Six story 【Ⅲ】
それからしばらく経ち、元冒険者の貴族が訪ねて来た。
「なんのよう?」
「はい、折り入って頼みがありまして…」
聞くところによると、自分の諜報員からの情報で近々魔王がこの国に攻め入るそうだ。その被害を減らすため、トゥーという貴族は手持ちの不動産をすべて開放し住民を避難させるそうだ。その時に怪我をした住民の面倒を見てほしいというものだった。
「協力してはいただけないでしょうか?」
「いいのよさ…ただち!」
「治療費の事ならお任せ下さい。ご指定の額を用意させていただきます」
「ちがう。ちゅらむの人もひなんさせてほちいのよ」
「その事でしたら当たり前です。身分問わず引き入れます」
「いひひひ、アンタとははなちがあいそう。ちぇんちぇみたいにやさしいのね」
「ちぇんちぇ?」
「あたしにいじゅつを、おしえてくれた…えっらーいちぇんちぇなの!」
まるで姉のような優しさを持つトゥーについベラベラ喋ってしまった。するとトゥーは驚いた顔をしながら私に尋ねた。
「ねぇ、シックスさん。貴方に医術を教えたには何方?」
私は一瞬、悩んだが素直に答えることにした。
「りゃくたろーちぇんちぇ!」
「え…もしかして、貴方もこれ持ってるの?」
すると、トゥーは懐から懐かしいクリスタルの眼鏡を出す。
「あー!ちぇんちぇのなかまのあかち!じゃあ、おねえちゃん?」
「そうよ!貴方の姉に当たるトゥーよ!他にも兄妹はいるんだから!」
「はわわわ、ちょうなの!」
姉妹水入らずで会話をしていると背後から忍び寄る影が。
「「!」」
「「ぎゃ!」」
ほぼ2人同時に、その影を撃退した。
「シックス…なかなかやるじゃない」
「おねえちゃんこしょ!」
2人は不届き者を縄で縛りながら笑った。
屋敷内に避難していた住人の中には当然、子供もいる。いくら屋敷が広くてもストレスがたまり走り回れば大人に注意され子供は更にぐずる。だがそんなことは起きなかった。いま最も人気のマジシャンが無料公演を開き退屈させていないからだ。
「おちゅかれさま」
「あぁ、ありがとうドクター」
「褒めてもにゃにもでないのよさ」
公演で疲れたであろう彼に飲み物を差しだす。彼は美味しそうにそれを飲みお喋りをした。それはとても楽しくあっという間に時間が過ぎてしまった。そして胸がドキドキする。おかしいな激しい運動はしていないんだけど。
国のトップが変った日。私宛に荷物が届いた。中には【水晶念話】とメッセージが。
『兄妹のみ登録済み 8』
私は姉に念話することにした。彼の事を思うとドキドキするこの思いの正体を聞くために。
〜Six story end〜
続編希望の方がアクションを書いてくださっているので頑張ります
ただ、更新速度はこんな感じですのでご了承くださいm(_ _)m