それぞれの行き先
昔の話と齟齬が出てないかちょっと心配ですが、気にせず突き進んでます。
あと、ギャンブルネタは苦い思い出ですね。
さて、幾つか課題というか、今後のやることが出来たな。
あとはどれから手をつけるか、だけど。
「ひとまず俺は進化とは無縁だから。そうだな。お金の使い途を考えるよ。一応案もあるし」
「案って?」
「ギャンブルに手を出しちゃダメよ」
真っ先にギャンブルが出てくる辺り、流石ウィッカさん大人だなぁなんてちょっと感心してしまう。
しかし、ギャンブルかぁ。
「しませんよ。ギャンブルは小学生の時に懲りました」
「しょ、小学生って」
「凄いですね」
「まぁ、といっても1回100円のじゃんけん大会なんだけど」
「「あぁ、あれですか」」
正月に親戚で集まっての遊びのひとつ。
全員で100円を出しあってじゃんけんで勝ったら総取り出来るというもの。
俺の場合は結局、最初の1回だけ勝って、後は負け続けたんだっけ。
子供の時は1000円でも大金だから、それが一気に手に入って失われていくのはかなり衝撃的だった。
「まあ、それはともかくみんなはどうする?」
「わたしはカイ……」
「リースさん、私と愛国に行きましょう!」
リースの発言を遮るように、レイナがリースの手を取って誘っていた。
いつも大人しいレイナがここまで積極的なのも珍しい。
ただこういう時のレイナって暴走しがちなんだよな。大丈夫だろうか。
「私ウェディングドレスって作ってみたかったんです!
そのモデルになってください」
「ウェディング……ドレス……。
いいわね!私も一度着てみたいと思ってたの♪」
「折角だから素材に拘ったりデザインも色々考えてみたいですね!」
「ええ。楽しみね」
一瞬で意気投合してしまった。
うーん、女の子の結婚式とウェディングドレスに掛ける情熱は男の俺にはいまいち理解が出来ない。ただ言えるのは、年齢や体重と同じで触れたら危険だと言うことだけだ。
あれはもう、そっとしておくしかない。
それを見てウィッカさんがぼそっと呟く。
「若いっていいわねぇ」
「いやいやいや。ウィッカさんもまだ若いでしょうに」
「そうなんだけどね。私はウェディングドレス、着てみたいとは思うけど、その後を考えるとちょっとねぇ」
その後って言うと結婚生活のことかな。
世の中、離婚率も5割近いし、一歩間違えると新婚まもなく冷めて(醒めて?)しまう夫婦も居るらしい。
それでも結婚はしたいという人が後を絶たないのは不思議だ。
「そういうウィッカさんはどうしますか?」
「私?そうねぇ。さっきのあの人達、特に後ろに控えてた人達ね。何処と無くお酒好きの気配があったのよ。だから法国に行ってみるわ。
もしかしたら美味しいお酒が見つかるかもしれないし、他にもお酒造りに役立つスキルや魔法なんかも見つかるかもしれないしね」
パチンとウィンクするウィッカさん。
これはつまり、さっきの人達はあれで終わりじゃ無さそうだから、ついでに調査してくるわって事だろう。
レッゲリンさんはともかく、ビットを見た彼らの動きは確かによく訓練されたものに見えた。
でもビットが近づくまで気配に気付かなかった所を見ると斥候ではないと思う。
じゃあ何だと言われると、うーん……なんだろう。
ま、その辺りも含めてウィッカさんにお任せしよう。
「あとは、サクラさん達はどうする?」
「私達はやっぱり、あれよね?」
「うん、あれだね」
頷き合うふたり。
どうやら前々からやることを決めていたようだ。
「カイリさんのお陰で水中はいつでも楽しめるようになったし、地上は今まで色んな所を巡って来たでしょ」
「もちろん、全部を回りきれたかって言われたら多分1/10も行けてないと思うんだ。
でも折角行ける可能性が出来たから私達は」
「「空を目指します♪」」
力強く胸を張って宣言する2人。
その笑顔は実に楽しそうだ。
「進化ともう一つ9月のアップデートで実装された変身システム。
先日の採掘イベントでは魚人っぽい姿になってましたけど、今度は鳥や翼竜みたいなのに変身出来ないかなって考えてるんです」
「動画サイトを見て知ったんだけど、私達が建国祭をやっている間にやってた夏祭りイベント?
あっちで進化システムが先行公開されてたらしいの。
その中にはジャンプの延長っぽいんだけど短時間なら飛べる映像もあったのよ」
「でも折角なら目指すのは雲の上くらいまで行きたいんですよね。
なので変身した上で進化もすれば十分可能性があるんじゃないかなって思ってるんです。
空の神様っていうくらいだから空を目指す途中で出会える可能性は十分ありそうですから」
「まぁまだどこを探せばいいかは全然わかってないんだけどね」
なるほど。
秘境や絶景を求めるふたりらしい目標だ。
しかし、空の神様の居所かぁ。
何かしらヒントがあれば良いんだけど。
「空に関係しそうなものの代表的なものって言ったら?」
「風とか雲とかかな」
「風神雷神なんてそれっぽいじゃないですか?」
「あとは雨とか虹なんかもありえるわねぇ」
「月神や太陽神は? あ、でも宇宙まで行くと行き過ぎかな」
「霊峰や断崖絶壁も空に近いかも。
ほら、鳥の祖先は崖から飛び降りて翼を手に入れた、なんて嘘みたいな話もあるくらいだから。
カイリさんも何度も溺れることで泳げるようになったので、試してみる価値はあると思うの」
「いやそれは死亡フラグだから」
幾ら俺でももう一度スキルを得るまで死に続けろと言われたら全力でごめん被りたい。
でも2人の情熱具合を考えるともしかするのか?
ま、まぁ本人の好きにしてもらう事にしよう。
あ、そうだ。
「サクラさん達にひとつお願いがあったんだ」
「なんですか?」
「きっと俺達の中でふたりが一番色んな所に出かけると思うから、もし出先で見つかったらで良いんだけど……」
「……わかりました。でも期待はしないでくださいね」
「うん。俺の方でも探すし、それでも見つかる可能性はかなり低いと思ってるから」
そうして俺達はそれぞれの目的の為に移動を開始した。
後書き日記 ダンデ編
9月6日
ようやくアルフロの大型アップデートが終了したので、さっそく俺はログインした。
それにしてもこの1週間は長かった。
待ち遠しかったというのもあるが、なにより海里と涼子のいちゃつき具合がな。
バカップルって意味じゃなくて、付き合いたての初々しさというかじれったさというか。
何度俺が海里の背中を蹴飛ばして涼子に嗾けようとおもったことか。
まぁ多分、1月もすれば適度な距離感を覚えるだろう。
さ、そんなことよりだ。
約1週間ぶりのアルフロの世界に降り立った俺は、真っ先にアップデート情報を確認した。
……って多いな。事前に予告してあった内容よりもかなり盛り盛りになってる。
その中でも目を引くのが2つ。
1つは各種族の進化についてだ。
これは自分の種族の国にある、というか新たに公開された聖域に行って試練を受ければ良いらしい。
ただ注意書きで、
『他種族の聖域でも進化することが出来ますが条件が難しくなります。
またそれ以外にも幾つか進化ルートが存在します』
だそうだ。
先日の夏祭りでのお試しの内容を振り返れば人と魔族のハイブリッドとかも出来るみたいだし、進化ルートによって新たに覚えるスキルも大きく異なるようだ。
そう考えれば安易に自分の国で進化するのは最後の手段か。
そしてもう一つのビッグニュースは新たに中央島から向かえる場所が4か所、いや正確には4か国あるって事だ。
プレイヤーが選べる種族も最初は4つだったが、数が一致していることに何か意味があるのだろうか。
ま、考えても仕方ないか。
とにかく今は進化を優先するべきか先に進むべきかをクランメンバーと話し合う事にしよう。
俺としてはこの武国というのが気になってるんだ。
ん?愛国?
やっぱり女子はそっちが気になるか。
だけどなぁ。どことなく地雷な気がするんだよな。
よし、まずはそれぞれの国に分かれて調査を進めるか。
で優先して攻略する国が見つかれば戦力を集中するってことで。




