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3話 始業式

 習先輩と清水(森野四季)先輩は結婚されている…と。



「大学生なら兎も角、高校生で結婚って言われたせいで、大混乱してるのですが」

「嘘つけ、さっき俺が結婚してるって言ったときめっちゃ元気に否定してきたじゃねぇか」


 !?確かに。確かにそうなのですけども…!目の前に突きつけられますと何というかこう…、あるでしょう!?



「よくわからん」

「だね」

「ですね」


 くっそお!ならば他…の人らは僕が緊張するからって二人が防壁担ってくださったおかげで関わりがねぇぇえ!



「とりあえず、男子であるカイには彼氏がいる女性陣を覚えてもらえれば良いよ」

「だな。地雷を踏むと地獄見るぞー」


 とりあえず。で流さないで下しあ。



「流さないと進まないしねぇ…」

「というわけで地雷踏んだ場合のわかりやすい一例たる清水さん、どうぞ!」

「私がわかりやすい一例扱いされることに異議を唱えたいのですが」


 ものすごく優しそうな見た目をされていますものね…。



「まあまあ、清水さん。しつこいナンパされたら?」

「吊します」


 ひいっ。怖い。普通に怖い。さっきまでニコニコされていたのに、切り替えが早すぎます。今、清水先輩の目を見ちゃ駄目だ。たぶん。きっと。本能がそう訴えてきてる。見たら精神が死ぬ。そんな予感がする…!



 あかん、震えが止まらない。何人か殺ってるオーラがある!



「四季ー」

「どうしました、習君?」


 習先輩が清水先輩の頬をムニムニされたとはいえ…切り替え早っ。早すぎてまだ空気が死んでるのですけど…!?



「櫂。というように地雷を踏むとよくない。リア充になりたいからと言って彼氏持ちにしつこいナンパするとか、別れさせようと悪口言うとかしたら死ぬぞ」

「前者は兎も角、後者は人として終わってませんかね?」


 恋人がガチ屑でどう考えても不幸せにしかならない!という場合ならまぁ、わかりますけど。今の流れだとそういう感じではないでしょう?



「まぁ、あることないこと言うって意味であってるぞ。そう言うやつは馬に蹴られておけばいい」


 死にますよ?



「もののたとえみたいなもんだよ。馬鹿。ことわざ…でも故事成語でもないっぽいけど。まそれは置いとけ。清水さんのあれはこのクラスでも最上級だから、あれ以上はそうそうない。体験しといてよかったな」


 上があるのですね…。



「習四季がツートップだから安心しろ。最上級は絶対ないけど…、浮気した時だろうな。黒いから詳細は省くが、浮気相手は死ぬよりひどい目に遭う」


 !?…あれ?浮気相手?



「浮気相手だぞ。習と清水さんは相手が浮気しても大好きだから相手は殺さないだろうよ。…ヤンデレ化して、浮気した方を監禁するだろうが」


 どっちにしろ地獄っぽいのは変わらないのですね…。



「ま、仮定の話。天地がひっくり返らない限り、あの二人が相手に不義理なことはしねぇよ」

「じゃあ何故言ったのですか?」

「え?上位を体験した後で、最上位を聞くと想像しやすいだろ?そうなれば耐性が出来る。耐性はあると便利だぞ」


 耐性を得るためだけにさっきのをした…?さっきのはワクチンか何か?



「そんな過激なワクチンなら僕、ワクチン反対派に回ろうと思うのですが」

「何も知らずにさっきの巻き添え食らうよかマシだろ」


 巻き添えなんて…くらいますねぇ!否定できない。否定できないけど…、



「それで僕の感性が死んだらどうするんですか!?」

「知らん!少なくとも俺の常識的なものは習に付き合って瀕死の重傷を負った」


 親指グッとあげながらそんなこと言われましても…、貴方の話は知らないんですよぉぉぉ!今は僕の話!誰も貴方の話はして、ない、です!



「そんだけ言えるなら大丈夫だろ。そら、先生来たぞ」


 むぐぅ…。座ろう。担任は…、近衛先生か。



「はい、おはよう。担任は俺だ。全員俺のことは知ってるだろ?紹介は省くぞ。始業式は放送だ。始まったら聞くように。矢倉。まず宿題出せ」

「あ、はい。ただいま!」


 鞄から不要なものを抜いて、机の上へ。残りの宿題は鞄に詰めたまま前へ!そして教卓の上で逆さまに。ドバーッとな。



「矢倉。俺さ、時々思うんだ。お前の謎の行動力はどこから来るんだろうって」


 上を見上げてどうされたんでしょう?天井しかないですよ?



「たまに究極に察しが悪くなるしな…!横着すんな。馬鹿。ぐちゃってなってる。鞄ごと持ってきて手で出したほうが明らかに早かったぞ」


 …確かに!くそう、できるだけ早く前に居る時間を短くしたかったのに…!



「緊張するから前に居る時間を短くしたかった…って顔してるが、緊張してるのにこんな目立つことを出来る精神はすごいと思う」


 先輩方全員に頷かれ…って一人既に寝てらっしゃるぅ!?



「提出忘れ……は無さそうだな。座って良いぞ」


 助け船ありがとうございます。感謝感激雨あられ。でも…あれ?先輩方は?



「俺らは宿題もとからないよ」


 何故に。不公平だ!



「俺らは最精鋭だぞ?ない方が良いんだよ」

「と言うタクは小学校入ってからずっと、長期休暇の宿題を最後の最後、ギリギリになってから俺に頼るという愚行をやらかしてるんだけどね」


 習先輩の言葉がきつい…!



「そりゃね…。夏休み最後、毎日のように遊んでるのに、始業式の日に「ごめん!わからねぇから見せて!」とか言われたらねぇ…。もっと早く言えという気持ちになると思わない?」


 思います!



『あー、テステス。本日は雲一つない晴天なり』


 思いっきり雲一個浮いてますけどね。



『最上階の人、聞こえてますか?……無線がないからか返事がないけどよし!』


 無線もないのに、どうやって最上階から一階にある放送機材室に返事を届けろと。叫べとでも?



『さて、ただいまより始業式を』


 マジで続行するのですね!?真面目に聞かなきゃ。そういえば、さっき寝てた人は…、寝てる!聞いてねぇ!



『校長だ。校長の話は長いというその既成概念をぶち壊したいと思う。始業式に参加している皆は2年、3年生だ。1年生の模範となるように行動するように』


 ん?もう終わりかな?早…



『本校の校訓は各教室の前に掲示してある。各自で読むように』


 くなかった。この教室で話をまともに聞いている人は一体何人居るのだろう。真面目そうな豊穣寺先輩や、清水先輩、習先輩が本を読み出してる時点で駄目かもしれない。



『くれぐれも犯罪行為などはしないように。心へし折って訴えられなくした上で、証拠を一切残さなければ問題ない…のような考えも慎むように。我々も生徒一同を守るように務めるので…』


 あ。これ、明らかに最精鋭の先輩方に向かって言ってるわ。…誰一人として聞いてねぇけど。というか…明らかに言われることを分っていて逃避しておられるような…。気のせいか?



「「気のせいだよ(ぞ)」


 ひえっ。前後の習先輩と拓也先輩からなんか飛んできた…!



『駄目なら駄目でも構わないから…』


 構わなくないですよ!?校長先生!構って!構ってください!



『周囲への被害はできるだけ抑えてもらえると…』


 周囲への被害…?あっ。察しました。習先輩と清水先輩、二人が激高したときの周りへまき散らす恐怖感がえげつないんだ…!



「正解」

「タクー?」


 習先輩は笑顔。だのに、「何を吹き込もうとしてるのかな?」と言わんばかり。圧がヤバい。



 泣きそう。生まれてきてごめんなさい。



「カイ…、その思考はやめた方が良い」


 ひえっ。



「わ、わかりました!」

「結論としては良いはずなのに、過程が釈然としない」

「お前が悪い」


 不服そうに拓也先輩をにらみつける習先輩。本当に仲がよいのですね…。



『さて、結局長かった校長先生の話に続いて、生徒指導部から』


 いつの間にか話が変わっている…!



『本学は式の日を除いて制服、私服どちらでも可である。が、制服の場合は生徒手帳記載の条件は満たすように。本学のイメージが崩れる』


 めっちゃ先生が素直にぶっちゃけた…!



『私服の場合はとやかく言わん。が、が…、節度は持ってくれ。スカート、ズボンの丈を短くしすぎる。胸元を開きすぎる…という派手なものは控えて欲しい。だが、それ以上に頼むから履いてこないとか意味がわからないことはしないように』


 安心してください先生。俺も意味がわかりません。



「ドア・イン・ザ・フェイスかもね」

「最初に大きい要求をして、次に小さい要求をして譲歩をしたように見せる…ってやつな」


 え?つまり…、



「下半身露出はやめるから、丈とかにグチグチ言うなってことです?」

「そうそう」


 たぶん過大要求(下半身露出)はガチでやらかした人がいるっぽい?でも、その人、社会的に一回死んでると思うのですけれど。丈の長さにそこまでこだわる必要があるんだろうか?女性陣のスカート丈はうるさいことが多いって聞くけど…。



「噂では男子らしいぞ。膝上以上の半パン。そして毛は剃らない」


 何やってんですかね。その人。とやかく言いたくないですけど、見た目が汚いです…。



『始業式を終了します。一同、起立』


 !?聞いてなかったぽい人まで立ってる!?…え、寝てた人も立ってる!?



『礼』


 礼までしてる!



『着席』


 据わった瞬間、寝た!?いや、あれは…、寝ながら動いただけ?わからない。あの人が全然わからない!てか、何で最初に起立礼着席がなかったのに、最後だけやってるの!?



「おい。矢倉。紹介の時間だ」

「え?処刑ですか?」


 これから僕は死ぬんですね…。



「アホ。紹介だ。処刑じゃない。たしかに「しょ」までは合っているが、紹介だ。そら、自己紹介しろ」


 あぁ、なるほど。ごめんなさい。…え、自己紹介?先輩方の前で?…緊張で死ねるんですが?



「習先輩、拓也先輩…」


 情けないけど涙声になってる気がする!でも、助けてください。うまくいく気がしません!



「そんなに気負わなくても良いんだけど…」

「効かなくてもいいので、落ち着くおまじないとか呪いをください!」

「呪いって…」


 役に立つなら呪いにだってすがってみせる。それが僕。言い間違いではありません!



「なんか俺らに負けず劣らずネジぶっとんでんな」

「だな。ま、実際、顔が青くて可哀想だし…、最精鋭って色々聞いてて不安なんだろうし…」

「ちゃちゃっとやってあげますか」


 習先輩と清水先輩がうなずき合ってる。一体何を…?二人が手を取り合われて…、手招き。立たなきゃならないんですけど…、



「重傷ですね。では、私が動きましょう」


 !先輩を動かすわけには…!頑張って立つ!



「頑張りは認めるが…清水さんが動く方が早かったな」


 目の前に清水先輩がいらっしゃいますねぇ!二人して僕に手をかざして…、



「「『『沈静』』」」


 二人タイミングを揃えて発声。たったそれだけのはずなのだけど…、



「落ち着いてきた気がします!」

「それはよかった」

「では、行ってきます!お二人とも、笑顔が素敵ですね!もう何も怖くない!」

「色々ツッコミどころしかない!?」


 大丈夫!今の僕は無敵!褒め言葉はするっと出るし、緊張もしない!



「最精鋭の皆様!僕は矢倉(やくら)櫂斗(かいと)と申します!皆様に比べますと未熟で、「何でこいつ混じってんの?」と思われるかもしれませんが、仲良くしていただけると嬉しいです!」


 よっし言い切った!撤退!ぐえっ。



「俺からもお願いする。学校の配慮的なものでぶち込まれたようなもんだからな。文句はこいつじゃなくて学校に言ってくれ」


 あの、先生。フォローしてくださっているのはありがたいのですが、思いっきり首が絞まってます。くるちい…。



「先生。カイが死にかけてます」

「!?すまん!」


 謝罪は良いので戻らせて下さい…。



「す、すまん…。戻って良いぞ」


 わーい!てってこ走って着席!



「後、やらなきゃならないのは…時間割の配布くらいか。基本、このクラスも時間割は他と変わらん。留意するように。後…、この学校は周知のように修学旅行は三年の五月にある。準備を忘れるなよ。以上!帰って良いぞ」


 やった。とっとこ帰ろ…と思ったけど、気のせいでなければ先輩方から思いっきり注目を集めている気がする…!



 「話そう!」オーラがすごい。けど、僕には無理!大型肉食獣に狙われた小型草食動物の気分。



「カイ。家はどの辺?」

常華(じょうか)川流域にあるアパートですが」

「あぁ、『ハイツ SCB桜』だね」


 です。Sakura(), |Cherry Blossoms《桜》の頭文字をくっつけた後で、桜を重ねるとか言うもはや謎名前と化しているそこです。『ハイツ 桜桜桜』とかどんだけ桜が好きなんだと。



「だったら俺らの家のそばだね。一緒に帰ろっか」

「いいのです!?」

「うん。一人じゃ不安だしね…。ねぇ、四季?」

「ですねー。自転車でしょう?一緒に行きましょう」


 やった!ありがとうございます!ほんとこの人達に足を向けて寝られない…!



「俺は邪魔すんのもアレだから、勝手に帰るわ」

「了解」


 あぁ、肉壁が一枚減った…。



「この子、微妙に失礼だな。まぁ良いけど。じゃあな」


 バレてるー!?お二人の陰にさっと隠れて視線をインターセプト!



「あぁ、じゃあな」

「また明日です」


 二人にも苦笑いをされている気がするけれど、遮れたからよし!隠れたままクラスの外へ!脱出できたからさらによし!



「よしじゃないと思うけど…」

「ですねぇ…。たぶん私と、習君。それとタクさんぐらいしか名前を覚えていない気がします…」


 バレてて泣きそう。あれだけいっぺんに紹介されて覚えられるかぁ!



「残念。まだ増えるよ」


 !?習先輩と清水先輩が見つめる先には人の集団。こっちに近づいてきてるし、何人かは走ってる。…あの人達も増えると?人数は…、7人。多い!



「お待たせ。皆」

「…ん。勝手に来ただけだから気にしないで、お父さん、お母さん」


 …ん?あれ?聞き間違い…?今日はよく耳が仕事放棄するなぁ…。



「…そっちの人は新しい人…だよね。初めまして」


 あ。どうも。初めまして。



「…わたしは森野愛理(アイリ)。…お父さんとお母さんの娘です」

「待って」


 待って。本気で待って。聞き間違いじゃないじゃん。ガチっぽいじゃん。



「結婚してるってだけでも衝撃的なのに…、お子さんが居るんですか!?」

「そうだよ?」

「この子達全員が、私達の子供です」


 ごめんなさい。意味がわからないです。

お読みいただきありがとうございます。

誤字や脱字、他何かありましたらお知らせいただけると幸いです。

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