76話 1学期末テスト終わり
終わった。悪魔のような期末テストが終わった。そして、その結果も返ってきた。その結果は……、
「平均点は前も言った通り、見なくていいがまぁ、悪かねぇな」
「ありがとうございます?」
「何で首傾げてんだよ。矢倉」
いやぁ、なんでって言われてもですね…。
「平均点…といいますか、クラス平均点は無視するとしましょう」
どうせ僕が外れ値ですし。下方向に! 毎度のことながらなんで載せてるんですかね。
「規則だからだよ」
「知ってました。って、それはいいんですよ。何問か、まるで手がつかなかったんですけど!?てか、近衛先生!今やってる分野、数学IIIで積分なのに、整数問題出してくるんですか!?」
テスト範囲外じゃないですか! 範囲外の菊桜の過去問出すって言っておられましたけど!
「自己完結してんじゃねぇか」
「ですけど!気持ちもわかってくださるとうれしいです!」
なんですかあの、「a, b, cを素数とする。a^b+b^a=cが、成り立つa, b, cを全て求めよ」って!
「割と楽なほうなんだがなぁ…。答え知っていれば」
「それですよ。最後に付け足されたそれ!無限通りはしんどいです!」
「でもまぁ、実際に出てるぞ。2016年に」
「そうなんですよねー」
だからこそ、こういう問題に手も足も出ないともにょるんですよね…。物理でよくある無限に長いほにゃららシリーズも嫌いですし。化学もなんか有機の七面倒くさい構造決定出てきてましたし…。
全部、過去問なのでできないといけないのはわかってるんですが!
「応用だからなぁ…。ま、今期で高校の学習指導要領は終えたんだ。基礎のところはちゃんとできてるし、応用固めればいけるって」
「夏は受験の天王山とは聞きますし、頑張ります」
「おう。その意気だ。公立高校とかだと、全範囲終わらなかったりするからな。それに比べりゃましよ」
それ、よく聞きますが、マジです?
「マジだぞ。物理の原子とか終わらんらしい。だから、「原子出るな」のお祈りが始まる。そして、出たところでそんな難しくないという。波やら電磁気やらに派生して受験生を虐殺したりもするが」
うわぁ。うわぁ…。
「あぁ、後、聞いておくが、志望校は変わらないか?」
「ですね。行けるなら菊桜がいいです」
一番身近な大学というのもあって、憧れがありますから。
「了解。耳タコだろうが、あえて言っておこう。今の結果を見る限り、菊桜には届くとは思うぞ。ただ!センター模試のA判定は信用するな。菊桜はセンターの配点は低いからな。工学だし1/5にすぎん。せいぜい、「足切りされないね。よかったな」程度だ。だが、筆記でもB出てるのはいい感じだ。夏中に頑張って、Aにあげよう」
「ですね。上げたいところです。ちょうど、菊桜想定の模試も夏に二つありますしね」
「張河と名楽だな。ま、頑張ってこい。ボコられたとしても気にすんな。まだ、何とかなる。やる気さえあれば」
「最後ぅ…」
なぜに倒置法的に言うんですか!? しかも、小声で言うんじゃなく、はっきり!
「事実だしなぁ。ま、今回の面談はこんなもんかな。ほかになんかあるか?」
「いえ、特には」
「そうか。じゃあ、帰っていいぞ。もしくは、次は1時間くらい空くから、数学の勉強でも見るか?」
「あー。ありがたいですが、数学のテキストを持っていないので、大丈夫です。…というか、今更ですけど、このクラス、先輩方も三者面談するんですね」
僕は親が黄泉路に立ってるから、二者だけど。
「心の中でもお前、すんげぇ顔に出るんだから、反応しにくいことを思うなよ…」
あい。
「まぁ、するぞ。規則だからな」
「ですよねー。あ、ありがとうございました。失礼しました」
「おう。気をつけて帰れよー」
椅子に座ったまま手を振って見送ってくださる近衛先生。軽く手を振り返して、ドアのところで一礼して、そっと閉める。さて、帰ろうか。
今日はまだ日が高いから、お惣菜は安くなってないから…。チラシ見て何を買おうか決めて帰ろうかな。歩きスマホは危ないから、端っこによってスマホをポチポチ。
うわっ。私のスマホ、重すぎ……!? あ。開いた。のはいいけど、画質ゴミ! 見えない。あ、こっちじゃないわ。PDF、PDF…。よし。鶏肉が安いのね。g98円。最安値ではないけど、ま、いっか。
面談があるからか、日中だというのに構内はかなり静か。廊下で自分の番を待っている親御さんと子供しかいないから、トーンも落ちるよね。
「失礼しました。そら、次。レイコだってよ」
「ですね。言ってまいります」
あ。牙狼と礼子ちゃんのコンビだ。何でこんなとこ…って、三者面談だよね。普通。
「そうだぞ。カイさん」
「だよね。あぁ、こんにちは」
「こんにちは」
「馬鹿なこと聞くけど、親御さんは習先輩と清水先輩だよね?」
「そりゃな」
だよね。知ってた。この時間に習先輩も清水先輩も面談は入ってなかったしねぇ…。てか、なんだったら僕より前に終わってたはずだし。
あれ、てことは、お二人とも自分の親と三者面談してから、親として面談してるの…?
「そうだぞ。言われてみると、カイさんが思ってるように不思議な感じはあるな」
「あ。牙狼でもあるんだ。そういうの」
うるせぇ! 黙れ! って黙らせるか、黙殺するかの二択だと思ってた。
「俺をなんだと思ってんだ…」
「牙狼。もしくはファザコンマザコン」
「言い方ェ…」
げんなりとした顔をする牙狼。でも、
「否定はしないでしょ?何しろ、牙狼…というか、君ら、嘘つかなくたってどうとでもなるような場面で、別の人が親代わりとか絶対に拒否るじゃん」
「それはそうだが。言い方ェ…」
「それはファザコンマザコンという言葉に悪い印象を持ってるから悪い」
愛理ちゃんなら「それがどうしたの?」とばかりに「ん」とだけ言って頷くよ?
「単にカイさんに語彙力がないだけでは?」
「それ以外の言葉ってなると、お父さん大好きっ子とかしかなくない?」
少なくとも、僕にはそれしか思いつかないんだけど…。あ。考えてる考えてる。出てくるかな? 出てくるかな?
あ。うなだれた。出てこなかったみたいね。
ちらっと教室の中を覗いてみる。うん、四者面談になってる以外、普通……じゃないわ。正面の子供の両脇を制服着た人が固めてるという光景にすさまじい違和感が。
でも、邪魔になるし覗きはやめとこう。
「あ、カイさん。こんにちは」
「うん。こんにちは。幸樹。どうしたの?って、牙狼に用があるんだよね?」
「そう。終わったはずなのになかなか来なかったから、何してるんだろ?って見に来た」
「あ。ごめんね?牙狼を借りちゃってて」
「いえいえ」
なんてことないとばかりに首をふる幸樹。いやでも、
「まだ面談終わってないでしょ?だのに待ち合わせってなにかあったんじゃないの?」
「何もないよ。ただ、たまには男だけで集まって話しない?ってだけだったので」
「あー。なるほどね」
習先輩一家のお子さんたちの女子率が高いってのもあるけど、二人とも、異性のコンビいるもんね。
牙狼は恋人? の礼子ちゃん。幸樹は双子の瑞樹ちゃん。…そういえば、どっちが兄or姉なんだろう。
「あ。僕が兄ですね。転生する前は僕が兄だったので」
その辺は転生前のを引き継いでたのね。
「です。僕が先に生まれて、ミズキが後に生まれたので」
それは言われなくてもわかるよ…。
「でも、同じ夫婦から生まれた二人が、また同じ夫婦から生まれるってやばくない?改めて考えると」
「そう?」
「そうだよ」
でも、この二人に言ったところで、だよねぇ。悪いことでもないし。
「てか、いつまでここで喋ってんだ?邪魔だろ。とりあえず、どっか行こうぜ。てか、廊
下、微妙に暑いわ」
「それは知らない」
一応、この高校は廊下にまで冷房付けてくれてるんだよ? …それもあるから、登下校時に玄関を開けっぱなしにしておくとしばかれるんだけど。
「いい部屋ってあったっけ?」
それも、ほどよく涼しくて、喋ってても邪魔にならない魔法の部屋。
「カイさんのほうが、先輩なんだし、知ってるんじゃないの?」
「だよな」
「ふっふっふ。残念だったね。幸樹。牙狼。僕は全然詳しくない」
あ。残念なものを見る目で見ないで。仕方ないじゃん。興味はあるから高校を探検したことはあるよ? でもさ、部屋の中までは鍵かかってたり、なんか人がいたりで見てないんだよぅ…。
「とりま、食堂でも行くか」
「だね。暇な人が時間を潰す用に開放されてたはず」
「え。ご飯食べなくていいの?」
普通、涼みに使うにしても、場所代としてせめて、ジュースくらいは飲むべきじゃない?
「今日は大丈夫だったはずだぜ。だよな?」
「うん。そもそも、親御さん達を収容できる大きい場所があんまないからね…。部活とかで使ってるとこ使うよりかは安上がりでしょ」
なるほど。二年も通ってたけど、待つタイミングなんてないから知らなかった…。
「ま、そういうこともあるよな」
「だよねー。ま、行きましょ行きましょ」
あいあい。二人に先導されて食堂へ。お弁当を作るのが面倒くさいときにたまに使うけど、ちゃんとでっかい。別の棟っぽい感じになってるけど、廊下で直結されてるのが非常にいい。
いちいち、くっそ暑かったり寒かったりする外を通らなくていいからね。
あ。マジじゃん。入口に堂々と「待合室代わりにお使いください」って書いてある。ただ、注意書きに「普通に食事する学生さんもいらっしゃるので、ご配慮願います」ともある。
においがー! とかいう人いそう。…ま、僕が気にすることじゃないか。適当なところの一角を占拠。
「はい、お水です」
「あ。もらっていいの?」
「書いてるので」
「なるほど。ありがと」
いつの間に汲んでくれたんだろ…。全然気づかなかった。
「で、ここに来たのはいいが、何を話すんだ?」
「恋の進展とか?」
「ぶふぇぇっ」
おー。まるで漫画かって勢いで牙狼がむせた。すごい。
「ちょっ。カイさん…!?」
「残念ながら、見た通りだよ。カイさん」
「みたいね」
「え、今のでわかんの!?」
頷く。だって、わかるでしょ。何か「その話するの!?」って驚きだけじゃなくて、何というかこう……アレな感じがある。
「アレって何だよ!?」
「アレはアレだよ。兄さん。ちょっと名状し難いアレ」
「わからん…」
わからんのなら、それでいいと思うよ。
「なら、逆にカイさんはどうなんだよ!?」
「僕?僕もあると思う?」
僕は元から同級生にちゃんと話せる女の子の友達いないし。最精鋭に入ってからは基本的に固定カプ成立してるし。いない人もいるけど、繋がりがないねぇ…。
「え?小鳥姉ちゃんは?」
「小鳥?あー。確かに友達だけど。恋愛感情はないからねぇ…」
少なくとも今のところは。とつくのだろうけど。
「今後に期待ってところかな?」
「そうなるね。そのまま行くか、発展するかはわかんない」
「てか、幸樹はどうなんだよ。俺らにだけ聞くのは不公平だろ」
「僕?僕も恋愛がわかんないからねぇ…。前世は婚約者もいなかったし」
え。ほんとに?
「嘘は言わないよ」
「マジなのね…。いやぁ、でも、長男だったんでしょ?下手したら生まれた瞬間に決まるとかありえたんじゃないの?」
「立場的にそれはあったかもしれない未来ではあったよ?でも、それを父さんや母さんが許容すると思う?」
まぁ、思わないね。あのお二人なら国王であっても、国よりは子供でしょ。いやでも、転生前でしょ? 怪しくはあるような。
「大丈夫。転生後……今のほうがその傾向が強いけど、前からその傾向はあったよ。それに、こっちが選べる立場でもあったからね」
「それは統一王国だったから?」
大陸を統一した王国なら、選び放題ではあるよね。
「いや、違うよ?僕が生まれたときはまだ統一王国じゃなかったよ。大陸で一番強い国で、中央付近の国のリーダー格ではあったけども」
「あ。そうなのね」
それでも、強い国なら選べるか。
「そうそう。で、そんなんだから急いで選ぶ必要もなくてね。そろそろ決めないとダメかな?って時に、神話決戦が勃発。そんなことに構ってる暇はなく。終わってからは、急ごしらえの国だから、さっさと安定させなきゃって色々やってた。その中で、またその話が出てきたけど、本格化する前に国が爆発四散して、妹以外が全員死んだ」
最後……。さらっと言ってるけど、本人から言われるとめっちゃ重いよ!?
「まぁ、事実だし。てか、転生してる今、もはや歴史的事実でしかないよ?」
「そっかぁ」
ほんとに気にしてない風だし、僕がここでごちゃごちゃいうのは違うか。
「でも、国を安定させる必要があるのに、第一王子の婚約者がそんなこと扱いでいいの?」
「まぁ、戦える奴は全員戦えとかいうやばい状況だったし。お相手になりそうな女性は全員、戦えたからねぇ」
妊娠なんかしたら戦力減になるから無理と。地獄かな?
「地獄だよ。神々が戦ってる中で、敵の配下にめちゃくちゃにされないように頑張ってたんだから」
「よく終わったな…」
「まぁ、僕らの戦いは神様の決戦の付属物だしね?そっちが終われば方もつくよ」
逆に神様が負ければ全部ひっくり返されると。…いやな戦いだなぁ。
「ほんとにね」
「だなぁ……。って、おいこらコウキ。しんみりした空気になったから流しそうになったが、お前、コイバナしろや」
「ちっ。覚えてたかぁ」
舌打ちした!? 幸樹が!?
「舌打ちはネタだよ。カイさん。といっても、兄さん。恋愛がわからないってのは言ったとおりだし、好きになりそうな子もあんまりいないから…。ほら、うちの女性陣、見た目いいし」
「確かに」
かわいい系と奇麗系に分けると、華蓮ちゃん以外は奇麗系によってるけど、非のつけようはないよね。
清水先輩は言わずもがな奇麗系。大和撫子を体現したような人。胸が大きいと似合いにくいといわれる和服もちゃんと着こなされてる。
愛理ちゃんは少女から大人になる遷移段階って印象のある奇麗系。多分、スラっとしたドレスの似合う美人さんになる。
華蓮ちゃんは中性的な可愛い系。元気で笑顔が似合う子。
礼子ちゃんは愛理ちゃんと同じ感じ。ただ、この子は明らかに和服のほうが似合う。
瑠奈ちゃんは体だけなら、この中の誰よりも大人っぽい奇麗な人。ちゃんと精神が伴えば、見た目の艶に負けなくなると思う。
瑞樹ちゃんは習先輩と清水先輩を足して2で割ったような子だから、清水先輩に似て奇麗系。ただ、少し目つきがきっとしてるから、クール系になるかな?
そんな人たちがいたらまぁ、見た目だけで判断するのは無理に近いよね。もっと奇麗or可愛い人知ってる。になるし。可愛い系がワンチャン?
「残念。カイさん。小鳥姉さんが抜けてるよ。小鳥姉さんはかわいい系でしょうに」
「確かに」
そっかそっか。身内で考えてるんだから、小鳥も入れとかないとダメじゃん。小鳥は正統派な元気な可愛い子。大体の属性が身内で埋まってるなぁ…。
「ガロウ?何の話しているんです?」
おや、礼子ちゃんが来たか。内容がアレだったからか、牙狼がめちゃめちゃ慌ててる。何かあるって言ってるようなもんだよ?
よし、ここはからかっておこう。幸樹と目を合わせる。うん、意図は汲んでくれたみたい。
「特に何もないよね?」
「うん。何もなかったね。あ、僕は今やってるルナの次だから、教室の前に行くね」
「僕はそろそろタイムセールも始まるし、帰りに寄っていくよ」
秘儀! 露骨に話を逸らして打ち切る! 明らかに何かあるという雰囲気を残しつつ幸樹と離脱! 頑張れ牙狼。後で話を聞かせてね!
あわあわしてる牙狼をガン放置して、外に。僕も幸樹も嘘はついてないから、食堂を出たらお別れ。
うわぁ。夏だからあっつぃ…。帰るのさえ軽く憂鬱になるけど、帰ろうか…。
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