Three story 【Ⅰ】
地上に出たスリーは、すぐに行動に移した。街へ近づくと2年前とさほど変わっておらず安心した。だが少し変化がみれた。関所ができたことだ。恐らく力を持つ魔族が出てきたかなんかだろう。関所ではギルドカードなど身分を証明する物を出せば入国出来るが、過去を捨てた自分にギルドカードはない。スリーは、自分の着ている物を麻袋に詰め代わりにゴブリンが着用してるような服装を出し、髪を乱し猫背になり関所へ向かった。
「待たれ!何用があってこの街に入ろう者か!」
「へへぇ、旦那様。オラが村は貧しくて貧しくて、いい暮らしがしてぇと思って出稼ぎに来ましただぁ」
「出稼ぎ労働者か!なら向こうで申請してまいれ」
「へへぇ」
関所の近くで申請し、少し銭を握らせるとあっさりと街に入ることが出来た。
(甘いな…。だが良かった、以前の貨幣が使えるようだ)
スリーは、路地裏に入ると瞬く間に着替えシルクハットを被った紳士の姿になった。役場に行き噴水広場前の使用承諾書を発行してもらう。そして、活動するにあたって一番にすることがある。
(さぁ、劇の始まりだ)
スリーのマジックは人目を引き沢山のおひねりを頂いた。もちろん、こうなると出てくるのはこの街の裏の顔役。
「やいやいやい、お前さん。誰に断ってこの場所で商売してやがる!」
「はて?私はしっかりと手続きを行って、この場所で皆さんを楽しませていたのですが?」
「ふん、だがまずは顔役の俺様に挨拶するのが筋てもんだろう?」
「おや、これはこれは大変失礼しました!確かにここは治安が他よりいい。それは全て貴方様のおかげでしたか!」
「ま、まあな」
「確かにこれは私が間違っていました。どうでしょう、お詫びの印に1つ私に奢らせてはくれませんか?あ、もちろんお連れの方も込みで」
「お、おう!お前さんもわかってるじゃないか!」
スリーは、おひねりで得た殆どを酒代に費やした。だが、目的の顔役とのファーストコンタクトは上手くいった。裏の住民とあって偽造ギルドカードの入手方法や、キナ臭い貴族の噂など通常では入手できない情報をたった一晩で手に入れた。
「お前のこと気に入ったぜ!」
「ありがとうございます」
スリーは、顔役とのいい関係を築けた。翌日から、スリーは同じ広場で公演し資金を得た。顔役のお陰で貴族からの依頼も来た。2年経ちその金を持って変装し役所に来た。
「ウォホン!」
「あ、これはこれは…」
役員が揉み手で来た。この時のスリーの格好は貴族の執事が下手くそな変装をした格好だった。