プールと友達の視点
約1週間ぶりの投稿orz
なんとか投稿ペースを回復させねば。
それと、前回からラブコメに転進しました(違
プール話は次回で終われるといいなーと思ってます。
メインはVRなので。
やって来ました。プール当日。
今日の待ち合わせは先日の失敗を教訓に駅の改札前だ。
空は快晴。絶好のプール日和だな。
と、思ったんだけど。俺の視界の先には普通ならあり得ないものがあった。
「あれ、今日ってこの後雨でも降るのか?」
「ちょっ。先に居ただけで酷い謂われようだな」
「いや、陽介がこんなに早く待ち合わせ場所に来るなんてありえないだろ」
今は8:10。待ち合わせ時間の20分前。
大抵約束の時間ギリギリに来るのが陽介のお決まりのパターンなのに、こんなに早く来るなんて何かあったと思うだろう。
考えられることと言えば、まぁあれか。
「もしかして起こされて叩き出されたのか」
「な、何の事かな?」
俺の言葉にあからさまに目をそらす陽介。
当たりらしい。まぁ陽介も別に隠してる訳でもないし、恥ずかしいだけだろう。
「いいけど。ところで綿織先輩は? てっきり一緒に来るんだと思ってたけど」
「あぁ。行きたがってたんだけど、その……腰を痛めたらしくてな」
「そ、そうか」
綿織先輩っていうのは陽介の彼女で1年上の先輩だ。
しっかし、腰を痛めたって何をしてたのやら。詳しくは聞かないけど程ほどにな。
そう思ってたら霧谷さん達も到着した。
「おはようございます、先輩。って、あれ? なんで陽にぃが居るの?」
「いや、そりゃこっちのセリフだ。え、もしかして下級生の友達と一緒に行くって話だったけど、涼子の事だったのか」
出会い頭にこの反応。どうやら二人は知り合いみたいだな。しかも、
「『陽にぃ』に『涼子』って。もしかしてふたりって兄妹とかなのか?」
「あぁ、従妹だ」
「それはまた奇遇だな。でも同じ学校に通ってるのに一緒に居るところを見たことが無いな。もしかしてあまり仲良くない?」
「心配しなくても大丈夫だ。中学に上がってからは部活とかで忙しくなってめっきり会う機会も減ったけど、小学校の頃は一緒に遊んでたし、今でも正月とか年中行事では顔を合わせるしな」
「そうですね。流石にここで会うとは思いませんでしたけど」
「そっか。なら問題無いな」
これで実は犬猿の仲なんですって言われたらどうしようかと思った。
と、ひとり手持ち無沙汰になっていた中島さんが霧谷さんの袖を引っ張った。
「涼子ちゃん、涼子ちゃん」
「え、ああ。ごめんね。陽にぃ。こちらクラスメイトの中島 千佐子ちゃん」
「中島です。今日はよろしくお願いします」
「俺は酒井 陽介だ。聞いての通り、涼子の従兄で学年で言えば1つ上だ。よろしくな」
そうして挨拶を終えた俺達は早速電車に乗って目的地に向かった。
その道中、早くも陽介と中島さんは意気投合してしまった。
最初こそきっちり挨拶してたのに、もう砕けた口調になってるし。
「ちょっと酒井先輩聞いてくださいよ」
「おう、どうした」
「水瀬先輩ってば酷いんですよ。昨日一緒に私たちの水着を買いに行ったのに平然としてるんです。
こんな美少女ふたりと買い物に来てしかも水着売り場なんですから、もうちょっと慌てふためいてくれても良いと思うんですよ」
「あ~そうか。こいつそういう感性が他の奴とはちょっとズレてるからな。
おおかた水着はただの布で、大切なのは中身だって思ってるんじゃないか?」
「ふむふむ。つまりむっつりスケベって事ですね!」
なにか凄い風評被害を受けてる気がする。
中島さんのジャッジを聞いて呆れてため息が出そうだ。
それを聞いて陽介もフォローを入れてくれる。
「いやいや、前に聞いた話だと、ゲーム内ではクランメンバーがほぼ女性だって話だから、普通にスケベなんじゃないかな」
「うわぁ。水瀬先輩、ハーレム願望があったんですね」
「……」
「なぜそうなる。そして霧谷さんも引かなくていいから。あと陽介もそれフォローになってないからな」
「はっはっは。まぁ間違って男が好きって思われるよりマシだろ」
「ッ!」
一瞬、中島さんの目がキラッと光った気がしたけど、気のせいだよな。
そんなアホな話をしている間にウォーターランドに到着した。
「じゃあ、またあとで」
「はい」
「よし、俺達の肉体美を期待しててくれ」
「ふふん。先輩たちこそ私達の水着姿をみて鼻血出さないでくださいね」
「何を張り合っるのよ」
「ふたりともノリが良いからな」
「「はぁ。……っ。ふふっ」」
とため息をついたら、同じくため息をついた霧谷さんと目が合ってちょっと笑ってしまった。
それを見た陽介たちが何やらヒソヒソと話し出した。
「ちょっと見ました?奥さん、今の」
「ええもう、息ぴったり」
「そういうのに興味ないのかと思ってたのに、ちゃっかりやる事やってたんだな」
「まったく隅に置けないですね」
「オイコラ。お前らはちょっと目を離すとすぐこれなんだから。馬鹿言ってないでさっさと行くぞ」
「ほらちーちゃんも」
「「はーい」」
霧谷さん達と別れて更衣室へ。
と言っても男性の着替えなんて基本脱ぐだけだ。水着は予め着て来てるしな。
パパっと脱いで荷物をロッカーに仕舞えばおしまいだ。
と、そこで陽介が話しかけてきた。
「それでお前、涼子とはいつから付き合ってるんだ?」
「は?いやいや。別に付き合っては、居ないぞ」
「そうなのか?てっきり付き合ってるように見えたんだけどな」
「どうしてそんな風に思ったんだ?」
「いやだって。中学に上がってからあいつが男子と一緒に居るとこなんて見たことも無いし。
あれで結構モテるらしくて男子から何度も告白を受けて、そのたびに全部お断りしてるって噂も聞いてたし。
それが、男子と遊びに、しかもプールに行くほどの仲って話なら勘繰りたくもなるだろう」
「そうか。……というか霧谷さん、やっぱりモテるんだな」
そう呟いた俺を陽介がにやにやと見ていた。
「……なんだ?」
「いやいや。その反応ってことは、脈はあるみたいみたいだな。
なら恋愛の先輩としてアドバイスしておくと、曖昧な状態でも付き合ってみた方が良いぞ」
「そういうものか?中途半端に付き合うと相手を傷つける事になりそうだけど」
「それも含めて人生経験ってもんだろう。
それに、そんなことは無事に付き合えてから考えれば良いだろう」
「……それもそうだな」
「(ま、海里の事だから付き合いだしたら、そんな心配要らないだろうけどな)」
「ん?なんか言ったか?」
「いや。あいつら待たせる訳にも行かないしボチボチ行くか」
「ああ」
そうしてプール場へと足を踏み入れれば、夏休みという事もあり、朝一のこの時間でもそれなりに賑わっていた。
とは言ってもぎゅうぎゅう詰めって訳じゃなく、それなりだ。
「朝だからこんなもんか」
「いや、最近の奴らはもっぱらVRで済ませてるんじゃねえか?」
「あ~それはあるかもな」
今時代、VR内は五感のほぼ全てがリアルと変わらない。
むしろ視覚なんかに関してはVR内の方が良かったりするし、運動が苦手な人でもスーパーマンにだってなれる。
だから旅行もレジャーもVRでって人が多い
見渡してみればVRを使えないくらい小さな子供を連れた家族が多い気がする。
同年代はそれこそ片手で数える程か。
俺だってこんな機会でも無ければ暑い中わざわざここまで足を運ぼうとはしなかったかもしれないし。
そんなことを思いながら待っていたら、程なくして女子更衣室の方から霧谷さん達がやってきた。
「……お待たせしました」
「お、おぉ」
恥ずかしそうに佇む霧谷さん。
水着自体は俺が選んだんだから分かっては居たけど、やっぱりこうして見ると全然違うな。
それにさっきの陽介のせいで意識してるからか、すごくその……
「かわっ……あ、いや。えっと、その。すごく似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます?」
危ない。ついつい変なことを口走るところだった。
そして返事をした霧谷さんは俺の視線を外すように視線を下げて俺の体を眺めた。
「先輩も、その……引き締まってて男らしいです」
「う、うん。ありがとう」
「……」
「……」
何というかほんと。
顔を真っ赤にして褒められると凄く照れる。
水着と照れたように俯くコンボが強力でくらくらする。
「あの~、お二人さん? 私も居るんですけど」
「……はっ。あーごめんごめん。中島さんもイメージ通り可愛いよ」
「どうも。まぁ、べっつに良いですけどね~」
若干おざなりな評価を聞いて怒ることもなくニヤニヤと笑う中島さん。
横を見れば陽介もニヤニヤと笑ってるし。
「よし、酒井先輩。早速泳ぎに行きましょう」
「そうだな。こいつらは放っておいて行くか」
「ちょっ、こら。置いていくな。霧谷さんも行くよ」
「はいっ」
俺達を置き去りにして行こうとする二人を慌てて追いかけてプールへと向かうのだった。
後書き日記 霧谷編
8月2日
今日は先輩たちとウォーターパークに行ってきます。
昨日は失敗して炎天下の下に先輩を待たせてしまったので、ちゃんと駅で待ち合わせです。
プールに行くのなんて実は2年ぶりなので、楽しみです。
前回は中学2年の時にちーちゃん達クラスメイト数人で行ったんですよね。あ、もちろん全員女子です。
今回は先輩、つまり男性と一緒なのでちょっと恥ずかしい面もあります。
水着もちょっと大人びたデザインですし。
あ、でも先輩。水着選んでた時そんなに恥ずかしそうにはしてなかったから、実は見慣れてるのでしょうか?!
え、いったい誰のを??
その人に比べて私はどうなんでしょう。
そんな不安を抱きつつ、ちーちゃんと合流してから待ち合わせの駅へと向かいました。
って、なんで従兄の陽にぃが一緒に居るんですか?
え? 先輩のクラスメイト? マブダチって、それは死語じゃないでしょうか。
そんなちょっとしたハプニングもありつつ、私達は電車に乗りました。
そして、流石ちーちゃん。コミュ力が高いというか、人見知りしないというか。
早くも陽にぃにズバズバ質問を投げかけてくれてます。
ふむふむ、先輩に彼女は居ないと。
あーなるほど。昨日の淡泊な感じも先輩らしいと言えばそうだったのかもしれないですね。
決して慣れていたから、そうだった訳ではないと。
ウォーターパークに着いて着替える為に先輩たちと別れて更衣室に入った後。
「良かったね、涼子ちゃん。ここは涼子ちゃんの水着姿で先輩を悩殺だよ!!」
とちーちゃんが激励してくれました。
って、ちょっとまってください。
それは確かに先輩の事は気にはなってますけど、まだそこまでではないと言いますか。
もちろん、嫌いじゃないですよ?もしそうだったらプールなんて来ませんし。
でも……だからその……えっと。
そう!先輩の気持ちだってあるんですから。
もしかしたら私になんて全く興味ないかもしれないですし。
それにほら、ね?
え、じゃあ水着姿を見た先輩がどう反応するか見てみようって。
待って待って。まだ心の準備が……。




