友達自慢はほどほどに
遂にやってしまった感がハンパない。
キッカケは友達自慢からっていうのは早い段階で決めてましたが。
そして名前間違い失礼しました。
m(_ _)m
さて、このウォーターパークの設備を説明しておくと、ごく一般的なプールが大人用と子供用で1つずつ。
他には競泳用の25メートルプール、波のあるプール、流れるプール、ウォータースライダー、そして高さ3メートルの飛び込み台だ。
他に珍しいもので砂場がある。これは砂のお城を作れる場所、ではなく、ビーチフラッグスやビーチバレーなんかが楽しめる場所だ。
そこはガラス張りの壁に囲まれていて、外から見学も出来るし砂が他の施設に行かないように入口のところでシャワーを浴びる必要があったりする。
そんな中、俺達がまず向かったのは波のあるプール。
波打ち際で水を掛け合いながら体をほぐしていき、陽介が波に足を取られてダイブするのを皆で指をさして笑いあった。
その次に向かったのは競泳用のプールだ。
「先輩頑張ってくださいね」
「ああ」
「酒井先輩も負けないでください!」
「任せとけ」
なぜか俺と陽介で競争することになっていた。
ちなみに負けたら全員にジュースを奢ることになっている。
お陰で遊びではあってもお互い本気だ。
「水中戦で俺に勝とうなんて100年早いな」
「ふっ。ゲームとリアルは違うということを思い知らせてやろう」
「それでは、位置について、よーい、ドン♪」
「ふっ」
「はっ」
霧谷さんの合図で同時に飛び込む俺達。
スタートこそほぼ同じタイミングだったけど、その後の動きはまるで違った。
早々にザバザバとクロールを始める陽介。それに対し俺は……。
「……水瀬先輩、浮いてこないね」
「うん。ずっと潜水してる。あっ、上がって来たよ」
「もうちょっとで向こう岸だし、20メートル近く潜ってたのかな」
「酒井先輩と2メートル以上差を開けてるよ」
そんな話をしているとはつゆ知らず、俺は向う岸に着く手前でクルッとターン。
両足がしっかりと壁に着いたのを確認して全力で蹴り出した。
その瞬間、陽介と視線が交差する。
『お先!』
『ちょ、おまっ』
驚く陽介を置き去りにして更に10メートルほど潜水した後、普通にクロールに切り替えてゴールした。
「ふぅ。ただいま」
「おかえりなさい。圧勝でしたね」
「いやいやいや。圧勝とかそういう問題じゃないから。
もしかして水瀬先輩の前世はお魚ですか??」
「さぁ」
後ろを振り返れば陽介はあと半分ってところか。
こうして見てると陽介は泳ぎのフォームも綺麗だし遅いって訳じゃない。
ただ泳ぎの経験で言えばやっぱり圧倒的に俺の方が多いからな。
伊達にイカリヤと一緒に泳ぎ回ってはいない。
「ぷはぁ」
「よ、おつかれ」
「はぁ、はぁ、はぁ。おま、速過ぎだろ」
「日頃の鍛錬の賜物だな」
ゴールした陽介に上から目線でドヤっておく。
こういう時くらいしか陽介を圧倒出来る機会なんてないしな。
さてお次は中島さんのリクエストでウォータースライダーだ。
俺達は全力で泳いだ後なので有難い。
滑る順番は中島さん、陽介、霧谷さん、俺の順番だ。
しかしそこでトラブルが発生した。いや、トラブルと言っていいのかはアレだけど。
「あ、係員さん。後のふたりは2人乗り用でお願いしますね」
「はい、分かりました」
「「……え?」」
「じゃあ、先輩、涼子ちゃん。お先に行ってきまーす」
「海里もちゃんとエスコートしてこいよ。じゃあな!」
「ちょっと」
止める間もなくふたりは滑っていってしまった。
「……」
「……えっと」
顔を見合わせる俺達。
このウォータースライダーは向かい合って座るタイプじゃない。
つまりはその、後ろの人が前の人を抱きかかえるようにして乗ることになるんだけど。
「はい、君。先に後ろ側に座って足を前に出して。お嬢さんはその前に座って」
「は、はい」
「そしたら君は彼女が落ちないようにしっかり抱きしめて」
「え、えぇ~~」
「ほらほら、後がつかえてるから早く」
「は、はい。霧谷さん、嫌だったら言ってね」
「~~~。だ、大丈夫です」
係員の指示に従って霧谷さんのお腹に手を回す。
うっ、やわらかい。それに霧谷さんの背中が胸に当たって、心臓の鼓動が伝わってくる。
目の前には薄っすら赤くなったうなじがあるし、色々ヤバい。
「はいじゃあ行きまーす」
軽い掛け声と共に浮き輪が押されて滑り出した。
滑り出してしまえば、そこまで意識する余裕はなかった。
よかった。あのままずっと居たら心臓がどうにかなってしまいそうだったし。
そうして気が付けば下のプールに着水。うーん、楽しむ余裕は無かったな。
浮き輪を係員に渡して振り返れば、またしてもニヤニヤ顔の陽介達が待ち構えていた。
うーん、今日はずっとこの調子なんだろうな。
その後は霧谷さんと中島さんの2人でもう一度滑りに行ったり、ビーチボールで遊んだりして、昼過ぎには混雑がピークになって来たので上がることにした。
帰る途中、時間もちょうどいいしご飯でも食べてから帰るか、という事になりファミレスに入った俺達。
料理を待つ間の話題と言えば。
「あ、そうだ海里。種籾が手に入ったんだけどお前のところで栽培できたりするか?」
「ん?あぁ出来るぞ。というか、いま絶賛品種改良中だ。もう少し待ってくれれば高品質の米も手に入る予定だ」
「あれ、海里はイベント参加出来てなかったんだろ?良く手に入ったな」
「ま、まぁ。色々伝手があってな」
危ない危ない。イベントの事で突っ込まれるとボロが出かねないから注意しないと。
その話を聞いて霧谷さんが「ん?」と首を傾げ、中島さんが食い気味に反応してきた。
「種籾ってことは、先輩がたもアルフロやってるんですか?」
「おぉ、やってるぞ。こう見えても俺は『太陽の騎士団』の団長様だ」
「トッププレイヤーじゃないですか!!まさか有名人がこんな身近に居たなんてびっくりです」
「そういう中島さんはどうなんだ?」
「私ですか?残念ながら特に有名でも何でもないです。
あ、でも涼子ちゃんは生産系のトッププレイヤーの一人なんですよ!」
霧谷さんの事なのになぜか中島さんがドヤっとしてるのが面白い。
それにしても霧谷さんもアルフロやってるのか。
その話を聞いても陽介は驚いてないところを見ると、知ってたのか。
「リース印の料理って言ったら今じゃプレミアものですからね!えっへん」
「ふっ。それを言ったらカイリ印の食材だってマーケットに出た瞬間、即完売だぜ!」
なぜか自慢合戦をし出すふたり。
……ん? ちょっと待ってくれ。
「なぁ。霧谷さんの話をしてたのに、なんでリースが出てくるんだ?」
「へ?いやだって涼子ちゃんがリースだから……ってもしかして知らなかったんですか!?」
「ねぇ、陽にぃが言ってるカイリって、もしかして水瀬先輩の事?」
「あぁ。そうだぞ。って、もしかして言ったらマズかったか?」
思わず霧谷さんと顔を見合わせる。
いや待て。あのゲーム、同名でログインは可能だから、もしかしたら別の生産プレイヤーって可能性もあるし。
えと、俺達の間でしか伝わらない話題が何かあれば……あ、そうだ。
「『愛の試練』(ボソッ)」
「ちょっ、カイリ君!? それは忘れてって言ったのに」
俺の言葉にビクッと反応する霧谷さん。
あれの事を知ってるのは俺とリースしか居ないから間違いないな。
「ってことは、本当にリースなんだな」
「うん、そうみたい」
まさかこんな身近に居たとはな。
うーん、俺アルフロ内で変な事してなかったかな。
いや、むしろ変な事しかしてなくないか。
そんな微妙な空気を漂わせる俺達を見て陽介達も心配げに視線を送って来た。
「えっと、すまん。やっぱマズかったか?」
「いやまぁ、マズくはないんだけど、何というか俺達、同じクランに所属してるんだ」
「うん。まさか先輩がカイリ君だとは思ってなかったから、ちょっと驚いたの」
「そうだったのか。すげぇ偶然だな」
「まぁ、でもでも。ずっとすれ違ってるよりは良かったんじゃない?」
場の空気を変えようと、わざと明るい声を出す中島さん。
折角だからそれに乗っておくか。
「そうだな。どうせいつかは分かることだっただろうし。それがちょっと早まっただけだ」
「そうね。むしろこれで連絡とか取りやすくなったし良かったのかも」
そうして気持ちを切り替えた俺達は、改めて今後のイベントについて話をしつつ、出てきた料理を食べて解散するのだった。
後書き日記 リース編
8月2日 (続き)
水着に着替えて更衣室を出てきた私達を先輩が待っていてくれました。
私の水着姿を見た先輩は凄く照れたようにしながらもちゃんと褒めてくれました。
嬉しい、と同時に言われた方も照れますね。
先輩も体が凄く引き締まってて格好いいです。
そういえば普段から運動してるって言ってましたっけ。
とぼぅっと眺めてたらちーちゃん達が私達を置いて行こうとするので慌てて追いかけます。
べ、別に忘れてた訳じゃないしふたりの世界に入ってたとかそんなことも無いですからね。
波のあるプールで少し遊んだ後、ちーちゃんの「先輩たちの格好いい姿が見たいなぁ」という一言で競泳することになりました。
開始の合図を送って泳ぎ出すふたり。
陽にぃも泳ぎは得意な方なのにグングン差が開いていきます。
凄い。ターンの動きとかオリンピック選手顔負けじゃないでしょうか。
いつの間にかギャラリーも増えてますし。
ふたりがゴールした後はウォータースライダーへ。
ん?ちーちゃんが何やら陽にぃに耳打ちしてます。また変なことを企んでるんでしょうか。
と思ったらやっぱり。
いつの間にか私と先輩で二人乗りすることになってました。
係員さんもすごくノリノリで逆らえない雰囲気です。
仕方なく指示されるとおりに浮き輪の上に座りました。
「霧谷さん、嫌だったら言ってね」
ちょ、せんぱっ。み、みみ、耳元で囁かないでください。
更にそっとお腹に先輩の腕が当たります。
あ、すごく優しい動き。私の事を気遣ってくれてるのが分かります。
それと背中に感じる先輩は、すごく安心出来ます。
でもやっぱりこの態勢は私の心臓が限界です!
その願いが通じたのか浮き輪が滑り始めました。
そしてあっという間にプールに着水。
ニヤケ顔の陽にぃは殴っても良いでしょうか。
その後も色々遊びまわった後、無事に帰路についた私達は時間も丁度いいしご飯を食べていくことになりました。
流石にこれ以上はもうないかなって思ってたのに、最後の最後で特大の事件が起きました。
なんと実は水瀬先輩があのカイリ君だったんです!!
私ゲーム内で先輩に変なことしてなかったでしょうか。
って愛の試練を筆頭に色々やらかしてる気がします。
あ、でも。
先輩の様子を見るにセーフっぽい?
うーん、でも、これからどんな顔してリースとして会っていけば良いんでしょうか。




