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Five story 【Ⅱ】

 里の外に出ると明らかに人工物と見られる石を発見した。その石を注意深く見ると


【過ちを犯したダークエルフ ここに眠る この魂が森の力によって浄化されることを願う】


エルフ語でそう書かれていたが、眠っている者の名前まではわからなかった。

 他のダークエルフの里に向かうがやはりあの墓石が気になる。引き返し【死者転写】を行った。これは精霊の力を借り、その地に眠る死者の顔を紙に転写する術だ。精霊が描き上げた顔は


「父さん…父さんの墓だったのか…!」


自分の父の墓と知りその場で崩れ落ちるファイブ。すると後ろから何か物を落とす音がした。慌てて振り返ると、父を老けさせた顔のダークエルフがいた。


「お、お前さんは誰じゃ…息子の若い頃に似ておる」

「あ、あの…ごめんなさい、すぐに消えます」

「いや待つのじゃ。もしや…※※※※(エルフ語のため翻訳不可)じゃないか?」

「なぜその名を…」

「儂はお主にとって祖父に当たるのじゃ」


 そのダークエルフは祖父であった。裏切り者の父として、里外でひっそりと暮らしてファイブの父の墓の掃除をして暮らしているそうだ。


「そうかそうか、ここまでおおきゅうなったか」

「はい、なぜ俺のことを?」

「こっそり手紙が来てたのじゃよ。ホレ」


出した便箋には父の字で書かれた物ばかりで自分のことも書いてあった。


「一目会いたいとは思ってたがのぉ。不思議な配色じゃのう」

「あ、これには理由がありまして…」


 包み隠さず話すと、なんと祖父は実験体を名乗り上げた。


「老い先短い身じゃ。孫のために役に立つならこの身体使ってくれ!」

「ありがとうございます」


 陽の光が入らない洞窟で3年間ほど篭り観察していった。食事はナチュラルエルフの物に変えた。祖父は純血のダークエルフだったが、1年経つとうっすらと肌の色が抜け始め3年目の時はもうナチュラルエルフとそう違いはなかった。


「おぉ!実験は成功じゃな」

「はい、協力ありがとうございます」


外に出ると肌がヒリヒリするという症状を伝えた。


「う〜む、奈落での仮説が真実味を帯びてきた…だが、俺の時より遅い…。あとはナチュラルエルフでも試せたら…」

「もう行くのか?」

「はい、少しでも早く謎を解きたいのです」

「…これを持って行きなさい」

「これは?」

「大昔のじゃがナチュラルエルフの里の通行手形じゃよ。昔、縁あって貰ったのじゃ」

「ありがとうございます!」


 ファイブはナチュラルエルフの里の向かった。

 歩き手形に書いてあったナチュラルエルフの里に着いた。左腕は怪我を装い包帯を巻きナチュラルエルフの姿で里の入り口まで来た。


「止まりなさい。通行手形か紹介状は?」

「はいどうぞ」


祖父から譲り受けた手形を出す。古い物だったが、どうやら書かれていたサインが決め手となり中に入れた。サインされていた有権者の元に挨拶するため、里のエルフに聞くとなんとこの里の長だという。面会を許され対面する。


「※※※※と申します。このたびは、貴殿直筆の手形によりこの里に入ることが出来ました。ありがとうございます」

「よい、貴殿の祖父は私の恩人である。これぐらいは当然のこと…しかし、その孫はダークエルフの血を濃く受け継いだと聞くが?」


 話をすると祖父はかつてこのナチュラルエルフの命を救ったそうだ。祖父が若い頃に狩りの最中、負傷している里長をみつけ介抱したのが縁で手形を渡したそうだ。ファイブは思い切って自分の事を包み隠さずに伝えた。そして、ナチュラルエルフとダークエルフは元は同じだったのでは無いか?という仮説を祖父の実験を元に製作した資料を見せた。


「ふむ、これは大変興味深い…だが、これはダークエルフのみのことかも知れん」

「はい、ナチュラルルフにも協力者を募りたいのですがいるかどうか…」

「なら、私の娘に協力させよう」

「当人がいないのにそんな事を言っていいんですか?」

「私の娘は生まれながらにして人一倍、陽の光に弱くてな。衣服で肌を隠してもダメな程だ。だが娘は少しでも陽の光を浴びたいと言っているのでな」

「わかりました。彼女に合わせてください」


 その娘はどのナチュラルエルフよりも肌が透き通っていた。本人の了承も得て実験が始まった。


「初めまして娘のヒュンフです」

「ファイブです。これから貴方に施術を行いますが…その肌はこの左腕のように褐色となります。よろしいですね?」

「はい…もう夜しか出歩けないのは嫌なのです」


祖父の時とは逆にし、食事はダークエルフ寄りのものに変えた。最初は血の匂いなどで、食べては戻すを繰り返していたが次第に慣れていった。薬を肌に塗り日の光が弱い夕方から外に出て肌を強くしていく。祖父と同じ年月をかけてヒュンフはダークエルフと同じ肌色になり陽の光を浴びのびのびと動けた。


「お父様、見てください!私、こんなに元気です」

「おぉ、夢でも見ているようだ。ファイブ、礼を言うありがとう」

「いえ、私もお嬢様の施術を通していろいろと分かったので…」

「ところで、ファイブは将来を誓った者はいるのか?」

「いえ、いませんが…」

「私の娘と契りを結んではくれないか?どうやら娘は、君の事を好いたらしい」


ファイブがヒュンフを見ると褐色の顔が紅色に染めていた。そのまま、ファイブとヒュンフは結婚。まだ公に発表はできないが、里長は心から祝福し新しい通行手形を渡した。

 お互いに支えあいながら各地のエルフの里を周っていたころ、魔王からの使者が二人の前に現れた。


「初めまして。私は魔王様より言伝を承った物です、『2人の研究が気になる。是非とも教えてほしい』だそうです」

「どうしますです?あなたさま」

「勿論行くさ。これはチャンスだ。魔王様に認めてもらえれば種族間の長年の戦いが1つ無くなるんだから」


 今までの研究結果を持って魔王城にてプレゼンに挑む。魔王城には魔王をはじめ各種族の族長が集まっていた。発表後に各族長から質問を受けそつなく答えていると、人間の子供のような容姿の物が手を挙げる。

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