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竜宮農場へようこそ!!  作者: たてみん


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建国祭

やっと夏休みがおわります。

永い夏休みだった……


そうして迎えた建国祭当日。

海底の広場には魚人族だけで5000人近くが集まっている。

他にも地上のグレイル島に住んでいる人獣や俺の眷属達も居る。こうしてみると壮観だな。

お城の前に作られたステージにユッケがドレスアップして立った。


「皆さまご静粛に。

これより竜宮王国の建国式典を開催致します。

まずは神様方による承認の儀式をお願いいたします」


その言葉を聞いて一瞬静かになった会場が騒然となった。

しかしそれも神様たちがステージに上がると静かになる。


「ふむ。皆驚いているようだの」

「それはそうよ。1人だけなのが普通の所に3人で来ちゃったんだから」

「だからわてだけでも良いっちゅうたのに」

「そんなこと言ってお主だけ酒を飲む気ではあるまいな」

「へっ。竜は酒に溺れるっていうのは確定事項みたいなもんやからな。粗相する前に帰った方がええんちゃうか?」

「ふっ。地上の龍と一緒にしてもらっては困るな」

「まぁまぁ。皆さん待ってますから」


うぅん。やっぱり神様を皆呼ぶのはやりすぎだったか。

せめて儀式に出てもらうのを一人だけにすれば良かったんだけど、そうすると誰が出るかで問題になるからなぁ。


「さあカイリよ、こちらへ」

「はい!」


と、出番か。

俺がステージに上がる歓声が上がった。

良かった。これで失笑とか聞こえてきたら逃げるところだ。

俺はそのまま神様たちの前まで行くと膝を突いて首を垂れた。

そこへ先日祝福をくれた時のように神様たちが手をかざした。


「竜宮王国ならびにその王カイリを我らの名においてこの地に名を刻むことを認めるものと致します」

「カイリよ。この国が世界中の海の国の模範となることを期待しておるぞ」

「道を踏み外せばわてらが総出で叱りに来るよって、覚悟しときなはれ。まあそないなることが無いことが一番やけどな」

「はい」


3神から光が放たれレイナが作ってくれた王冠へと降り注ぐ。

それと同時に通知が届いた。


【ワールドインフォメーション。

現時点を持ちまして竜宮王国が建国されました。

プレイヤーが興した国、第1号となります。おめでとうございます。

国家に関する詳細はヘルプを参照ください。

なお、一部プレイヤーには遅れて通知させて頂きます】


あ、全プレイヤーに公表されるんだ。

個人名もクラン名も出てないけど、国名を見れば俺がやったって事は分かる人には分かるよな。

ダンデ辺りは今頃大騒ぎしてそうだ。

今のうちにメールやチャットは着信拒否にしておこう。

ただ現地の人たちにはこの通知は届いていないので、式典の進行はそのまま続いている。


「それでは新王カイリ様からご挨拶をお願いいたします」


って、そうか。忘れてた。

何かしゃべらないといけないんだっけ。

えっと……。


「えー皆さん。現時点を持って正式に竜宮王国が建国されました。

俺がこの国と皆さんに求めるものを一言で言えば『幸せになってほしい』これだけです。

幸せになるっていうのは、計れるものじゃないからどうなったら幸せなのかっていうのは明確に伝えることは出来ません。

でも不幸は逆に分かりやすいかなって思っています。

傷つけられる、奪われる、悪口を言われる、騙される、無視される、セクハラされるなど。

誰だって人にされたらいやな事は思いつくと思います。ならそれを自分にも他人にもしなければ不幸は回避できるのではないでしょうか。


以前読んだ本の言葉が分かりやすかったので引用させてもらうと、人の使う言葉には天国言葉と地獄言葉があるそうです。

詳しくは後で掲示しますが、天国言葉を使う人には人が集まり、地獄言葉を使う人には人が離れて終には病気になってしまうそうです。

一つ地獄言葉の例を出すと『当たり前』というのも地獄言葉です。皆さん日常の会話で時々使ってないでしょうか。

『これくらい知ってて当たり前だ』

『親なんだから子供の面倒を見るのが当たり前だ』

『子供なんだから親のいう事を聞くのは当たり前だ』

みたいな感じです。

これら地獄言葉を使ったら怒るとか罰するとかいう事はしません。

ただ無意識に使ってしまっていることがあるので、その場合は周りの人がやんわりと使ってるよと教えてあげてください。

指摘された側も反発するのではなく、じゃあ天国言葉に直したらどうなるんだろうかと考えてみてください。

そうして少しずつ地獄言葉が減っていったら良いなと思います。


さて。ちょっと長くなってしまいますがあと2つだけ伝えさせてください。

1つはこの国の今後の活動についてです。

せっかく国という形を取るのだから、この世界全体に影響を与える存在になっていこうと思います。

皆さんの多くは別の海域から移住してきたと思うので、各地の困窮具合は知っていると思います。

なので食料支援もしくは農業支援を行っていきます。

具体的には、まずはちぃズとみぃズに各種野菜の種を持って世界中の海に散らばってもらう予定です。

魚人族の皆さんからも有志を募って使節団として活動してもらう事も検討中です。


そしてもう1つの話ですが、早ければ2か月後、遅ければ年明けくらいには、北の海域とこちらを隔てる結界が消滅します。

そうなると北の魔物が大挙して南下してくることが予想されます。

その時、魔物たちが通る場所が、ここです。

北の魔物が南の海域に出れば蹂躙されることは目に見えています。

なので俺はこの地で魔物たちを押し返すつもりですが、相応の被害は覚悟しなければなりません。

最悪国を捨てて避難することも視野に入れておいてください。

俺の話は以上です」


シーンと静まり返る広場。

しまったな。最後にこの話を持ってくるんじゃなかったか。

建国したその日に滅びることも想定している、なんて言ったら誰でも意気消沈するよな。


「……ざけんなよ」

「ん?」


何やら民衆の中から怒りの声が聞こえてきた。


「そうだ。そんなふざけた話はないだろっ」

「ここはもう俺達の国だ。北の魔物だかなんだか知らないけど、そんな奴らに好きにさせてたまるか!」

「「そうだそうだ!!」」

「まだ2か月以上あるんだ。今から準備しとけば何とか出来るだろ」

「王様一人になんて背負わせて堪るか。俺達全員でぶっとばしてやろうぜ!」

「おう、やるぞー!」


そんな声が至る所から発せられて会場全体が凄い熱気に包まれた。

いつの間にかみんな、この国を大事に思っててくれたみたいだな。


「よし。みんなの気持ちは分かった。でもやるとしたら妥協は無しだ。

誰一人倒れることなく圧倒的勝利をもぎ取る為に、明日から猛特訓が待っているから覚悟してくれ」

「「おおおぉっ!!」」

「「竜宮王国万歳!カイリ王万歳!!」」

「その為にも今日は歌い騒ぎ大いに楽しんでくれ。

幸い俺の仲間が大量の酒と食事を用意してくれた。また日が暮れた後には余興も用意してあるから楽しみにしててくれ」

「「おおおおおおぉっ!!」」


俺はその言葉を皮切りにリース達に合図を送った。

すると次々と運ばれてくる大皿料理の数々。

そしてリースが用意していた取って置きが何本も聳え立つ。


「って、なにこれ!!」

「すごいでしょっ。最初はマンガ肉を作ろうと思ってたんだけど、思ったより大量に手に入ったから10個分のマンガ肉を連結させてタワーみたいにしてみたの」

「普通なら下の方しか手が届かないけど、水中なら泳いで上の方まで食べに行けるな」

「そうなの。会場を立体的に使えるから混雑回避にも持ってこいでしょ」


まさかそんなところまで考えて料理を作ってきてくれるとは。

ウィッカさんはウィッカさんで、シャガラ様をはじめ大量に飲む人たちを見越して大樽を幾つも用意していたり、子供向けの食感も楽しめるフルーツゼリーを用意してくれてたりする。

他にも精霊たちの歌に合わせてダンスが始まったりと大盛り上がりだ。

最後の締めにはみんなで海面まで浮上してサクラさん達が用意した花火を鑑賞する。

そうして建国祭は無事に大成功で幕を閉じたのだった。



後書き日記 ダンデ編


8月19日


アルフロは朝からお祭り騒ぎだ。

あ、いや。事実お祭りでは有るんだが、それにも増してみんなの熱気が凄い。

まるで、男性アイドルと女性アイドルのライブが偶然隣の会場で開催されているかのような凄さだ。


その原因となってる会場のひとつは屋台通り。

お祭りといえば屋台だ。

屋台の外観は普通のリアルで見るものと同じだけど、1歩中に入った途端、一気に領域が拡張される。

ゲーム空間であることを最大限活かした土地活用と言ったところか。

前回のイベントでは生産系はあまり活躍できなかったからな。

その鬱憤を発散するかのように営業に力を入れている。

そして何より、店員の誰も彼もが変身システムを使って一風変わった見た目をしているのも賑やかさを倍増させている要因だ。

一番多いのは魚人。それも先日のイベントで居た金魚やエビの魚人の姿をしている人が約半数を占めている。

他にも馬の獣人族が鹿の人獣に変身するなどのネタコスプレや、ミイラやドラキュラ、ゴブリンにトロールなどの魔物の姿に変身している人もいる。

あ、もちろん変身しているのは客側も一緒だ。

お陰で百鬼夜行というか魔界にでも迷い込んだ気分だ。


そしてもう一つ。

今日先行プレリリースされているのが進化システムだ。

コロシアム内限定で進化体験が出来、その使い勝手を実際に対戦形式でほかのプレイヤーと試し合えるとあって、戦闘職の多くがそちらに詰め掛けている。

ちなみに進化パターンは大きく分けると4パターン。

細かく分けると13パターンもあり、純粋進化の1パターンを除く12パターンはかなり達成難易度が高くなっているらしい。

その分、空を飛べるようになったり特殊スキルが使えるようになるそうで、コロシアム上空には翼を生やしたプレイヤーが飛んでいる姿も見受けられる。

あ、種族「その他」は12パターンだそうで、純粋進化ルートがないらしい。

まあそれでもきっとカイリ(あいつ)は何とかしてしまうんだろう。

むしろあいつが一番最初に進化してたりな。


そうして大盛況のまま日が暮れる。

日が暮れた後は花火大会と盆踊りが開催される。

まずは大玉花火からだ。


ドドドーーーンッ!!


おおぉ。壮観だな。

そして同時にアナウンス。


【ワールドインフォメーション

本日、竜宮王国が建国されました。

プレイヤーが興した国、第1号となります。おめでとうございます。

なお国家に関する詳細はヘルプを参照ください。】


「「……」」


さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返るお祭り会場。

次の瞬間、絶叫が響き渡るのだった。


「「はああああぁ!!!?」」

「おいおい、誰だよそんなことしたやつ」

「国って。え、なに。そんなことできんの?」

「運営のドッキリじゃね?」


そんな発言をあざ笑うかのように、北の水平線で花火が上がる。

この距離でこの大きさって、どんだけデカい花火を上げてるんだ。

もうこっちはお祭りどころじゃなくて驚天動地の大騒動だ。

しかし名前からしてこれやったのってあいつだよな。


『ふふっ。見つけたわ』

ゾクッ。


な、なんだ。今の声は。




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[一言] なんか最後不穏な
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