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Six story 【Ⅰ】

 14年前-ダンジョン第3層~

 この日、私の人生の分かれ道、私は忘れたことはない。私はその日、単独でダンジョンの第5階層の攻略に出ていた。普段はパーティの仲間と挑むがタイミング悪くみんな用事があったので、食費だけでもと思い挑んだのだ。順番に階を重ね3階層目に来た時に先客と出会った。


「あら?何をしているの?」

「あ!これはマジック・ハンディさん。こんちわっす!」


聞くところによると、この階で珍しい貴重な鉱石を発見したらしく貴族がその鉱石に興味を引き発掘依頼を出したそうだ。階層が低い場合は、発掘は低ランクの冒険者でも出来る割のいい依頼だ。掘りすぎて落盤しないようにと先輩として注意し、下へ続く階段に向かった時


ドーーン!!


壁を爆破するダイナ魔イトに巻き込まれて私は奈落へ落ちた。恐らく固い壁に対して業を煮やしバカの一つ覚えで大量に使ったのだろう。熱さ、痛さよりも血を失い体が冷えていくのがわかる。いや落下によるものだろうか?私は落ちていった。途中、何かに包まれたがそれが体に当たり痛みがよみがえった。痛い、苦しい殺して!私はそっと掬い上げられると意識を手放した。

 気が付くと全身に布がまかれお腹からは気味の悪い管が出ていた。そのそばに、髭と髪が伸びた男が寝ている。私は生きていることに驚いた。爆破に巻き込まれ火傷した感覚、手足が千切れた感覚…完全に死を覚悟した。あそこまで酷いと大聖女の【祈り】の治療でも、万能薬【エリクサー】でも完璧には治らないだろう。だが、動かせないが私には手足があるのがわかる。

 男の話だと私は1ヶ月 意識がなく生死をさまよっていたそうだ。その日から私はリハビリと、男【Rakutarou】から知識を教わった。彼の医学は凄まじかった。目に見えない【菌】の存在。輸血という血が足りない時の手段。そして外科知識…。私は心臓とは「♡」の形をしているものだとばかり思っていたが、正確には違った。ゴブリンの死体による解剖から正しい知識を吸収し、魔物の革を鞣した物にまとめていく。


「ここでは学びきれない事を外で学んできな」

「しょんな…ちぇんちぇ以上の、ちちきなんてありゅのでしゅか?」

「あぁ、あるとも。頑張ってこい」

「あい!」


 2年後、私は先生の下から巣立っていった。先生が作った装置を使い2年ぶりの地上に出てきた。まずは街へ戻ろう。そう思った矢先、傷を負った虎に出くわした。2年前の私なら、楽にしてあげようと思った。だが今は違う、先生の教えがある今では消えゆく命は放ってはおけない。もともと魔法使いなので、少しは治癒魔法が使えた。しかし、気休め程度。私は手にしている本から召喚陣を触り手術道具一式を出し、虎に精神安定の魔法と拘束魔法をかけた。先生程ではないが無事に手術は成功した。薬草を磨り潰し患部にあて治るまで付き添った。虎は全快すると私にお辞儀をし森へ帰っていった。私はそのまま街へ向かった。

 冒険者時代の身分証が使えたのでそれを使い街へ入る。私は迷うことなくスラム街へ足を運ぶ。ここには助かる命も高額の治療費が払えず、助からないことが多いから私はここで人助けをしようと決めた。そしてもう1つここに来た理由は、様々な情報が集まるからだ。スラムの人間は金を得るため非合法の仕事をする時もある。そこから私のあの事故の真相を探ることに決めたのだ。かつての仲間にも会いたかったが、迷惑をかける可能性があるから力を付けてから会うことにした。

 スラムに来て2年で、私の事を知らないスラム住人はいなくなった。それだけではない、どこからか噂を聞きつけ貴族まで私に治療をせがんできた。


「た、頼む!治療費はいくらでも払う、息子を救ってくれ」

「ポーチョンをちゅかえば?」

「使ったさ!けど効果がないのだ!」


苦しそうな子供の服を脱がせると胸がへこんでいた。鑑定という、本来は物品に使う魔法を子供にかけると彼は肺に穴が開く【気胸】であった。本来ならへこんだ胸の上に、上級ポーションをかければすぐに治る。しかし、貴族は少しの傷だけでポーションを使うので身体が慣れてしまい効果が薄くなったのだろう。これでは胸を開けポーションを肺に直接かけても治る確率が低い。物理的に塞ぐしかない。


「ちゅじゅちゅちないと、ダメなのよさ」

「む、息子の身体に刃物を入れるのか?!」

「ちょうよ、はやくちないと危ないのよさ」

「ぐっ…野蛮な治療か!」

「どうちゅる?」

「頼む!」

「ちゅじゅちゅりょう、一千万なのよさ」


 散々、治療費の事は文句言われたが傷跡を残さない手術であったため最後はしっかりと払っていった。貴族からの治療費はすべてスラムの患者に充てている。

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