108話 ごみ処理場
年が明けましたね。新年早々また投稿日ズレてます。すみません
そんな私ですが本年もお付き合いいただけますと嬉しいです!
さて、雑にまとめると今回の敵はゴミ処理場で形を持ってしまったゴミたち(With 人間への恨み付き)。
神様達は対応不能。今の時代、神様との距離が遠ざかりすぎた。日本ならワンチャンだけど。ここはイギリス。ちょっと遠すぎる。だから、敵は俺らがしばきまわさないと駄目。
その上、ゴミ処理場の管理もまともに出来るようにしないといけない。昔ながらの一か所に集めておいとけば割と何とかなるから、縛って放置でOK! なんてのはもう通用しない。
どういう形がいいかねぇ。日本に張った障壁と違って、あの世でも処理しきれないゴミ捨て場とか存在を認識しにくいせいで、信仰心からちょろまかすとかできなさそう。しかも、「破綻すれば破綻したでそれはそれでいいか。時代の選択だ」なんてのも厳しい。世界が死ぬ。
世界が滅ぶとなればそれこそ、どうしようもないからすんごい強い神々も神話の垣根を越えて動かれるだろう。けど、それ=人類滅亡。人類が自分のせいで滅ぶならまだしも……いやまぁ、半分くらい人類のせいだけど、罪状「繁栄罪」はちょっと先に言えと言いたくなる。
それに、繰り返しになるがこのゴミ捨て場は人類が感知しにくい。隣接はしているけど、ゴミ捨て場だからかなーり影を薄くされてるから。意識外からぶん殴られて滅ぶのはかわいそう。神様方が人類……というかこの世界の生命体にほぼ気づけないようにされた以上、気づける側でなんとかなるシステムを構築してあげなければ。
……丸投げすれば何とかしてくれそうな神様を一柱知ってるけど、さすがに可哀想だしな。別世界だし。仕事満載だし。それがたとえ、半分以上、不可抗力といえなくもない自業自得だとしても。
「…ねぇ。その管理ってのはほんとに、入口縛って放置って認識でいいの?」
「うん。アイリの認識でいいよ」
「ゴミはどうやって通してんだ?通しようがなくないか?」
「ガロウ君の思ってることもよくわかりますが、どうも聞いた感じですと袋がゴミを内側へは通すらしいです」
不思議だよね。浸透圧……は変だな。どう考えてもゴミ処理場のほうがゴミ濃度高いし。
「何で出入口なんて設けたし」
「ないとどこで破裂するかわからないよ?」
一応、パンパンになった時に弾ける場所が分かるようにするためらしいし。出入口。
「まぁ、出入口は現世とあの世の境界が特に歪む場所に移動するので、固定できてませんけど」
「駄目じゃん」
「ないと最悪、現世でもあの世でもない変なところで破裂して、外部からの圧力で世界が死ぬけど」
「いるな」
でしょ? ガロウの手のひらくるっくるだけど、そんくらい重要なんだよね。
さて、どうするかね。敵を迎撃するのは確定。だが、どういう魔法を叩き込むべきか…。どうせ誰も向こうにはいないから適当に攻撃叩き込むことはできるが、境界が緩んだ途端、溢れ出してくるって予想だから、そいつらを押し切らないとどうしようもないんだよなぁ。
「…半ば放置とはいえ、管理されてるなら外部から弄ることは出来ないの?」
「え?ちょっと待ってね」
んーーー。あ。でき……そう? 入口を開けるのはやーだーらしいけど、外からその世界をぐにぐにと触ることは出来るみたい。「やりすぎて破裂させないでね」的なことを言われている気もするが。
…マジで見たくもないものを大量に詰め込んだゴミ袋じゃん。このゴミ捨て場。
「一か所にギュッと集めてしまいます?…まぁ、駄目な気しかしませんが」
「同意」
破裂する可能性が上がるし、破裂しないでもこっちと繋がった途端、勢いよく溢れ出す未来しか見えない。逆にうすーく引き延ばすとかもできるだろうけど、外部から形変えたところで中の敵に影響はないんだよな。多分。ここに来て初めてぼやっと伝わってくる感じから確信持てたけど、ちゃんとした形があるわけじゃなさそうだし。
「溢れる場所を固定するために、繋いどく?」
「それなら出来なくもないですが…、やらなくても勝手に繋がりますよ?」
「そうなんだよねぇ」
だから、やることに対してメリットが釣り合ってない。せいぜい、先制攻撃できるかな? くらい。やっぱ最初は出てくる敵をどう押し返すか? が大事になるか。んー。返す返すこれまでの情報が神様からの伝聞で400年前の情報で不確定なのが多いのが辛い。
「…ねぇ。繋ぎたいの?繋ぐだけならわたしができるよ」
おずおず言って来るアイリ。え?
「え。繋げるの?アイリ?」
「私達も出来ますが、それなりに疲れるのですよ?」
「…ん。お父さんやお母さんと違って、わたしの魔法はそんな密接に世界と関わってるわけじゃない。…から、別にどうとでもなる。…ね?」
「そーだねー!」
同意を求められたカレンも嬉しそうに頷く。そっかぁ。繋げるのかぁ……。いやまぁ、この子らのシャイツァーは俺らのとは全然、性質が違うからわからないでもない。
シャイツァーの成り立ちは全部同じ……異世界の神の力とはいえ、帯びてるものが違うからなぁ。俺らのはかなり主神的な立場に近い。世界の代弁者的なのだから、世界からのバックアップでかなりエネルギー効率がいい。その分、嫌って言われるときついけど。
アイリ達のはなんていうか……執行者? そういう役割として定義されてる。だから、世界の意思はあんまり関係ない。その分、バックアップもそんなにない。「どういう役割?」って言われても「さぁ?」としか言えないけど。ちょっとあの二柱弱体化しすぎてんよー。
そっかぁ。考えればそうだよなぁ。いけるか。俺らが駄目だし、二人も駄目だろと思って聞かなかったけど。二人が消耗少なくあっちと繋げるなら話は別。特にカレン……いや、そうでもない? いや、そうでもなくないか。
ゴミ処理場をさっきと同じく袋と考えると、アイリに繋いでもらう方を袋の口で、カレンの手伝いで魔法をぶっ飛ばせるのは袋の底。袋の口の方を開けておけば、袋の底で魔法を爆発させてもゴミ袋は破裂せずに、口の方にエネルギーが逃げてってくれるはず。
……威力強すぎると袋が破裂しそうだが。攻撃に指向性を持たしときゃ何とかなるか。うん、アイリとカレンに手伝ってもらうほうがいいな。
「四季……も同じか」
「です。手伝ってもらいましょ」
「だね。アイリ。カレン。手伝って。カレンはいつも通りに」
「…ん」
「りょーかい!矢に紙を巻くんだよねー?」
頷く。さてさて、俺らも準備しなければ。さて、どういう魔法にすべきかね。
「とりあえず、求められる要件を上げていこうか」
「ですね。まずゴミ処理場……袋が壊れないことですね」
「それでいて、敵を粉砕できて……、」
「攻撃の余波を逃がすために現世と繋げるので、こっちに悪影響が出ないようにしないといけませんね」
「だね」
自分の攻撃の余波で死ぬほど馬鹿なことはないし。
「ガロウがいますが……?」
「なぁ、レイコ。マジで言ってんの?」
「マジですよ?」
レイコは何を言ってるんです? 当然でしょう? そんな目をしながらこてっと首を傾げる。
「マジかよ。無理に決まってんだろ。確かに俺のシャイツァーは防御寄りだけどさ、父ちゃんと母ちゃんが全力だしたらぶっ飛ぶわ。物理的に盾が浮いてるからな…。その場に留めて置くってのがムリゲー度高い」
「ですか」
レイコは残念そうに下を見……たと思ったらコウキの方に目が行った。
「レイコ姉さん?僕はもっと無理だよ?僕のシャイツァーは個人防衛特化だからね?開いた入り口に僕が立ってりゃ盾になるだろうけどさ…。ガッチガチに固定したら何のために穴を開けたの?ってなるよ?それに人型だから絶対に隙間あるし」
だよね。だから言わなかったんだけど。…となると、工夫すべきは魔法の方。今回の敵はいらなくなったゴミ捨て場にあったやつが、負の感情で指向性を持ったやつら。
少なくともこいつらは物質的存在ではない。物質は現世にしか存在しない。だから敵は……エネルギーになるか。ゴミ捨て場といってもこの世界の付属物。である以上、法則は共通。
「エネルギー奪おうか」
「…で、いいと思います。肉体を持っていれば影響を受けないように定義すれば、こちらの世界に影響はほぼでないはずですし」
エネルギーはグラビトンだの光子だのの素粒子で伝わってるとかの細かいのは全部無視。
「超雑に”物質”には影響を与えないとしてしまおうか。…この言い方すら正しいのか怪しいけど」
「言いたいことはわかるのでよいかと。肉体ですと、生物しか含まれませんものね。魔法の余波でこちらの気温が凄まじく下がる…とかいうのも防がないといけませんしね」
「そそ」
となると……、
「手っ取り早くあっちの世界のエネルギーを全部奪ってしまうようにする?」
「それは……怪しそうでは?あの世界から奪う!というなら、あの世界に名を付けないといけないでは?ちゃんとその世界と限定しませんとこっちの世界まで余波が来ますよね?仮にこの世界以外!と定義しても、「あの世」が含まれちゃいますし」
「あー。そっか。それはよくないな。名前も指向性を与えてしまう。それをするなら、うまいことゴミ捨て場の処理を出来るようなシステムを構築してからでないと」
「「ん?」」」
エルスペスさんとガロウの声。それに……、子供たちのほとんどが首を傾げてる。んー? あぁ。なるほど。
「さっきから何とかしたい世界のことをゴミ捨て場とか言いまくってるけど、それは問題ないよ」
「あくまで役割を象徴するもので名前ではないですからね」
「…役割でも代名詞として機能するんじゃない?」
「完全な同定は出来ないでしょ?役割は唯一無二だけど」
「ゴミ捨て場なんてどこにでもありますからね」
俺らの家の前にだってあるし。貝塚とかも遺跡だけど、昔のゴミ捨て場でしかない。もっと固有の名称を付けて初めて同定できる。
「…なるほど。後、もう一つ。エネルギーを奪うなら、わたしがその世界とこっちを繋げない方が良くない?」
「んー。それでも、開けた方がいいかな」
「紙と私達とのパスをより強固に保ちたいですからね」
穴がなくても俺らが作る紙は俺と四季の魔力を帯びてるからある程度、「魔法使いたいです!だから、魔力送るから威力上げつつ起動して!」みたいな意思の伝達パスはあるんだけど。ちゃんと入口が開いてるのと閉まってるのとでは威力が違う。
「奪うにしても奪ったやつの処理はどうするのよ。奪ったからって完全に無になるわけじゃないでしょう?だからこそ、ゴミ捨て場が存在してるわけでしょ?」
「だね」
ミズキの言う通り。だからこそ、それをどうするか決めないといけない。で、それは一つしかないよね。
「エネルギーが集まるなら、それを再利用しない手はないですよね」
「ね。そのエネルギーでちゃんとゴミ処理場の中でゴミを処理してエネルギーに戻す仕組みを構築しよっか」
そうすればまぁ、いけるでしょ。構築段階で多少のエネルギー供給は必要になるとは思う。でも、災害復旧的に唐突に大量のエネルギーを要求されるよりマシなはず。位置的にはあの世の下層にすればいいよね。だって、あの世はどこの神話でも概念としてはあるから、ちゃんとこの世と接続できるはず。
今後、人類が魂の複製に成功! とかなればあの世の概念が希薄化するだろうからやばそうだけど……。その時はあの世のシステム自体が維持できないという致命的な問題が出るから問題なし。さすがにそのレベルはその時の人らと神様で何とかしてくれ。魂に手を出せるなら、あの世の存在も現ゴミ箱の存在も知ってるでしょ。
「となると、書くべき文字は……何になるんですかね?「奪」はまぁ確定でしょう。エネルギーを奪い、あのゴミ処理場からゴミ処理場という役割を奪って再構築するのですから」
「だね。となると、次にいるのはどういう世界として定義するかだけど……」
やることは落ちてきたゴミから何もかもを奪いつくしてエネルギーに戻す。……奪で事足りてなくない?
「後は名前つければ何とかなりそうだけど、どう思う?」
「っぽいですね。では、早速」
四季がファイルに手を差し込んで、引っこ抜く。込めている魔力は半分程度とはいえ、俺らの魔力は多いから相対的に見ればかなりのもの。だからか、引き抜く動作は緩慢で、繰り返すごとに四季の額に汗が浮かび、さらに動きが鈍る。何度か繰り返して『奪』の形に紙を整えてくれた。そこに俺が字を書く。イメージは既に固まっている。だから、それを紙に定着させるだけ。
既に似たようなことを一度やったことがあるとはいえ、やっぱ抵抗がえぐいな。半分くらいしか使ってないって言ったって、魔力量は増えてるし…。ペンが滑るかと思ったら進まなくなり、たまに跳ねたりうねったりする紙から一画を書ききるまではペンを離さないようにする。
他人と魔力を混ぜてる以上、仕方ない現象。とはいえ、魔力の相性がかなりいいらしい俺らでこれってどうなってんのかね。…てか、前の俺はよくやったな。形だけ夫婦でやることやってなかったから、今より抵抗酷かったろうに。
「…っ、ふう。よし、書けた!カレン!」
「あーい!えっとー、巻き付ければいいんだよねー?」
「えぇ。紙で文字を書いた時点で、それは一枚の紙になっています。分離はしませんよ。…雑にやれば破れますけども」
「だよねー!まー、ぐるぐるーっと!これでおっけーい!おねーちゃんは?」
「…いつでも」
アイリがカレンの問いに頷き、周囲に準備はいいかと問いかけるように目線をやる。子供たちも、エルスペスさんも平気そう。なら、後は俺らだけ。俺らも息は整った。大丈夫。
「じゃーいっくよー!」
カレンの矢が弦から放たれると同時、矢が紙ごとすうっと消える。さらにほぼ同時にアイリが鎌を振るい、この世とゴミ処理場が繋がり、何かが向こうから溢れ出そうとして来る。そして、ワンテンポ遅れて俺らが魔法を代償魔法で発動。
もはや目視できないが紙がすうっと消え、魔法が発動したことだけは感じたと同時、一気に溢れ出してくる何かの勢いが減じた。溢れ出してしまったものは子供たちにタコ殴りにされて消滅する。最初の勢いで突破できなかった以上、敵に勝ち目はない。溢れ出す勢いが弱まっていくことは避けられず、完全に停止した。
後は起動した魔法が中で喰らいつくしてくれる。やるべきはゴミ処理場の名付け。今のところ、あの魔法は物質には干渉しないが、イレギュラーであの世界に物質が落ちてきたら困る。だから、それを純エネルギーに還元するのは当然。で、奪いまくってるエネルギーをちゃんと回せるようにしないといけない。
どうやって戻そう。まぁ、一気に戻すと変になるかもだし、じわじわこっちの世界に戻すしかないよな。んーーやばい。あの世界のイメージ……というかあの魔法のイメージが太陽に固まりつつある。太陽系の他の天体より重い質量で軌道から外れたものを引きずり込んで燃やし、原理は違うけど熱を出して地球をあっためてくれてる。それが近いんだよな…。
「あの世界は例えるなら太陽系ですかねぇ」
「だねぇ。バカみたいな力で全てを引きずり込んで、魔法としての効果で純エネルギーに還元。それをじわじわ放散ってとこでしょ?」
「ですです」
だよねー。やっぱ四季とは思考回路が似通ってるわ。そして、そこまで固まっているなら名前もそっちに寄せれば何とかなるはず。とはいえ、太陽系とかsolar systemみたいなのだと「世界」って感じがない。まぁ、俺らは日本人だし、なんちゃら界で……あ。あー。
「極冥界でいいか」
「ですね。Far eastを参考にしましたね?」
「うん」
位置的にはあの世を隔てた向こう側。あの世……冥界で処理しきれてないものを処理するから、出力的に上みたいな感じで「極み」って文字はいいでしょ。
「では、それでラベリングしちゃいましょう。紙出すので、そこに文字書いてくださいな」
「あいあい」
発動させた魔法は今も役割を果たしてくれてる。だから、それがずっと維持されて、かつ純エネルギーはこっちに戻してもらうことをイメージしてっと。位置の固定はもう名前がしてくれてるから無問題。後は……、紙をぶち込めばいいのかな? …あ。よさそう。
「これで今回のお仕事は終わり!」
「ですね!」
「うわぁ」
エルスペスさんがドン引きしている。確かにやってることえぐい自覚はありますけど、
「エルスペスさんもえぐいことやってたでしょう?」
「あっちの世界からくるものは物理的な肉体持っていませんのに、うちの子らの攻撃が通るように強制的に物理的な肉体を持たせる術式をアイリちゃんが開いた入り口に展開してたじゃないですか」
「そりゃあの世のものと渡り合うには必須じゃし、こっちに来る前から似たことは向こうでもやっておったからの。…とはいえ、長い年月をかけたからこそできるワシと一緒にしないで欲しい。マジで何で出来るの?」
まぁ、色々あったのでとしか言えませんね。
「えーと、とりあえず俺らは帰りますが、どうします?」
「帰るぞい。あぁ、勿論、報告はするがの。全部任せよ」
「ありがとうございます。では、お願いします」
じゃあ、俺らも帰ろっか。アメリカ組は一日観光するって言ってたから、迎えは明日でいいしね。……ほぼ戦闘してないけど、やっぱ魔力半分も使ったらすんごい疲れるわ。
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