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Five story 【Ⅰ】

「やはり肌がヒリヒリする。今までに無いことだ」


 地上に出たファイブは早速、己の体を使い実験を開始した。左腕にはかつてのように日焼け止めを塗り肌を出し、他の部位は布ですっぽりと隠した。掘建て小屋を作り研究を開始した。取り敢えず、肌に特徴が出るまでは大人しくすることにする。

 半年経つと仮説の通り、左腕はダークエルフの特徴である褐色の肌になった。いくら水で洗っても落ちない色だ。だがこの現象は、混血種である自分だけに起きる物だったら意味が変わる。楽太郎の話にあった『遺伝子』という物に左右されるとなると、結局自分は争いの種だけになる。やはり純血の被験体で試さなくてはいけない。しかし、ここからナチュラル・ダーク共にエルフの里までは距離がある。道中危険もあるだろう。どうするかと考えながら歩くと人間の街の関所まで来た。


「通行証か身分証明書の提示を」

「すいません、自分はエルフでしてどちらも持ち合わせていないのですが」

「ふーむ、困ったな。なら向こうで仮の通行証を発行して通行料を納めな」

「はい」


正門から少しそれた場所に案内されたファイブは、嘘を見抜く水晶に手を当てて犯罪歴無しという事で割高であるが街へ入れた。毎回この手続きをするには効率が悪い。身分証明書になるギルドカードを手にしようと、街を周りギルドの門を叩くがどのギルドも混血種であると伝えると加入させてはくれなかった。途方に暮れてた時、自分の横を獣人がスキップしながらあるギルドに入っていった。

 獣人もよほど腕が立たないとギルドには加入できないと聞く。だがあの獣人は、お世辞でも強そうには見えなかった。ダメ元でその獣人が入って行ったギルドに入ると驚いた。職員は人間だけでなく獣人も働き、ギルドに加入している冒険者も同様だ。しかも皆が笑顔で楽しそうに話している。ここなら…意を決して受付に行く。


「ギルドに加入したいのだが…」

「はい、ありがとうございます。こちらが申し込み用紙です。文字が読めない・書けない場合はこちらで代筆致しますが、大陸語は書けますか?」

「あ、書けます」


 ここまではどこのギルドでも同じだ。種族の欄で筆が止まる。虚偽を書いても【真偽水晶】で見破られるから正直に書く。どうだろうか?


「はい、これで登録は完了です」


なんとアッサリと加入を承諾してくれた。ほっと胸を撫で下ろした後、簡単な説明を受け護衛依頼が受けられるまでここを拠点にする事にした。


「ありがとうございます。すいませんが、この依頼を受けたいのですが」

「はい、かしこまりました」


 その日から地道に活動し、1年で護衛依頼が受けられるCランク冒険者になった。護衛依頼の中でエルフの里近くまで行く物を見つけた…偶然にもそこは父の故郷だ。貴族の護衛で野営できる者とある。申し込みを済ませ、同じく申し込んだ冒険者と打ち合わせをしその日は宿に帰った。

 依頼日に待合場所に行くと、集合時間の1時間前と言うのに依頼主がいた。金髪ロールのいかにもお嬢様といった風体の人間と、黒い服を着た男女の世話役、御者だ。


「あら、冒険者にしては細いのが来たこと。本当に大丈夫ですの?」

「お嬢様、父君様が信頼しているギルドより来た者です。信用に足りるかと」

「ふ〜ん」

「はじめまして、ファイブと言います。野営で調理担当をします。何か好き嫌いはあるでしょうか?」

「特になくってよ」


こっそり世話役に問う。


「本当は?」

「はい、お嬢様は肉の脂身を嫌います」

「ではお出しする料理は肉の脂身は除くようにします」


残りの冒険者も集まり、護衛依頼が始まった。

 ファイブの他に3人の冒険者が今回の護衛依頼に参加した。前日の打ち合わせによりスムーズに進んでいく。日が暮れ始めた。


「夕飯用の肉、取ってくる」

「お願いします。先にスープの用意をしときますね」


持参した鍋に、師から頂き継ぎ足しを続けているスープを入れ温めた。程よく温まったころ、肉を確保して冒険者が戻ってきた。ステーキサイズに切り、塩・胡椒をふり火の中に入れてた石の上で焼き始めた。


「どうぞ、召し上がれ」

「美味い!いつも自分で焼くより数倍美味い!」

「材料が良いからですよ」

「あら、このスープはとても美味しいわね」

「ありがとうございます。これはラクタロウさんから頂いた物を継ぎ足して飲んでいるのです」

「凄く味が深いわ…」


食事をしながら話が盛り上がる。冒険者で研究者というのは、なかなかいないからおもしろいと言ってくれた。

 依頼の隣国までの護衛が無事に終わり、エルフの里に向かって歩き出した。隣国からだとダークエルフがいる里が近い。森を歩きエルフにしかわからない道標を元に里の入り口まできた。


「止まれ!ここより先はダークエルフの土地だ。ダークエルフ、もしくは紹介状の有無を確認する!」


 左腕を挙げて手を振る。


「よろしい、入りたまえ!」


 判断がガバガバすぎやしないだろうか?と不安に思う読者様もいるだろう。ダークエルフの肌の色と褐色の人では色のつき方が違うし、手の形も違う。

 里の中に入ると目に映るのはダークエルフが多く商人の姿も見える、更には血の匂いが混じっている。ダークエルフは頻繁にではないが肉や乳製品を食す。ここがナチュラルエルフとの決定的な違いだ。


食にも肌の色は関係するのだろうか?


聞き込みをしレポートにまとめていく。自分は母の手料理と楽太郎の野菜中心の料理以外は食したことがない。結果は、ダークエルフは肉2野菜3の割合で食すという事だ。つまり人間よりの食生活を送っているようだ。あまり聞き込み過ぎたのか周りから視線を感じる。そそくさと里を後にし、別のダークエルフの里に向かうことにした。

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