イベントスタート
<これより、GWイベント【自由島:ラムラリアでお宝を探せ】を開催致します。
イベントフィールド内には様々な場所にポイントアイテムが隠されており、中には複数人で協力して手に入れるものや、得意分野を活用しなければ手に入らないものもあります。
ポイントはイベント終了後にアイテムやスキルなどと交換が可能になります。
またポイント以外にも沢山の宝物が見つかる可能性があります。
皆さまにとっての最高の宝物を見つけられることを心から祈っております。
なお、イベント期間中はセーフティエリアに居る場合に限り、自由にイベントフィールドへの出入りが可能です>
4月29日午前10時にイベント開始のアナウンスが流れた。
「よし、じゃあ行ってくる。どうやら戻ってこれなくは無いみたいだから、何か問題があったら呼んでくれ」
「くぃ」
「きょっ」
「ぴっ」
3匹に見送られて俺はイベントフィールドへと飛んだ。
一瞬の浮遊感の後、俺は深い森の中に立っていた。
「これが自由島:ラムラリアか」
凄いな。
何が凄いって空気がある。
って、それが普通か。
ゲーム開始当初から水中に居たから空気が新鮮だ。
それにしても、またスタート地点はランダムだったらしい。
それなりの人数が参加しているはずだけど、近くには誰も居ないようだ。
周囲を見渡しても森しかなく、太陽は木に隠れてほとんど見えない。
起伏が激しいところを見ると山の中腹なのかもな。
さて、ひとまずは何かありそうな場所を求めて移動するか。
……いや、違うな。
周囲に森しかないんじゃない。森があるんだ。
当初の目的を思い出せ。
初イベントの初地上で浮足立っていたけど、俺の目的は必ずしもイベントポイントを集める事じゃない。
持ち帰って育てられる植物を探すことこそ大事じゃないか。
つまり俺からしてみればここは宝の宝庫。
ひとまず目に付く限り採集しまくろう。
そうして1時間後。
多く採集できたのは普通のほうれん草、ニンジン、シイタケ、スギナ。品質はどれも1か2だ。
やっぱりこの4種はこの世界での基本の植物ということなんだろう。
他に珍しい食材でヨモギと芋と自然薯が手に入った。
どちらも先日借りていたサバイバル本に葉の形などが紹介されていた。
芋は試しに鍬で地面を掘ったら見つかった。
あとおまけでイベントポイントもちょいちょい見つかっている。
どうやら隠されているというより、こうした活動を行うと出てくるようだ。
「さて……」
「……」
見られてるな。
ヤドリンのお陰でこういう視線には敏感になった気がする。
魔物、にしては殺気が無い気がするけど、さてさて。
「そこに居るのは誰かな?
敵でなければ出てきてほしい」
そう声を掛けて出てきたのは、少年が3人。
いずれも麻っぽい布で出来た服を着て、手には簡素な槍を持っている。
原住民の子供、かな?
代表して1人が1歩前に出た。
「兄ちゃんは誰だ?うちの村の人ではないようだけど、何しに来たんだ?」
「俺はカイリだ。何をしに……えっと、山の恵みを分けてもらいに来た、が一番近いかな。
もしかして勝手に山菜を取ったら怒られたりするだろうか」
「山は神様のものだからな。荒らさなければ怒られることは無いよ。
見たところ大した武器もないようだし、この辺りは魔物も出るし危険だよ。
良かったら一度俺達の村まで来ないか?」
「それはこっちとしても有難い。よろしく頼む」
そうして少年たちと共に山を下りると程なくして村が見えてきた。
村の中を少年たちと歩くと奇異の目で見られるも咎められることはなかった。
あと、ここまで来ると流石に他のプレイヤーの姿もちらほら見るようになった。
装備からしてほとんどが2期組だろうな。
種族の違いから色んな姿の人が居て見てて飽きないな。
ふと、畑が目に入った。
自分のところ以外では初めての、それも陸上の畑だ。
どんな感じなのか気になる。
「なぁ、畑を見させてもらっても良いか?」
「うん?いいけど、今は何もないよ」
「何も?まぁいいや」
さて畑はというと、確かに何も育ってない、ただの土の地面があるだけだった。
休耕中なんだろうか。
畑の奥の方では老夫婦が鍬を持って耕していたので、折角ならと声を掛けることにした。
「こんにちは~」
「おや、いらっしゃい」
「わざわざ村まで来るとは奇特な子も居るもんだねぇ」
「まぁこっちに来なさい。その様子じゃ神社にはたどり着けんかったんじゃろ?」
「神社?いや、俺はさっきこの島に来たばっかりなんだ」
「うん?」
俺の返事を聞いて、顔を覗き込むように見つめてくるお爺さん。
「ふむ。他所の島のお人だったか。
しかし大変な時期に来たもんだのぉ。
今年は春祭りに異界からの来客が重なって更には魔物たちまで活動が活発になっているという。
村の外に出るときは気を付けるんだよ」
「はい、分かりました」
「うんうん。今は息子たちが村に居ないで、大した持て成しは出来んがゆっくりしていってくだされ」
「ありがとうございます」
言われてみれば、プレイヤーが歩き回ってるから気にならなかったけど、よく見れば村人は中学生くらいまでの子供とお年寄りしかいない。
「息子さん達は出稼ぎに行ってるとかですか?」
「上の息子夫婦はそうですの。下の息子は春祭りに行っとります。
あれのことだから、今年も宝物を見つけられずに最終日までのんびりしてから帰ってくるでしょう」
どうやら今回の宝探しイベントはプレイヤーだけじゃなく、現地の青年たちも参加しているらしい。
でもそうなると、この広い畑をお爺さん達だけで耕す必要があるのか。そりゃ大変だろう。
あっ、それで今は何も育ってないのか?なら。
「あの、俺こう見えても農家なんです。もしよかったら畑耕すの手伝いましょうか?」
「なんとまぁ、ありがたい。君は最近の若者には滅多に見ないタイプのお人のようだ」
「ほんと。折角だから孫たちも一緒にやりましょうね」
「「うげっ」」
俺を案内したばっかりにとばっちりを受けた少年たちが飛び上がる。
毒を食らわば皿までっていうしな。
済まないが諦めて付き合ってもらおう。
後書き日記
21xx年4月29日
GWイベントがスタートしました。
私も周囲の人達と同様にイベントフィールドへと移動します。
移動した先はどこかの草原。
周囲を見渡せば同じようなプレイヤーの人達がいます。
ほとんど同じ種族の人ばかりという事は、転移元の街もしくは国ごとにスタート地点が分かれているのかもしれません。
山の中に一人放り出されても困りますからね。
近くに仲間がいるというだけでも心強いものです。
と、プレイヤーの一人が遠くに煙を見つけました。
恐らくそちらに現地の方が住んでいるのでしょう。
島の情報が欲しいのは皆一緒なので、ぞろぞろと煙の立っている方へと移動します。
向かった先にあったのは子供と老人ばかりの村。
聞けば村の青年たちは宝さがしに島の中央へと出かけているというじゃありませんか。
あっという間にその情報は全員の耳に入ったようで、ほとんどの人が直ぐに村を出て島の中央側へと行ってしまいました。
私も、と思ったところで、ふと村の様子が気になりました。
お祭りがいつから始まったかは知らないですが、働き手が全然居ないのは大変じゃないでしょうか。
少しくらい手伝ってもばちは当たらないでしょう。
イベントの宝物も気になりますが、少しくらい遅れても大丈夫ですよね。