Three story 【Ⅲ】
ある日、別の国での公演を終えると魔族が手紙を持ってきた。なんと魔王からの公演依頼だった。ドキドキしながら魔界に招かれ城内に通される。
「紳士、淑女の皆様!今宵はお招きいただきありがとうございます。まず一言。私のマジックが魔法と言う方がいますがそれは違います。証拠に魔法封じの手枷を付けて挑みましょう!」
スリーは人間界では刺激の強いギロチンマジックも見せた。これは大いに受けた。
「どうですかな?魔王様。私のマジックは」
「あぁ、大変に素晴らしいものだった。君には恩がある、人間界で我が姉妹を助けてくれたそうだね?ありがとう」
「淑女に気を掛けるのは紳士の務めですので」
「そこでなんだが…」
何と魔王から持ちかけられたのは、自分の密偵になれという物だった。あまり気は進まないと思ったが、相手があの餡子も喰うほど黒い噂がある国だと知ると俄然やる気が出た。更に彼は自分の兄で、協力者として姉弟もいると聞けば断る理由は無かった。
マジシャンとして国を回りながら、怪盗家業、更に王族追放の密偵と大変だったが満足した日々だった。
ある日、貴族の公演が終わり宿に帰ろうとするとチンピラにあった。何とそれは自分を捨てた奴らだった。
「おい、マジシャン・スリー命が惜しくば金を出しな」
「御生憎ですが貴方達に渡すお金は持ち合わせていないので」
「嘘をついてはダメですよ〜?さっき、貴族様のお屋敷から出てきたじゃないですか。お金がないなら、そのマジックのタネを教えなさい」
かつて愛した幼馴染はこうも変わったのか。足元に閃光弾を投げ目をくらまかせ、素早く捕縛し憲兵に突き出した。
「なによ、ジョナサン!マジシャンなんて非力だから楽に稼げるて言ったくせに!」
「うるせぇ、ジャスミン!テメェが勿体ぶるからだろ!」
(はぁ、見てられない)
スリーはこれ以上、関わるのはゴメンとばかりにその場を後にした。
スリーの元に手紙が来た、兄のワンからだ。進軍予定日が決まったため、密書を届けて欲しいとのことだった。密書を受け取り、手身近にトゥーの屋敷に忍び込んだ。
「誰?」
物音は立てなかった筈だが気付かれた。
「おや?こっそりこの手紙を置いてくる予定だったのですが…流石はSクラス冒険者。勘が鋭い」
「誰と聞いているの」
「伝書鳩です。では」
姉とあって簡単にはいかなかったが、密書は渡した。セブンの居所は、顔役に聞けばすぐに分かった。表向きは、だが。スリーも裏の世界に長くいるが【美食會】の会長に会うのは苦労した。兄という立場で漸く会えた。どうやら四男は世界の食を牛耳っているようだ。恐ろしいことだ。
さて魔王軍進軍の日は、トゥーが手持ちの不動産を解放し避難所にしていた。避難してきた住人が退屈しないよう、ローテーションでマジックの公演を開いた。
「おちゅかれさま」
「あぁ、ありがとうドクター」
「褒めてもにゃにもでないのよさ」
スリーはその女医と何気なく話した。舌足らずの彼女だったが、何処か必死なところが可愛かった。
ドキ
スリーの鼓動が動き出した。あぁこれは…恋?
その女医を胸に秘めながら公演の準備をしていると、ファンからではない届きものがあった。 中には【水晶念話】とメッセージが。
『兄妹のみ登録済み 8』
と書かれていた。おやおやと笑い起動させる。誰がいるのだろうか?
〜Three story end〜
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