64話 七並べ
「「「ただいま!」」」
「「おかえり」」
一仕事終えたお子さんたちがぞろぞろとやってきた。そんなに広くもない部屋だから、さすがに習先輩達一家がほぼ勢ぞろいすると狭い。
「今日は来るのね」
「…ん。お仕事の報告とかあるから」
「なるほど」
それは重要だね。テレビ中継みたいな形で見てはいたけど、途中からだった。それに、もともとは、ほぼ任せきるおつもりだったんだから、余計に。
「で、あれば僕は外に行っておいた方がいいです?」
明らかに邪魔ですよね?
「いや、いいよ」
「というか、私がお邪魔しているだけで、ここはもともと習君たちの部屋です。それには及びませんよ。異空間を作ってそこでお話することにします」
了解です。なら、のんびりしてます。
何でもないようにお二人が魔法を使うと空間が裂けて、異空間への入り口が完成。その中にお子さん達もぞろぞろと入っていく。
さて、僕は……どうしよ。修学旅行中に勉強する気もないしなぁ。携帯でなんか見とこうかな。動画を見ると通信制限が怖いから、ラノベでも探そうかな。
「終わりましたー」
「早いですね!?」
まだそんなに時間も経っていませんよ!?
「お待たせしたくないので、こっちと異空間の中で時間変えましたから」
そこまで心配りしていただかなくてもよかったのですが…。いないならいないで、のんびりするだけでしたし。勿論、いてくださる方が遊べて楽しいですが。
「では、今日は何をして遊びますか?」
「適当にグループ分けして、トランプでもしようかなって」
「僕は構いませんが、お子さんたちはそれでいいんです?」
みんな、習先輩と清水先輩が大好きですよね? 一緒に居られる時間なのに、別々にしちゃっていいのです?
「…ん。平気」
「だねー。話す機会はちょくちょくちゃんとあるもんー!」
「ルナだけは、お父様とお母様と多く一緒に居られるように配分は致しますが」
礼子ちゃんが補足すると、何故か瑠奈ちゃんが誇らしげに頷いた。
誇らしげにしてる理由が分かんないけど、みんな納得してるみたい。なら、いいや。
「どうやって分けるのです?」
「適当にくじ引き。忌憚なく話せるようにグループごとに異空間を用意して、隔離するよ」
「異空間作るのは良いですが、折角、集まってる感が薄れません?」
なんとなくですが、大人数で同じゲームをいくつかのグループでやる時って、先に終わった人が別グループに顔出すのとかも、一つの楽しみみたいなとこあると思うんです。
「それはそう。でも、熱中してたら聞こえなかったりするでしょ?だから、相互に見えて、行き来できるようにはするよ」
「声はその異空間に入らないと聞こえないですし、許可がないと入れない。そんな仕様の予定です」
なるほどです。割と分断強めな印象があるけど……、忌憚なくってのを重視されてるんだろう。多分。
「というわけで、早速、別れてやろう!」
「ですね。魔法使うと自動で分かれるので、よろしくです」
「「「はーい」」」
了解です。お二人が手を繋がれて、魔法名を唱えられると一瞬で視界が切り替わった。
ほんと、魔法ってすごい。滅茶苦茶だぁ…。この異空間は和風だ。泊っている部屋がベッドやソファがある洋風だから、新鮮味があ…るかと思ったけど、そんなないや。枕投げしたところ、和室だったし。
「カイさん?」
「え?あ、ごめん」
何で、後ろ向きに、配置、してるん、ですか! 習先輩! 清水先輩! こっちが部屋だと思ったんですけど! 背中向けてた側が、部屋の中心じゃないですか!
「思いっきり外見えてんじゃん。そっち」
「だよね。明らかに部屋の大きさ的に、逆とわかりそうだけど」
そりゃそうだけど、牙狼に幸樹! でもでも、普通、対面するように配置するもんじゃないの!?
「「知らない」」
そっかぁ。まぁ、そういうこともあるか。
「てか、習先輩以外の男勢が揃ってるのね。ここ」
「だな。なんか作為的なものを感じねぇこともないが…」
「そう?」
ほんとに適当にやって、そうなっただけって可能性は十分にあると思うけど。お二人だし。
「いやいや、男だけだぞ?てことは、下世話な話をしろということじゃね?と思わんでもないんだよ」
「穿った見方な気がするけどなぁ。まぁ、それはいいや。とりあえず、トランプをシャッフルしとくね」
何するにしてもシャッフルは無駄にならないし。うーん、異空間にある机の上にちょこんと鎮座していたトランプだから、明らかに魔法で作られてるんだけど…。これまで触ってきたどんなトランプより混ぜやすい。
「下世話な話をするなら、正直、僕はガロウ兄さんが一番、気になるけど。いつ告白するの?とか、見た目だけならレイコ姉さんより好みの人いないの?とか」
「おい、やめろ。コウキ。特に後者!んなもん、地雷確定じゃねぇか!したかねぇよ!」
「ごめん、牙狼。僕も気になる」
普通に興味ある。てか、まだ告白してなかったの?
「はい、兄さん。というわけで民主主義の原則に従って、ハキハキ喋って?」
「え、え。マジで?」
「うん。あ、何する?ちなみに僕はババ抜きかジジ抜きか七並べか、神経衰弱なら出来るよ」
大富豪とかポーカーとかは知らない!
「なら、七並べで。机有りますし、活用しましょ」
「だね」
なら、適当に配るねー。
「そら、牙狼。礼子ちゃんにはいつ告白するの」
「え。マジで聞くの?」
「うん、興味あるし。互いに好きあってるのはわかってるんでしょ?」
恥ずかしそうにこくっと頷くガロウ。なら、進められるなら進めてもいい気がするけど。
「だが、生まれてからずっといたからなぁ……、告白するにしても、なんか今更感が」
「あぁ、機会を逸したってやつ?」
「そう、それ!」
「なるほど。あ、カード配り終わったから、確認よろしく。7があったら、抜いて置いて」
僕のところに7は……2枚あるね。やった。結構、有利だね。ジョーカーも入ってるし。
「あ。ジョーカー入れてるけど、大丈夫?」
「はい。勿論」
「構わない」
「了解。ジョーカーの扱いを確認しとくけど、ジョーカーは他のカードと二枚セットで出してね。ジョーカーは他のカードの代替。出したらその人が持ってるその数字と交換して、代替元のカード持ってる人がジョーカーを持つ。つまり、今なら7が出てるから、6か8しか出せないけど、ジョーカーがあれば、ジョーカーに6か8を代替させて、5や9を出してもいい。ってこと。で、いい?」
うん、頷いてくれた。この辺、ローカルルールとかあるかもだから、確認しとかないと後で、しんどいんだよね。
「後、1とKは繋がってるって認識でいいか?」
「うん。1出てたら、12が出てなくても、13出していいよ」
じゃないと、詰まりやすくなるからね! 特に、今は3人しかいないし。
「順番はカードが一番多い人から行こうか」
「じゃあ、俺か。その次は?」
「カイさんどうぞ」
「いやいや、後輩だし、コウキからでいいよ」
「僕、転生者なんですが…」
それは前に聞かせてもらってる。でも、いいじゃん。
「了解です。なら、そうします」
「うん、そうして」
さて、序盤も序盤だから、特にカードを止めるとかはいっか。けど、ジョーカーは僕持ちだし、クローバーの9と4っていうほどよく広い範囲のがある。ここを止めておけば、いいかな? クローバーの3はあるけど、4は止めといても、3もないからジョーカー出せないし、良い感じな気がする。
「それで、どうするのさ、ガロウ兄さん」
「え。さっきので許してくれないの?」
「「くれない」」
「だとしても、進める必要はあるでしょ?そも、父さん達を見てて、それはわかってるでしょ?」
「わかってる。わかってるが、やっぱこっ恥ずかしいんだよ!」
だろうね。僕は今まで好きになった人はいないけど、思いを伝えるのはしんどいってよく聞くしね。…伝えられるのもしんどいって聞くけど。
カードは順調に減ってる。けど、スペードの9が未だに出てこない。まだいいけど、どっちか止めてるね。
「まぁ、ここでごり押ししても仕方ないし、これ以上はつっつかないけど、その辺はいつかちゃんとしてあげてね?」
「ほぼ結婚まで確定してるのは、見てたら分かるけどさ」
…何で目を丸くしてるのさ。
「いや、普通、そこまでわかってたら、他に好きだなーって人いるって聞くか?」
「「聞く」」
「マジかよ!」
純粋に興味があるからね! 下世話な話って言いだしたのは牙狼だし、遠慮なく行くよ!
「昔の俺をどつきたい」
「どついてもどうにもならないよ?」
「し、どうにもしてあげないよ!」
「性格悪いな!」
かな? 習先輩とかには出来ないけど、なんとなく、牙狼ならいいかなって感があるんだよね。……まぁ、習先輩に聞いたら純度100%ののろけが返ってくるんでしょうけど。「四季が好きだよ」って。
ていうか、それ以外の解答が返ってきたら、清水先輩がその場に居合わせたら死ぬ。そんな確信がある。
「じゃあ、俺の解答もわかってんじゃねぇか!レイコ以外に考えられねぇよ!」
「ほんとに?レイコ姉さんって、母さんに比べれば胸ないよ?」
「胸だけ見てるのか?こわ…」
「何そのテンション…。例えばに決まってるでしょ、例えばに。僕を胸しか見ない人みたいに言うのは止めて?」
両方大やけどしてるじゃん。む、そろそろクローバーの9きっとこ。
「カイ先輩も大けがさせたい…!」
「え。犯罪予告?」
「違うに決まってんだろ!?」
めっちゃわたわたする牙狼。素直だなぁ……。
「わざと!?」
「そりゃね」
今の流れでワザとじゃなかったらそれもう、ド天然だよ。間違いなく。
「カイ先輩は気になる人とかいないのか?」
「いないねー」
先輩方は先輩方だから、一緒に居て楽しいとか、そういう好きはあるけど、一緒になりたいとかはないし。そもそも、同級生の女の子とはあんま喋ってないし…。
「意外」
「でもないでしょ。好奇心があれば突っ込むけど、なかったら突っ込めないし。そも、あっても、異性のところには行きにくいよ。心情的に」
ここでぐいぐい行けるようなら、間違いなく陽キャ。もしくはひたすらに空気が読めないやばい奴。
「でも、姉ちゃんたちには突っ込んでるよな?あ、こっちは先輩の同級生の方な」
「それはなんかいいかなって。喋りかけてくださってるから、知らない人って方が少ないもん」
知らない先輩には話しかけにくいけど……。
「じゃあ、姉さんたちは?」
「愛理ちゃん達?愛理ちゃん達は愛理ちゃん達って枠なんだよね」
愛理ちゃんは明らかに習先輩と清水先輩が好きなの見えてるから、微笑ましいなーって感じ。
華蓮ちゃんはハイエルフだからか、喋り方があんなんなのに、どこか超然としてて、そんな気持ちはない。
礼子ちゃんは固定カプで論外。瑠奈ちゃんは言動が幼いから、そういう枠に入らない。
瑞樹ちゃんは瑞樹ちゃんとしか言えない。分裂して活動してるのが、なんかもう、何とも言えないんだよね。
「なるほど。じゃあ、小鳥姉は?」
「小鳥?小鳥は……」
そういう枠とかはないね。てことは、小鳥は恋愛対象になりうる……のか?
「どうなんだろ?」
「いや、表情読んでいる前提で聞いてこられても」
「知らないとしか、答えようがないかな」
だよねー。どうなんだろ。ま、いっか。よし、クローバーの4も出しとこ。あ。ジョーカーより先に出しちゃった。……まだ何とかなる!
「そういう幸樹はどうなの?」
「姉さんたちは姉さんですから、恋愛感情は当然ないですね。小鳥姉さんも僕とミズキはガチで血縁あるので、恋愛対象にはなりませんし…」
だよねー。あ、スペードの9まだ出てないし、いい加減、ジョーカーきっとこ。
「うっげ、ジョーカー!」
「そろそろ切らないとマズいからね」
牙狼が持ってたのね。…途中からそんな気はしてたけど。幸樹だと、ジョーカーのこと考えてそろそろ切ってそうだし。
「なら、他の子とかは?」
「うーん、普通に好きになるとは思う。でも、今はいないかなぁ。正味、顔だけで見てると姉さん達に勝てない」
それはそう。綺麗も可愛いも揃ってるから、ほんと、見てるだけでほえーってなるよね。
「なってる?」
「言葉足りてなかった。最初だけね?今は見かけたら普通に話しかけてくれるから、「ほえー」ってなる余地があんまりない。し、人柄知ってるからねぇ。なんていうか…、僕より若いのに頑張ってるなぁって、ほんわかする」
「ルナとコウキ、ミズキは実年齢でみると、余裕で年上だけどな!」
知ってる。でも、瑠奈ちゃんはほんわかする筆頭でしょうが。瑞樹ちゃんに関しては黙秘したい。
「黙秘ってことは、それ、僕も含まれるんだけど……?」
「幸樹はあんまり接する機会がないからね…。礼子ちゃんや牙狼、瑠奈ちゃんもだけどさ」
「それは確かにそう。アイリ姉さんやらカレン姉さんやらミズキが、フットワーク軽すぎるんだよ」
ねー。魔法が便利すぎるんだよね。一人でどこでも行ける愛理ちゃん華蓮ちゃんに、もはやどこにもいる可能性のある瑞樹ちゃん。
うげっ、ジョーカー帰ってきたし。都合よく出せるから、さっさと処分処分。
これでちょうど、僕の手札はもう一列に二枚しか空きがない手札になったから、ジョーカー負けはないね。
「てことは、カイさんまともな恋愛できない……?」
「かもしれない。まぁ、別にいいよ。最悪、遺産は全部、華蓮ちゃんにぶん投げるから」
雀の涙みたいなものだろうけど、国に取られるよりはいいでしょ。知らんけど。
「あ。なぁ、この盤面って、俺の負け?」
「ん?」
…あぁ、確かに。そうかもね。既に一列埋まってて、残る三列は空きが二枚だけ。ここでジョーカーはもう出せない。
「ジョーカーあれば負けだね」
「ですね」
「がぁぁ!」
となると…、僕と幸樹の残るカードは二枚。でも、順番的に次は幸樹。
「だから、自動的に幸樹が一番で、僕が二番。牙狼が三番だね」
「ですね。もう一回やります?」
「うん。やろっか」
一回で解散はもったいないしね。
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