建国前から国家存亡の危機だそうです
神様編が意外と長くなりました。
今後の予告編のような回です。
さすが神様というか、色々と爆弾ネタを投下してきてくれる。
これは今のうちに聞けるだけ聞いておいた方が良さそうだな。
「そういえばどうしてポシス様は北に逃げたんですか?」
「それは北は強力な魔物が多いせいで、私達神と言ってもおいそれと近づけないからね」
「全ての神が戦いに特化している訳では無いからのぉ。
あ奴は魔物に襲われないようにする能力に長けているから大丈夫なのだろうがな」
さっき闇を司ってるとか言ってたから、そのお陰か。
でも神様より強い魔物が居てたらこの世界滅びないかな。
「あの、神様より強い魔物が南の海に来たらヤバくないですか?」
「せやな。北の海の魔物が一斉に南下してきたら大変な事になる。
まあまず北寄りの魚人族の国は避難しないと確実に滅ぼされるやろうな。
今はそうならんように何代か前の神が結界を張ってくれたから大丈夫なんや。
しかしなんや。
あの一件で穴というか抜け道が出来てしもたさかい、放置しておくとあと数か月で穴が広がり切るはずやで」
いやだから、爆弾をポンポン投下しないでください。
その抜け道ってどう考えても俺の国じゃないですか。
「穴を塞ぐ方法は無いんですか?」
「残念ながら進行を遅くするので精一杯ね」
「我らは結界全体が崩壊するのを防ぐ必要もある」
「やるとしたら物理的に塞ぐしかないやろな」
物理的にって。
それはつまり海溝を埋めるってことか?
そうなったら海溝部にある竜宮農場は完全に潰れる事になる。
「さすがにそれは最後の手段にしたいですね」
「ならカイリ達の国で防ぐしかないやろな」
にやっと笑うハタイ神様。
この神様、最初からそういう結論になるの分かってて言ってるな。
これもしかしなくても神様たちの不手際の尻ぬぐいをやらされる感じだよな。
まあ、あそこに居を構える限り避けては通れない道なんだろうけど。
それでもこう、もうちょっと補填が欲しいところだな。
「あの、流石に俺達だけで北の魔物を抑えるのは無理がありませんか?」
「うーん、そうですね。恐らく異界の人々が総出で迎撃に当たれば何とかなるかもしれませんが、最悪の場合は中央島の手前までで押し留められるでしょう。
それ以上となると範囲が広くなり過ぎて北の魔物の数では制圧出来ないでしょうね」
いやだから、うちの島は中央島より北にあるんだから完全に呑み込まれてるじゃないですか。
「せめて北の魔物に対抗できる手段とか、奴らの弱点とかありませんか?」
「弱点と言っても個体数が少ない事と強力な個体同士で群れる事はないこと位しかないのぉ。
それに本来、我ら神は直接介入は出来ぬ決まりになっておる。
出来ることと言えば、おぬしらに可能性を開いてやることくらいか」
「そやなぁ。うん。
だがカイリよ。強い敵に対抗するために強い力を手に入れた後にどういう結果が待っとるか分かるか?」
ふと視線が鋭くなるハタイ神。
どういう結果になるか、か。
それは歴史を振り返れば自ずと分かることだ。
栄枯盛衰。驕れるものも久しからず。
歴史は繰り返されるとも言うな。
「力に溺れて自滅する、ですか?」
「せや。まるで自分は全知全能の神にでもなったかのような錯覚を覚えるのが人の性や。
力の無い他人がゴミくずの様に見えて自分の強さに優越感が麻薬のように心を侵す。
人は一度手に入れた快楽は手放せん。
やから周りが何を言っても破滅するまで一直線や。
その危険があると分かっていても力を求めるか?」
3柱の神がじっと俺を見つめる。
その真剣な眼差しはつまり、ここが人生の分岐点になることを示していた。
俺もそれを受けて改めて考えてみる。
といっても、結果は決まってるようなものか。
「うちの家訓で『やらない後悔より、やって後悔しろ』っていうのがあります」
「ふむ」
「他にも『自分が道を間違えたら殴り飛ばしてでも道を正してくれるような仲間を創れ』とも」
「まぁ」
「幸い、そういう仲間には多く恵まれていると自負しています」
「うんうん」
「なので皆さんの心配は有難いのですが、ぜひその力を手に入れたいと思います」
俺の発言を受けて神様たちはうんうんと頷くと優しく俺に微笑んだ。
そしてミクマリ様が椅子から立ち上がって俺を手招きした。
「折角この地に来て頂いたのですから私から祝福を授けましょう。
カイリさん。こちらへ来て膝を突いてください」
「はい」
ミクマリ様の目の前まで移動してから膝を突いて首を垂れる。
「では『水神ミクマリの名のもとに、かの者に祝福を与えん』」
その言葉と共にミクマリ様の手から光が放たれ、俺の全身を包み込む。
その光は数秒で消えた。
……あれ?それだけ?
てっきり【進化しました】とか【○○を得ました】とかのメッセージが流れると思ってたのに。
恐る恐る顔を上げてみるとミクマリ様も困惑したような顔をされていた。
「あの……」
「……どうやら失敗のようです」
「久しぶりの祝福の儀やからな。なにか手違いでもあったのかもしれん。
どれ、わてが代わってやってみようか」
がっくりしたミクマリ様に代わってハタイ様が俺の前にやって来て同じように手をかざした。
「おほん、では。『魚神ハタイの名のもとに、かの者カイリに祝福を与えん!』」
再び俺の全身が光に包まれる。
だがしかし、結果は同じであった。
「くっ。なんでや。何がいけなかったんや!」
「ふっ。仕方ない。なら我がやってみるとしよう」
憤るハタイ様に代わってシャガラ様が俺の前にやってくる。
シャガラ様はどうやら手の代わりに頭の角から光を放つようだ。
「『我、流神シャガラの名のもとに、異界の民カイリに祝福を与えん』」
3度光に包まれる。しかし結果は同じだった。
それを受けて頭を突き合わせる神様たち。
そして俺の全身を嘗め回すように視線を送ると何かに納得したように頷いた。
「あの、なにか分かりました?」
「ええ。どうやら異界の神によってロックが掛けられているようです。
それにより、私達の祝福がカイリさんの魂まで届かなかったのです」
異界の神ってつまり運営の事だよな。
あ、たしか進化システムは9月の大規模アップデートで実装されるって告知されてたけど、逆を言えばそれまで進化は出来ないって事なんじゃないかな。
「それだったら来月になったらそのロックが解除されるかもしれません」
「いえ、それがダメなんです」
「だめ?どうしてですか?」
「一人の人に対して同じ神が祝福を与えられるのは1度きりなんです。
なので私達ではもうカイリさんに祝福を与えることは出来ません。
カイリさんには他の神を探してもらうしかありません」
「だがしかし、失敗したとはいえ我らの祝福を受けたのだ。
地上の神や他の祝福を受けるのはかなりの制約を受けることになる。どんなに頑張っても年内には間に合わん」
あ。それ間違いなく更に次のアップデートで進化の次の段階が解放されないとダメな奴だ。
どっちにしろ年内に間に合わないなら北の魔物の襲撃には間に合わないんだけど。
こうなったらみんなに事情を話して引っ越しも視野に入れておく必要があるかもしれない。
そう色々考えてたところで、ハタイ様がポンっと手を叩いた。
「よっしゃ、こうなったら、間接的に祝福を与えることにしようや」
「そうですね。それであれば異界の神にブロックされることもありませんし」
「このまま帰しては我ら神の沽券にかかわるからのぉ。
問題は何を与えるかだが……」
「やはりここは……」
「それで決まりやな」
神様たちはお互いに頷き合うと再び俺の方を向いた。
「カイリさん。私達はあなたの周りのものに祝福を贈る事に決めました。
私からはカイリさんと共にいる精霊に祝福を贈ります」
「我からはカイリの畑や農作物に祝福を与えよう」
「わては従魔たちに。まぁ言うても基準を満たしたもんのみやけどな」
「そんなに沢山、ありがとうございます」
「あ、言っとくけどタダちゃうからな。後でぎょうさん貢物を持ってくるんやで!」
「我のところにも美味い酒を頼む」
「私は甘いものが良いなぁ」
「はい、分かりました。では後程皆さんのところに色々と持っていきますね」
ハタイ様が食べ物でミクマリ様がスイーツでシャガラ様がお酒、と。
忘れないようにしないとな。
「さて、じゃあ地上で待っている子も居るみたいだし、今日はここまでね。
またいつでもいらっしゃいね」
最後にミクマリ様の言葉と同時に来た時とは逆に体が浮き上がっていく。
下を見れば神様たちが手を振ってくれているのが見えたので、俺も手を振り返しつつ気が付けば地上へと戻っていたのだった。
後書き日記 サクラ編
8月13日
リースさんにお願いされて巨大な骨付き肉が手に入る場所を探した結果、特殊ルールが適用されたダンジョンへとやって来ました。
このダンジョンは独自のルールがあって、階層ごとに居るボスを倒すと次の階層への転移陣が出てくるというのもその一つです。
勿論ボスなのでかなり強力で、第1階層ならともかく深い階層になるとダメージもなかなか通らないしかなりの苦戦を強いられます。
……そのはず、なんですが。
硬い岩に覆われた要塞龍があっさりと、実にあっさりと倒されてしまいました。
いえ、あの「さすがボスね。9回も素材が取れるなんて」じゃなくてですね。
だから「羽と胴体と尻尾で別々に狙わないといけないのは面倒ね」ってそういう事でもなくてですね。
幸い周りに他の人は居ませんが、私達でさえ常識が崩壊しそうな光景です。
ただ、同じことが出来るかと聞かれたら、私では無理ですね。
ツバキちゃんでも無理でしょう。
回避特化の短剣使いならワンチャンありそうですが。
一応試しに私達も剥ぎ取りナイフで戦ってみたのですが、リースさん程手際が良くないせいでナイフを刺している最中に反撃を受けてしまいました。
それなら投げナイフのように投げたらいけるかなと、試してみましたが数回に1回は刺さりはするもののそこから切らないといけないから大したダメージになりませんでした。
リースさんの場合は、刺さった後そのままの勢いで十分に切り裂いてます。
どうやったらそんな芸当が出来るんですか。
筋に沿って切ると良いとか、鱗の薄い部分や生え変わり部分を狙うんだよって言われても、ぱっと見分かりませんよ?
それは暗殺者のスキルじゃないですか?
え、違う?料理スキル?
いつから殺人料理に手を掛けたんですか。
まぁ確かに。医者と画家は人体構造のエキスパートだって話もありますけど。
料理人も食材に対しては解体のエキスパートなんですか?
って、ちがうちがう。
目の前に居るあれは魔物。まだ食材じゃありませんから。
でもこのまま行けば、このダンジョンの初攻略も夢じゃないかも。
え、最下層のボスですか?
まだ誰も到達出来てないですが、多分、古代龍とか始祖龍じゃないですかね。
……まぁお肉は美味しそうなイメージは無いですね。
って、途端にやる気を無くさないでください。
ここまで来たんだから行けるところまで行ってみましょうよ~。




