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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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竜宮王国の武器

バロンソさんはグラスを一気に飲み干してから話を再開した。

あ、ちなみに今飲んでるのはソフトドリンクだ。

流石に商談中にお酒は飲まない。


「法国の事はまぁ警戒しておくとして。

最初の話に戻るが、土地を買って何をする気や?」

「まぁ一言で言えば畑を作ろうかと考えてます」

「畑やて?そないなもの作ってどうするんや」

「もちろん作物を作って売るんですよ」


リアルと違ってこの世界なら、土地を耕して畑を作れば数日で収穫まで持っていける。

もちろん最初の品質は残念なものになるだろうけど、土壌改良と品種改良を繰り返せば、早ければ1か月もあればそれなりの品質の作物が出来る見込みだ。


「俺の本業は農家なんです。

それも普通は畑に適していないところで畑を作ることを経験してきました」


海の中しかり。ダンジョンの中しかり。

そんなところで畑が作れるのもこの世界ならではって感じだよな。


「なので各国の使い途のない荒れ地で良いので安く広く手に入れて欲しいです。

あと一緒にそこで畑仕事をやってくれる労働力を土地の広さに合わせて2、30人雇ってください。

能力は問わないので素行が良くてやる気がある人なら大歓迎です。

家族ぐるみとかも良いですね」


俺の話を聞いて難しい顔をするバロンソさん。


「その条件なら確かに土地の確保は出来る。人も近くの村から出稼ぎを募集するなり、街で仕事に溢れたのに声かければ100でも200でも集まりますわ。

しかし幾ら農業の腕に自信があるっちゅうてもなぁ。

今時代、農業はローリスクローリターンやで?

普通は食糧難に対して国の政策で行うもので、つまりほとんどが赤字や」

「それは農業の神様がいないからですか?」

「分かっとるやないか。

せや。いつの時代もそれを司る神様がいる分野は伸びるし、それ以外は落ち込む。

それを繰り返して世界は回っていく。世の中そういうふうに出来とんのや」


聞けば50年以上前には農業と牧畜の神様がいて、今のラムラリア島の辺りを中心に祝福を与えていたらしい。だから今でもまだ南方はまだ農業が栄えている方だ。

その神様が引退されて代わりに神様になったのが今の商国の神様だ。

って、神様が引退って理由はもしかして老齢か?というか神様も歳を取るのかな。

まあ実際どうかはともかく、数十年スパンで神様が入れ替わるのは確からしい。

ただその交代周期は神様によってまちまちで、数年で交代する神様も居れば100年以上継続する神様も居るとか。


「50年ほど前に農業の神様が商業の神様と交代され、その数年後には水の神様が交代したんや。南の方の生産が今でも盛んなのはその神様のお陰でもあるなぁ。

あ、一番近いのだと海底の神様も交代してるで」


こうして聞いてると意外と頻繁に神様は交代しているのかもしれない。

と、だいぶ話がずれてきたな。


「以前読んだ本の話ですけど。

景気の悪い時ほど稼ぎ時なんだそうですよ」

「は?どういうこっちゃ」

「今は確かに農業に対する神様からの恩恵はないかもしれない。

でもそのお陰で誰も積極的に農業をやりたがらないじゃないですか。

独占とまではいかないですけど、かなりの範囲で市場に食い込むチャンスが今なんだと俺は思ってます。

農業で得た作物が無いと人は生きてはいけない訳で、絶対に買い手は居ます。

売れ残る心配が無い分、生産が軌道に乗ればリスクもほとんどないでしょう。

流石に天候や自然までは分からないので1年間雨が全く降らなくなったとか、大地震で全部がダメになったとかはどうしようも無いですけどね。

それに50年前に農業の神様が引退したのなら、また近いうちに農業関係の神様が出てきてもおかしくない。

その時に広大な農地を持っていればかなりの儲けになると思いませんか?」

「は~~なるほどなぁ。

近い儲けやのうて、遠く未来まで考えて、か。

カイリはんは時々若者とは思えん発言をしますわな」

「いやいや、見ての通りの若造ですよ。

ただちょっとそういう経営者の書いた本とかを読み齧ってるだけです」


王様になることが決まってから、帝王学とか経営学、経済学、権謀術数なんかも読み漁っている。

学校ではこういった事は教えてくれないからな。


「その読んだ本の中に『戦わずに勝つ方法』というのもありました。バロンソさんなら分かりますよね?」

「まあ商国(うち)と愛国の得意とするところやからなぁ。

って、それで農業か」

「そういう事です」


合点がいった顔をするバロンソさんに頷く

戦わずに勝つ。

分かりやすいところで言えば経済戦争だ。

宗教で相手国の国民を扇動してクーデターを起こさせる、なんてのも歴史を振り返れば何度も起きている。

その中で俺が武器として使うのが食糧だ。

極端に例えてみれば、国の食糧の9割を俺の国から買い付けていた場合、俺が一言「明日からはお前の国には売らない」と言えばその国は1年と経たずに飢餓状態に陥るだろう。

そこまで行かなくても、例え5割だとしても、それが何らかの理由で王が不興を買ったせいだと分かったらクーデターに発展する。

だからそうならないように協力的な態度を取るしかない。


「ま、それはついでで、人間お腹がいっぱいになってればまぁまぁ幸せになれるんですよ。

少なくとも隣人といがみ合ったりしない程度には。

人を不幸にさせる3大要素は『お金が無い事』と『愛されている自覚がない事』と『お腹が空いている事』ですからね」

「それもそうやな。それが無くなりゃ世の中平和や。

よっしゃ。そうと決まればいっちょバロンソ様の実力を見てもらおうやないか。

1週間もあれば最高の土地を買い上げてきてみせるで!」

「ええ、よろしくお願いします」


そうして握手を交わした俺は、前金として予算の半分をバロンソさんに渡しておいた。

その金貨の山を見てバロンソさんが目を丸くして「ちょっ。島丸ごと買えますやん!!」って盛大にツッコミを入れていた。


後書き日記 ダンデ編


9月12日


さて、特に問題なく武国の首都がある島へと上陸を果たした。

のは良いんだけど。


……暑い。


武国の首都は砂漠の島だった。

気温は恐らく35度を超えて40度近く有りそうだ。

幸い湿度は低いらしくジメジメとはしない。代わりに定期的に水分補給をしないと脱水症状の状態異常になる。

島の名前は『タクラマカン』。確か『生きて帰れない』って意味だっけ。それくらい過酷な島なんだろう。

ただそれよりも問題なのが。


……暑苦しい。


「だーっはっはっはぁ」

「ふんぬぁ!!」

「マッスルマッスル!」


声の大きい男たちは何が楽しいのか笑い声を響かせ、ここの挨拶なのかポージングし合う男たち。

そしてなぜか囲まれる俺達。

異界の戦士たちよ、一つ手合わせ願おうって。

いや求めてない。って強制イベントかよっ!

肩を組むな暑苦しい。


そして闘技場のような場所に連れて行かれた俺達。

1回戦は素手での格闘戦。2回戦は武器ありでのタイマン。3回戦は複数人どうしのチーム戦だ。

って何回戦まであるの!? 最初ひとつって言ってたじゃん!

幸いステータス的にそれほど差が無く、料理バフを付けたお陰で何とか勝てるんだが、流石に疲れてきた。

と思っていたところに救世主の登場だ。


「あんた。いったいいつまで遊んでるんだい!」

「幾つになっても子供みたいなんだからまったく」

「「げげっ。かあちゃん!」」


さっきまで鼻息荒く猛っていた男たちが顔を青くして縮こまっている。


「ほらっ、さっさと帰るよ」

「まったく異界の人たちが来るたびにやってんだから。

少しは相手の迷惑も考えなさいってんだよ」

「いてててっ、耳ひっぱらないでくれよぉ~」


まさに赤子の手をひねるように連れて行かれてしまった。

いつの時代も男は肝っ玉母ちゃんには勝てないってことなのか。

ただまぁ、ちょっぴり嬉しそうな顔をしていたから幸せな関係ではあるんだろうな。



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― 新着の感想 ―
[一言] 農業神に進化するフラグ…?
[一言] てか、国が攻めてきても、竜宮王国はメインが海なんで 上の島は実は氷山の一角なので、 竜宮王国を攻めたら海が敵に回るに等しいよね?
[一言] 母は強し
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