始まりは海
いつもお読み頂きありがとうございます。
初めましての皆様は見つけてくださりありがとうございます!
新連載開始します!!!
いつも通りプロットゼロスタートです。
頑張れ主人公。君の肩にすべてが掛かっているぞ!
21xx年4月20日
GWを目前に控えたその日、我が家に1つの小包が届いた。
送り主はサイバーワールド社。
それを見た俺は叫びだしたくなる衝動を抑え、急いで小包を抱えて自室へと戻った。
震える手で小包を開ければ、期待通りに1つのソフトが出てくる。
『アルティメットサイバーフロンティア』
去年12月に発売されたこのソフトは、
異世界の惑星を舞台に、ほぼ未開の土地を切り拓いていくことをコンセプトにしている。
また移民者=プレイヤーは4つのグループ(国家)に分かれており、時に協力し、また時には戦いを繰り広げながら発展していく必要がある。
発売から4か月が過ぎた今は、まだ国家間の戦争は起きていないが、今月1日のイベントでは大地を割るほどの巨大ボスが登場し、将来的にはレイドバトルで挑むことが暗に示された。
1期組の抽選から漏れた俺は、見事2期組としてこの世界に踏み出すことになる。
正直出遅れてしまったので1期組に追いつくには相当課金して経験値ブーストなりしないといけないだろうがそんな金は正直ない。
なので、俺の目標は攻略組に潜り込むことではなく、曰くネタプレイというか、やりたいことをとことん追求することに決めている。
ソフトをVRマシンにセットして、さっそく起動すると、お馴染みとでも言うべきオープニングからキャラメイクが始まる。
ちなみに今立っているのは、宇宙空間だ。
これから降り立つ星が眼下に見える。
最初は国家および種族の選択。
これは4か国でそれぞれ種族が決まっているので、国を選べば同時に種族も決まることになる。
そのせいで人数比に偏りがあるそうだが、その辺りもなんとかバランスを取っているそうだ。
<種族を選択してください。
・人間
・妖精
・獣人
・魔族
・その他 >
選択するとそれぞれに説明文が出てくる。
って、その他ってなんだ?
情報共有サイトにはそんなの載って無かったんだけど。
<種族:その他
4か国どこにも所属しない者たち。種族は現地住民と同じであり、見た目はヒューマンに近い。
初期位置は完全にランダムになります。
他の人が居ない場所になる場合もありますのでご注意ください。
場合によっては生存することが当面の目標になるほど、過酷な環境からのスタートになる可能性もあります。
その代わり他の種族に比べてスキル習得などの環境適応能力は高くなっています。 >
なるほど、原住民族か。
いいじゃないか。ちょっと注意書きが気になるけど、1期組とは違うプレイが出来そうだ。
種族を選ぶと外見を調整出来るようになった。
説明文通り、姿形はリアルの自分と大して違いは無かった。
ただ、そのままってのは味気ないから髪を青くして長めにして、瞳も青みがかった黒にしてみた。
これでぱっと見、俺だって分からないだろう。
さてお次は、
<初期ジョブとスキルを選択してください>
こちらもある程度リサーチは済んでいる。
ずらっと並んだ初期ジョブの一覧。
その中から不人気職の「農家」を選択した。
1期組でスタートした友人曰く、生産系の中でも特に農家は地味で人気が無いそうだ。
また現地住民などを雇えはするが、それでも畑の管理が大変だとかで、途中で別のジョブに変更してしまう人も多いらしい。
ジョブを選択すると、それに紐づいて基本的なスキルは手に入る。
それとは別に初期スキルを選択できるようになっている。
これはもちろん選んだジョブに関するものでも良いし、全く別のものでも大丈夫だ。
例えば農家+土魔法なら開墾とかが楽になるかもしれない。
治癒士が剣術スキルを付ければ前線で戦うヒーラーの出来上がりだ。
そんな感じで自由度があるなか、俺が選んだのは「従魔術」。
契約した魔物を仲間に出来るスキルだ。
これさえあれば畑の管理とかも楽になるだろうし、この世界の牛や馬が魔物かは分からないけど、上手くいけばそれらも使役出来るかもしれない。
<あなたのお名前を教えてください>
これはそのままでも良いか。なので「カイリ」としておいた。
<最後に、初期位置はランダムとなっております。本当によろしいですね?>
念押しの確認が来た。それだけハードな展開が待ち受けているってことなんだろうな。
「はい」を選択すると、それまで表示されていたコンソールが消え、俺は光となって1つの星へと落ちて行った。
……
…………
………………
ドボンッ
(は?)
「もがごがごがっ」
さぁスタートだ!と思った瞬間、地面に足が付かず。
なぜか暗い海の底へと沈んでいく俺が居る。
あの、運営さん?
確かにスタート地点ランダムって言ってたけど、確かに生存することが最初の目標だってあったけど。
せめて陸地にしようぜ!!
そんな心の声も虚しく、俺はそのまま溺死したのだった。
って、待って。
リスタート地点は変更なしですか?無しですかそうですか。
「もがごがごがっ」(3回目)
いや、泳げない訳じゃないんだけど、着衣泳法は流石に習ってないというか。
せめて救命胴衣とかないんですか?えっ、あると良かったですね?ってないんかい!
「もがごがごがっ」(10回目)
まぁね。分かってるよ。
キャラクリからやり直せば済む話だよな、うん。
運営に確認したら俺のリスタートポイントは元々地面があったらしい。
それが何かの理由で地割れが発生したのではないか、という事だった。
お詫びにアイテムボックスにリスタートポイント変更のアイテムが届けられた。
だけどここでそれを使うのは何か負けた気がするというか、この状態から逆転勝利って格好よくね?って思ってしまった俺が居るわけで。
こういうのは努力と根性で勝ち抜いてみせる!!
そんな思いが通じたのか、溺死すること20回。
<称号:水に挑むものを取得しました>
<スキル:水中呼吸法、水中移動、水中観察、水中会話を取得しました>
ドボンッブクブクブク……
よしよし。息を吸うと普通に水が口の中に入ってくるけど、なぜか苦しくない。
同様に息を吐くと空気が出ずに水が出ているみたいなのが違和感だけど、問題なく呼吸になっているようだ。
続いて泳いでみる。
すると前回までは服が水を吸って重かったりして碌に動けなかったのに、水掻きを通り越してスクリューでも足に付いたんじゃないかってくらいスイスイ水中を泳ぎ回れるようになっていた。
やべぇ、これ超面白い。
水中の景色もかなり遠くまで見通せるようになってダイビング好きの気持ちが少しわかった気がする。
しかしこうなると、もう陸に上がらなくても良い気がしてきた。
幸いこの辺りの海には魔物が居ないみたいだし。
というか、魔物どころか魚も居ないんだけど、どうなってるんだ?
海底に到着すると硬い岩盤が広がっていて海藻すらほとんどない。
これは、つまりあれだな?
うん、あれだ。
手付かずの大地を自由に出来るって事だ。
ならここに一大海底農場を作るしかないな。
……日の目を浴びる日が来るかは謎だけど。
後書き日記
21xx年4月20日
今日は待ちに待った『アルティメットサイバーフロンティア』、通称アルフロが届きました。
本当はサービス開始の去年12月から参加したかったけど、高校受験の為にゲームが禁止されていたのです。
まぁその甲斐もあって受験は無事に志望校に1発合格。
これで大手を振ってゲームが出来るというものです。
しかし悔しいのはクラスメイトにアルフロをやっている人がいました。それも複数。
つまり受験そっちのけで遊んでいたらしいのです。
この高校、進学校だから偏差値高めなのに、許すまじ。
まぁいいです。
そんなこと言ってても始まらないですからね。
とにかく自分なりに楽しめればそれでいいのです。
ゲームを起動してキャラメイク。
種族は妖精を選択。これは他種族に比べて器用さが高いから。
初期ジョブは料理人を選択。スキルは植物学。
何を隠そう、私は美味しいものが食べたいんです。
リアルでそれをしようとすると、どうしてもお金が掛かりますからね。
それに体重も気になるところ。
でもゲームだったらどっちも解消できるし、しかも自分で料理をすればリアルの料理技術も上がって一石二鳥です。
昔、炭製造機と馬鹿にした従兄をぎゃふんと言わせてやりましょう。