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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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チート錬金術師?

ここから少しの間、主人公カイリはおやすみになります。

side ウィッカ


大型アップデートが終わったアルフロにログインすると、先に来ていたレイナちゃんに袖を引かれて草むらに身を隠すことになった。

何かしら。って、あぁ。カイリくんとリースちゃんね。


最近の風物詩。


本人たちに自覚があるかは分からないけど、気が付けばラブラブしてるのよねぇ。

……自覚が無いからバカップルって言うのかもしれない。ま、本人達が幸せなら良いでしょう。

ただ今日はそこに見知らぬ3人組。

沖に船も停まってるし、島の外から来たみたいね。

自力でこの島にたどり着いた人達って何気に初めてじゃないかしら。

まぁそれは良いとして後ろの2人。怪しいわ。なにあの直立不動の姿勢。まるで軍人じゃない。

別に軍人が悪いとは言わないけど時期が時期だからねぇ。

偵察に来たのかと勘繰ってしまうわ。

結局彼らはカイリくんに返り討ちにあって帰っていった。

ただあれで終わりとは限らない。

念には念を入れて調査に向かった方が良いわね。

そしてそう言ったどちらかと言うと暗部の仕事をあの子達に任せる訳にはいかない。

あ、カイリくんなら嬉々としてやりそうではあるけど、そうするとリースちゃんが付いていきそうね。

さて、法国にはどうやって行けば良いのかしら。


そうして中央島へとやってきた。

掲示板の情報ではここで渡航用のクエストを受ける必要があるそうだ。

私はひとまず冒険者ギルドでクエストの情報を聞くことにした。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」

「法国に渡る方法について伺いたいのだけど」

「はい、それであれば法国の大使館を訪ねて頂き、試験に合格した後に北側の港から船に乗れば行けますよ」

「試験?」


詳しく聞いてみれば、この世界の歴史を中心とした問題が出る筆記試験で6割以上の成績を出す必要があるらしい。

それって誰得なのかしらね。

あと試験に落ちても特にペナルティはなく、受験料を払えばいつでも何度でも受けれるとのこと。

受験料は1万Gと、まぁここまで来れるプレイヤーにとっては良心的な額。


「禁止事項とかはあるのかしら」

「いえ、特にはありません」

「試験の内容を事前に知る方法はある?」

「そうですね。中央図書館に行けば歴史書や過去問集が閲覧出来ますよ」

「分かったわ。どうもありがとう」


受付にお礼を言ってギルドを出た私はその足で法国の大使館に向かった。


「うーん、飾り気も素気もないわねぇ」


無骨な造り。

門前に立つ警備員の姿と相俟ってまるで刑務所か拘置所に見えるわね。

と、ここで見ていても仕方ないか。


「ようこそ法国大使館へ!」


10代後半と思われる青年にビシッと音が立ちそうな敬礼で応対される。

そういうお国柄なの?


「法国に渡りたいのだけど」

「はっ。それであれば試験を受けて頂く必要があります!」

「ええ。今すぐ受けられるのかしら?」

「はっ。受験料1万Gを払って頂ければ可能です!」

「じゃあお願いするわ」

「はっ。ではこちらへ」


受験料を払い、移動しながら念のためギルドで聞いたことを改めて確認をしてから受験室に入る。

あ、個室なのね。というよりもこの造りは取調室じゃないかしら。


「終わりましたら解答用紙を持って受付までお越しください」


そう一言残して案内してくれた男性は去っていった。

特に試験監督官はいないようだ。当然監視カメラもなし、と。

それならばと早速私は机の上にある問題用紙を確認した。


1分後。


「あの」

「はっ。って、もう終わられたのですか?」


たった1分で受付に戻ってきた私を見て目を丸くする男性。

あ、こういう表情も出来るのね。


「ええ。それでなのだけど、もう一度受験出来るかしら?」

「は?」


白紙の解答用紙を受け取った青年は更にぽかんと口を開けた。


「確か受験料を払えば何度でも受けれるのよね?」

「はぁ。そうではありますが……」


怪訝な顔をする男性を促して再度受験室へ向かう。

さっきとは違う扉を開ければさっきと全く同じ造り。

私は真っ直ぐに試験用紙を確認し、立ち去ろうとしていた男性を呼び止めた。


「ごめんなさい。もう一度受験出来るかしら」

「は、はぁ」


困惑する男性を無視してもう2回ほど同じことを繰り返した。


「ふぅ、どうやら今の私には難し過ぎたみたい。また来ますね」

「は、あ、もし良かったら島の図書館に行ってみてください。

確か受験対策コーナーのような場所が設けられていたはずですから」

「あら、それは新しい情報ね。どうもありがとう。早速行ってみることにするわ」

「……はっ。貴女に素敵な学びがありますように」


にっこりと笑顔でお礼を言うと、青年は若干顔を赤くして敬礼を返してくれた。

うんうん、最初に見た時に比べるとずっと人らしい感情が出てきたわね。

と、そんな感想を抱きつつ今度は図書館へと向かった。


「さて、受験対策コーナーは……ここね」


その棚には4種類の本しかなかった。


『試験に出る神様年表』

『試験に出る神様と法国』

『マンガで学ぶ試験対策』

『法国入国試験完全攻略本』


試しに法国入国試験完全攻略本を手に取って内容を確認してみる。

……流石完全攻略と言うだけあるわね。これ1冊あれば余裕で全問正解できそうだわ。

ま、折角だから他の3冊も見てみましょうか。

ふむふむ。あ、これは意外と面白いわね。

特に神様年表が、単純に年代と名前の羅列ではなく(それは完全攻略本に載ってる)、それぞれの神様の特徴からそれによって世界がどう動いたかまで分かりやすく説明が載っている。

しかし。こうして調べてみると意外と残念な神様が多いことが分かってしまった。

キリスト教の『7つの大罪』とは違うのだろうけど、それに近い事をしている神様も時々いて、そういった神様は他の神様に滅ぼされたり封印されたりしているそうだ。

時々そういった封印が解かれて世界が大変なことになったこともあるらしい。


「ってこれ、フラグよねぇ」


絶対ダンジョンの最深部とかで封印されている何かを解放して討伐イベントに発達する流れだと思われる。

もしくは秘境とかの誰も行かなさそうな所とか。

……まさかねぇ。うちに危なそうな子が3人も居るんだけど、大丈夫よね?

心配しても仕方ないのだけど。

それよりも今は試験を終わらせましょうか。



「ようこそ法国大使館へ!

って、またいらっしゃったのですか!?」


法国の大使館に行くと先ほどの青年がまだ居てくれた。


「ええ。試験を受けさせて頂けるかしら。

あぁ。あなたのアドバイス通り図書館に行ってきたから今度は大丈夫だと思うわ」

「ほっ。どうぞこちらへ」


不安そうな顔をして出迎えてくれた青年に安心するように微笑む。

そうして何度目かの受験室。

今回はきちんと椅子に座って試験問題を確認する。

……よかった。全く同じ(・・・・)問題だわ。

私は先ほど図書館で撮影してきた完全攻略本の画像を取り出す。

うんうん、全く同じね。

これでこの通りに回答して合格点に達しなかったら詐欺ね。


15分後。


「終わったわ」

「はっ。も、もうですか!?もしかしてまたダメだったのでしょうか」

「さぁ。解答用紙を確認して頂けるかしら」

「はっ、直ちに。

……あってる、あってる。これもあってる。

すごい、全問正解ですよ!」


まるで自分事のように喜ぶ青年。

もし彼が犬の獣人だったら尻尾がブンブン振り回されているかもしれない。

最初の印象は事務的で冷たい感じだったのに随分変わるものだ。


「そう、良かったわ。じゃあ今から、は時間が遅いから明日の便で行こうと思うのだけど船はあるかしら?」

「はっ。明日であれば北の港に停泊中のザクセン号を手配しておきましょう。

漆黒の鋼鉄船ですので一目で分かるかと思います」

「分かったわ、ありがとう」

「あの、それで今夜のご予定は……」


さて、法国はいったいどんなところかしらね。

って、あら?最後何か言ってたかしら。まぁ大丈夫よね。





後書き日記 ダンデ編


9月13日


翌日。

昨日は迷惑を掛けたな、ということでお詫びに色々と案内をしてもらえる事になった。

武国を渡り歩くなら徒歩は熟練者向けということで、乗り物を紹介してもらう。

これは、ラクダ?違った。ジャマルというらしい。

まぁ名前なんてどっちでも良いんだけど。

ただレンタル状態では戦闘には参加させられないらしく、戦いが始まったら一時的に安全な場所に逃げるか、体を硬化させて石に擬態して危険をやり過ごすそうだ。

騎馬戦がしたければ専門の牧場で買い取るか野生のジャマルを手なずける必要があるらしい。

うーん、ここを中心に活動を行うなら考えるけど、今はまだその時じゃないな。

ところで神様の神殿はどこにあるのだろうか。

ふむ、砂漠の中心部にあるんだな。

ただ中に入るには強力な門番を突破する必要があるみたいだ。

今の俺達で勝てるかどうかは五分五分と言ったところ。

それなら十分挑戦する価値はあるな。

あとそこまでは案内出来ないそうだ。

いやいや、ここまで教えてくれたら十分だ。


男達と別れた俺達はジャマルに乗って砂漠の中心部を目指す。

流石武国というべきか、出てくる魔物が強い。

蛇やサソリなどの猛毒を持った魔物の他、炎を纏ったゴリラに砂のゴーレム。

幸い足は遅いみたいだから逃げるのは問題なく出来るが、前に進むたびに魔物の数が増えて行く気がする。

これ以上増えるとマズいが。


「ちっ。囲まれたぞ!」

「10、20……50近く居やがる」

「おいおい、ハードモードなんてレベルじゃねえぞ」

「ジャマル達も逃げるのを諦めて硬化しちまったか」

「仕方ない。敵の薄い所を1点突破で突き破るぞ」

「「おおっ」」


そうして俺達が覚悟を決めた瞬間。

右手側に居たサンドゴーレムの頭が吹き飛んだ。

驚く俺達に渋い男の声が届く。


「よぉ。随分と集めたな。ピンチっぽいし、代わりに狩るぞ」


そこに居たのは褐色の肌とアラブ系の格好をしたおっさんだった。



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