お金の使い途
途中から後書きの内容を別ページに下書きとして残すようにしてるんですが、そっちがそろそろ5万字を超えます。(多分第1話から加算すれば超えてます)
元々は主人公以外の視点の話を書く事で、単調な世界をカラフルに彩れたら良いなと始めたんですが、すごいボリュームになってきました。
(ちなみに2つくらい前の作品では次回予告を載せてたんですが、今回を書いてるときはまだ次回は未定な場合が多くて大変でした)
みんなと別れて俺が向かった先がどこかというと……
カランカランッ
「「おかえりなさいませ(にゃん)。ご主人様☆」」
扉を開けた瞬間に届けられるソプラノボイスの「おかえりなさいませ」の声。
ひらひらフリルとゴシックなデザインの制服に身を包んだ女の子たち。
しかもちらほらと猫耳や犬耳を付けた人獣の子もいる。
そう、ここはメイド喫茶だ。
って違うから。
心配になった俺は応対に来た人獣のウェイトレスの子に聞いてみた。
「……ここってウィッカさんが経営しているバーだったよね?」
「そうだにゃん。ご主人様はオーナーとお知り合いですにゃん?」
「うん。そうなんだけど、さっきの掛け声はどうしたのかな。
先月来たときは普通の応対だとおもったんだけど」
「とある筋からこっちの方がウケるって聞いたにゃん。
実際に取り入れてみたら売り上げ倍増にゃんにゃん♪」
「あーまぁ、男性陣は大喜びかもな」
店内を見れば鼻の下を伸ばしたおっさん達が大勢いる。
そう言えば一時期ボッタクリバーとか呼ばれてたって聞いたけど、この様子ならお客さんも納得の上で通ってるみたいだから大丈夫か。
ちなみに俺がここ、夏休み始めのイベントがあった霧隠れ島のバーにやって来たのはとある人に会うためだ。
その人物はえっと……あ、カウンターに居た。
「やあ、お隣いいですか?」
「……ええけど、そういう言葉はあっちの女の子にかけてあげなあかんで」
「今日はバロンソさん目当てに来たんですから良いんですよ」
「ちょっ。ワテにそっちの気はないで。
ってえ、最初会った時もこんなやり取りしたやないかい」
そう言いながら頬を掻くバロンソさん。
思い返せばそうだった。
猫の人獣で、もふもふしたら気持ちいいだろうなって思ったんだっけ。
「まぁまずは1杯奢らせてください」
「おっ。分かっとるやないか」
バーテンのお姉さんにバロンソさんのお代わりと自分用にミルクを1杯注文する。
あ、こういう時はお姉さんにも1杯奢るのが筋なんだっけ。違ったかな?
「じゃあ、再会を祝して」
「乾杯や」
出てきたグラスを持ってバロンソさんと乾杯する。
そうして一息入れたところでバロンソさんから話を出してきた。
「そう言えば聞いたで。王様になったんやってな」
「耳が早いですね。まぁ王様って言っても偉ぶる気はないんですけどね」
「今日会いに来たのもそれに関することかい?」
「いえ、国に関することですけど、ちょっと違います。
今日はバロンソさんにもうけ話を持ってきたんですよ」
「ほぉ。カイリはんなら期待できそうやな。ならちょいと奥に行こか」
「そうですね」
密談って訳じゃないけど、商売の話を誰でも聞いてるここでする訳にはいかない。
なのでお姉さんにお願いして奥の個室を使わせてもらう事にした。
「それで、どんな話なんや?」
「はい、バロンソさんは4大国家の事はご存じですよね?」
「まあな」
「俺はこれから4国全てで、ある程度の広さの土地を購入しようと考えています。
出来れば人も雇えれば言うことなしです。
でも何のコネもない俺が突然行っても門前払いされるのがオチだと思ったんですよ」
「ふむ。それでワテに間に入ってほしいってところかいな」
「話が早くて助かります。お願い出来ますか?バロンソさんには仲介手数料として購入代金の1割をお渡ししようと考えています」
「1割か。動く額を考えれば十分な儲けやな。しかし」
考え込むバロンソさん。
仲介だけなら危険も無いと思うけど。
「無理なお願いでしたか?でしたら……」
「いや無理やない。予算さえあれば可能や。
しかし受ける前に1つ聞かせてや。なんでワテの所に来たん?
確かにワテは商人やけど、結局カイリはんとはそれほどやり取りした訳やない。
もっと懇意にしてる商人とかも居ったんやないか?」
「ああ、そっちですか。
それは俺が知っている限り、バロンソさんが一番だと思ったからです。
霧隠れ島と他の島の間で商売をしているバロンソさんです。
なら4大国家に出入りするのもお手の物でしょう」
この島は先日のイベント期間以外は霧に隠れて通常の海上ルートでの出入りが出来ない。
かと言って町の中に転移門の類も見当たらなかった。
もしかしたら島の住民専用の転移門があるのかもしれないけど、それだって相当の信頼を勝ち得ないと使えないだろう。
俺?俺は海中を泳いできても良いし、ダンジョン9階層に作った畑が今でも俺の占有地になっているから転送門で飛んで来れる。
あ、バロンソさんも転送門で移動しているのかもしれないな。
いずれにしても、この島に他に外と交易をしている商人は居なかった。それはそう簡単に真似できる事じゃないからだろう。
「なるほど。まあまあ筋は通ってる話やな。
よし、ワテも商人や。この話、乗らせてもらいましょう」
「ありがとうございます。
あ、あともう一つ。これの価値ってどれくらいか分かりますか?」
そう言って先日レッゲリンさんにプレゼントしたのと同じハチミツの小瓶をバロンソさんの前に出してみた。
その瞬間、バロンソさんの全身の毛が逆立った。
「ちょっ。これをいったいどこで手に入れたんや!!」
「それは、まだ秘密です。ただやろうと思えばこんな小瓶じゃなくて大瓶でも用意出来ますよ」
「小瓶!?アホぬかしなや!!小瓶っちゅうのはお猪口くらいのサイズの事や」
「そうだったんですか」
俺の出した小瓶は400ミリリットルくらいのだから、多分10倍くらいかな。
あぁ、それでレッゲリンさんがあんなに大量のお返しを置いて行ったのか。
「それでどれくらいになりますか?」
「……残念だけどそれは売れませんわ」
「売れない?」
「そや。それは王様や神様に献上するレベルの品物や。値段なんて付けられへん。
で、もしかしなくてもカイリはんの国で生産できるっちゅう話やな」
「まぁ、そうですね」
「はぁ~~~~。戦争が起きるで、それは。
実際似たような事で過去に何度か小国が攻め落とされてるんや」
「そこまでですか」
どうやらこういった嗜好品は相当高価らしい。
しかもハチミツは美容と健康に効果があって若返りの秘薬とも言われている。
更には高品質のものはアサシンビーを始めとした必殺の一撃を持っていて集団で活動する蜂の魔物が守っている。
それもあって幻の秘薬とまで言われているそうだ。
まぼろし……多分ビットたちにお願いすれば定期的に手に入るんだけど。
「あれ、そうするとマズいのか」
「なんや。もうやらかした後かいな」
「はい。うちの島に法国の人が来たのでお土産にこれと同じものを渡してしまってます。
……マズいですよね」
「そりゃ激ヤバやな。あそこは軍事国家や。
さっき話した欲しいものの為に小国を併吞してきた筆頭や。
まぁ今は武国が睨みを利かせてるからすぐにどうこうって事にはなりにくいけどな」
「軍事国家って。そういうのは武国の領分なのかと思ってました」
「武国は個人の力に特化した国や。1000人の軍隊よりも一騎当千の武人を尊ぶ国やな。
国力だけ見れば大きな差は無いやろな」
そうやって聞くと武国はダンデが好きそうだな。
今度教えてあげようかな。いや、ダンデなら自分でもう情報取ってるか。
しかしそうか。
ここに来て新たな火種があるとか、やっかいだな。
後書き日記 ダンデ編
9月10日
新たに増えた4国は中央島からいける事はすぐに分かったけど、実際に行くためには幾つもクエストを達成する必要があった。
しかも向かう先ごとにクエストの種類も異なっていて、武国に行くには中央島のコロシアムでCランクまでランクを上げないといけなかったり、他にもボス討伐が必要だったりと時間が掛かった。
聞けば法国の方は筆記テストを受ける必要があるらしい。
それも一般教養だけじゃなく、このゲーム特有の法律であったり歴史なんかが問題に出てくるらしい。
それを聞いて一瞬無理だろうと思ったんだが、どうやら中央島の図書館に行けば問題集が閲覧できるらしい。
だけど、ゲームの中でまでテストとか嫌過ぎだろう。
それを聞いて武国を選んで良かったと改めて思った。
他、商国に行くには資産を構築しろとか高レアアイテムを入手しろとかいうクエストらしい。
そっちは、今の俺だとちょっと厳しいくらいか。時間を掛ければ行けるだろうけど。
愛国の場合は恋人が居る人とその仲人は無条件で行けるらしい。
あとは善行値だかカルマポイントだかの隠しステータスによって行けるかどうかの判定がされるとのこと。
多分盗賊たちはそのステータスに引っ掛かっていけないんだろう。
行きたいと思う奴がいるかどうかも怪しいけど。
ちなみに、これらのクエストを受けなくても自前の船で向かうことも不可能ではない。
ただその詳しい話を聞きに港に行った時に言われたのはコネが無いと密航者と間違われて撃沈される可能性が高いと言われた。
撃沈された場合はごく低確率で向かった先の島に漂着出来るそうだ。
泳ぎが得意なら何とかなるかとも思ったけど、高確率で海の魔物に襲われるからやっぱりやめておいた方が良いと言われた。
後は幾つか変な噂も流れている。
一つは北に向かった船が遭難する事件が増えているらしい。
原因は不明。プレイヤーの船だけじゃなく、一般の漁船も通常よりも遭難率が上がっているそうだ。
後は、最近になって浜辺に野菜が漂着するようになったらしい。
一瞬さっきの遭難した船の積み荷じゃないかと思ったんだけど、別ものとのこと。
ただ目を離したすきに無くなってることもあるから、もしかしたら新種の魔物の可能性があるとして注意が呼びかけられている。
見つけても不用意に近づかない方が良いそうだ。
他にも幾つかあるが、まぁとにかくこの先新しいことが盛りだくさんって事だな!




