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Ⅱ-楽太郎21歳

 ワンが旅立って14日後。楽太郎は魔法で遊んでいた。化学の応用だと気付いた楽太郎は、様々なオリジナル魔法を作り上げていく。そんな時、また落下する音が聞こえた。


「何だ?まさかまた生物じゃ…いやそんなミラクル…いやあのシルエットは人だ」


 杖を振るい魔物の毛皮で捕らえる。今度のは首枷が付いている薄汚い子供。この人間も傷がないところを探すのが大変と言うほどに傷ついている。しかもここ最近に付けられたものじゃない。少なくても1年以上前に付けられたものだ。取り敢えず楽太郎は魔法で問題の人物を綺麗にし、目が覚めるまでの間に昨日のスープを元にまた作り始めた。煮込みすぎて具が溶けた頃に子供は目を覚ました。


「おはよう」

「ひっ、魔物!」


 ダンジョンに住み始めてから身なりに気にしなくなった楽太郎は、台所に身を潜め包丁で自分の顔を見る。

なるほど、毛むくじゃらの魔物に見える。ナイフで髪と髭をざっくり切りもう一度顔を出す。


「あ、人…?」

「一応な」


 子供は奴隷だった。荷物持ちとして冒険者のパーティに参加したそうだが、最後は囮として使われ上層階の魔物から逃げるために崖から身投げをした。


「あの…」

「どうした?」

「私を食べるのですか?」

「…何故だ?」

「だって先程『一応-人』と答えました。と言うことは魔族かもしれません。魔族は人肉を好むと聞きましたから…」


 それは酷い誤解だろう。ワンの名誉のために奴隷の子供にしっかりと教えた。

魔族と言えど人肉は食さない、人間は雑食の魔物と魔族をごっちゃに考えているからそう伝えられているのだ…と。


「そうだったんですか…よかった」


 楽太郎は奴隷の子供に【Two】と名付けた。トゥーは元奴隷とあって家事などは万能だったが、学問や戦闘能力は皆無だった。そこで楽太郎はトゥーに、学問と魔物との闘い方を教えトゥーに家事をさせた。

 1年経てばトゥーは人並みの教養を蓄え力もついてきた。そして、気付いたことがある。トゥーは女の子だったのだ。急遽、魔物との戦い方から女性としての礼儀作法を教えた。その甲斐もありトゥーはとても美しい少女になった。


「おぉ、これがあのトゥーなのか?」

「えぇ、そうです。ラクタロウさま」

「相変わらず『さま』付けは止めないのか」

「はい、これは私が私であると言う証明ですから…」

「そうか…ではトゥーよ。あの階段を上り外の世界を見てこい。お前にはこの世界は狭すぎる」

「…!わかりました。お世話になりました」


 トゥーはクリスタル眼鏡を受け取ると堂々とした足取りで階段を上って行った。そして僅か2年で、トゥーはSクラス冒険者になりそれを足掛かりに、確かな教養と話術で貴族になり奴隷を無くす活動をすることになる。その奴隷の中にはかつて自分を捨てた冒険者もいたとか、いなかったとか…

 そんな凄いことをやってのけた彼女の師の元に、また落とし物があった。

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