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Ⅸ-楽太郎35歳

 エイトが商品を店先に並べ始めた頃、楽太郎は自分の身の回りを整理していた。ゴミなどは1カ所にまとめているが素材などは、ざっくりとしか仕分けしてない。18年間貯めに貯めた素材は数千種類に及ぶ。綺麗に仕分けるには長い期間が必要だろう。だが楽太郎は時間が有り余っているから問題ないと判断し、ダンジョンの壁を掘り保管庫を作ることから始めた。魔法で切削したり拳で押し広げたりなどして、東京ドーム1つ分の大きさの保管庫が出来た。


 そろそろ食事にするか


 一旦保管庫から出ると、エレベーターの前に人が座らされていた。額には【生贄】と書かれた紙が貼ってある。


「これは…初めてのパターンだ。人間が置かれてる」


 今までここに通じる階段とエレベーターは、一方通行だった。だって誰も降りてこないと思った楽太郎は、エレベーターの下りるボタンを作らなかったからだ。人の重さを感知するとエレベーターは上がり、その重さがなくなるか、空荷の状態でなくてはエレベーターは戻ってこない。階段の扉は楽太郎の住居スペース側から鍵をかけてあるし、そもそもボスを倒してからこの通路を通らなくては見つからない。

 考えていると視線を感じた。その方を見ると【生贄】がジーと見てきた。


そうだ、本人に聞こう


楽太郎はその【生贄】に近づいた。


「よぉ、お前はどうやってここに来たんだ?」

「地神様、どうか地を揺らすのはやめて下さい。私の身体を好きにしてもいいのでお願いします」

「いやだから…」

「地神様、どうか地を揺らすのはやめて下さい。私の身体を好きにしてもいいのでお願いします」

「ちょ」

「地神様、どうか地を揺らすのはやめて下さい。私の身体を好きにしてもいいのでお願いします」


 何やら精神に作用する魔法を掛けられているようだ。残念な事に楽太郎は、化学的な…魔法しかわからない。一先ずスープを器によそい【生贄】に差し出す。【生贄】は驚いた表情を浮かべ器を手に取り飲み始めた。


食事はできるのか


 安心した楽太郎はそれから【生贄】を【Nine】と名付けた。いつまでも生贄では不便だったからだ。それから、ナインと共に膨大な素材の整理を始めた。初めて見る素材にナインはキラキラした目で見ていた。


「これが気になるのか?」

「地神様、どうか地を揺らすのはやめて下さい。私の身体を好きにしてもいいのでお願いします」


 楽太郎が問うとこの答えしか返ってこない。だがナインは明らかに資材に興味を示している。どうにかならないかと思案すると、ドーン!とすごい音がした。その音の方へ行くと


「ラクタロウさんお久しぶりです!ワン、只今ご挨拶に参りました!」

「おぉ、ワンか!久しぶりだなぁ…何だか禍々しくなったな」

「はい、無事に姉と妹を取り返し祖国を復興させ魔王になりましたから!」

「本当になったのね…今、食事を出すよ」

「ありがとうございます。おや、そちらの人間は?」

「あー、俺の弟子?みたいな」

「なるほど、でも何で『反復の魔法』を掛けているのですか?」

「解ける?」

「もちろん」


 指パッチン1つでナインに掛けられていた魔法を解いたワン。


「あ-あ」

「この子…もしかして?」


 ワンは更にナインの脳内に微量な魔力を流した。


「は、はな、せる」

「やっぱり、ラクタロウさんこの子、生まれつき上手く言葉が話せない子ですよ。それを反復魔法で無理やり喋らせたから、解いた時に反動で悪化したんです。まぁ、それも治しましたけど」

「凄いな、ワン」


 3人で食事をしながらナインの話を聞いた。どうやら、楽太郎が地下で保管庫を作る振動が地上に地震として伝わりナインがいた村に被害が出てたそうだ。これは100%楽太郎が悪い。エレベーターは前から冒険者の間で噂になっていたが【死のエレベーター】とトゥーとフォーが触れ回り近づけさせないようにしてた。しかし、ナインの村人が生贄を差し出すためと、高名な魔法使いに依頼して1度きり下行きに魔法を書き換えナインを送った。と言うのがあらましだ。


「すまない事をしたな。もう、村には戻れないがどうする?両親にだけでも無事を伝えるか?」

「いい…親、いない」

「あー、ラクタロウさん。生贄に出される人間は訳有りが多いんですよ」

「察した」

「うちで保護しましょうか?」

「そうだな…それもいいが、この子は素材に興味を示している。もしかしたら錬金術師の才能があるかもしれない。錬金術を教えたら2年後にこの子が羽ばたける準備を頼む」

「御意」


 その日から、楽太郎はナインに化学式を徹底的に教え錬金術を教えた。ナインはスポンジのように知識を吸収し【賢者の石】の完成まであと一歩の所まできた。


「ここまで来たのか…凄いじゃないか」

「先生、の指導あってこそ」

「そうか…【賢者の石】完成にはここにある素材だけでは足りない。ワンについて行って魔界の知識も吸収して完成させな」

「そんな…私、まだここに、居たいです」

「子はいつかは親元を巣立たないと成長出来ないものだ。大きくなったお前を…俺は見たい」

「行くよ、ナイン。ラクタロウさんはここにいるから研究が終わったら、何時でも会えるじゃないか」

「また会える?」

「あぁ、ワンに頼んで俺を知っている者ならエレベーターは【下】にも動くようにして貰ったからな」

「わかった」


 ナインはその後、魔王城の錬金術師と共に【賢者の石】の研究をし、最年少で完成させる偉業を成し遂げた。それにより魔界の錬金術ギルドから引っ張りだこで大変…とワンからの手紙に書いてある。それを微笑ましく読んでいると、お馴染みの人が落ちてきた。

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