Seven story 【Ⅱ】
地上~
「いらっしゃいませ!どれにしますか?」
「そうだな…おっ!この《肉焼きパンズ挟み》を3つで」
「ありがとうございます。ご一緒に《細切りの揚げ芋》はいかがですか?」
「いや、今日は辞めとくよ」
「そうですか、ありがとうございました!」
地上に上がったセブンは様々な街・国をめぐり冒険者やその地域の住人向けに料理を提供する屋台を出し始めた。朝に買い出しと魔物を狩り食料調達、昼間は片手で食べれる軽食を提供し夜は持ち運びができる椅子とテーブルを出し食堂として活動していた。
もちろん最初からこんなに上手くいく訳はない。客を取りすぎないように調整し、食材もしっかりと見極めて扱うようにしている。
「セブンさん《ポテトサラダ》追加です」
「ありがとう、ナナさん」
ナナというこの少女こそセブンの最初の仲間であり、《美食會》幹部の1人。彼女はセブンが食材である魔物を狩るときに保護したドワーフだ。ドワーフはモノづくりに長けて入り種族であるが、モノづくりで鍛えられた腕力で戦うこともできる、更に武器のメンテナンスもできると良いこと尽くめ。しかしナナは手のひらサイズの物しか作ったりメンテナンスが出来ない、ドワーフの腕力を期待した仲間から見捨てられたところセブンが引き上げたのだ。
「いつ見てもこの包丁は素晴らしい…材料は普通のメタルと何かほかの鉱石を混ぜた物だろうけど造形・色・形、そして切れ味…全てが完璧」
「ナナさんにそう言ってもらえるこの包丁は幸せ者だな」
「ふふん。あ、会長もうすぐ会合の時間です」
「わかった」
夜の部の食堂の片づけをし、懐から【水晶念話】を取り出した。時間になると続々と各国に散らばる幹部から連絡が入る。全員セブンが救い出した者ばかりだ。本日は2つの報告を受けた。新規に就いた魔王は友好的でもしかしたら魔界の美味なる食材を分けてくれるかもしれないという事、もう1つは美食會の運営費が足りなくなりつつあることだった。運営費は美食會のメンバーの活躍で稼いでいるが、儲けをあまり出さない設定で行っているから常にギリギリだ。
セブンは早速、魔界へ足を延ばした。魔界を周りながら屋台を引き魔族の好みを調査していると魔王城からの使いから声がかかった。もし、現魔王が好戦的ならセブンの行動は自分のシマを荒らしていると捉え排除するだろう。しかし、報告通り友好的らしく丁寧な招待をされた。セブンは魔族好みの味付けをしつつ、楽太郎の味もにおわせた。食事が終わると魔王はセブンを見つめた。
「問おう、店主。この料理を何処で学んだ?」
「はい、この料理は私の恩人から学びました」
「…すまないが、人払いを」
「で、ですが…」
「構わん」
他の魔人が出ていき、セブンと魔王だけになった。
「まずは礼を言う。この味で私は忘れた日はない事をより鮮明に思い出せた」
「ありがとうございます」
「Rakutarou…を知っているか?」
「はて?何のことでしょう?楽しそうな名前ですね?」
「スープ料理はないのか?」
「…少々、お待ちを」
セブンは屋台に隠してた筒を開け器にスープを移した。
「このスープは…」
「えぇ、あのスープです」
懐かしむようにそのスープを飲むと魔王…否、ワンは語った。セブンとは兄弟分であること、遠くないうちにに人間の国を攻めること…をだ。セブンは屋台を元手に食育革命を起こし、裏で食を牛耳り母を救い出す話をした。形は違えど王族を追放するには違いない。
武の協力を意外なところから手にした。残すは活動資金のみだが、実力が認められれば助けになる人物を紹介してく入れた。
「他にもお前にとって姉もいるぞ?人間界では頼ってみろ」
ワンは書状を書き連ねセブンに渡した。
「名はトゥーだ。今は貴族だがこれを見せれば取り合ってくれるだろう」
兄から紹介されたのは貴族でもありSランク冒険者だった。自分の兄妹には人間にとっては脅威とされる魔王、冒険者から尊敬のまなざしを集めるSランク冒険者。自分の師は一体何者だろうと考えながら万全の準備をして彼女の屋敷に向かった。