One story 【Ⅰ】
地上に出た後、まず思った事は『日の光はこんなにも暖かったのか』という感想だった。自分がラクタロウさんの居る【奈落】に落とされて2年。この2年はとても濃かった。お坊ちゃん育ちだった自分を根本的に変えてくれた。
やって貰って当たり前じゃない。自分から行動を起こす
これは大事だ。まずは力を、戦力を付けなくては。ワンは各地のダンジョンを周りボスと面会を申し立てた。最初は相手にされなかったが、魔物社会は【力】が全て。鍛えられたワンには敵わなかった。8年という年月をかけて、世界の全ダンジョンボスの協力を取り付け各地の有権魔族の協力も半数だが得た。この頃になると、ワンは人間界の間で要注意魔族に指定された。これは、魔王候補者の1人としてカウントされる。
仲間と作戦を練っていたとき、ある凄腕冒険者がワンの元に来た。ダンジョンを廻っている時に噂は聞いた。最速でSクラス冒険者になり国から爵位を承る予定の人物。
【神足のトゥー】
足の速さ・獲物を仕留める速さから付いた名前だ。これにはワンは冷や汗を掻いた。とてもじゃないが太刀打ち出来ないと勘が告げている。良くて相打ちだ。囮になり仲間を逃す算段を立てる。
「ワン様、ここは俺が囮になりますだ。これからのワン様は逃げてくだせぇ!」
「む!」
彼では逃げ切れない、命をかけての逃げ道を作ろうとしている。今後、こういう選択も出てくるだろう。
すまない
心中思い逃走手段を作っていると…
「ワン?貴方の名はワンと言うの?」
目の前のトゥーがピタリと動きを止めた。
「あ、あぁ我が名はワン。偉大なる師であり兄よりこの名を頂いた」
「…Rakutarou…この名に聞き覚えは?」
「もしや…」
「貴方も私と同じ同胞よ」
動きを止めワンを見るトゥー。懐からクリスタルで出来た眼鏡を出した。
「確かに同胞のようだ」
お互いに距離を取りながら話す。トゥーはどうやら自分の後に、あの【奈落】に落とされラクタロウの元で修行した後、自分のように地上に出て実績を重ね今に至るらしい。ワンも包み隠さずに教えた。国に囚われている姉妹を救い、いずれは王族を追放する…と。
「そう…なら頑張ってね」
「俺らを始末しないのか?」
「しない、私が依頼を受けたのは『国に害をなす可能性の魔族の排除』。貴方達がしようとしている事は私が思うに当然の権利があると思います。ただ、」
「ただ?」
「無抵抗の住人には傷つけないで」
「勿論だ」
トゥーは去っていった。
さぁ、ワンの物語はどうだったでしょうか。短いですが1/3を投稿しました。予定ではあと2話でワンの物語は終わりです。
もし続きが気になる方は、何かアクションを起こしてください。
入院中のため時間はかかりますが、続きは出来る限り書きます。
トゥーが攻撃の手を止めたのはワンの事を知っていたからです。トゥーのお話の中で
【それは酷い誤解だろう。ワンの名誉のために奴隷の子供にしっかりと教えた。
魔族と言えど人肉は食さない、人間は雑食の魔物と魔族をごっちゃに考えているからそう伝えられているのだ…と。】
とあり、この時にワンの事を知りましたε-(´∀`; )