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117話 お正月の朝

 ふわぁ……よく寝た。今は何時だろ? えーっと、8時か。大晦日だからって気にせずいつもの時間に寝た割にはよく寝たなぁ。僕。



 作っといたお雑煮をあっためて、買ってきていたおせちを引っ張り出す。自分で作らないでも、それなりに豪華なの買えるのっていいよね。…まぁ、値段相応の味ではあるけれど。



 のんびり再加熱しながら、あけおめのメッセージを色んな所に送ってーと。お。沸騰する前に火を消す。



 はい、できた。いただきます。やっぱお正月はお雑煮だよねー。…こんな時でもなきゃ白みそ使わないけど。



テレビはやっぱ特番しかやってない。あんま興味ないし、切っとこうかな? はまって勉強できなくなったらヤバいし。



 のんびり食べてご馳走様。残ったおせちはまた明日。使ったお皿はしゃっと洗って、干す。……え。もう朝のご飯終わったの? やっぱ作らないと早いねぇ。



 さーて、今日は何しようかな。さすがに1月に入ったし、センター試験の勉強しとこうかな。特にリスニングと漢文。菊桜にはその二つはないし、他の教科は勝手が違うし。



 やらんでもできるしーで突っ込んで、できない! は草も生えない。よし、漢文の見直しから……いや、先に陸斗(りくと)さんに挨拶に行っておくべき? 今年は僕、受験生だし。長々と滞在しちゃうしマズいよね。



行かないって選択肢はない。シングルマザーだったお母さんが死ぬ前から、お父さんの親友だったからって、財産管理とかやってくださってるし。既婚者だからお母さんと再婚とかなかったけど、割と構ってくださるから、一方的にお父さんだと思ってるし。



 よし、挨拶だけしに行こう。善は急げ。確か、お正月は親戚のところに帰るーって言ってたし、出る前に行けば、強制的に滞在時間も短くなってなおよし。



 ピンポーン!



 おん? 来客? こんな朝に「ピンポーン!」早いって。次が早い。待って。今出るか「ピンポーン!」あ。誰が来たか分かった!



『何やって「ピンポーン!(んすか)」って、鳴らさないで、有宮(ありみや)先輩。マジで何やってんすか。って、百引(ひゃくび)先輩もいるし』

『ピンポーン!』


 話聞いてくれませんねぇ! 出るか。



『ちょっと待っていてくださいね』

『ピンポーン』


 正解って言いたいのかな? 急いで着こんで鍵閉めて、下へ。……なぁにやってんのかな。あれ。見なかったことにして帰っちゃ駄目かな。



 あの二人の保護者も来ておられる。あの二人が突っ走ってやらかしたと確信してるのか、僕がなんも言ってないのにでっかい柱? に吊るされてる。



「お。来た来た」

「うぃっすうぃっす」


 吊るされてるのにクッソ軽いお二人と、申し訳なさそうにされている保護者たる(しゅん)先輩、羅草(らそう)先輩、謙三(けんぞう)先輩。



「どうされたのです?」

「みんなで神宮に行くことになったから、誘おうと思って」

「みんなって、最精鋭の皆さんですか?」


 幼馴染5人衆ではないですよね? さすがにそっちだったら混ざりにくいんですけど。



「そ。うちら全員」

「なら行きます。…が、お世話になってる人への挨拶を済ませてもいいです?」


 こくっと頷かれる皆さん。ありがとです。



「着替えも済ませてますし、早速行きますか」


 のんびりしてたら陸斗さんも実家に帰っちゃいかねないし。



「だいたい誘ってくださるの習先輩達なイメージがあるんですけど、今回は皆さんなのは何でです?」

「特に意味はないぜぃ(ほし)

「全員で……となると数もそれなりだしね。いくらあの家族とはいえ、いちいち迎えを出すのはめんどいから、各自集合なの。その兼ね合い」


 なるほ……ど? いやでも、それ。



「最精鋭の皆さんが習先輩のお力を借りない理由にはなれど、僕のところに皆さんが来る理由にはならないのでは」

「こいつらがゴリ押しした。それ以外にないな」

「わね。こいつらのごり押しに意味を求めちゃ駄目よ。どーせ、割と喋ってるくせして、「こういう機会に喋っときたかった!」としか言わんわよ」

「さっすがぁ。解像度が高い!」

「ねー!明文(めいぶん)ポイント+10!なお、集めても意味はない!」


 その場のノリで喋ってるから、きっと次は別のポイントになってんだろうなぁ。てか、



「何でいつまでも縛られたまま移動してんです?ってそろそろ突っ込んだほうがいいですか?」


 罪人のように縛ったのを引き連れてるわけではなく、むしろお祭りの時のおみこしの周りにある飾りみたいに上下させてるし。傍から見たときの印象がやばすぎんですけどー。



「よくやってるし、へーき」


 !?? え。あ。マジっぽい。通りすがりのおばあちゃんが「またやってるの。元気だねぇ」って言ってどっか行っちゃったし。元気で済ませていいレベル越えてると思うんですけど! え、これはさすがに魔法の効果……なのかな。わからない。



「あの。さすがに会うときは降ろしてくださいね。後、空気読んでください」

「もち」

「を食べると喉が詰まる」

「とは限らない」

「「わっはっは」」


 だめかもしれない。いや、さすがにこのお二人でも、空気は読んでくださるはず!



「もう着いちゃったんで、読んでくださいね。フリじゃないので」

「「おかのした」」


 うわぁ。自力でロープ引き千切ったぁ! 何で大人しく縛られてたんだこの人ら。



「あ。(かい)君。わざわざ来てくれたの?」

「陸斗さん!あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」

「ありがと。明けましておめでとう。こちらこそ、今年もよろしくね。あー」

「あ。大丈夫です!これから御実家に行かれるのですよね?それを知っていてこちらに来ましたので…。腐っても受験生ですし」


 まぁ、これから初詣に行くんですけど()。それは言わなきゃバレないのでセーフ。



「こら。腐ってもなんて言わない。君は立派な受験生だよ。既に頑張ってるだろうけど、敢えて言うね。終わってから悔いが残らないように頑張れ」

「はい!ありがとうございます!では!」

「え。(うみ)とかに……会うと名残惜しくなるか。じゃあね!」

「はーい!わたわたしてごめんなさい!」


 ここにいると名残惜しくなっちゃうから、見えない位置まで走り去る。ご実家の位置的に、次の角まがりゃ大丈夫なはず。はい、OK!



「ねぇ。海って誰?」

「うぇええええっ!?」


 ちょっ。唐突に耳元で喋るの止めてください! ぞわぞわ感がやばすぎて死にます。くっそー、空気読んでくださったと思ったらこれだよ!



「てか、どこにいらしたのです?」

「うん?普通に門に隠れて見えないようにしてた」

「全員です?」


何で何でもないように揃って頷くんですかね。気づかん僕も僕ですけど。傍から見たらどー見ても不審者。あの家の塀、木が目隠しになってるとはいえ、石部分はんな高くないのに。…気にしたら負けかぁ。



「で、海さんでしたか。海さんは陸斗さんの奥さんですよ。ついでに言っとくと、お二人には空翔(くうと)星翔(せいと)って言う息子さんもいます。両方、僕と歳離れてますけど、友達です」


 空翔は今年、高校受験ですけどねー。そのせいであんま遊べてないわ。



「「なん……だと」」

「いや、その反応おかしいでしょ」

「「友達いたのか……俺以外のやつの」」

「ちょっと突っ込み方わからんボケするの止めてもろて」


 一人称俺じゃないでしょとか、普通に習先輩とか友達としていますし、とか、いつのゲームやねんとか。



「てか、集合場所は習先輩達の家だと思って歩いてましたが、合ってます?」

「合ってんべ」

「ねー。そーれワッショイワッショイ」


 ??? あれ。何でまた縛られてるんだこの人ら。そして、ワッショイされる側で何言ってんですかねこの人ら。



助けて。訳わかんない。今更だけど知らない人って感じにしたい。あの人らの仲間だと思われたくない。



「大丈夫。あたしらは見えないようにしてるから」

「逆にこの二人が何故か上下動してることになるんですけど」


 新年早々、怪奇現象が起きてることになりますぜ。



「ダミー置いてるからセーフよ」

「ここまでしてもまともになるとは思えんが」

「「いえーい」」


 いえーいじゃないが。縛られてんのに手をピースしてるし。わざわざもう一回縛られに行ってる辺り、遊びだと思ってんでしょ。



(しゅん)先輩と謙三(けんぞう)先輩は何でコレらと付き合って……あ。恋愛的な意味でですよ?付き合ってんです?」


 瞬先輩は百引先輩と。謙三先輩は有宮先輩と。



「俺は割と波長合うからな。ここまで酷くはないがな!」

「酷い!」


 酷くないと思います。謙三先輩は親指立ててらっしゃいますけど、それされても文句言えんくらいのことしてんすよ。あんた。



「後、瞬と(羅草 愛)にこいつまで押し付けるのはかわいそうだと思った」

「「えぇ!?」」


 何で有宮先輩まで驚いて……言ってなかったのか。てか、言えないなそんなの。



「え。待って。ケンゾ。それがガチなら割とショックなんだけど」

「安心しろ。今は思ってないから」

「そ、それなら……って、なるかーい!」


 ですよねー。



「何で何で!そんなかっこいい顔でグッジョブ!みたいな顔されても誤魔化されないよ!おら、マジで言ってんのか!そうなのか!?」


 また脱獄してるし。貼り付けから脱出して謙三先輩に詰め寄っておられる。



「しゃあねぇだろ。フミ……てか有宮の矢印は瞬に向いてた。瞬も瞬で愛と百引をなんだかんだで受け入れそうだった。てことは、フミが本気出せば、受け入れられる。そんな時にアプローチかけれるか?普通は無理だろ」

「……確かに!」

「納得するんですか!?」

「いやまぁ、事実だし…」


 ちょっと気まずそうな顔で僕を見る有宮先輩。なお、胸倉掴むのは止めない模様。



「で、『あ。さすがにやべぇな』と思ったから動くことにした。あらかじめ、二人(瞬と愛)に相談もしたぞ!」

「理由がゴミ過ぎない?消去法としか思えんのだが」

「馬鹿。ちゃんとお前が一番好きだったからだよ。幼馴染関係なしに、この世界の誰よりも!」

「えっ……」


 有宮先輩の頬が紅潮する。手も離して、今にも嬉しさで走り出してしまいそう。



 チョロくない? って思うけど、どうなんだろう? 彼女いたことないからわからないや。



「実際のとこ、どうなんです?」

「まぁ、好きだったのはほんとだと思うぞ。ただ、言ってた通り少なからず有宮の矢印は俺に向いてたからなぁ…」

「よく謙三先輩と有宮先輩でくっつきましたね」

「異世界行ってたからなぁ。異世界では有宮以外と俺らで別れたんだ。そん時になー」


 あー。瞬先輩(百引先輩と羅草先輩)の仲がそん時に一気に進んだんですかね?



「残念なことにね!」

「何で百引先輩がんなこと言ってんですか……」


 まぁ、百引先輩側になんかあったんでしょうけど



「よく有宮先輩、脳破壊されませんでしたね」

「それもあったぞ」


 一気に進んだ三人見て落ち込まないように…ってことですか。



「微妙に気を使われてたのね。とはいえ、フミの気持ち自体が二人と違ったんだと思うんだよね。Like(好き)ではあっても、Love()ではなかったんだと思う。気になるかな?って思っていても、ケンゾよりちょい気になる程度だった……んだと思う。そこがきっと、二人との明確な差だったんじゃないかなーと思う。向こうで別れることになった時も、「瞬が取られちゃう!」だの「瞬と別れるの!?」だのより、「え。皆と別れるの?しゃーないけどさぁ」のが強かったような記憶があるね」


 なるほどです。なんかちょい曖昧な気がしますが…、記憶ですし、そんなもんですか。



「だから、ケンゾにまともに告白されたら受けたんだよね。ほんとのLoveをぶつけてくれたし、さっきも言ったけど幼馴染の男で思考が合うのはケンゾだし」


 一番は百引先輩ですよね。わかります。



「こんなこと言うのもあれだが、有宮。よくお前の気持ちがloveじゃないって気づかなかったな」

「ほんとにね。アキ(百引)はもろに「大!好き!でーす!」って言ってたし、アイ(羅草)もアキに若干、遠慮気味ではあったけど矢印は明らかだったもんね。まー、子供だったんでしょーよ。んで、瞬はどうなのよ?」

「このタイミングで俺に来るのか」

「むしろこのタイミングしかなかとよ。あげぽよ」


 ちょい真面目な雰囲気がどっか行ったと思ったらまたいつものギア入ってるし。とはいえ、気になりますよね。どうなのです?



「んー。百引はこんなんだが、好き好きって叩きつけられたら悪い気はしない。羅草は百引に遠慮してアプローチは控えめだったが、それでも好きっぽい振る舞いしてたしな」


 よく考えなくても男2女3の幼馴染グループで女性側全員の矢印が一人に向いてるの地獄では? よー幼馴染で通せましたね。



「それな。言ったらあれだが、謙三がちょいその辺に鈍いのと、有宮の気持ちがちょいズレてたからなんとか回ってたんだろうって気はする。後、二人の性格の問題かな。確実に互いの気持ちは俺が分かってたんだから、わかってたはず。そこで暗闘にならなかったから…」

「まぁ、瞬君はloveだけど、それと同じくらい皆がlikeだったもの。積極的に潰しには行けなかったわよ」

「ねー!まぁ、私は……ちょいケンゾーには悪いけど、なんやかんやで付き合ってくれる愛ちゃんも、性格が合う文ちゃんも大好きだし。瞬にハーレムルート目指させる気は異世界に行く前からあった」


 凄まじいこと暴露してんですけどこの人(百引先輩)



「もっとえぐいこと言おうか?さすがに文ちゃんは誘わないけど、愛ちゃんがハーレムにいることで3つの関係を楽しめて嬉しい」


 ? あ。顔を赤くした羅草先輩が全力で百引先輩を黙らせに行った。……なるほど。お正月から何を聞かされてるんだろうね。僕。


 お読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字衍字等、もし何かございましたらお知らせいただけますと嬉しいです。

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