神も呼んで大宴会です。
余りの大騒ぎのせいで地上では暴風と雷雨が吹き荒れていたそうです。




