竜宮王国を世界へ
さて、ここから新章だー!!
と思ったら真っすぐ脱線していく私ですw
いったいどこに向かうのか……
気が付けばあっという間に1週間が過ぎ、アルフロのアップデートも無事に完了したので、俺は早速ログインすることにした。
ちなみに今のログインポイントは、竜宮王国の城の一室だ。
まあ、城とは言ってもまだ大した調度品がある訳でもないのでただただ広い部屋って感じだけど。
城から出て農場へと向かうと、今日もせっせとみんなが畑を耕している。
うーん、1週間ぶりだからだろうか。
久しぶりに農場で働くみんなの姿を見ていると、最初この海溝に落ちてきた時がひどく懐かしく感じるな。
最初は畑も無ければ生き物もいない、本当にただただ海底が広がっているだけだった。
それが今はどうだ。
海底一面に広がる畑には謎の模様が描かれ、水中を泳ぐ採れたて新鮮野菜たちが楽し気に歌を歌い、鉢巻を付けた魚たちが手に持った槍で突きの打ち込みを行っている。
更に海溝の北側では立派な城塞が建造中だ。
うーーん、なにをどうしたらこうなったんだろう。
いやまあ、確かに俺が行動した結果ではあるんだけどな。
字面にしたら不思議の国もびっくりな光景になってる。
そうやってぼんやりみんなの様子を窺っていたらばっちり見つかってしまった。
「くぃ」
「あ、王様~~」
「きょっ」
「「ぎょぎょぎょっ」」
「ぴぃ♪」
「みぃみぃ♪」「ちぃちぃ♪」
石材を運んでいたヤドリンが宿岩から手を出して挨拶すればユッケ達も一緒に手を振り、イカリヤが右手を上げれば槍を持った魚人たちが一斉に敬礼を行い、負けじとコウくんが光を放てば精霊たちが歓声を上げる。
ホント賑やかになったなぁと思いつつ皆に手を振り返す。
ただ、そうやってずっとほのぼのとしている訳にもいかない。
数か月後には北の海から強力な魔物たちが襲来してくる可能性が高いし、南の海だって強力な魔物は少ないようだけど貧困で今日を生きるので精一杯な人達が大勢いるという話だ。
ここは幸いにして広大な畑と魚介の養殖が盛んだから食べ物には困っていないけど(だからこそ難民のような人たちが集まって国になってしまったともいうけど)傍観している場合でもない気がする。
なので俺はみんなを集めてこれからの活動について話をすることにした。
「さてみんな。
これからは積極的に海溝の外へも活動の範囲を広げていこうと思う」
「つ、遂に世界の海を一つにまとめる時が来たのですね!!」
「「うおおぉぉ」」
「ちょっ。待て待て!」
俺の発言に急にテンションをマックスにしてしまう魚人族たちに慌てて待ったをかけた。
いったい何をどうしたらそうなるんだ。
というか、世界征服とか興味ないから。
「盛り上がってるところ悪いが、やるのは外交と支援活動だからな。
むしろ出ていった先で喧嘩とか吹っ掛けてきたら怒るから、気を付けろよ」
「わ、分かってますって」
「やややだなー王様、冗談ですって」
俺がキッと睨みつけると途端に愛想笑いを始めるみんな。
まったく調子が良いんだから。
「まあいい。本題だけど、活動の第1弾は主に精霊たちに頑張ってもらおうと思う」
「「ええぇ~~」」
「はいはい、静かに。魚人族のみんなは第2段だ。
精霊たちが出発した1週間後くらい後に出発してもらうから今のうちに準備をしておいてくれ」
「「うおっしゃあ!!」」
俺の言葉に一喜一憂する魚人たち。
これ以上付き合ってても話しが進まないから横に除けておこう。
「さてちぃズとみぃズには、その身軽さを活かして海流に乗って広範囲に散らばってほしい。
その際に、植物の種を持って行って各地に撒いて行ってくれ。
また今では精霊たちの体そのものが農産物みたいな状態でもあるから、気に入った場所があったらその地に根を下ろすのも良いだろう。
あとは流れついた先に魚人族の集落があった場合は、そこの人たちが求めるなら支援をしても良い。
ただ押し付け強要はしないように気を付けてくれ」
「みぃみぃ」「ちぃちぃ」
「後は、リースにお願いして作ってもらった『竜宮だんご』を出発前に受け取るように。
これは自分たちで食べてくれても良いし、向かった先で出会った相手にプレゼントしてもいい。
種を撒き終えて戻ってきたらご馳走用意して待ってるからな」
「みぃみぃ♪」「ちぃちぃ♪」
精霊たちは楽しそうに歌いながら南北の海に散らばっていった。
北の海にも向かってもらったのは、イカリヤ達の話から向こうも食料事情はよろしくない事が分かっていたからだ。
精霊たちなら魔物に襲われそうになっても自然と同化すればやり過ごすことが出来るし、よしんば食べられてしまったとしても自然に還るだけなので大丈夫だったりする。
あとはまぁ、これで北の食糧事情が改善されて南下する理由が無くなれば良いなという打算もある。
結界が無くなった後に北の魔物がどういった理由で南下しようとするのかは分からないけど、上手くいけば良好な関係が築けるかもしれないからな。
やれることはやっておこう。
そうして精霊たちを見送ればここも随分と静かに「みぃみぃ♪」「ちぃちぃ♪」ならないらしい。
え、もしかしてみぃズ達って渋滞を避けるために空気を読んで出てこなかっただけで、出待ちがいっぱいいるのか?
……どうやらそうっぽい。
神様に確認してみたら精霊たちはその土地のエネルギーを元に生まれてくるから、土地が元気である限り幾らでも出て来れるそうだ。
逆を言えば出し過ぎると土地のエネルギーが減少して痩せこけたり風化したりするから過信は禁物らしい。
探せば精霊たちに嫌われた結果、雑草1本生えない島もあるみたいだ。
何をしたらそんなことになるんだろう。
ここはそんなことにならないようにしっかりと精霊たちの声を聞かないとな。
さて、後はのんびりと畑仕事でもするか。
最近国造りとか神様探しとかで畑をみんなに任せっきりだったからな。
神様に祝福を貰った今の畑なら今までにないような品種改良も行える気がする。
みんなと一緒に畑を耕せば大変なはずの重労働も楽しくなるから不思議だ。
そうして2時間ほど畑仕事をしていたところで地上に居るリースから連絡が入った。
『カイリくん。南東から船が近づいてくるよ!』
船?遂にプレイヤーの誰かがここまでやって来たのか?
問題は友好な相手かどうか、か。国になったから最悪戦争も覚悟しておかないといけないな。
後書き日記 リース編
9月6日
新学期が始まり、1週間が過ぎました。
1学期との1番の違いは何と言ってもカイリ先輩と付き合う事になったことです。
付き合い始めて分かったのは、先輩は大抵のことはそつなくこなしてしまう事です。
その中で特に困っているのがお弁当です。
今は1日交替でお互いのお弁当を作っているのですが、先輩の作ってくれるお弁当も文句なく美味しいんです。
そりゃあ不味いよりも美味しい方が良いのでしょうけど、彼女としては彼氏の胃袋を掴みたいなとも思う訳で。
唯一の欠点といえば型通りのものを作ってこないことくらいでしょうか。
ちなみに昨日のお弁当は梅チャーハンっぽいもの。
夏バテ気味で食欲が落ちてるって話をした私を気遣って食べやすいものを作ってくれたみたいです。
こういうところが先輩の素敵なところです。
ただ普通のチャーハンには入っていないようなあれやこれやの食材が先輩っぽいというか。
まぁ美味しかったんですけどね。
逆に私のお弁当はオーソドックスなものがほとんど。
お陰で大外れはしないものの心ときめくかと聞かれたら難しいところです。
それでもいつも先輩は美味しい美味しいって言ってくれるんですよね。
来週はどんなお弁当を作っていきましょうか。
先輩の好みももっと知っていきたいですよね。
それならまた今度どこかに遊びに行くのも良いですよね。
ちょうど先日の夏祭りで遊園地のチケットも手に入りましたし、誘ってみましょうか。
恋人同士で遊園地ってヤバいですよね。
ドラマとかだと遊園地って定番の告白ポイントですし、その後も色々と……
ん?なんですか、ランプ。
今いい所なんですから邪魔しないでください。
南の海上に船が居る?
船なんですから海上にいて当たり前じゃないですか。
空を飛んでたら飛行船になってしまいますよ。
…………って船!?




