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83話 お昼ご飯

「さて、お昼……といいたいところですが、本格的なお昼ごはんの前に食べたいものがあるので、それを買います」

「はい」


 どんなのかは知りませんが、清水先輩のご随意に。僕は付いていかせてもらうだけなので。



「近いので歩きます。というか、目と鼻の先です。見えてます。あれです。あれ」


 近っ。ちょっとだけ歩いて戻って反対卵なる卵を購入。普通のゆで卵と違って白身がやわらかくて黄身が固いらしい。お店の真横でゆでてるから勝手に製造工程を見れるんだけど、どう見ても温泉につけてるだけ。何で逆になるんだろ。



「いっぱい買ってくれてありがとね。食べ方はそこに買いてるけど……、実演してあげる」


 おぉ、ありがとうございます。おばちゃんがやって見せてくださるらしい。



「食べ方は簡単。でも、普通のゆで卵みたいに雑に机に叩きつけたりすると、白身がこぼれるから注意してな。叩きつけてもいいけど丁寧にな。壊れるのが怖いなら、スプーンか何かを使うのがお勧めやね。こうやって、縦に持った卵の上の部分をスプーンで叩く。そうすると、殻にひびが入るやろ?」


 ですね。ここまではヒビの入れ方が違うだけのゆで卵。



「ここで傾けると白身が溢れるから、傾けないようにしてな。後は手でぺりぺりと殻をはがして取る。白身が固まってないからむきやすいと思うわ。取れた殻はここにゴミ箱置いておくからここにな。白身がいい感じに見えてきたら、塩をかけてすするなり、スプーンですくうなりして食べてな。この卵はせっかくやし、あげるな。おまけや。…でも、人数分、買ってくれとるよなぁ。……いるか?これからご飯じゃろ?」

「…頂戴。わたしはいっぱい食べる」

「そか。なら、どうぞ」


 愛理(アイリ)ちゃんがもらったね。そんなにちっちゃいわけでもないのに、なんかリスっぽく見える。何故に。



 めっちゃ美味しそうに食べるなぁ。僕も食べよ。スプーンでひびを入れて、殻を取る。おばちゃんの言うように殻は取りやすい。でも、雑に出来ないのがその利点を帳消しにしてる気がする。ゆで卵も半熟だと適当に出来ないけどさ。



 まぁ、どちゃくそ取りにくい! ってわけではないからまだ楽ね。おー、ほんとに白身がトロトロ。黄身はまだ見えないね。かるーくお塩をかけていただきます。



 トロっとした白身にお塩の味、それにつけてた温泉の風味がちょっと合わさってて、美味しい。やっと見えてきた黄身は固まってる。ゆですぎたゆで卵みたいにかっちかちじゃない。けど、つんつんとつつけばすぐに硬い部分を突破して中からとろっとした黄身が溢れてくる。



 黄身のお味も良好。甘くて濃い卵黄に塩と温泉の風味が合わさって実によき。正直、見た目だけならただの温泉卵に見えなくもない。けれど、市販の温泉卵と違って、ここの温泉で茹でてるおかげでついてる独特の風味。これがこの卵の味を一味も二味も押し上げてる。



 あっという間にご馳走様。他の子らは……無事に食べれてるね。まぁ、瑠奈(ルナ)ちゃん以外は心配もしてなかったけど。瑠奈ちゃんも瑠奈ちゃんで純粋すぎるだけで、わけのわからないことをする子じゃなし。清水先輩と習先輩に見守られながらも、自力で食べるところまで到達したね。



 油断したら指で卵を押しつぶしそうだけど……、習先輩が言葉で指摘したし、それもなさそうね。見守ってて遅れていたお二人も普通に食べて、全員完食。



「さて、お昼ですが今のところ候補は三か所考えてます」

「バイキングかバーベキューか回転ずし。どれがいい?ちなみにどっちも遠さは変わらないよ」


 それでしたらバーベキューですかね。せっかくですし。普段できないことをしたいです。…お、みんな、僕と同じみたい。さては同じこと考えたね。



「なら、移動しよっか」

「ですねー。今回は視線を切るところを探すのも少し手間そうなので、久しぶりに本気で行きますよー」


 え。本気、ですか!? なんて僕が驚いている間にも準備は進む。といっても、いつものようにお二人が手を繋がれて、「心の準備だけしておいてくださいねー」なんてのんびりした清水先輩の警告を発されただけ。



 だのに、もう習先輩はカウントダウン。3ー、2ー、1ーの後の0と同時に視界が一瞬で切り替わった。



 えぇ……。なんか本気とおっしゃるわりに、セットアップがちょっと時間がかかっただけで、ほぼ変わって無くないです? これなら普段使いしてもよさそうなものでは…?



「と思うでしょう?ですがこれ、やはり疲れるのですよね」


 あまりお二人とも疲れておられるように見えませんが…。



「見えないだけでこまごました調整をしてるからね…。記憶処理とか色々。AとBを繋ぐ穴を開けて維持するんじゃなくて、丸ごと人を持ってく処理をしてるからなおさらに」


 疑っているわけではないのですが…、愛理ちゃんや華蓮(カレン)ちゃん任せのワープや、いつものワープと今回の手法、どっち使うかの判断ってどこでされてるの? ってなってきました。



 まぁ、費用対効果なのでしょうけど。あの辺、なんだかんだでどっかから視線は常に通ってるはずですし。



 それはそうと、ここはどこ……って、なんか思いっきり書いてあるわ。建物に。『南紀白浜鮮度一』……ですか。市場だね。これ。



「そ、ここは和歌山だけじゃなくて、西日本でもトップクラスに大きい漁港直営の市場らしいよ」

「食べ放題も回転寿司もここのやつですね。釣り堀やホテル、温泉もあるのでこのあたりでできないのは海水浴くらいでしょう」


 それは結構致命的では? こんなにも海が近いのに。ここから白良浜までの距離ってどんくらいなんだろ。



「車で15分くらいですね。バスは……」

「1時間に2本くらいのペースではくるみたいだよ。四季義姉(ねぇ)

「ですか。まぁ、そんな感じらしいので立地は悪くないかと」

「なお、渋滞してる場合」

「は、気にしちゃだめです」


 まともに動かなくなりそうですね。それ。そんな日に海水浴に行こうとするのが間違いなんでしょうけど。



「肝心のバーベキュー上はどこなのよ?既にルナ姉さまが動きたそうにしてるわよ?」

「そだね。あのでっかい建物の横らしいから、行こ」


 はーい。でっかい駐車場の視線がぎりぎり通らない端の方に出たから、結構てくてく。暑いけど特に何事も無く到着。



「11人で予約していた森野ですけど」

「はい。承っております」


 え。予約!? いつの間に!? てか、さっき三択で聞いてくださってたのに予約されてたんです!?



 困惑している間にも用意は進む。さすがに机一個じゃ無理だから、運よく隣接してる3つに適当に分散。



そしたら、ルール説明。店の外から持ってこないでねとか、15分の買い物時間と90分の食べる時間に別れてるから、その間に食べてね。買い物は市場の中ならどこでもいいよ。お惣菜も買っていいよ! っていう感じ。



「事前予約していただいたお肉と海鮮セットはこちらです。人数分用意しております。購入なさる量は、これくらいなら食べきれるかな?という量にされることをお勧めします」


 お肉がでかい。絶対あれ、200じゃないよね? 400とかあるよね? そして、海鮮も多い! 普通にあんだけあったら僕、満腹になりそうなんですが。…あぁでも、ご飯くらいは欲しいか。



「さて、ご飯以外で追加がほしい子はいます?あ。野菜は強制的に何個か買います」


 愛理ちゃんだけ手が上がった。知ってた。



「なら、俺とアイリで買い物に行ってくるよ」

「あ、それなら僕も荷物持ちに行きます」


 魔法で誤魔化すにしても容量無限の鞄とか使われるなら、おかしいことになりそうですし。



「なら俺も」

「ガロウ兄さまはいたほうがいいわよ。コウキもいてくれるけど、ナンパ抑止に。だから、アタシがついてくわ」

「うぃ」


 メンバーは決まったね。なら、さっそく市場に行こう。そのついでに聞きたいことを聞こう。



「あの」

「あぁ、予約のことでしょ?」


 切り出してもないのに当てられたし。きっと顔に出てたんだろうなぁ。…あれ? お店の人に読まれてたらマズいのでは。



「読まれてても、来てるし、問題ないでしょ。予約したのは調べてた感じ、美味しそうだったから。予約しなくても多分、あっちに売ってるだろうけど、探すのめんどくさいじゃん?」

「他を選んでいた場合、どうされるつもりだったのです?」

「俺だけ来て、「連れは来れなくなっちゃいました。全額、お金は払うので食材はいただいてもいいですか?」って尋ねて食材を貰うつもりだった。席代だけもったいないけど、致し方なし」


 なるほど。それなら納得です。…どんだけあのお肉と海鮮に惹かれてたんだ、お二人。



「あ、アイリ。値段は気にしなくていいからね。既にあのお肉だけで一人頭八千は消し飛んでるし。海鮮も入れたら万越えるし」


 !? 確かにお肉めっちゃ大きいですけど! 何で、海鮮より圧倒的に高いんです!?



「そりゃ、ブランド牛だからじゃない?和歌山のブランド牛、熊野(くまの)牛。その名前の通り、和歌山の南にある熊野原産の牛をブランド化したらしいよ。和歌山は山がちで牛の飼育には向かないはずなんだけど…、生き物の力ってすごいね」


 なるほどです。だとしても、海鮮より牛のが高いのは少し違和感があるのですが…。スーパーだとマグロ叩き100 gくらいが牛細切れ200 gくらいと値段的にトントン……あぁ。考える対象が悪いのか。細切れじゃなくて、サーロインとかでみるべきなのか。そりゃ、高いですわな。サーロインだと100gで989円とかそこらしますし。



「考えるのもいいけど、あっちを見てみて」

「え……おぉ!」


 室内なのにめっちゃでっかい水槽がある! そん中に魚がいっぱい泳いでますね! 水族館みたいで楽しい。水族館との違って泳いでる魚はこの後、僕らに食われるのが確定してるんだけど。



「…まず、ご飯から?」

「だね」


 白米を人数分、11個購入。それなりに量はあるから小鳥とか礼子(レイコ)ちゃん、これと既にあるお肉と海鮮で確実に沈むね。僕すら怪しいもの。



「他はいいの?」

「…ここではいい。バーベキューするのにお惣菜はもったいない気がする」

「だね」


 焼くのが醍醐味みたいなとこあるもんね。すぐに食べれるのはいいけれど、焼けないのは少し寂しい。



「…だから、野菜とか海鮮とかお肉を買う」


 愛理ちゃんに連れられて、食材購入。「値段は気にしないでいいよ」と習先輩がおっしゃったとおり、さして値段を気にしないで買ってるから、内容がそれなりに豪華。



 野菜はじゃがバター、玉ねぎ、エリンギ、ピーマンにキャベツとか。お肉は既にでかいのがあるからか、トントロとソーセージとベーコン。魚介はたっぷり。太刀魚のみりん干し、鯛の一夜干し、サバの開きにイカ。それに魚介セットについてたけどサザエやエビ、ハマグリにホタテにアワビの買い増し。最後にバター焼き用のバター。



 明らかに一人で食べる量じゃない。僕が食べようと思うと5, 6人で集まって無理してようやくというレベル。…ほんと、よく入るよね。



「お帰りなさい」

「「「ただいま」」」


 待ってくれてるみたいだから、ドリンクバーから飲み物を適当に汲んできていただきます。



 机配分は習、四季両先輩と愛理ちゃんが一つ。瑠奈ちゃんと華蓮ちゃん、《コウキ》に瑞樹ちゃんで一つ。残る牙狼(ガロウ)と礼子ちゃんに僕と小鳥で一つ。



 瑠奈ちゃんの補助にお二人が入らないのは少し以外ではあるけど、華蓮ちゃんあたりが気を利かせたんだろうね。たまには見守ってなくていいよって。



「まずは海にバーベキューに来てるけど、お肉からでいい?」

「いいぜ。一番、うまそうだもんな」

「構いませんよ」

「わたしもです。あ、でも、3枚だけにしておいてください。わたしは礼子と半分こしてお腹に余裕を残しときます」


 りょーかい。3枚どーん。これだけで網がかなり狭くなった。微妙にある隙間にはエリンギと玉ねぎを申し訳程度に並べとこう。



 1-2分くらいして横から見て色が変わってきたらお肉をひっくり返す。さらに2分くらいすれば多分、もう食べれる。ミディアムよりのレアだろうけど。



「あげる?」

「俺はあげてほしい」

(わたくし)もです」

「わたしはもう少し」

「了解」


 二個はとって、一個ははさみで両断。片方はあげてっと。野菜はまだ無理、



「先食べててください。適当に海鮮置きますねー…」

「ありがと」


 いただきます。まずは、塩コショウだけでかぶりつく。歯がすっと通ってお肉がちぎれる。口の中で美味しい少し甘い脂が弾けて、少し遅れて塩コショウの味が来る。やっぱ見て美味しいってわかるだけのお肉だけある。めっちゃ美味しい。



 たまらずご飯と一緒にお肉をかきこむ。やっば、当たり前のようにおいしい。でも、自重しないと、お肉だけでご飯が消えてしまう。海鮮が食べれないのはもったいない。



 目の前の牙狼と礼子ちゃんも幸せそうに顔をとろけさせてる。そして、僕の横でようやく小鳥も一口。同じように顔をとろけさせた。三人とも幸せそうで可愛らしい。



 美味しい……あ、野菜をひっくり返さないと。あ゛―! ハマグリが少し開きかけてる。野菜をひっくり返したら、汁を捨てておこう。出汁がこぼれたらもったいない。食べきった牙狼もやってくれてる。これでハマグリは安心して自分のと小鳥の分だけ見れるね。



 野菜は……いいかな。食べよう。玉ねぎ、甘くておいしい。エリンギも噛むごとにキノコのうまみが溢れてくる。



さて、待ってる間にホタテの身を外しとこう。ナイフを突っ込んでえいやっと。ぜんぜん切り終わってないけど、ハマグリがもっと開いてきた。火がちゃんと通るように上の貝から貝柱も切除。



 中の身をうまいことやって上下ひっくり返して、またホタテの下ごしらえして……忙しいな。よし、ハマグリ完成!



 いただきます。うまく焼けたからか、触感がベスト。貝の弾力が死んでなくてぷりぷり。それに出汁の中で焼いたからか、もとからもってる出汁が染み出てきてるのか、濃厚でうまみが後から後から出てくる。やば。



 空いたスペースにはホタテ置いておこう。ホタテもハマグリと焼き方はそんな変わんない。でも、扁平だから出汁もこぼれにくいとホタテのが焼きやすいね。場所取るけど、



 途中でひっくり返してー、色がついてきたらバターと醤油をちょっと乗せる。あー。醤油の焦げる匂いー! ほんと、醤油の焼ける匂いって何でこんなにおいしそうなんだろう。



 30秒くらいしたらいただきます。口に近づけると噛む前から漂ってくるバター醤油の濃厚な香り。ぷりっとした弾力をはねのけて噛みちぎり、咀嚼するとあふれだすホタテの甘くて濃厚なうま味。そこにバター醤油が加わることで、濃厚さに深みが増しつつ、調和の取れた味になる。



やっば。美味しい。いくらでも食べれそう。

 お読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字そのほか色々、もし何かありましたらお知らせいただけますと嬉しいです。


 また、活動報告では既にご案内させていただいていますが、ご連絡です。

 本作品は一応、2.5週に1回の定期投稿をしております。しかし、9/20から月末までずっとお仕事が忙しいので、1回お休みをいただきます。そのため、次回は10/16になります。かなり時間が空いてしまいますが、ご了承お願いいたします。

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