時代遅れのナンパ
一度は言ってみたいセリフ集:
「感想が多すぎて返信が遅くなってごめんなさい!」
感想頂いたら、その時の本文を読み返している作者です。
……なるほど、確かに!と頂いた内容と照らし合わせて感激しております。
リースとフレンド登録を済ませたら、イベントポイントが大量に手に入った。
これで獲得したポイントの合計は1万6せん……?
「おかしいな。村に来るまで700ポイントくらいしか稼げて無かったんだけど」
「私もです。全然宝探しとかしてないのに14000ポイント超えてます」
「このイベントのお宝ってなんだろうな?」
「うーん、なんでしょうね?」
リースと顔を見合わせる。
俺とリースで共通していることと言えば村の手伝いをしたことくらいだ。
なら宝探しに限らず、村で活動するだけでポイントがもらえるのか。
もしかしたら他にも色々ポイントを貰う方法があるのかもな。
「や―――さい!」
考え込む俺達の元に悲鳴が聞こえてきた。
リースに目配せして、一緒に外に飛び出し悲鳴の聞こえてきた方へ向かうと、女性2人を取り囲む男性4人が見えた。
女性のうち1人は同い年くらいのプレイヤー。
可愛い服着ているところを見ると服飾系の職業かな。
もうひとりは10歳くらいの村の子供っぽい。
「なぁ良いだろ?君にとっても悪い話じゃないしさ」
「そうそう。今のままじゃ素材集めとか大変だろ?」
「俺達のところに来れば色々教えて上げられるし」
「一人で活動しててもむなしいだけだぜ~」
ん……と、ナンパ?それも時代劇に出てきそうな感じだ。
学校帰りに女の子を囲む不良グループ、みたいな。
「お断りします。私はあなたたちの仲間になる気はありません」
「そんなこと言わずにさぁ」
「ちょっとだけ。な、ちょっとだけで良いから」
「絶対損はさせないからさ、なっ」
女性側は気丈にもはっきりと断っているにも関わらず、男性側は逃げられないように壁ドンしつつ執拗に迫っている。
幸いセーフティーエリアだし、ハラスメント設定のお陰もあって直接乱暴はされてないけど、かなり怖いだろう。
早く助けてあげたいけど、多勢に無勢だしあいつらを追い払う術が思い当たらないな。
でも、何とかするしかないだろう。
「リース、俺があいつらの気を引くから、その隙に彼女たちを逃がしてあげて欲しい」
「大丈夫ですか?見るからに彼ら戦闘職ですけど」
「3人が逃げるくらいの時間稼ぎくらいは何とかするよ。
逆に撃退したりは出来ないと思うから、3人が見えなくなったところで俺も逃げるから、追っかけてきたあいつらに見つからないように気を付けて」
「分かりました」
リースにはこっそり反対側にまわってもらい、俺は俺でわざと足音を響かせて少女たちに近づいていった。
「あっ」
5メートルくらいまで近づいたところで少女と目が合った。
手を振って応えつつ無駄に大きな声で話し掛ける。
「おーい、レイナ。もしかしなくてもまたナンパ?」
「あ、えっと」
「美人は大変だな。それより、リーダーがそろそろ出発しようって」
「わかり、ました。でも……」
仲間ですよアピールをしながら近づくも、当然ナンパ君達がすんなり開放する訳も無く。
「なんだてめぇ。この子には俺達が先に声かけてんだよ。どっか行けよ」
「碌な防具を付けてないってことはお前、生産職だろ?お呼びじゃないんだよ」
そう言って4人のうち2人が俺にガンを飛ばしてくる。
残りの2人もどうにかして引っ張らないとな。
「そういうお前達は戦闘職なんだろうけど、強いのか?
少なくともそんな時代遅れのナンパをしてるってことは頭の方は残念な感じだよな。
あ、だから戦闘職なのか。
特にそっちの残念なデザインのふたりはセンスも無さそうだからモテ無さそうだもんな」
オーバーリアクションであることない事並べたてて煽ってみる。
こういうのはノリと勢いが大事だよな。
「てめっ、このイカした鎧の価値が分からないとか、そっちこそ頭狂ってんじゃねぇのか!?」
「そうだそうだ。俺達はリアルでもモテモテだっての!!」
「え、小さい女の子に?そうか、ロリコンだったのか~」
「だ、だ、だ、誰がロリコンだ!」
「え、適当言ったのに、その慌てようはガチかな?」
「てっめぇ!!」
「おぉこわいこわい」
適当に煽ったら変なところでツボったらしい。
顔を真っ赤にして詰め寄ってきたので、大きく一歩飛び退いて距離を取る。
お陰で、ナンパ男たちは完全に俺に意識を向けている。
あともう1声引っ張るか。
「で?ロリコン4人衆は宝さがしもせずに何してるんだ?」
「馬鹿野郎。俺はロリコンじゃねぇ」
「そうだそうだ。ロリコンはこいつだけだ」
「ちょ、俺だって違うっつうの!」
「まったく人妻が一番に決まってんだろ!!」
「「えっ?」」
人妻発言に一瞬空気が止まる。
その隙にリースが少女たちを連れ去って行った。
これであとは俺も逃げ切れれば万事解決、なんだけどそう上手くは行かないか。
少女の代わりに今度は俺が囲まれる番だった。
「てめぇ、ふざけた事言ってタダで済むと思ってないだろうな」
「とは言っても、ここセーフティーエリアだぞ?」
「へっ、安心しろよ。その為にこういうシステムがある」
ピッと何かが飛んできた。
< ヤスから決闘を申し込まれました >
なるほど、決闘ね。
確かにこれなら場所を選ばず戦えるか。
ルールを確認すればデスマッチ&敗者は勝者に所持金全部を渡す、か。
「まさか逃げるとは言わないよな」
にやにやと笑みを浮かべるロリコンのヤス。
まぁ受ける価値は全くないんだけど、この辺りが落としどころとしては丁度良いか。
そう思って俺は決闘を受理するのだった。
後書き日記(続き)
お茶を持って居間に向かえば、高校生くらいの村人が居ました。
珍しいなって思って声を掛けつつお茶を渡せば、何とプレイヤーの人でした。
「種族:その他」を選ぶって、なんてチャレンジャーな人なんでしょう。
私も最初気になって確認してみましたが、2期組開放からわずか1時間で大量の救援コメントが登録されていました。
いずれも即死はしないけど選んだのを後悔するものばかり。
初期位置の酷いものの例を挙げると、
・無人島
・平均魔物レベル30の森の中
・標高4000メートルの山の上
・砂漠
運営は何を考えて初期位置をランダムにしたのかしら。
この人、カイリさんもかなり酷い目に遭ったみたいです。
同じ生産職、更には農家だそうで、早速フレンド登録をしました。
まさかあんな大量のポイントが貰えるとは嬉しい誤算でしたけど。
それにしてもこうして午後の縁側でのんびりお茶を飲むのなんてお爺ちゃんの家に遊びに行ったときくらいです。
しかし、ほぅっと一息ついていた私達の元に悲鳴が聞こえてきました。
慌てて駆けつけてみれば、武装した男たちに囲まれた女の子が2人。
男たちはプレイヤーですね。
もしかしてまたナンパでしょうか。
傍から見れば脅迫にしか見えないんですけど。
私はカイリさんと目配せをして女の子たちを助ける事にしました。
作戦は単純に、カイリさんが男たちの気を引いた隙に私がふたりを連れて逃げるというもの。
そしてカイリさんはちょっとオーバーリアクション気味に男たちを煽り始めました。
家の影に隠れた私は隙を見て女の子たちを助け出します。
去り際、後ろを振り返るとカイリさんが男たちに囲まれている所でした。
大丈夫でしょうか。
カイリさん。あまり強そうには見えませんでしたけど。