123話 センター試験(2日目)
さて、二日目。今日も今日とてセンター試験……なのだけども、理系だから始まるの遅いんだよね。その分、終わるのが遅いけど。
とはいえ、変に遅く起きて寝坊したら詰む。いつも通りに起きて、適当に数学やら理科の確認をしているといい時間。まだ早いのは早いけれども、いいでしょ。多分、部屋で待たせてくれるはず。昨日と違って場所分からん…になる恐れもないから、ちょっと昨日よりは行くの遅いし。
っと、忘れ物がないかだけ再確認。えーっと、昨日と同じく問題なし! 昨日の問題用紙だけ抜いてこ。ファイルの中にぶち込んで、本棚の中に入れて……これでよし。新しいクリアファイルを代わりに入れて、レッツゴー!
安全運転にて自転車で会場へ。着いたら二重ロックヨシ! 受験票を見せて部屋へ。
「お。おはよう」
「はい。おはようございます。今日はお早いですね」
習先輩と清水先輩は昨日、僕より遅かったのに。
「まぁ、始まるのが昨日よりも遅いからねぇ。ちょっと子供たちと遊びたくなってくるでしょ?」
「でも、今日は絶対に遊べないわけです。いくら時間止めれると言いましてもね」
「後に何か控えていたら嫌ですよね。特にお二人は医学部受けられますし」
医学部は数理も点数を見られますものね。なら、今日のセンターも絶対に落とせない。
「まぁね。点数配分は低いけれども、全部いるし。とはいえ、カイもいるでしょ?」
「何せ、中期日程や後期日程、それにセンター利用とかで私立も出すんですよね?ん?あれ、出さないんでしたっけ?」
「全部受けますよ。「今年、菊桜に落ちたら浪人する」とは言っていましたがね」
清水先輩が「あれ?」とか言い出されたのはそのせい。浪人するつもりなら、本命以外は受かっても蹴るってことだし。だから、他受ける意味なくない?っていう。
「ですです。受けるのはアレですか?万一の来年の対策ですか?」
「ですねぇ。中期後期は主にそれですが、私立はほぼセンターの自己採点間違ってないかの確認でしかないですよ。あ。さすがにセンターの点数教えて!とは頼みませんので」
習先輩達なら魔法を使ってセンター試験の点数をこっそり知ることも出来るんでしょうけど…。ちょっとそれはズルが過ぎるかなと。普通の人は確定した点数は知れないわけですし。
「了解。それはそうと私立は「ほぼ」なのは何で?」
「一応、一か所くらいはちゃんと受けとこうかなと思ってるので。会場近い上に偏差値的にそこまで外れてないとこありますし」
「進志大学ですね。あそこはキャンパス京都市内にありますものね。なお」
「理系キャンパス」
言っちゃダメです。理系は京田辺ですね。京都からなら行きやすいのでセーフ。出町柳からなら、大都滋使って、丹波橋へ。丹波橋からは近鉄で興戸駅へ。乗り換えはあんまりしなくて済みますね。なお、所要時間。
「とまぁ、そんな感じですので今日も全力で受けますよ」
いくら菊桜の工学が国英社しか要らないと言っても、他で必要ですので。特に国英社がどんなもんか?を知ろうと思うとセンター利用で理系のみ、全部で出願して、その合否違えばどっちミスってそうかってのは目星付きますし。
「そも工学でも万一、足切りとかになると全教科見られたよね」
「のはずです。近年の傾向を見るに足切り──センターの点数悪すぎるからどうせ君、受からないから二次試験受けさせないよ──はないとは思いますが。あるとしくじってた時に死にますし」
「言い方ェ」
「あ。羅草先輩。おはようございます」
なんか微妙な顔されてますけど、足切りの事実ですやん。
「そうなんだけどね。ちょい露悪的すぎない?って思って。ま、んなことより勉強しましょ。公式とか忘れたら事よ」
「ですね」
来る前に確認してきたから、多分、抜けはないと思うけれど……。もう一回、公式見直しておこう。勿論、数学II・Bも併せてね。
勉強してたら定刻。数学I・Aの問題が配られて、昨日と同じように待機時間に指示されてから解答用紙にマーク。することがないから注意を読んでたら開始。まずはぺらっとめくって数学I・Aを探す。トラップとして数学IというAがないのがあるから、そこで間違えないようにしないとね。
I・Aみっけ! さぁ、解いてくぞー! 大問1はいつも通りで詰まるとこなし。大問2もいつも通り。データのところがちょっと計算めんどくさいくらい。選択問題も例年通り。大問3が確率系。4が整数系で5が図形。図形嫌いだし3, 4でいいか。
3はまぁ余裕だね。4は方程式の解を出してく奴ね。x = なんちゃらk, y= なんちゃらkにするやつ。不定方程式だったかな。えーっと……あれ、これどうやって解くんだっけ?
ユークリッドの控除法? いやいや。普通に一個の解は出てるし、違うでしょ。だって、一個の解出すのに使うやつ! そも、2431x+1692y=1とかで使うやつ。てか、形としては問題の”191x-7y=1”と似てるよね。草。いや、草生やしてる場合じゃないが。え。あれ。どうやるんだっけ?
図形に逃げよう。メモリ付き定規なんて使えるわけもないから、消しゴムで図を書いてやる。えっと、斜辺不明。他は長さ1, 2の辺の直角三角形ね。直角から角の二等分線を書いて、そこを通るように円書いてー。
斜辺と直角の二等分線の交点と他の点との距離はすぐに出る。でも、円と長さ2の辺との交点の長さなんてどうやって求めるんだこれ。えーっと、多分、なんかの定理だけど、何の定理? 詰んだ?
……練度的には整数のが思い出せるはず。整数に戻る! えーと、これはkをくくり出さないとどうにもならないんだから、どうしたらいいんだ。
x=ak+b, y=ck+dの形にしないと駄目だったはず。 ええっとー、まず何でこの方程式を解くのに解が一個いるんだったっけ? あ。あー! 確か、元の方程式から引き算する為だったような。そして、a,cは互いに素とかあったような。つまり、変形していってー、
よし。191(x-c)=7(y-d)って形になった。こっから、191と7が互いに素だから、y=191k+p, x=7k+qにできる! 勝った! よし、時間は……まだ大丈夫。見直し出来なさそうだけど、手応え的には大丈夫! これさえ解ければ、後はこれ使ってけば解けるんだから。駆け抜けてやる!
「止め!」
セーフ! 間に合った。残り2分でなんとか解ききれてた。かなーり心臓に悪い。
回収してもらったら、ご飯。習先輩達と雑談しながらパクパク。前の方で有宮先輩と百引先輩が「自己採点するぞー!」「うぇーい!」とか言ってるけど気にしたら負け。
新聞紙を持って来ているけれど、それも気にしたら負け。今日の朝刊とか言ってるから確実に答え載ってる。ガチで自己採点してるんだろうなぁって思いながら全力スルー。
てかあの人ら、ご飯を食べずに何してんですかね。「国語満点だー!」「みーとぅー!」じゃないんですよ。普通の人が満点とか言ってても嘘だと思っちゃうけど、あの人らだとほんとなんだろうなぁって思えるの、バグでしょ。
「羅草先輩はアレに混じらないんですか?」
「あっちが空気読んで引き込んでこないんだから混じらないのが正解でしょ」
「それはそう」
「でしょ?瞬君もケンゾーの幼馴染男子sもだからいないのよ。あっちはあっちで目に入れないようにこっちにすら来ないじゃん」
確かに来てませんね。まぁ、あのお二人がいいならいいか。食べてこう。お二人の採点がガンガン進むたびにこの部屋の人口密度下がって行ってるのは、きっと気のせいじゃないけれど。
「いえーい!大問6もOK!当然のように地理も満点!」
「うぇーい!フミも同じくなんだぜい!そも大問6なんざ間違えるはずがないよね!」
予備校で聞いたようなワードぶち込んでくるじゃん。何、あの人ら。この部屋の受験者の心を砕くRTAでもやってるの?
ご馳走様でした。さっさと片付けて数学II・Bの勉強。先の数学の轍を踏んでなるものか。習先輩達も同じように勉強。はしゃいでいるお二人は放置。「英語も満点!いえーい!」って言ったと思ったら、現時点の採点できる全教科分が終わったからか、二人して赤本で筋トレし始めた。
ダンベルみたいに腕を上下にさせてるだけだから注意できないバグ。てか、あの人ら普通に文系科目全部満点なのか。こわ…。
お二人は休み時間を一生筋トレに捧げて次の数学II・Bの時間。用紙配布後にいつものルーティンを済ませて開始。さっきと同じように数学は数学II・Bと数学IIで別れてるから、間違わないようにちゃんと選んで。よし!
まー、普通に解けはするけど……、なんか重い? 計算がちょっとめんどくさいのがある。後回しにして解けないとヤバいから、ちゃんとやって……うげっ。悲報。解答欄の枠に合わない=間違い確定。飛ばそ。
飛ばしたけど、次もなんかむずいな。手は止まらないけれど、計算が重い。次の問題は理解がしにくいし! 多分こうのはずなのだけど、書いてくれてる導出となんか合わない! やり方は合ってるし、答えも合ってるはずなんだけどなぁ。いやまぁ、合わん次点で間違いなんだけど。ふー。焦らない焦らない…。あ。こうか。行けた。
選択問題はいつも通り数列とベクトル。大問5はないのと一緒。数列は漸化式。ちゃちゃっと漸化式を立ててー、うわぁ。死ぬほどめんどくさいの出たぁ!
誘導があるからそれに乗ってけばいいのだけど、その誘導が逆にわかりにくい。ないほうがスルスル行けそうだよ、これ。あ゛あ゛あ゛! 帰着した形もすんごいめんどくさい! 計算が、計算の手間が……行けた! 最後!
ベクトル! 図はちゃっちゃか書いてー、あ。なるほど。これはアレだな。必殺ごり押し。別名、数学ゴリラ。間違いのないように丁寧にやりつつ、計算を進める。途中で解答欄に合わない! ってこともなし、多分、大丈夫。
後はやり残しに戻ろう。とりあえず、最初から順番に式を書き直して、解いてって……、あぁ。ここで3乗が消えてるのか。そら合わない。で、出て来た定積分がまたゴリラなんだけど!? えいえいっとやって、通分して、ちゃんと約分していって……、無事に3桁/3桁になったね。
多分、これで合ってるはず! 残り時間は……2分!? 嘘でしょ。何も出来ることないし、マークがズレてないか、メモしそびれてないかだけちゃっちゃか見よう。えーと、OK! なはず。
「止め!」
マジでギリギリじゃん。危な……。ふーー。
「んなやばかった?」
冷や汗を拭っていると、習先輩がそう声をかけて来た。
「ヤバかったです。僕が雑魚いのもありますが、どう考えても難易度が異常です」
「な気がするよね」
「へいへい!今回のテストめちゃ簡単だったね!」
満面の笑みで突撃してきてそう宣う百引先輩。周囲の先輩方は何とも言えない顔で百引先輩の顔を見ている。
「あれ。なんかやっちゃいました?」
「あんたは良かったかもだけど、平年よりはむずかったわよ。あれ。2015年に匹敵するかも」
「そんなこと言いつつ?」
「解けてるわ」
百引先輩が目を滑らせると、習先輩も清水先輩も拓也先輩もコクっと頷く。
「僕は微妙ですが、完答はしてます」
「じゃあいいじゃん!今回のテストは簡単!閉廷!」
「あっはい」
さすが百引先輩。このお通夜みたいな空気の中でとんでもないことおっしゃる。受験生のメンタルブレイクさせようとしてんじゃないですよ。伝家の宝刀「他の子もどうせできてない」が使いにくくなるでしょうが!
あぁ、なんか周りの空気がさらに沈んでる気がする……。僕には関係ないけど。
「冷めてて草」
「貴方にだけは言われたくないです。そも、周りが落ちてようが僕には関係ないですし。先生もそうおっしゃっていたでしょう?」
センターで周囲がライバルな可能性は低い! てか、周りなんか気にせず頑張れるようにしろ。って。もっとも、ついさっきのテスト、完答はしただけ。自信なんざないですけどね!
「ふむふむ。それは良き良き。気にしてないなら最後まで挑めるね!」
「とかいい感じに〆ようとしてるけど、こいつ。んな高尚な意図を持って動いてないわよ」
「知ってます」
周りを煽りたいってのもあるんでしょうけど、ひたすらネタに走りたいだけ。なのですよね。百引先輩達。だから、僕や習先輩達にとって致命的になることはしない。なお、僕ら以外への心労は考えないものとする。
「っと、カイはそろそろ理科の勉強するわよね?私は華麗に去るわ。アデュー!」
あっはい。…まぁ、勉強しますか。簡単な物理と化学の知識の確認しかできないけれども。
びゃーっと見直していたら早いものでもうテストの時間。いつものように用紙にマークを付けていくけれど、今回は物理と化学の同時受験。どっちから解いてもいいけど解答用紙は一枚。ちょっと見てから決めてもいいし、最初から決め打ちで解いていってもいい。
僕はもう決め打ちする。いつも通り物理をマークして、合図があったら間違いなく物理のページを開く。ちゃっちゃと解いていって、時間が余れば一回見直し。んー。多分、大丈夫。マークのずれも、マーク用紙と問題用紙のマークのずれもなし。
大丈夫っていってるけど、どーせどっかで間違えてんだけどね……。まぁ、もう一回くらい雑に見直そうか。……やっぱ大丈夫そう。時間ほとんどないけど、化学もチラ見して解答進めて行っちゃえ。
とか思ってたら止めの合図か。一問しか見れてなくて草も生えない。2科目目も連ちゃんでやるから、回収されても休憩は無し。当然のように退出者もいない。
社会とかと同じく、結構な人数のいる会場だから2個理科受ける人ってくくりで部屋とか建物別れてんだろうね。
割と短い休み時間を経て次。レッツ化学! これもびゃーって解いていって、確信持てないのは知識で出来るだけ絞って、多分こっちって選んで、終わり! 後は見直し。
一度、多分こっち! って選ぶと変わることはそうそうないんだけどねぇ。だって、たぶんこっちって判断するに足る根拠が(間違ってるかもだけど)あるわけだし。マークミスとか、マーク用紙と問題用紙のメモの不一致もなし。OK。よし、やることはやった。後は解答が合っていることを祈るだけ……!
止めの合図で用紙を回収してもらって、解散の号令がかかれば今日の……というか今年度の国公立を目指す人の受験戦争第一ステージが終了。なお、次の第二ステージが本番な模様。
「帰ろ!」
「あいあい。騒がないのは偉い」
「まだ他、終わってないかもだしね。じゃあねー」
百引先輩と羅草先輩は早々に部屋を出ていかれた。じゃあ僕も続きますかねー。
「あれ。一緒に帰らないの?」
「習先輩達はお子さん達がいるでしょう?昨日もお迎えに来ていましたし。それなら、あんま邪魔しない方がいいかなと」
さすがの習先輩達でもセンター間近だと、子供たちに割く時間、多少は減っているでしょうから。
「だな。なら、カイは俺と帰るか?」
「ですね。お願いします」
「うぃ。じゃあなー」
習先輩達に手を振る拓也先輩にならって僕も手を振って、部屋を出る。自転車を回収して、とりとめもない会話をして家に着。さて……、やりたくないけど、しようか。自己採点! 事故採点にだけはなってませんように……!
お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字衍字など、もし何かあればお知らせいただけますと嬉しいです。
私事ですが、リアルが非常に立て込んでおります。もしいつもは投稿されているタイミング(2.5週に一回)に投稿が無ければ、「あ。無理だったんだ」と思ってお待ちくださいませ。生きてる限り、完結させるつもりでいるので